SNSの登場で一躍知られるようになった「承認欲求」。なぜ今の時代に承認欲求が求められるようになったのでしょうか?
その答えは「マズローの5段階の欲求ピラミッド」にあります。もし第2次世界大戦時の日本にSNSがあっても流行らなかったと断言できます。
ビジネスはお客さんの「欲求」を満たして対価を得る活動です。
マズローの5段階の欲求ピラミッドをフレームワークとして使えば、事業のアイデア出しやマーケティングですごくいい切り口になります。
この記事でわかること
- マズローの5段階の欲求ピラミッドとは何か?
- 実はもう一つあった6段階目の欲求とは?
- 欲求をビジネスに活かす方法
もはや一般教養レベルに有名で、引き出しとして持っておきたい知識。
この記事を読むだけでポイントは全て押さえられます。是非ご一読を。
マズローの欲求段階説とは?
マズローの欲求段階説(maslow’s hierarchy of needs)とは…
人間の欲求を5つに階層化したモデルのことです。
低い欲求ほど優先的に満たそうします。
欲求段階説を提唱したアブラハム・マズローは、後年になって6段階目を追加したので、最終的には「6つの階層」となっています。
- 生理的欲求
:食欲などの生命維持に関する欲求 - 安全の欲求
:身の安全や身分の安定への欲求 - 所属と愛の欲求
:他人とのつながりを求める欲求 - 承認の欲求
:自尊心や他人からの評価を求める欲求 - 自己実現の欲求
:自分らしさや、自分のやりたいことを追求したいと考える欲求 - 超越的な自己実現の欲求
:自己実現の欲求にフロー体験が伴っている状態
マズローの欲求段階説の特徴
そして、マズローの欲求段階説には次の特徴があります。
マズローの欲求段階説の特徴
- 低い欲求ほど緊急性が高く、低い欲求から満たそうとする
- 低い欲求がある程度満たされると、次の欲求が発現する
- 低い欲求ほど動物的本能から制御しづらく、高い欲求ほど理性で抑えることができる
- 高い欲求を満たすほど幸福度が増す
現代の先進国においては、低い欲求は概ね満たされています。人々の関心は、より高い欲求へとシフトしています。
知っておきたい注意点
世界的にも有名なマズローの欲求段階説ですが、非科学的であるという非難もあります。
一般的に心理学は、実験を通して統計的に認められた結果を正とします。しかしマズローの説は一定の調査は経ているものの、科学的なプロセスを踏んでいるかというと疑問が残ります。
マズローという高名な学者の意見であり、また直感的にも「なるほど!」と感じ入る内容から、広く引用されています。この点は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
マズローの欲求段階説における各欲求の詳細
それでは、それぞれの欲求の段階の特徴を見ていきましょう。大筋の考え方として、命に関わる欲求が優先されます。
1.生理的欲求
「生理的欲求」とは、生命維持に関する欲求で、最も根源となる欲求です。
満たされないと生命に危険が及ぶので、いの一番に満たさなければならない欲求です。人間だけでなく動物にも当てはまります。
- 食欲
- 睡眠欲
- 性欲
といった、生物が本能的に持っている欲求がこれに当たります。
生理的欲求が満たされていない人
- ホームレス
- 病を抱えた人
- DVを受けている人
2.安全の欲求
「安全の欲求」とは、今にも生命の危機が迫って危ないとまでは言いませんが、それが起こる可能性を回避したいという欲求です。
次のようなことを求める欲求です。
- 身の安全
- 身分の安定
- 法や秩序
- 誰かに保護されていたい気持ち
飢えなどの「1.生理的欲求」がある程度満たされれば、次は「2.安全の欲求」を求めるようになります。「安全の欲求」が満たされていないということは、緊急度は下がっていても命の危険を感じる状態です。
そのため「1.生理的欲求」と同じくらい強い欲求と言われています。
安全の欲求が満たされていない人
- 極端に収入が低い(または無い)人
- 治安の悪い土地に住んでいる人
- ネグレクトされた子供
3.所属と愛の欲求
「所属と愛の欲求」とは、人との繋がりを求める欲求です。
次のようなことを求める欲求です。
- 孤独を避けたい
- 誰かと密な関係になりたい
- 共同体の一員になりたい
目に見えた危機や身の安全が満たされると、今度は「3.所属と愛の欲求」を求めるようになります。「所属と愛の欲求」も、本質的には命を守るための欲求です。
遠い昔の人類は、生存確率をあげるために集落を作り、共同生活をしていました。そうしなければ、病気になったり、年老いたらすぐに食べ物に困って死んでしまいます。
「孤立=死に結びつく」という感情が、現在人のDNAにも残っているのでしょう。だから1人で難なく生きていける現代でも、人は誰かと行動を共にしたいと考えてしまうわけです。
所属と愛の欲求が満たされていない人
- パートナーがいない人
- 転勤したばかりで周りに知り合いがいない人
- 愛情を受けずに育った子供
4.承認の欲求
「承認の欲求」には、次の2タイプがあります。
①自尊心への欲求
- 強さ
- 達成
- 独立
- 自由
など、自己をより優れた存在と認めたいという欲求
②他者からの評価に対する欲求
- 評判
- 名誉
- 栄達
- 優越
など、他者ありきで自分の評価を高めたいという欲求
危険や不安なことは少なく、親しい人も近くにいる。そんな日本で1番多くの人が当てはまる層が求めている欲求が「承認の欲求」です。
承認欲求も、距離はありますが命を守るための欲求と考えられます。改めて、太古の昔に集団で生きていた人類を想像してみましょう。
自尊心を生む「強さ」や「達成」は、集団の生存率を上げる行為です。狩りや果物探しが上手になれば、それだけ良い食事にありつけます。集団が離散して、少数の家族だけで生きていく場合の保険にもなります。
転じて、「自分は他の奴より強いぞ」とアピールすることで、集団内での発言権を強くすることもできます。加えて異性からモテるようになり、子孫を残せる可能性が上がります。
承認欲求とSNS
後者の「②他者からの評価に対する欲求」を満たすために使われるのがSNSですね。
今の時代にSNSが流行した理由がわかります。
もし戦時中で明日の命も危ぶまれるような状況、つまり「2.安全の欲求」が満たされていない状況では、「いいね!」が欲しいなんて誰も思いません。
この「4.承認欲求」が満たされると、「自分は世の中で役に立つ存在だ」という感情が湧いてきます。逆に満たされないと、焦燥感や劣等感、無力感が現れます。
承認の欲求が満たされていない人
- 他人に認められたいと考える人
- 人より優位に立ちたいと考える人
*つまり、多くの現代人が当てはまる
5.自己実現の欲求
「自己実現の欲求」とは、人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなりうる全てのものになり切りたいと思う欲求です。
ちょっと分かりづらいですね。言い換えると、より自分らしさや、自分のやりたいことを追求したいと考える欲求です。
例えば、出世を目指してバリバリ頑張っている人は、一見すると「自己実現の欲求」を達成しているように見えます。ですが、必ずしもそうではありません。
出世とは、他人と比較して優位に立ちたい「承認欲求」を満たすものです。
仕事によって得られるお金や地位ではなく、「仕事によって実現すること」そのものに価値を見出せなければ、「自己実現の欲求」を達成したとは言えません。
いくらチヤホヤされても、出世をしても、自分らしさを追求しないで生きていればどこかで不満が生じます。自分を騙して生きていると、どこかで歪みが出てしまうもの。
承認欲求すらも満たされた人が求めるようになるのが、「自己実現の欲求」です。ここでようやく、命を守るための欲求から解き放たれます。
自己実現を達成している人は、大人の人口の「1%」もいないとされています。
自己実現の欲求が満たされていない人
- 世の中の99%超の人
6.(超越的な)自己実現の欲求
第6の欲求は、「5.自己実現の欲求」の進化版とういう位置付けです。
マズローは、「至高体験」を経た者だけが、この第6の欲求のステージに辿り着けると述べています。「至高体験」とは、熱中して時間も忘れて没頭する「フロー体験」のこと。
自分が心から理想と思えるビジョンがあって、そこに全身全霊で臨んでいる人だけが、「6.(超越的な)自己実現の欲求」に達することができます。
ほとんどの人は、ここまでたどり着けません。
欲求の満足度と健康は関係している
前の章で各段階の欲求の中身を紹介しました。
欲求は満たされれば満たされるほど「健康」になります。逆に、満たされなければ「病気」になります。
よくよく考えてみれば当たり前のことですよね。
- 明日の命もしれないような環境の人の精神状態が健康なわけがない
- 飢餓で飲まず食わずの人は、すぐに深刻な病に冒される
- 親しい人が周りにいなくて孤立した人は鬱になりやすい
欲求が満たされていないと感じる人は、まずその不健康な状態を脱するために、その欲求を満たそうと行動します。
そうして、そのステージの欲求がある程度満たされたら、次のステージの欲求を目指すようになります。
マズローの欲求段階説への誤解を解く
世間一般で認識されている「マズローの欲求段階説」には、「下位の欲求が満たされないと、上位の欲求には進まない」という誤解があります。
確かに下位の欲求を優先的に満たそうしますが、下位の欲求を100%満たされなければ次に進まない訳ではありません。下位の欲求が「ある程度」満たされれば、上位の欲求が現れます。
マズローによれば、一般的な人の「各欲求への満足度」は次のようになっています。
つまり普通の人でも、多少は「1.生理的欲求」や「2.安全の欲求」に満たされていないところがあります。
逆に10%程度は本当に自分がやりたいことに熱中して、ちょびっとだけ「5.自己実現の欲求」を達成しています。
また人によっては、欲求階層と順番が異なる行動をとることもあります。家族を顧みずに出世に邁進する人は、「3.所属と愛の欲求」よりも「4.承認の欲求」を優先している傾向があるのかも。
「凡人」と「抜きん出る人」の境目
マズローの欲求段階説から、その分野で「そこそこの成績で終わる人」と「目覚ましい成果をあげる人」の境目を知ることができます。
マズローは、この5段階の欲求が発生する動機を次のように2つに分けています。
- 欠乏動機
- 成長動機
この2つ動機の境目が、「凡人と成功者の境目」になります。
欠乏動機
欠乏動機とは、低位の4つの欲求のこと。満たされないと病気になるので、その欠乏を埋めなければならないという動機です。
本記事では「命を守るための欲求」と表現してきました。
欠乏動機に属する欲求
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 所属と愛の欲求
- 承認の欲求
自己実現の欲求
いずれの欲求も「環境依存的」です。周りの環境や他人といった、自分以外の要因で満たされます。
「友達が多い」「他人よりお金持ち」「他人から見てカッコいい(カワイイ)」など。他人と比べたり、他人から見た自分の評判だったり、主語が「自分以外」になる欲求ですね。
成長動機
欠乏動機が満たされれば、その先に待っているのは、「自分をさらに理想とする姿に近づけたい」という成長の動機です。そこに他人は関係ありません。
成長動機に属する欲求
生理的欲求安全の欲求所属と愛の欲求承認の欲求- 自己実現の欲求
成長動機は、満たされても尽きることがない動機です。「理想の自分を目指す」という自分自身との終わりのない旅になります。
本章をサッとまとめましょう。
- 「誰かに認められたい」と思う欠乏動機までの人
- 「終わりのない理想を目指す」成長動機の人
両者では、どうしたって差が出るでしょう。名声やお金のために働く人は、決してその分野に夢中になっている人には勝てません。
日本人初のプロゲーマーであり、「世界でもっとも長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスに登録された梅原大吾さんは、著書『勝ち続ける意志力』でこうを述べています。
10の強さを手にできる、明るく平坦な道か。
11、12、13の強さを手にできるかもしれない、暗くて険しい道か。
人によって考えは違うと思うが、僕は迷わず後者を選択する。(中略)
それなりに勝てればいい人間は10の強さを手に入れるだけで満足だろう。(中略)
しかし、僕にとって格闘ゲームは特別なのである。ゲームは何よりも大事なので、勝負でももちろんそうだが、ゲームに対する取り組みにおいてだって誰にも負けたくない。梅原大吾「勝ち続ける意志力」より
僕にとっては世界大会の勝利より、日々の努力の中で出会えた大きめの発見(自身にとっての成長)の方がはるかに嬉しい。
梅原大吾「勝ち続ける意志力」より
梅原さんは、他人に勝って満たされる「承認欲求」ではなく、自分自身の成長によってしか満たされない「自己実現の欲求」を重視していますね。
そんな梅原さんだからこそ、輝かしい実績を残すことができたのでしょう。
欲求の違いでマーケットを分類せよ
マズローの5つの欲求は、市場内の競合を分類するフレームワークとして使えます。
同じ形をしている製品でも、満たす欲求が変われば、顧客層も変わります。顧客層が変われば、市場は別物とカウントになるので、一見同じジャンルの製品でも競合しません。
逆に形は全く違くても、同じ欲求を満たす製品は、同じ本質を持っていると考えられます。同じ顧客層がターゲットになるので、全く異なるジャンルの製品でも競合します。
具体例①:自動車業界を分類
自動車にはさまざまなランクがあり、それぞれが満たしている欲求は異なります。
種別 | 本質的価値 | 満たす欲求 |
軽自動車、軽トラック | 生活に必要、または仕事をする上で必要 | 安全の欲求 |
ファミリーカー、ミニバン | 家族や仲間と楽しい時間を過ごす | 所属と愛の欲求 |
高級車 | ステータスを誇示する | 承認欲求 |
ライフスタイル車(フェラーリ、キャンピングカーなど) | 自分らしいライフスタイル実現する | 自己実現の欲求 |
形は同じクルマでも、軽自動車とベンツは、満たす欲求が異なります。
顧客層は明確に異なり、ベンツを買う顧客は、軽自動車は眼中にありません。逆も然り(憧れはあるかもしれないが、顧客になることはない)。つまり競合していないのです。
両者は、本質的には別の製品です。ベンツの本質は、ブランドバッグや高級腕時計と同じ。競合は他のランクの自動車ではなく、高級ブランド品なのです。
なお複数の欲求にタッチする場合もあります。トヨタのアルファードのような高級ミニバンは、「所属と愛の欲求」と「承認欲求」を同時に満たしています。
ちなみにフェラーリは高級車ですが、タダの高級車とはちょっと違って見えます。オーナーは特別な思い入れがあり、乗ること自体が自分らしさにつながっているようです。「自己実現の欲求」まで満たしていると考えられます。
具体例②:食品業界を分類
食品には、さまざまな形態があります。
どの欲求がメインであれ腹には入るので、それぞれが全く競合しないわけではありません。しかし客層や単価は大きく変わるので、市場としては別物と考えるべきでしょう。
種別 | 本質的価値 | 満たす欲求 |
米や塩などの基本的な食材、甘い物、肉、美味しさメインの食事全般 | 空腹を満たす | 生理的欲求 |
健康食品、非常食 | 未来の自分の生命を維持する | 安全の欲求 |
居酒屋、ファミレス、バーベキュー | 家族や仲間と楽しい時間を過ごす | 所属と愛の欲求 |
映えるスイーツ、高級レストラン | 見せびらかす、ステータスを誇示する | 承認欲求 |
環境に配慮された食品、茶道、古民家カフェ | 自分らしいライフスタイル実現する | 自己実現の欲求 |
お腹が空いて食べるもの、あるいは美味しいから食べるものは、「生理的欲求」に該当します。説明不要の強力な欲求です。
流行りものに乗っかるのは、「所属と愛の欲求」に該当します。仲間との話題作りのために消費するのも同様。ただし流行の先取りをアピールする場合は、「承認欲求」に該当します。
高級レストランは、美味しいものを食べたいだけなら「生理的欲求」です。異性や取引先を連れて行く場合は、よく見られたい「承認欲求」になります。自分へのご褒美として行くのも、自尊心という意味で「承認欲求」です。
1人で行きがちで、誰に自慢するでもなく、味が第一でもない古民家カフェや純喫茶は、自分らしいライフスタイルを満喫しています。「自己実現の欲求」を満たしています。
欲求の「穴」を狙え
マズローの欲求ピラミッドは、市場の「穴」を見つけるフレームワークとして使えます。
マーケティングの基本である、「STP」に沿って考えましょう。
STPとは?
- 顧客を区切って(セグメンテーション)、
- 特定の顧客層を狙い(ターゲッティング)、
- その顧客層にあった製品を提供する(ポジショニング)。
まず、5段階の欲求によって、顧客をセグメンテーション化しましょう。自動車の例の通り、満たす欲求が変われば顧客が変わり、市場も別になるからです。
次に、同じジャンルの他社製品を、5段階の欲求のどれに当てはまるかマッピングします。
既存製品で満たされていない欲求は、市場に空いた「穴」です。あなたが狙うべきターゲットです。ターゲット向けにあつらえた製品で、空いたポジションに入り込みましょう。
≫【基本のキ】STP(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)とは?その限界も知ろう
高次の欲求ほど高単価
多くのビジネスは、「2.安全の欲求」「3.所属と愛の欲求」「4.承認欲求」のどれかに当てはまっていると思います。
傾向として、高次の欲求を満たす製品ほど、製品単価が高くなります。
低次の「安全の欲求」を満たす製品は、必要最低限の機能に抑えられています。ターゲット顧客のニーズは、要件さえ満たせば安いに越したことはないのです。
比較的高次の「承認欲求」を満たす製品は、他人に羨まれる存在でなければなりません。必然的に、安全の欲求を満たす製品よりも、単価が高くなります。
一般論としては、スモールビジネスほど高単価を狙うべきでしょう。価格交渉力が低いこと、販路が狭いことから、薄利多売に向かないからです。
富裕層は「自己実現の欲求」を求めている
最上位の「自己実現の欲求」を満たす人ほど、収入が高い傾向があります。
もはや他人への見栄を卒業していて、自身の幸福実現が最大の関心ごと。理想へのこだわりが強く、妥協するよりも、高い金額を払って納得いくものを手に入れたいと考えています。
なお「自己実現の欲求」を満たす製品に限っては、顧客によって方向性が大きく異なります。一様にコレという特徴で括れません。
「家」で考えたとき、茶道が好きな人は、茶室のある純和風建築を好むかもしれません。海が好きな人は、海辺に近いログハウスを好むかもしれません。
細部までライフスタイルを意識し、顧客に「この製品を使っている自分が好き!」と感じさせる製品は、高単価で売れます。フェラーリは高級車でありつつ、この域まで達しています。
【まだまだある】ビジネスで欲求が刺さるシーン
マズローのメガネを通して、既存のビジネス手法を眺めてみると、5つの欲求がコアになっていることがわかります。
顧客の最終目的は、欲求を満たすこと。ゆえにビジネスにおけるあらゆる手法が、本質的に5つの欲求のどれかを満たすようできているのは、当たり前と言えば当たり前の話です。
その一端をご紹介しましょう。
応用①:クリエイティブ全般
広告クリエイティブで、もっとも目立つ短くて力強い文章をヘッドラインと呼びます。そして、ヘッドラインの内容に沿った画像がセットで使われます。
基本的に、ヘッドラインと画像は、欲求を強く刺激するほど優れています。
それぞれの欲求を刺激するイメージ
- 生理的欲求
:甘い、ジューシー、スッキリ爽快、安らか、魅力的な異性 - 安全の欲求
:痛みや苦しみが和らぐ、保証される、頑丈、不安を煽る - 所属と愛の欲求
:家族団欒、仲間、絆、孤独からの脱出、新しい出会い、流行 - 承認の欲求
:カッコいい、かわいい、エレガント、高級、モテる、最先端、出世 - 自己実現の欲求
:没頭、熱中、顧客が思い描く理想の自分
逆に、5つの欲求のどれからも遠い表現は、顧客の本能に響きません。
例えば、「高画質!」「軽量化!」といったヘッドラインはイマイチです。基本的に、スペックをアピールしても、欲求は突き動かされません。
広告クリエイティブ以外にも、LP(ランディングページ)や、セールスレターなど、あらゆるマーケティングメッセージに共通します。
応用②:顧客コミュニティ
顧客コミュニティは、既存ユーザーや、製品に興味を持っている人が交流する場。大きなメリットの1つが、コミュニティに行けば友達に会えること(大抵はネット上で)。
わかりやすく「所属と愛の欲求」を満たしています。
デジタルプロダクトがメインストリームの現代において、製品の差別化は難しくなっています。アイデアは簡単に盗まれる上に、簡単にコードで再現されてしまいます。
製品で差別化できない時代において、顧客コミュニティは最強の差別化になります。いくら類似のサービスに追随されようと、友達に会えるのはそこしかないからです。
顧客コミュニティがそのまま製品になっているオンラインサロンは、表向きは学習の場ですが、本質的には同種の人とつながることが価値になっています。
応用③:ゲーミフィケーション
やりすぎると親に怒られるのに、延々とプレイし続けてしまうゲーム。
そんなゲーム業界の叡智を、ビジネスのエンゲージメント向上に応用したのが「ゲーミフィケーション」です。
ゲーミフィケーションの多くは、「承認欲求」を巧妙にくすぐっています。上達させることで自尊心を煽り、また他のプレイヤーとの優劣を可視化することで優越感を煽っています。
よくあるパターンが、顧客の望ましい行動を数値化し、その数値が貯まったら、称号やステータスを付与するもの。航空会社のマイレージプログラムや、Yahoo!知恵袋の称号が代表例。
「承認欲求」が満たされると、顧客は楽しいと感じます。本来は必要なかったとしても、楽しいから繰り返し製品を使用します。
≫【ゲームの叡智】ゲーミフィケーションの意味とは?顧客ロイヤルティを高める極意を解説
まとめ
今回は心理学より「マズローの欲求段階説」をご紹介しました。
次の通りまとめます。
マズローの欲求段階説とは…
- 人間の欲求を5つに階層化したモデルのこと。後年になって6階層になった
- 低い階層の欲求がより緊急性が高く優先される
- 下の階層の欲求がある程度満たされると、次の欲求が発現する
6段階の欲求とは…
- 生理的欲求
:食欲などの生命維持に関する欲求 - 安全の欲求
:身の安全や身分の安定への欲求 - 所属と愛の欲求
:他人とのつながりを求める欲求 - 承認の欲求
:自尊心や他人からの評価を求める欲求 - 自己実現の欲求
:自分らしさや、自分のやりたいことを追求したいと考える欲求 - 超越的な自己実現の欲求
:自己実現の欲求にフロー体験が伴っている状態
欲求をビジネスに活かすコツ
- 5つの欲求で市場を分類し、空いた穴を狙う
- 高次の欲求を満たして高単価を狙う
- 製品の機能や広告表現は、5つの欲求に響くかを重要視する
非常に有名でいろんな場面で引用されているので、教養としても押さえておきましょう!
自分自身や家族・恋人、お客さんの気持ちを理解しようと思ったとき、「マズローの欲求段階説」に当てはめると、ハッと気づきを得られるかもしれませんよ。
参考書籍
1冊目はマズローの心理学を網羅的に解説した『マズロー心理学入門: 人間性心理学の源流を求めて』がオススメ。この1冊だけで、十分だと思います。
2冊目は、マズローとは関係ないのですが、記事内で紹介させていただいたプロゲーマー梅原大吾さんの『勝ち続ける意志力』。
いわゆる自己啓発本です。最上位の欲求である「自己実現の欲求」が如何なるモノなのかが、非常に伝わってくる良書です。
自己啓発本はどれも概ね同じようなメッセージですが、アカデミックな人が書いてない本の方が、スッと入って来やすいように感じます。
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!