心理学・行動経済学

マズローの欲求段階説とは?例を交えて丁寧に説明します|仕事に役立つ心理学

SNSの登場で一躍知られるようになった「承認欲求」。なぜ今の時代に承認欲求が求められるようになったのでしょうか?

その答えは「マズローの5段階の欲求ピラミッド」にあります。もし第2次世界大戦時にSNSがあっても流行らなかったと断言できます。

ビジネスはお客さんの欲求を満たして対価を得る活動です。マズローの5段階の欲求ピラミッドをフレームワークとして使えば、事業のアイデア出しやマーケティングですごくいい切り口になります。

この記事では次のことがわかります。

  • マズローの5段階の欲求ピラミッドとは何か?
  • 実はもう一つあった6段階目の欲求とは?
  • 欲求をビジネスに活かす方法

もはや一般教養レベルに有名で、引き出しとして持っておきたい知識です。この記事を読むだけでポイントは全て押さえられます。

マズローの欲求段階説とは?

マズローの欲求段階説(maslow’s hierarchy of needs)とは…

人間の欲求を5つに階層化したモデルのことです。

低い欲求ほど優先的に満たそうします。

欲求段階説を提唱したアブラハム・マズローは、後年になって6段階目を追加したので、最終的には「6つの階層」となっています。

6つの階層とは次の通りです。

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 所属と愛の欲求
  4. 承認の欲求
  5. 自己実現の欲求
  6. (超越的な)自己実現の欲求

そして、マズローの欲求段階説には次の特徴があります。

マズローの欲求段階説の特徴

  • 低い欲求ほど緊急性が高く、低い欲求から満たそうとする
  • 低い欲求がある程度満たされると、次の欲求が発現する
  • 低い欲求ほど動物的本能から制御しづらく、高い欲求ほど理性で抑えることができる
  • 高い欲求を満たすほど幸福度が増す
 

マズローの欲求段階説における各欲求の詳細

それでは、それぞれの欲求の段階の特徴を見ていきましょう。

1.生理的欲求

「生理的欲求」とは…生命維持に関する欲求で、最も根源となる欲求です。

満たされないと生命に危険が及ぶので、いの一番に満たさなければならない欲求です。人間だけでなく動物にも当てはまります。

  • 食欲
  • 睡眠欲
  • 性欲

といった、生物が本能的に持っている欲求がこれに当たります。

生理的欲求が満たされていない人

  • ホームレス
  • 病を抱えた人
  • DVを受けている人

2.安全の欲求

飢えなどの生理的欲求がある程度満たされれば、次は「2.安全の欲求」を求めるようになります。

「安全の欲求」とは…今にも生命の危機が迫って危ないとまでは言いませんが、それが起こる可能性を回避したいという欲求です。

次のようなことを求める欲求です。

  • 身の安全
  • 身分の安定
  • 法や秩序
  • 誰かに保護されていたい気持ち

「2.安全の欲求」は、「1.生理的欲求」と同じくらい強い欲求と言われています。

安全の欲求が満たされていない人

  • 無職になった人
  • 治安の悪い土地に住んでいる人
  • ネグレクトされた子供

3.所属と愛の欲求

目に見えた危機や身の安全が満たされると、今度は「3.所属と愛の欲求」を求めるようになります。 

「所属と愛の欲求」とは…人との繋がりを求める欲求です。

次のようなことを求める欲求です。

  • 孤独を避けたい
  • 誰かと密な関係になりたい
  • 共同体の一員になりたい

遠い昔の人類は、生存確率をあげるために集落を作り、共同生活をするようになりました。そうしなければ、病気になったり、年老いたらすぐに食べ物に困って死んでしまいます。

「孤立=死に結びつく」という感情が、現在人のDNAにも残っているのでしょう。だから、誰かと行動を共にしたいと考えるわけですね。

所属と愛の欲求が満たされていない人

  • パートナーがいない人
  • 転勤したばかりで周りに知り合いがいない人
  • 愛情を受けずに育った子供
 

4.承認の欲求

危険や不安なことは少なく、親しい人も近くにいる。そんな日本で1番多くの人が当てはまる層が求めている欲求が「4.承認欲求」です。

承認欲求には、次の2タイプがあります。

①自尊心への欲求

  • 強さ
  • 達成
  • 独立
  • 自由

など、自己をより優れた存在と認めたいという欲求

②他者からの評価に対する欲求

  • 評判
  • 名誉
  • 栄達
  • 優越

など、他者ありきで自分の評価を高めたいという欲求

後者の「②他者からの評価に対する欲求」を満たすために使われるのがSNSですね。

今の時代にSNSが流行した理由がわかります。

もし戦時中で明日の命も危ぶまれるような状況、つまり「2.安全の欲求」が満たされていない状況では、「いいね!」が欲しいなんて誰も思いません。

この「4.承認欲求」が満たされると、「自分は世の中で役に立つ存在」だという感情が湧いてきます。逆に満たされないと、焦燥感や劣等感、無力感が現れます。

承認欲求が満たされていない人

  • 他人に認められたいと考える人
  • 人より優位に立ちたいと考える人
  • つまり、多くの現代人が当てはまる
 

5.自己実現の欲求

承認欲求すらも満たされた人が求めるようになるのが、この「5.自己実現の欲求」です。

「自己実現の欲求」とは…人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなりうる全てのものになり切りたいと思う欲求です。言い換えると、より自分らしさや、自分のやりたいことを追求したいと考える欲求です。

例えば出世を目指してバリバリ頑張っている人は、一見すると「自己実現の欲求」を達成しているように見えますが、そうではありません。

出世とは、他人と比較して優位に立ちたい「承認欲求」を満たすものです。仕事によって得られるお金や地位ではなく、「仕事によって実現すること」そのものに価値を見出せなければ、「自己実現の欲求」を達成したとは言えません

いくら他人にちやほやされても、いくら出世をしても、自分らしさを追求しないで生きていればどこかで不満が生じます。自分を騙して生きていると、どこかで歪みが出てしまうのです。

マズローによれば、自己実現を達成している人は、大人の人口の1%もいないとされています。

自己実現の欲求が満たされていない人

  • 世の中の99%超の人

6.(超越的な)自己実現の欲求

第6の欲求は、「5.自己実現の欲求」の進化版とういう位置付けです。

マズローは、「至高体験」を経た者だけが、この第6の欲求のステージに辿り着けると述べています。「至高体験」とは、人が熱中して時間も忘れて没頭する「フロー体験」を指しています。

自分が心から理想と思えるビジョンがあって、そこに全身全霊で臨んでいる人だけが、「6.(超越的な)自己実現の欲求」に達することができます。ほとんどの人は、ここまでたどり着けません。

欲求の満足度と健康は関係している

前の章で各段階の欲求の中身を紹介しました。

欲求は満たされれば満たされるほど健康になります。逆に、満たされなければ病気になります。

よくよく考えてみれば当たり前のことですよね。

  • 明日の命もしれないような環境の人の精神状態が健康なわけがない
  • 飢餓で飲まず食わずの人は、すぐに深刻な病に冒される
  • 親しい人が周りにいなくて孤立した人は鬱になりやすい

欲求が満たされていないと感じる人は、まずその不健康な状態を脱するために、その欲求を満たそうと行動します。

マズローの欲求段階説への誤解を解く

世間一般で認識されているマズローの欲求段階説には、ある誤解があります。

それは「下位の欲求が満たされないと、上位の欲求には進まない」という誤解です。

確かに下の欲求を優先的に満たそうしますが、下位の欲求を100%満たされなければ次に進まない訳ではありません。下位の欲求が「ある程度」満たされれば、上位の欲求が現れるようになります。

マズローによれば、一般的な人の各欲求への満足度は、次のようになっています。

つまり普通の人でも、多少は「1.生理的欲求」や「2.安全の欲求」に満たされていないところがあります。

逆に10%程度は本当に自分がやりたいことに熱中して、「5.自己実現の欲求」を達成しています。

また、人によっては、欲求階層と順番が異なる行動をとることもあります。家族を顧みずに出世に邁進する人は、「3.所属と愛の欲求」よりも「4.承認の欲求」を優先している傾向があるのかも。

「凡人」と「抜きん出る人」の境目

マズローの欲求段階説から、その分野で「そこそこの成績で終わる人」と「目覚ましい成果をあげる人」の境目を知ることができます。

マズローは、この5段階の欲求が発生する動機を次のように2つに分けています。

  • 欠乏動機
  • 成長動機

この2つ動機が凡人と成功者の境目になります。

欠乏動機

欠乏動機に属する欲求

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 所属と愛の欲求
  4. 承認の欲求
  5. 自己実現の欲求

欠乏動機とは、低位の4つの欲求は満たされないと病気になるので、その欠乏を埋めなければならないという動機です。

いずれの欲求も、環境や他人といった自分以外の要因で満たされることになるので、環境依存的と言えます。

成長動機

成長動機に属する欲求

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 所属と愛の欲求
  4. 承認の欲求
  5. 自己実現の欲求

欠乏動機が満たされれば、その先に待っているのは、「自分をさらに理想の自分に近づけたい」という成長の動機です。そこに他人は関係ありません。

成長動機は、満たされても尽きることがない動機です。「理想の自分を目指す」という自分自身との終わりのない旅になります。


  • 「誰かに認められたい」と思う欠乏動機までの人
  • 「終わりのない理想を目指す」成長動機の人

両者では、どうしたって差が出るでしょう。名声やお金のために働く人は、決してその分野に夢中になっている人には勝てません。

日本人初のプロゲーマーであり、「世界でもっとも長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスに登録された梅原大吾さんは、著書「勝ち続ける意志力」のなかでこうを述べています。

10の強さを手にできる、明るく平坦な道か。
11、12、13の強さを手にできるかもしれない、暗くて険しい道か。
人によって考えは違うと思うが、僕は迷わず後者を選択する。

(中略)
それなりに勝てればいい人間は10の強さを手に入れるだけで満足だろう。

(中略)
しかし、僕にとって格闘ゲームは特別なのである。ゲームは何よりも大事なので、勝負でももちろんそうだが、ゲームに対する取り組みにおいてだって誰にも負けたくない。

梅原大吾「勝ち続ける意志力」より

僕にとっては世界大会の勝利より、日々の努力の中で出会えた大きめの発見(自身にとっての成長)の方がはるかに嬉しい。

梅原大吾「勝ち続ける意志力」より

梅原さんは、他人に勝って満たされる「承認欲求」ではなく、自分自身の成長によってしか満たされない「自己実現の欲求」を重視していますね。

そんな梅原さんだからこそ、輝かしい実績を残すことができたのでしょう。

マズローの欲求段階説をビジネスで活かす方法

マーケティングや事業アイデアという目線で、「マズローの欲求段階説」を使うコツをご紹介します。

ビジネスで活かす場合は、1~4番目の欲求を使っていくのが効果的です。なぜなら、世の中のほとんどの人は5番目までたどり着かないからです。

自己啓発として「マズローの欲求段階説」を活用する場合は、5番目の「自己実現の欲求」を目指すべきですが、その話はまたの機会に。

「1.生理的欲求」と「2.安全の欲求」が満たされていないところを狙う

低い段階の欲求ほど緊急性が高く優先されるため、まずはその業界で痛みや不安を抱えている人がいないか探りましょう。

日本では明日をも知れぬような危機的状況に陥っている人はほとんどいませんが、マズローによれば100%は満たされてはいないので、狙いどころはあります。

例えば次ようなイメージです。

「1.生理的欲求」の狙い方の例

睡眠不足に悩んでいる人

  • 寝具
  • 睡眠サポートアプリ

慢性的な症状で苦しんでいる人

  • 同じ症状で悩んでいる人をつなぐコミュニティ
  • 専門家への相談サービス

「2.安全の欲求」の狙い方の例

将来に金銭的な不安がある人

  • 資産運用
  • 安価なシェアリングサービス
  • 住居コストが安い地方移住
  • キャリアアップ教材(プログラミングスクールなど)

災害への備え

  • 転倒防止の突っ張り棒
  • 手巻き充電器
  • 賞味期限が長い食品

突発的な事故への補償

  • 損害保険
 

痛みや不安が無い業界は「3.所属と愛の欲求」と「4.承認欲求」を探る

日本に住んでいる人の大半は豊かな暮らしをしているので、「1.生理的欲求」や「2.安全の欲求」には不満がない人の方が多いでしょう。

そういう業界は、ゲーム性やソーシャル性を使って、「3.所属と愛の欲求」や「4.承認欲求」を刺激する方法を探りましょう。

例えば次ようなイメージです。

「3.所属と愛の欲求」の狙い方の例

誰かとつながりたい

  • 趣味や活動のマッチングサービス

どこかに所属したい

  • オンラインサロンなどのコミュニティ

「4.承認欲求」の狙い方の例

他人に評価されたい

  • SNSのフォロー機能
  • Yahoo!知恵袋のカテゴリマスターやベストアンサー

他人より勝りたい

  • ユーザー同士に競わせてランキングをつける

希少なステータスが欲しい

  • 航空会社のマイレージサービス

不安を煽って「2.安全の欲求」を呼び起こす

繰り返しになりますが、平和に暮らしていても100%「安全の欲求」が満たされているとは限りません。「2.安全の欲求」が満たされていないことに、本人が気づいていないことが往々にしてあります。

  • 実は、あなたの状況は既にやばいかも…。
  • 今は大丈夫でも、今から手を打たないと3年後は…。

と、不安を煽ってみましょう。

「2.安全の欲求」は、「1.生理的欲求」と同じくらい強力な欲求なので、不安に気づけばそれを解消したいと強く感じるようになります。

例えば次ようなイメージです。

不安を煽って「2.安全の欲求」を呼び起こす例

 

あなたと同じ年収の人の79%は結婚できません

  • 転職サイト
  • スキルアップ教材

あなたの血圧だと、3年以内に脳梗塞が発症するリスクが37%あります

  • 血圧を下げる健康食品
  • 栄養士が食事をサポートするサービス

※数字はデタラメです。あくまで例文です。

不安を煽るときのポイント

不安を煽るときに一つ注意点があります。それは、「遠い将来の不安を話題にしない」ことです。現在か、なるべく近い将来の不安を煽るようにしましょう。

人間には現状維持バイアスがあり、先のことになればなるほど重要性を感じなくなります。今この瞬間の方が圧倒的に関心が強いのです。

生命保険や投資信託などの数十年スパンで考える商材は、将来の不足ではなく「今の時点でこのくらい資産が足りません」という言い回しの方が効果を期待できます。

≫ 現状維持バイアスの詳細を知りたい人はこちらもどうぞ

まとめ

今回は心理学より「マズローの欲求段階説」をご紹介しました。非常に有名でいろんな場面で引用されているので、教養としても押さえておきましょう!

次の通りまとめます。

マズローの欲求段階説とは…

  • 人間の欲求を5つに階層化したモデルのこと後年になって6階層になった
  • 低い階層の欲求がより緊急性が高く優先される
  • 下の階層の欲求がある程度満たされると、次の欲求が発現する

6段階の欲求とは…

  1. 生理的欲求 … 食欲などの生命維持に関する欲求
  2. 安全の欲求 … 身の安全や身分の安定への欲求
  3. 所属と愛の欲求 … 他人とのつながりを求める欲求
  4. 承認の欲求 … 自尊心や他人からの評価を求める欲求
  5. 自己実現の欲求 … 自分らしさや、自分のやりたいことを追求したいと考える欲求
  6. 超越的な自己実現の欲求 … 自己実現の欲求にフロー体験が伴っている状態

欲求をビジネスに活かすコツ

  • まずは「1.生理的欲求」と「2.安全の欲求」が満たされていない隙間を狙う
  • 痛みや不安がない業界は「3.所属と愛の欲求」と「4.承認欲求」を狙う
  • 顧客が気が付いていない「2.安全の欲求」を不安を煽って呼び起こす

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