マーケティング

【違うそうじゃない】ビジネスに効くストーリーテリングの実践方法を徹底解説

最近は「ビジネスにはストーリーが大事!」と声高々に言われています。聞いた話では、クリエーター系の専門学校でも、「作品にストーリーを持たせよう」と教えられるそうです。

ストーリーを伝える技術を「ストーリーテリング」と呼びます。ストーリーテリングの狙いは、もちろん顧客の感情を揺さぶってポジティブな反応(例えば購入)を得ることです。

でも、ほとんどの人はストーリーもストーリーテリングも理解していない。私見ですが、教えている側も理解していないんじゃないかと思います。

重大な事実を述べると、ストーリーは後付けで作れるものではありません。もっとずーっと前から仕込みが必要です。

多くの人は、すでに出来上がったビジネスや作品に対し、後からストーリーをこじつけようとしています。だから上手く行かないんです。

この記事では、ビジネスにおけるストーリーの本質を解説しています。もちろんストーリーを作るための具体的な方法もです。

この記事を読めば、思わず買いたくなるストーリーが作れます。決してカンタンではありませんが、ぜひ最後までチェックしてみてください。

ストーリーテリングの意味と4つの要素

ストーリーは物語のことですね。そしてストーリーテリングは、メッセージやコンセプトを物語にすることで、相手にわかりやすく、また記憶に残るように伝える手法です。

ストーリーテリングには、次の4つの要素が欠かせません。

ストーリーテリングに必要な要素

  1. つながり
  2. 具体性
  3. 魅力的なメッセージ
  4. 面白さ

それぞれに重要な意味があるので、一つひとつ解説します。

①記憶に残る一連の情報の「つながり」

また脳は、意味のない事象の羅列は覚えられません。意味のある一連のつながりとなることで、脳はたくさんの事象を記憶できるようになります。

囲碁や将棋の棋士が長い棋譜を覚えられるのも、コマ運びにつながりがあるからです。いくらプロ棋士といえど、全くランダムなコマ運びは10手も記憶できません。

古代の吟遊詩人は、本数冊分に相当する量の物語を記憶していました。覚えられるのは、情報に一連のつながりがあるからです。

②わかりやすい「具体性」

コンセプトやメッセージは、抽象的なままではピンと来ません(少なくとも大衆には)。具体例で説明することで、相手に伝わりやすくなります。

抽象的なメッセージ

コツコツ継続するのが1番大切だ

具体的なメッセージ

たかし君は、中学2年の春から受験勉強の準備をしてきた。成績はちょうど真ん中くらいだったが、周りが遊んでいる間もコツコツ勉強を続け、学年でただ1人最難関校に合格した

多くの人が、「そうか!俺もコツコツ頑張るぞ!」と感じるのはどちらでしょう?

もちろん後者ですよね。メッセージは具体的にするほど、中身が伝わりやすくなります。

③おっ!と耳を傾けたくなる「魅力的なメッセージ」

具体的で一連のつながりがある物語を作ったとしても、それだけでは大衆の耳には届きません。届けるためには、魅力的なメッセージが必要です。

まず理解しなければならないのは、「誰もあなたのメッセージを聞く理由はない」ということ。分かりやすかろうが、記憶に残りやすかろうが、知ったこっちゃありません。

あなたは道行く知らない人に「ちょっとすみません!」と声をかけて、「おっ、その話ちょっと聞かせてよ!」と言わせなければならないのです。

あなたのメッセージに、顧客の耳に突き刺さるような魅力がなければ、ストーリーは決して届きません。

④最後まで聞かせる「面白さ」

2015年発表のマイクロソフト調査によると、2000年に12秒だった人間の注意力の平均持続時間は、8秒まで縮まりました。これは金魚の9秒よりも短い数字です。

よしんばストーリーに耳を傾けてくれたとしても、話が面白くなければ8秒しか聞いてくれません。8秒持っても、次の8秒がつまらなければ、その場を立ち去ってしまうでしょう。

最後までストーリーを聞いてもらうためには、最後まで「面白さ」を持続させなければならないのです。

本章をサッとまとめます。

ストーリーテリングの事例

  • 古代の王は、民を働かせて税を徴収することを正当化するために神話を作った
  • 為政者は、政治思想を伝えるために、プロパガンダ映画を作った
  • イソップは、人生の教訓を寓話(童話)として伝えた
  • シェイクスピアは、彼の哲学を戯曲という形に仕上げた

どのケースにも神や俳優といった登場人物がいて、それぞれに「具体的」なエピソードが伴います。各エピソードに有機的な「つながり」があり、1つの物語になっています。

それだけでなく、ついつい耳を傾けたくなる「魅力的なメッセージ」があります。仮にそのメッセージが恣意的であっても、必ず相手にとって魅力的な言葉に変換しています。

そして結末まで見届けたくなる「面白さ」も兼ね備えています。

4つ要素を完備したストーリーにしない限り、発信者のメッセージは大衆に届きません。だから大変で面倒で回りくどくても、手の込んだストーリーを用意するのです。

ビジネスにおけるストーリーテリング

さて一般的なストーリーテリングのポイントがわかったところで、次にビジネス文脈でのストーリーテリングの意味を考えてみましょう。

ビジネスでストーリーを披露するシーン

仮に素晴らしいストーリーができたとして、どこでそれを顧客に披露するか。基本的にはマーケティングに関するあらゆる場面でストーリーを流用します。

例えば次のようなシーンです。

ビジネスでストーリーを披露するシーン

  • ホームページ
  • LP
  • キャッチコピー
  • セールスレター(メール含む)
  • 提案書
  • 営業のセールストーク
  • セミナー

もう一つの文脈として、従業員採用候補者にストーリーを披露するケースもあるでしょう。商品を買ってもらうのではなく、仲間に加わってもらうためのストーリーです。

ビジネスにおけるストーリーテリングの狙い

ストーリーの狙いはもちろん売上アップです。具体的には次の3つの効果を期待しています。

  1. 興味関心
    :それまで興味がなかった商品を、ストーリーを聞いたことで興味を持つ
  2. 競合優位
    :競合他社と比較されたとき、ストーリーを理由に選んでもらう。あるいはストーリーを理由に他社への流出を防ぐ
  3. 口コミ
    :顧客にストーリーを他人に話してもらう

この中でもっとも意識したいのが、3つ目の口コミです。

1人の人が買ってくれれば「1」ですが、言いふらしてくれれば「10」にも「100」にもなるからです。今日のマーケティングのゴールは、「購入」ではなく「他者への推奨」にシフトしています。

ストーリーは究極的には、「顧客が自分から他人に話したくなる(もちろん話せるくらい簡潔な)ストーリー」を目指さなければなりません。ビジネスでは常にコレを意識します。

よくあるストーリーテリングの勘違い

ビジネスシーンでストーリーを考えるとき、間違いが多すぎて挙げたらキリがありません。しかしそのうち1つは根本的な間違いです。

それはストーリーの後付けです。一切メッセージを伴わずに開発した魅力のない商品に対し、後からストーリーを付加して魅力を増そうとするのです。

例えば、あなたがお金儲けのためだけに、そのとき流行っていたアパレルブランドの模造品を作ったとしましょう。

その模造品に、顧客の心に響くストーリーを後付けすることはできません。電通や博報堂に大金を積んでも、できないものはできません。

ストーリーは、ガラクタを包むキレイな包装紙ではありません。かなりネガティブな例えですが、多くの人がコレに近いことをやろうとしています。

ストーリーはもっと上流から始まります。商品コンセプトはもちろんのこと、その企業の理念にまで立ち返って作るものです。

わかりにくいと思うので、このあたりを順を追って解説していきます。

実践編1:ストーリーの具材を揃える

ストーリーを料理に例えるなら、まず具材を揃えるところからスタートします。「良い具材」を「必要な量」だけ用意しなければ、美味しい料理は完成しません。

次の3ステップで具材を揃えましょう。

  1. 「理念」を明確にする
  2. 「顧客」「課題」「価値」を定義する
  3. 筋を通す

この時点ではまだストーリーの形につなげません。ぶつ切りの素材を用意するだけです。

多くの場合、この具材を揃える工程が見過ごされています。実際のビジネスでは、具材を揃えるだけでもかなり優秀だと思います。

1-1:「理念」を明確にする

まず1番最初の材料は、ストーリーの原点になる「理念」です。その企業がその商品が、一体何のために存在するのか、最も原始的な問いに答えましょう。

今日のように商品を機能で差別化できない時代には、商品の持つ「理念」や「意味」が問われます。顧客は理念に共感できるストーリーを積極的に手に取ります。

理念がなければ、ストーリーもヘッタクレもありません。海賊王を目指さないルフィや、火影を目指さないナルトでは、第1話からストーリーが崩壊してしまうでしょう。

理念にはミッション・ビジョン・バリューのフレームワークがあります。まだ理念が言語化できていない人は、フレームワークに沿って考えましょう。

ただしビジネスはあくまでお客さんのためにあるもの。利己的な理念は却下です。

「俺が金持ちになる」とか「俺が女子にモテモテになりたい」では、誰の共感も得られません。

≫【理念を掲げよ】ミッション・ビジョン・バリューとは?順番は?

1-2:「顧客」「課題」「価値」を定義する

「理念」に沿って商品を作れば売れるかというと、もちろんそうではありません。理念だけでは企業側のエゴでしかないので、お客さん目線のメリットが必要です。

  • 「顧客」はいったい誰なのか?
  • 顧客はどんな「課題」を持っているか?
  • 課題解決の先にどんな「価値」を見出しているか?

の3つの問いに答える必要があります。これはストーリー云々の前にビジネスの基本でもあります。

まず「顧客」が誰かはわかりやすいですね。ターゲットです。ただし「20代男性」だとぼやけます。よく知っている実在する1人の顧客をイメージしましょう。

顧客は「課題」を解決する方法を求めています。欲を言えば、既存の商品では解決しきれない課題がいいですね。顧客のかゆいけど手が届かない悩みはどこでしょう?

そして見過ごされがちなのが「価値」です。顧客は課題解決の先に、もっと根源的な欲求を持っています。顧客が対価を払うのは、商品そのものではなく、価値に対してです。

価値はわかりづらい概念なので、「お掃除ロボット」を例に考えてみましょう。

お客さんの課題は、「部屋をキレイにすること」ですね。しかし既存の掃除機では手が届かなかった「自動で部屋をキレイにする」を実現しています。

さてここでのお客さんの価値は、「部屋をキレイにすること」でしょうか?いえ、きっとそうではありません。

本当の価値は、「時間を節約すること」です。お客さんが本質的にお金を払っているのは、掃除の手段としてではなく、節約できる時間に対してです。

「顧客」「課題」「価値」は、必ず3点セットで押さえてください。

「価値」がまだピンと来なかったら、↓の記事をチェックしてみてください。懇切丁寧に解説しています。

≫【ついに言語化】ビジネスとは何か?顧客の価値とは何か?ビジネスの本質を解説

1-3:オーセンティシティを貫く

ここまでで企業あるいは商品の「理念」が決まり、「顧客」と「課題」と「価値」が明確になりました。単語が多いので、これらを総称して「コンセプト」と呼ぶことにします。

そうしたら、ビジネスに関わるあらゆる要素を、徹底的にコンセプトに沿って作り上げます逆にコンセプトに沿わないものは、完膚なきまでに捨てていきます

ビジネスに関わるあらゆる要素は、

商品名、ロゴ、商品の機能、お店の外観・内装、商流、価格、ホームページのデザイン、社員の評価指標、スタッフの言葉遣い、などなど

と多岐に渡ります。とにかく思いつく限りなるべく多くです。

見方を変えると、外部の人に、

何でこの機能にしたんですか?何でこのブランド名なんですか?ロゴは?ホームページの基調カラーは?フォントは?どうしてそうしたんですか?

と聞かれたときに、全てコンセプトを理由に説明できる状態にします。

この言動一致した姿勢は、オーセンティシティ(Authenticity)と呼ばれています。ブランドがオーセンティック(本物)であるという意味です。

あなたが偽物ではなく、本物であると証明するためにオーセンティシティを貫きましょう。要するに一本筋が通った運営をせよということです。

例をあげましょう。

「最高のコーヒーを提供したい」と考えているスターバックスコーヒーでは、いち早く全店禁煙に踏み切りました。加えて、匂いの強い食べ物は廃止にしました。

最高のコーヒーは匂いも含めてコーヒーです。それを邪魔するものは排除しなければなりません。

「地球を救うためにビジネスを営む」を掲げるパタゴニアは、全ての製品に再生可能素材、もしくはリサイクル素材のみを使用する活動を進めています。

地球環境に悪い低コストな素材を使うと、商品とブランドの理念と矛盾してしまうからです。

仮にパタゴニアが利益を上げるために、人権が無視されている工場から安く仕入れたらどうなるでしょう?パタゴニアは約束を破ったことになります。批判は避けられません。

「なぜわざわざ自分で自分の首を絞めるんだろう?」と、不思議に思う人もいるかもしれません。

ですがコレは、HUNTER×HUNTERでいうところの「制約と誓約」です(すみません、これ以上バシッとハマる例えが浮かびませんでした)。

自らが立てた誓いを守ることで、ブランドの魅力は掛け算で増します。コレは誓いを破ったときのダメージが大きいことの裏返しでもあります。

厳しい制約をかけるほど負うリスクは大きくなり、その分だけ強くブランドの魅力は光り輝きます。ノーリスクノーリターンの原則はここにも当てはまるわけです。

分かりにくかったら、ホースをキツく絞めるほど水の勢いが強くなる、をイメージしてもらえればと(やっぱり制約と誓約ほどしっくり来ないけど…)。

実践編2:ストーリーにつなげる

具材を揃えるまでが大変で、ストーリーにつなげるのはテクニック的な話です。コツがあります。

大衆の注意力は8秒しか持たないので、飽きさせてはいけません。飽きないストーリーは、もうエンターテイメントの知恵を借りましょう。

『ストーリーブランド戦略』によれば、面白い映画のプロット(筋書き)は決まっています。実は映画はみんな同じ展開なんです。

典型的な映画のプロット

  1. 主人公
  2. 問題の特定
  3. 導き手の登場
  4. 計画の提示
  5. 行動喚起
  6. 回避したい失敗
  7. 成功する結末

コレをそのまま踏襲すれば、飽きさせない展開になります。

ちなみジャパネットたかたなどのテレビショッピングは、このストーリーに沿ったプレゼンになっています。だからグッと惹かれるのです。

2-1:顧客を主人公にする

映画には主人公がいます。映画が始まっても、その主人公の望みがわからないと、観客は興味を抱きません。

そして、ビジネスにおける主人公は「顧客」です(ただし従業員の士気を上げる目的であれば、「従業員」が主人公になります)。

それ以外のパターンは基本ありません。企業が犯しがちな過ちは、自社や商品を主人公にすることです。そんな話は誰も聞きたくありません。

ストーリーを聞いた顧客が「おっ!この話は俺のための話だぞ!」と思ってもらうためには、企業が顧客の望みを、ズバリ簡潔な表現で伝える必要があります。

また人間は騒々しい情報の渦中にいても、自分に関係ある情報はクッキリ浮かんで聞こえます。この現象はカクテルパーティー効果と呼ばれています。

パターンとしては次の2通りがあります。

顧客が自分ごとに感じる語り出し

  1. 顧客の欲しいモノをズバリ言い当てる
    :例:ホームページ、広告ポスター、テレビCM
  2. 顧客の悩みをズバリ言い当てる
    :例:LP、セールスライティング、テレビショッピング

どちらかにドンピシャにハマれば、顧客は「ハッ!」と耳を傾けます。

①顧客の欲しいものをズバリ言い当てる

一瞬や数秒のような非常に短い時間で、顧客に耳を傾けさせるためには、ズバリ欲しいモノを初っ端に持ってきます。

  • ホームページなら開いた瞬間、スクロールする前の画面
  • 広告ポスターなら一番目立つコピー
  • テレビCMなら第一声

これらは一瞬のうちに、見る者の心を掴まなければなりません。

しかし商品名や商品の画像を伝えるわけではありません。

あなたが端的に伝えなければならないのは、あなたが顧客の「課題」を解決する手段を持っていて、その先にある「価値」まで達成できる、ということです。

顧客が欲しいのは商品そのものではなく、商品が与えてくれる「価値」です。顧客が持っている「課題」を解決してくれるという「価値」にお金を払うのです。

例えば戸建てを提供する不動産会社なら、次のようなパターンがあるでしょう(サッと考えただけなので、あくまでイメージです!あしからず!)。

  • 小さな子供がいる家族
    :子供の成長が見える家。

  • 2世帯住宅
    :家は1つ。生活は2つ。分かれているけど他人じゃない。

  • リゾート地の別荘
    :時間がゆっくり流れる空間。

ここで欲張ってはいけません。顧客の「課題」と「価値」は1つに絞ります。主人公は2人も入りません。桜木花道は1人で十分です。

また「最適」や「ベスト」や「効率的」のような、フワッとした言葉は使わないほうが良いでしょう。できれば形容詞に頼らない方がベターです。

どちらもメッセージが薄れ、ストーリーが訴求力を失う原因になります。

②顧客の悩みをズバリ言い当てる

顧客が多少は耳を傾ける準備ができている場合は、顧客の悩みを言い当てるところから始めても良いでしょう。

テレビショッピングや、セールスライティング(=メルマガやネット記事)、LPは、通常顧客が耳を傾ける準備ができている状態から始まります。

悩みとはすなわち顧客の「課題」です。事前に突き止めていた課題に共感を寄せ、「わかっていますよ。困ってるんですよね?」と優しく声をかけます。

例えば、「コンロの頑固な油汚れ、こびりついて取れずに苦労していませんか?」のような語りから始まります。

聞いている顧客は、「確かに〜。困ってたんだよねぇ(この後に解決策を教えてくれるんだよね?)」と、話の続きを聞きたくなります。

なおこちらもメッセージをぼやけさせないよう、「課題」は1つに絞りましょう。

2-2:悪役を登場させる

主人公がすんなり望みを達成できてしまっては興醒めです。行手を阻む「悪役」が必要ですね。それもなるべく強大な悪役です。

ダースベーダーやヴォルデモート、山王工業、フリーザ・セル・魔人ブウ、いずれも強敵。「こんなやつ倒せんの?」と思うような奴らです。

もちろん悪役は、顧客の「課題」の解決や、「価値」の達成を阻む原因そのものです。それも表面的な原因ではなく、もっと根本的な原因です。

例えば掃除機の場合は、表面的な悪役はゴミですが、真の悪役は別にいます。

ダイソンの掃除機

  • 課題:ゴミを取りきれない
  • 価値:ピカピカでチリ一つない空間
  • 悪役吸引力が悪い他の掃除機

お掃除ロボット

  • 課題:掃除にかかる手間
  • 価値:節約できる時間
  • 悪役人間の手を煩わせるこれまでの掃除機

ダイソンの掃除機のCMは、言葉を濁さずに言えば「他の掃除機は吸引力がクソ」と言っています。お掃除ロボットは、「手間がかかる掃除機なんてクソ」と言っています。

そして悪役も1人で十分です。たくさん出すとボヤけるので1人に絞ります。

2-3:企業は導き手になる

映画の主人公は、スタート時点では雑魚。悪役の方が圧倒的に強く、顧客は「どうやって勝つんだろう?」と興味をかき立てられます。

観客は弱い主人公に共感したり、自己投影したりするので、勝手に自己解決されると興醒めします。観客が求めているのは、主人公を強くする秘策を持った「導き手」です。

スターウォーズではヨーダやオビワン、ナルトにはカカシ先生や自来也、幽遊白書には幻海がいます。

企業の立ち位置はあくまで「導き手」です。顧客が求めているのは導き手であって、もう一人の主人公ではありません。企業の創業話なんてどうでも良いんです。

導き手が提示しなければならないのは、「顧客への共感」「実力の証明」の2つです。

①顧客への共感

導き手である企業(つまりあなた)は、その分野では顧客より先にいる存在。だからと言って、説教したりダメ出しするようでは、顧客の心は離れていきます。

まずは顧客の悩みに対して、「そうだよね辛いよね」「ぼくも昔は同じだったからわかるよ」と伝えます。

続けて「だからあなたの悩みを解決する助けになれるよ」と語り掛けます。

できない人の気持ちがわからない高飛車なエリートは近づきがたいもの。実力があっても導き手には相応しくありません。

②実力の証明

順番としてはまず先に共感ですが、「聞く相手を間違えた」となっては元も子もありません。

あなたが顧客の悩みを解決できるだけの実力を持っていることを証明しましょう。

実力の証明の例

  • 導入事例(導入企業のロゴ、お客様の声)
  • 販売数(1,000万食突破、〇秒に1個売れています)
  • 受賞歴
  • 有名人やその業界の権威からのお墨付き

ただ始まったばかりの事業だと、証明できるだけのものがないかもしれません。ない場合はしょうがないので、主だったメンバーの経歴を紹介するなりしましょう。

2-4:具体的なステップを提示する

ここまでで顧客はあなたに良い印象を抱いています。次にやってくるのは、「で、具体的に何すれば良いの?」ですね。

顧客が悩みを解消するために必要なステップを伝えます。商材によってステップ数は異なります。基本的には、高価な商品ほどステップは長くなります。

オススメは3ステップです。心理学のマジカルナンバーによれば、人間がサッと記憶できる情報の量は、少ない人だと3つが限界だからです。

料理の素の場合

  1. お米をフライパンに入れる
  2. 本商品をかけてよく混ぜる
  3. 強火で5分ほど炒めて完成

引っ越し屋の場合

  1. お伺いする日時をお知らせください
  2. 営業が訪問してお見積りします
  3. 満足いただけたらお申し込みください

といった具合ですね。

全体のステップが長い場合は、ステップを区切ったりまとめたりして、3ステップで見せる工夫をしましょう。

≫【使わなきゃ損】マジカルナンバー7±2と4±1は人間が覚えていられる限界

顧客の不安を取り除く

顧客は「そのステップって、ちゃんと俺にもできるんだよね…?」と一抹の不安を抱えています。顧客が感じる不安はあらかじめ払拭しておくことが重要です。

顧客の不安を払拭する例文

  • 女性お一人でも、5分あれば組み立てられます
  • お見積りは無料です
  • 合わなかった場合は、使用した後でも返品可能です
  • 30日間のお試し期間中に解約いただければ、料金は発生しません

といった具合ですね。

「大丈夫。我々はちゃんとわかっています。あなたがムリせずに実行できる方法を用意しています。安心してください。」と伝えるためのステップ提示です。

2-5:行動喚起

ここまで来ると顧客は乗り気です。ここでしっかり、「買ってください!」と行動喚起を行います。マーケティングでいうところのCTA(コールトゥアクション)です。

人間は意外と臆病で、相手が魅力的でも「さぁボクの手を掴んで!」「ボクと一緒にならないか!?」と言われなければ、最後の一歩を踏み出せません。

顧客は、「いますぐ購入ボタンを押してくれ!」というあなたの言葉を待っています。「ええ押すわ!」と言わせましょう。

ただし商品が高額な場合は、一足飛びに購入させるのは難しいですね。こういう場合は、段階的な行動喚起をしましょう。

段階的な行動喚起の例

  • 無料のサンプル(WEBならトライアル期間)
  • 無料のPDFファイル(顧客が見て嬉しいコンテンツ)
  • 無料のセミナー

すでにお膳立てはできているので、「購入する」「見積りを依頼する」「セミナーを予約する」といった、シンプルなメッセージで十分でしょう。

濁さずストレートに伝えましょう。

2-6:【不幸な未来】買わなかったらどうなるか?

観客が主人公の行く末が気になるのは、悪役を倒せばハッピーエンドが待っている代わりに、負ければとんでもなく酷い目に合うからです。

主人公が負ければ、一生惨めな生活を続けなければならなかったり、全財産を失ったり、場合によっては命や世界が消滅したりします。危険のない物語はあり得ません。

ビジネスに置き換えると、「この商品を買わなかったら、俺はどれだけ損することになるのか?」を伝えなければなりません。

行動経済学のプロスペクト理論によれば、人間は得よりも損失に2〜3倍敏感です。「今買えば3,000円OFF」よりも「明日から3,000円値上げします」の方が強い引きがあります。

あなたの商品を買わなければ、どんな損が待っているかを伝えましょう。

買わないことでの「損」の例

  • どんなストレスを抱えることになるか?
  • どれだけのイヤな期間が継続するか?
  • 何時間ムダにするか?
  • 金額換算でいくら損するか?
  • どれくらいの確率で損失が発生するか?
  • どれだけライバルに差をつけられてしまうか?

痛みを感じないレベルじゃ弱すぎですが、強すぎる痛みも逆効果。いったんあなたの話を中断して、別の人の意見も聞きたくなってしまいます。

チクっとさせればOKです。

≫【サルでもわかる】プロスペクト理論とは?具体例と図でわかりやすく超丁寧に解説

希少性で煽る

マーケティング界隈でしばしば併用されるのが、

  • 先着100名様限定です!
  • お申し込み期限は番組のあと30分間です!
  • 特別価格でのご奉仕は本日限りです!

といった希少性を使った煽りです。

今ここで買わなければ、あなたはチャンスを逃します。今買わなければ、あなたは惨めなを思いをし続けるんですよ?と脅しています。

こちらもプロスペクト理論の応用です。アコギなやり方ですが、効果はテキメンです。

2-7:【幸福な未来】買ったらどんなハッピーが待っているか?

そして顧客が商品を買ったら、どんなに素晴らしい未来が待っているかを示します。このストーリーのゴールです。

あくまで主人公は「顧客」であることを忘れてはいけません。幸福な未来の主語は「顧客」であり、その顧客にどんな変化が訪れるかを示します。

  • 「素晴らしい家ができる」ではなく、「家族が快適な空間で過ごす」
  • 「合格通知が来る」ではなく、「生徒が憧れのキャンパスライフを過ごす」

がゴールです。

与える変化は商品によって千差万別です。しかし型はあります。

マズローの欲求段階説は、人間の根源的な欲求を考えるフレームワークになります。より低い欲求が優先して現れ、達成されるほど高次の欲求を求めます。

まず優先されるべきは、低い階層にある欲求です。「身体的な痛みがなくなる」「お金が稼げる」は、訴求力の強い変化です。

ただし現代は、生きるのに切羽詰まる人は少なくなっています。より高い階層の欲求が求められるようになってきています。

「同じ趣味を持った友達ができる」といった、人間関係の変化を求める人も多いでしょう。これは所属と愛の欲求に響きます。

「かっこいい(かわいい)と言われる」「出世する」「他人が羨むキラキラした生活ができる」は、承認欲求を揺さぶる変化です。人間がどこまで追い求めてしまう欲求です。

「自己実現の欲求」がキーになる

5段階の欲求は、低い階層をクリアしなければ次の欲求が現れないわけではありません。濃淡があるだけで、常に全ての欲求を欲しています。

ビジネスが成熟するにつれ、低い欲求を満たす商品やサービスは満たされつつあります。しかし「自己実現の欲求」を満たすものは多くありません。

「自分らしく生きていく」「お金よりも好きな時間を大事にする」「潜在能力を発揮する」といった変化で満たされるのが、自己実現の欲求です。

自己実現の欲求には、次のような利己的な欲求は含まれません。

これらは「自己実現の欲求」ではない🙅‍♂️

  • 美味しいものを食べたい
  • たっぷり寝たい
  • いい女を手に入れたい
  • お金が欲しい
  • 出世したい

他の欲求と比べ、自己実現の欲求は高潔であり、またしばしば利他的です。自己実現を満たす商品は、機能や価格といった従来の評価基準だけではなく、信念意味を持っています。

ここで生きてくるのが、企業や商品の「理念」です(最初に用意した具材ですね)。

「理念」に沿った企業の行動の例

  • 地球環境を守るために、コストがかかる再生素材を使う
  • 違法労働の工場から作られる安い原材料は使わない
  • 商品が1つ売れたら、1本木を植える
  • 貧しいシングルマザーに働き口を作る

理念がある企業は、お金儲けでは説明できない行動を取ります。そしてその一本筋が通った行動に、顧客は共感を覚えます。

必ずしも環境保護に訴える必要はありません。あなたの理念がビジネス全体を通して具現化され、隅々まで行き渡っていることが大切です。

究極的に求めるべき顧客の変化は、「その商品を選ぶと、自分らしくなれる」です。ぜひここを目指しましょう。

≫_マズローの欲求段階説とは?例を交えて丁寧に説明

実践編3:ストーリーを強化するヒント

前章までで終わっても良いのですが、せっかくなので、さらにストーリーを強化するアイデアを紹介します。

あくまでアドバンスドな内容です。できれば意識してみてください。

3-1:1人の主役にフォーカスする

ストーリーの主人公は1人です。何人もいては困ります。そして主人公は顧客です。

ペンシルバニア大学マーケティング学部のデボラ・スモール教授らが行った、寄付に関する実験を紹介します。

被験者を2つのグループに分け、片方には寄付金が必要な「事実」を、もう片方には1人にフォーカスした「ストーリー」を伝えた。

グループA:事実

マラウィでは食糧不足で300万人以上の子供が影響を受けている。ザンビアでは降雨不足でトウモロコシの生産量が42%減っており、300万人以上が飢餓状態だ。アンゴラでは400万人(人口の1/3)が避難生活をしている。エチオピアでは1,100万人が食料援助を必要としている。

グループB:ストーリー

あなたの寄付は、アフリカのマリに住む7歳の少女「ロキア」に届けられる。ロキアの家族は貧しく、飢えの脅威にさらされ、餓死の恐れがある。あなたの寄付で、彼女の人生が開けます。あなたのような思いやりのある方の支援により、セーブザチルドレンはロキアの家族や地域の人々と力を合わせ、彼女に食事と教育、基本的な医療を提供します。

グループAの平均寄付額は1.14ドル。グループBは2倍以上の2.38ドルだった。

つまり不特定多数の顧客よりも、1人の典型的な顧客像にフォーカスしたストーリーは訴求力が強い、ということです。

ただ1人にフォーカスするストーリーは媒体が限られます。「専用に作った動画コンテンツ」や「インタビュー記事」「導入事例」などがこれに当たります。

創業者のエピソードも使えるかもしれません。本来、創業者は主役になってはいけません。しかし過去の創業者は、顧客と同じ悩みを持った弱い存在だったケースも多いでしょう。

過去の創業者を顧客に見立て、1人の主人公としてストーリーを作るのは大いにあり得る方法です。ただし創業時の苦労話は要りません。

創業者が顧客と同じ悩みを持っていたと伝えるだけで十分。悩みを克服するためにした苦労話ならOKです。顧客と同じ立場になっているので。

3-2:顧客が口コミしたくなるストーリー

ストーリーが最終的に引き出したいのは、顧客の口コミです。逆にあなたなら、どういうストーリーだったら友達や家族に積極的にしゃべりたいと思うでしょうか?

きっと次の要素が必要でしょう。

口コミしたくなるストーリーの必須ポイント

  1. 良い商品である
    :悪い商品を紹介したら、信頼に傷がつく
  2. パッと話せるくらいシンプル
    :複雑な話は、他人にしゃべって伝えられない
  3. 話すと欲求を満たせる
    :何のメリットもなければ、自ら進んで話さない

まず最低条件が、「①良い商品である」と「②パッと話せるくらいシンプル」です。この2つが満たされないと、口コミすらしてもらえません。

ただしこの2つだけだと、相手から「なんかオススメある?」と聞かれたら答えるだけ。積極的に「見て見て!俺こういうの持ってるんだよね!」とは話しかけはしません。

顧客が自ら進んで話すにはメリットが必要です。ここでまた5段階の欲求の登場です。どれかの欲求を満たせば、自発的な口コミを発生させられます。

安全の欲求を刺激するなら、「紹介したら3,000円貰える」「3人紹介したら入会金を全額お返しします」といった金銭的なメリットを提示するのが良いでしょう。

ケースとして多いのは、承認欲求を満たすメリット。

「高級腕時計」「ハイブランド」「オシャレな服」は、商品自体が承認欲求を満たすもの。何もしなくても紹介(自慢)するでしょう。

「レアキャラを当てた」「歩数計アプリの順位」「ソーシャルゲームの称号」「マイレージの最上級会員」も、承認されたくて言いふらします。

SNSでサッと投稿しやすいUIがあると良いですね。

しかしここでも強く意識したいのが、自己実現の欲求です。

「その商品を持っていることを他人に話すことが、自分らしさにつながる」というメリットです。

Appleユーザーは、自慢だけではなく、ライフスタイルとしてiPhoneやMacBookを使っています。彼らにとって、最新のMacBookを紹介するのは自己実現でもあるのです。

オンラインサロンのメンバーであることを、SNSのプロフィールに書いている人がいます。それが自己実現になっているからでしょう。資格の大原ならきっと書かないはずです。

3-3:メタファーを使った表現

ここまで来るとマニアックすぎるかもしれません。ただ意味はあるので紹介します。

メタファー(比喩)は、顧客が知らず知らずのうちに使う例え表現です。

人間が脳を意識的に使っているのは5%で、ほとんどの意思決定は95%の無意識が決定していると言われています。そしてこの無意識が、意図せずメタファーに現れます。

顧客の口から出たメタファーを拾い、そのメタファーに語り口調を合わせることで、95%の無意識に訴えるストーリーを作ることができます。エモいストーリーになるわけです。

「ザルトマン・メタファー表出法(ZMET法)」によれば、次の7大コアメタファーは、全メタファーの70%を占めているとのこと。

7大コアメタファー

  1. バランス(balance)
  2. 変化(transformation)
  3. 旅行(journey)
  4. 容器(container)
  5. つながり(connection)
  6. 手段・資源(resource)
  7. コントロール(control)

顧客があなたの商品や、あなたが属する業界に対してどんな印象を持っているか、インタビューをすると、メタファーがチラホラ出てきます。

例えば就活生は、「内定はゴール」とか「入社してからがスタート」のように、表現するかもしれません。これは旅行のメタファーと考えられます。

であれば、ストーリーの語り口調も旅になぞらえます。

「自己分析で人生のコンパスを作ろう」とか「内定への快速チケットを手に入れよう」といった表現が、就活生に刺さるでしょう。

深く触れると長くなるので、気になる人は↓の記事もチェックしてみてください。

≫ メタファーとは?深層心理から顧客を読み解く新しいマーケティングツール

クリエーターのストーリーテリング

今回の記事はビジネス色というか、マーケティング色が強かったと思います。クリエーターが、どのように作品にストーリーを吹き込むかについても触れておきましょう。

細かい話はそれぞれのジャンルにあると思います。ここではあくまで全ジャンルに共通する大枠の考え方を述べます(わたしはクリエーターではないので、あくまで参考レベルで!)。

「ストーリー=設定を凝る」ではない

ディズニーランドの設計はストーリー性に富んでいます。

ランド内にある「チャイナボイジャー」という中華料理のレストランを例にとってみましょう。

このレストランの設定は、「かつて海賊船で働いていた中国人コックの孫がレシピを受け継ぎ、古いボートハウスを修復して作った中華レストラン」です。

チャイナボイジャーのイメージ1チャイナボイジャーのイメージ(tokyodisneyresort.jpより引用)

この設定があらゆるディテールに組み込まれています。

まず店名。英語表記にすると”China Voyager”です。”Voyage”は「航海」という意味なので、「中国の航海者」という意味になります。設定が反映されています。

内装には難破船の廃材が使用されています。コテコテの中国ではなく、西洋の船がモチーフになっているようで、西洋人の下で働いていた中国人という設定が垣間見えます。

大変凝った作りで、このレストランは一見するとストーリーがあるように見えるかもしれません。

しかし目ざとい商売人が全く同じレストランを開いても、それほど人気は出ないと思います。物珍しさで来る人はいるかもしれませんが、リピートには至らないでしょう。

なぜなら、チャイナボイジャーの設定や作り込みの魅力は、このレストラン単体で完結しているわけではないからです。

ここまで作り込むとは!さすが我らがディズニーランド!最高!

っと感じるのは、ランド全体が「来場者を夢の世界に連れて行って楽しませる」という理念の下に、徹底的に作り込まれているからに他なりません。

別の企業が同じレストランを開いたところで、「ふーん、ずいぶん凝ったの作ったんだねぇ。で、何でこんなの作ったん?」としか思われません。

ストーリーを付加するために「作品に凝った設定を付ければ良い」と考えるは間違い。物珍しいだけで終わるか、その先の共感や感動まで得られるかは、理念が決め手になります。

作品に「理念」を宿しているか?

1番重要なのは技術ではありません。技術はあくまで、作品の表現力を豊かにするもの。ただの手段です。大事ですが、本質ではないことを理解しましょう。

大事なのはやはり「理念」です。「信念」「哲学」「譲れないこだわり」「メッセージ」などと置き換えても良いかもしれません。

作品を手に取った人にどう感じて欲しいのか。これを作品に込めます。作品を作ってから後付けするのではなく、作品を作る前にまず理念があります。逆はあり得ません。

絵が上手くても、理念がなければただのイラストレーター。クリエーターではありません。逆にヘタクソでも、理念がこもっているなら立派なクリエーターです。

ピカソが描いた「ゲルニカ」には数百億円の価値があります。

しかし美大生が模写した「ゲルニカ」には、画材代と時給以上の価値はありません。理由はもちろん、模写に理念が宿るはずがないからです。

ピカソ ゲルニカピカソ作『ゲルニカ』

ちなみにゲルニカはスペインの地名。同地で起きた内戦による被災者の恐怖や苦しみを描いています。

ピカソ自身もスペイン人。戦争反対のメッセージが込められているのは言うまでもありません。

統一的な理念

作品ごとに理念がある場合もあるでしょうが、1人のクリエーターで統一した理念がある方が魅力的です。

例えばバンクシー作品は、共通して現代社会へのアンチテーゼが見えます。

バンクシーは正体不明のグラフィックアーティスト。名前も年齢も不明。大企業やアーティストからの仕事の依頼を次々に断っています。

素性を明かせば強いアンチメッセージはしづらくなりますし、お金をもらってしまうとメッセージの純度が下がってしまいます。

この筋の通し方の異常っぷりが、バンクシーの強力なストーリーになっています。

そんなバンクシーのストーリーをさらに際立たせているのが「裁断事件」です。

2018年10月5日、バンクシー作の「風船と少女」がオークションにかけられることになりました。出品者がバンクシー自身から購入したものでした。

しかし約1億5500万円で落札された瞬間にシュレッターが作動し、絵の下半分が裁断されてしまいます。これはバンクシーが転売に備えて事前に仕込んでいた仕掛けでした。

落札の瞬間、シュレッダーで裁断されるバンクシーの作品裁断される瞬間をバンクシー自身が撮影したと思われる(Instragram/banksyより引用)

作品がお金儲けに使われ、メッセージ性が弱まるのを嫌ったのかもしれません。または成金の承認欲求を満たすために消費されるアート産業に、嫌悪感を抱いていたのかもしれません。

いずれにしてもこの事件で、バンクシーのストーリーはさらに強固なものとなりました。

ちなみに本筋からはズレますが、この話には続きがあります。

オークションで作品を競り落とした人は、裁断されたことを喜んだそうです。歴史的な事件の当事者になったことで、同作品の価値が上がったと感じたからです。

3年後に再度オークションにかけられた同作品は、約28億8千万円で落札されました。バンクシーの反抗精神がアート産業を喜ばす結果になってしまったのは、何とも皮肉な話です。

もしバンクシーが、ある作品では社会への強烈なアンチテーゼを謳って、他の作品では商業的に受けそうなポップな作品を販売していたら、あなたはどう感じるでしょうか?

もはやバンクシーの反骨精神はオーセンティシティ(本物)ではなくなった、と熱心なファンほど落胆するでしょう。

個々の作品には異なるメッセージを込めていたとしても、全作品を共通する理念のもとで作り上げるべきです。それが一本筋の通った、本物のクリエーターの仕事です。

どうやって作品に理念を宿すか?

肝心なのはどうやって理念を作品に投影するかですが、ここは流石に各々の領域。わたしが軽々と口にできることではありません(笑)。

全てに共通するのは、比喩表現であること。理念をストレートな言葉ではなく、色や形や素材で例えます。意味を借用できる古典から引用しても良いでしょう。

ウィットに富んだ比喩をどれだけディテールまで盛り込めるかが、鍵になるのではないでしょうか。なかなか真似できませんが、バンクシーは作品外の演出まで理念を盛り込んでいます。

クリエーターが比喩表現を学ぶなら、現代アートを参考にするのが良いと思います。現代アートは何でもありの総合格闘技。ヒントをもらえるはずです。

「顧客」「課題」「価値」を意識しているか?

作品を趣味で作る分には自由ですが、人様に買ってもらうなら相手に合わせなければいけません。「お客さんが勝手に考えればいい」と思った人は、残念ながら売れないでしょう。

まず誰が買うのかと、誰が使うのかを考えなければなりません。

本人が使うなら手頃なものが良いかもしれませんが、贈り物なら高級感が必要です。安すぎればかえって選択肢から外れるでしょう。

どんな場所で使うのかも重要ですね。

リビングに飾るなら、そこそこ大きい方が良いかもしれません。玄関に飾るなら大きすぎると困ります。

壁際に置くなら正面からの見栄えが大事ですが、机の真ん中に置くなら四方からの見栄えが気になります。

またお客さんがどんな気分になりたくて作品を買うのかも重要です。

リラックスしたいのか、優雅な気分になりたいのか、あるいは来客に見せびらかしたいのか。それによって作風はガラリと変わるでしょう。

利用シーンを具体的に特定し、そのシーン目掛けて徹底的に気の利いた作品にする。これが他ではなく、あなたの作品を選んでもらうために必要な考え方です。

ただどんなシーンでも、やっぱり見た目が良い作品は共通して好まれます。カッコイイ、カワイイ、キレイなど方向性は様々ですが、見栄えを良くする技術はやっぱり大事です。

関連書籍

ストーリー作りは、ビジネスの根幹から考える必要があります。ストーリーテリングは、とても抽象的で、とても難しい技術なのです。

小手先のテクニック本ではダメ。骨太な本がいいですね。使えそうな本を2冊紹介します。

1冊目はマーケティング界隈では超大物のコトラー教授の『マーケティング3.0』です。


理念を軸にしたビジネスで、ブランドを価値を高める方法が懇切丁寧に解説されています。この記事でいうところの、具材を集める部分ですね。

要約記事もあるので、こちら↓もどうぞ。

≫【マネできない差別化】コトラーのマーケティング3.0を超丁寧に解説【理念を売れ】

もう一冊は『ストーリーブランド戦略』です。ストーリー関連の本の中では、非常にわかりやすくまとまっています。専門用語も少なく、易しい文章です。


本記事のストーリーをつなげる部分は、本書を大いに参考にさせていただきました。あまり知られていない良書です。

社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない

あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。

それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。

しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!

外せない❶ Kindle Unlimited

Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。

新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。

Kindle Unlimited 公式サイト

≫ ラインナップをチェックする

外せない❷ Audible

こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。

Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。

冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。

Audible 公式サイト

ラインナップをチェックする

ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。

どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。

そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。

ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!

とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!

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