ゲーミフィケーションは、ゲーム業界のノウハウを別の分野で活かす手法。ゲームの面白さを、退屈なビジネスや教育などに取り入れようというものです。
ゲームに対して起こるあの謎の熱中を引き出せれば、きっとビジネスでも教育でも上手くいくはず!ということです。
しかし「ゲームがなぜ面白いのか?」が分からなければ、ゲーミフィケーションは取り入れられません。
ゲームの面白さは人間の性質に深く結びついています。理解するには、かなり深い考察が必要です。ゲーミフィケーションは決してカンタンな手法ではありません。
この記事でわかること
- 心理学に見るゲームの面白さの正体
- ゲーミフィケーションの構成要素
- ゲーミフィケーションのフレームワーク
- 実際の活用事例
この記事を読み終えたあなたは、ゲーミフィケーションを表面でなく、本質で理解できるようになります。本質が理解できれば、あらゆる分野で応用ができるでしょう。
ちょっとボリューミーですが、ぜひ最後までお付き合いください。
ゲーミフィケーションとは?
ゲーミフィケーション(gamification)とは…
ゲームのデザインや考え方を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに応用すること
ゲームは実世界と切り離された世界。特にプレイしたからといって何があるわけでもないのに、寝食を忘れてまで没頭してしまう何かがゲームにはあります。
それはもちろんプレイヤーをプレイさせ続けさせるために、ゲームメーカーがあの手この手の試行錯誤の末に辿り着いた一つの叡智です。
ゲーミフィケーションとは、事務的な顧客体験や、あくびが出そうな教育カリキュラムに、ゲーム業界の叡智を吹き込んで、ユーザーをのめり込ませる手法なのです。
ゲームはなぜ面白いのか?ヒントは「欲求」
ゲームが面白い理由は、人間が持つ根源的な「欲求」を満たしてくれるからです。
現実世界では満たされない欲求を満たしてくれるところに、ゲームの面白さの本質があります。ゆえに実生活で欲求不満な人ほど、ゲームに興じやすい傾向があるように感じます。
一方で、仕事や勉強で成果を出しているごく一部の人は、それらをゲームのように遊んでいます。現実世界で欲求が満たされる人は、相対的にゲームを必要としません。
有名な「マズローの欲求5段階説」を見てみましょう。
心理学者のアブラハム・マズローは、人間は低次の欲求をまず優先的に満たそうとし、それがある程度満たされると、より高次の欲求を求めるようになると説いています。
低次の欲求は命に直結する類。食事や睡眠、排泄といった、生理的な欲求がもっとも強い欲求となっています。
現代においては命が危機に晒される機会は激減しており、現代人は昔の人と比べると相対的に高次の欲求を求めるようになったと考えられます。
わたし個人の意見になりますが、ゲームが満たしているのは上位3つのだと考えています。
ゲームが満たす欲求
- 「自己実現の欲求」
- 「承認欲求」
- 「所属と愛の欲求」
中でも「承認欲求」は、とりわけゲームが満たす欲求の中心になっていると思われます。
ゲームと「承認欲求」
「承認欲求」には次の2パターンがあります。どちらもゲームと深く関係しています。
承認欲求の2つのパターン
- 自尊心への欲求
:「強さ」や「達成」など、自己をより優れた存在と認めたいという欲求 - 他者からの評価に対する欲求
:「評判」や「優越」など、他者からの評価を高めたいという欲求
スーパーマリオにしても、ドラゴンクエストにしても、ほとんどのゲームは、プレーヤーに「チャレンジを課す→それを達成させる」を繰り返します。
これは自尊心をかき立てる仕掛けです。実生活でなかなか味わえない達成感を、ゲームに求めている人も多いのではないでしょうか。
また格闘ゲームやレースゲームには勝敗があります。対人ゲームでないシューティングゲームやアクションゲームであっても、スコアやタイムを競う遊び方ができます。
周りの人より優位に立って、他者から評価を集めたいという欲求をかき立てます。
ときに承認欲求は、終わりがない欲求とも言われています。どんな世界にも、上には上がいるもの。そのため永遠に、より大きな自尊心や賞賛を求め続けます。
そのため承認欲求を刺激するゲームは、いかに現実世界で欲求が満たされている人であっても、本能的に楽しいと感じてしまう魔性の魅力があるのです。
ゲームとその他の欲求
承認欲求に比べれば存在感は薄れますが、「自己実現の欲求」と「所属と愛の欲求」もゲームが満たす大事な欲求です。
ある種のゲームは、プレイヤーの自己表現の場にもなっています。すなわち「自分らしくありたい」と考える「自己実現の欲求」を満たしてくれます。
例えば「どうぶつの森」や「マインクラフト」は、フィールドを自分好みに改造して遊ぶことができます。プレイヤーの考えや美意識を表現する場を与えてくれます。
「フォートナイト」などのオンラインゲームでは、アバターに着せ替えができる仕組みがあります。ファッションと同じく自己表現につながります。
またオンラインゲームで友達を作ってチャットしたり、ギルドやチームに加わったりするのは、「所属と愛の欲求」を満たす仕掛けです。
オンラインに限らず、昔のファミコンゲームも友人とのコミュニティとして使われてきました。同じゲームをしていれば、その話で盛り上がったり、新しい友達ができたりします。
このようなゲームが持つソーシャル性も、ゲーミフィケーションの一部としてカウントして良いでしょう。
ゲーミフィケーションとモチベーションの関係
ゲーミフィケーションでは、「ポイント制の導入」がしばしば用いられます。しかしポイントそのものは、ゲーミフィケーションではありません。
シューティングゲームのスコアはもちろんゲーミフィケーションですが、ドラッグストアのポイントカードはゲーミフィケーションではありません。
この違いを知ることは、ゲーミフィケーションの本質を理解する上で重要です。
心理学の世界で「モチベーション(動機付け)」と言った場合、次の2つに分類されます。
- 内発的モチベーション(内発的動機付け)
:誰に促されるわけでもなく、その人自身が持っている行動の動機 - 外発的モチベーション(外発的動機付け)
:インセンティブによって外部からもたらされた行動の動機
「クイズを解く」や「難しいコースにチャレンジする」といった行動は、内発的モチベーションによって引き出されます。
内発的モチベーションによる行動は、自らの内から駆動しているので、飽きない限りは行動が持続します。
一方の外発的モチベーションは、「報酬がもらえるからする」という外からの刺激で行動します。報酬とはカンタンに言えば、お金やそれに準ずるものと考えてください。
外発的モチベーションによる行動は、報酬がなくなった瞬間に何の意味も見出せなくなります。「金の切れ目が縁の切れ目」になります。
ゲーミフィケーションは内発的モチベーションを駆動させる
ゲーミフィケーションが与える行動のきっかけは、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の両方があり得ます。
しかしそのきっかけが報酬のような「外発的モチベーション」であったとしても、ユーザーは報酬を求めるうちに、「内発的モチベーション」を駆動させるようになります。
例えば歴史の先生が、次のようなゲーミフィケーションを提案したとしましょう。
はじめのうち、生徒達は報酬(プリン)欲しさにクイズに取り組むでしょう。しかし一部の生徒達は次第にクイズの面白さを見出し、クイズ自体に熱心に取り組むようになります。
ポイントカードがゲーミフィケーションたり得ないのは、そこに報酬目的以外のモチベーションがないからです。
ポイントカードはユーザーの外発的モチベーションは動かしますが、内発的モチベーションが動かせません。金銭的なメリットだけで、ポイントを貯めることに面白さは感じません。
これが航空会社のマイレージになると、ゲーミフィケーションの要素を帯びてきます。報酬ありきには違いありませんが、マイルが貯まることに面白さを感じている人も多いはず。
マーケティングにおけるゲーミフィケーションの意味
「ゲーミフィケーション」はキャッチーなだけに、言葉だけが先行してしまい、何のために実施するのかあやふやになってしまう恐れがあります。
そうならないために、マーケティングの文脈でゲーミフィケーションがどこに機能するのかを理解しておきましょう。これはとっても重要な話です。
ゲーミフィケーションは、「顧客ロイヤルティを上げるため」に使います。同じ意味ですが、「エンゲージメントを上げるため」と言い換えても良いでしょう。
マーケティング文脈のゲーミフィケーションの目的
- 1度買ってくれたユーザーに2度目をリピートさせる
- 年に平均1回使われるサービスを、2回、3回と増やす
- アプリやサイトに頻繁に訪問してもらう
など
要するに、ユーザーに利用頻度を上げてもらうためにゲーミフィケーションを活用するということです。
カスタマージャーニーとの関係
ゲーミフィケーションは、カスタマージャーニーの後半部分で使える手法です。
主要なカスタマージャーニーのフレームワークとの関係は次の通り。
マーケターの方であれば、この図でピンと来る人が多いでしょう。
要するにゲーミフィケーションは「認知」や「関心」の獲得に使うのではなく、あくまで既存顧客の活性化に使う手法なのです。
≫【今でも重要】カスタマージャーニーとは?意味・目的・作り方を解説【サンプルあり】
ミニゲーム=ゲーミフィケーションではない
ありがちな勘違いを一つ。楽しいミニゲームをサービスに組み込むことは、ゲーミフィケーションとは似て非なるものになるケースが多いでしょう。
そのミニゲームで遊んだら、ユーザーは商品をリピート購入してくれるでしょうか?
答えが「NO(ちょっと遊ぶだけで、別に商品は買ってくれない)」なら、それはゲーミフィケーションではありません。
航空会社のマイルプログラムのように、「次回もANAで乗ろう」とか「新幹線で行けるけど、マイルのためにANAで行こう」と行動してもらえるのがゲーミフィケーションです。
ただそのミニゲームがちょっとした話題になり、SNS上のコミュニケーションを介して、流入が増える結果になるかもしれません。マーケティング施策としては成立しています。
この場合のミニゲームは、認知や関心の獲得として使われています。話題作りにゲームを使っているだけで、本来のゲーミフィケーションとは狙いが異なります。
コンピュータゲームに縛られる必要はない
ゲーミフィケーションは、モニター画面越しのゲームの形である必要はありません。ゲーミフィケーションが転用するのは、あくまでゲームの考え方や体験のデザインです。
小学生のときにやった「雑巾掛けの競争」も立派なゲーミフィケーションです。「制限時間内にゴミをたくさん拾ったら勝ち」とするのもやはりゲーミフィケーションです。
実際にはアプリや会員サイトのような、デジタルのインターフェースにゲーミフィケーションを施すことが多いと思います。しかしそれは必須じゃないと理解しておきましょう。
ゲーミフィケーションの4つの基本要素
ゲーミフィケーションを用いる上で、外せない4つの基本要素を紹介します。
ゲーミフィケーションの基本要素
- 目標
- 可視化
- 即時フィードバック
- 報酬
ゲームの種類は色々あれど、この4つはほぼ必ずといって良いほど含まれています。
基本要素①:目標
ゲームには大小さまざまな「目標」があります。
スタート時点では、「さらわれたお姫様を救う」「魔王を倒す」といった大きな目標が設定されています。個々のステージでは、「ダンジョンを攻略する」といった小さな目標があります。
元祖RPGの「ドラゴンクエストI」は、ラスボス竜王を倒すのが目標でした。
一見目標がなさそうな「どうぶつの森」や「マインクラフト」でも、「自分好みをフィールドを開発する」という方向性は示されています。
ゲームは基本的に、「目標を与える→達成させる」を繰り返します。この流れが、承認欲求の一つである「自尊心への欲求」を刺激するのです。
逆に目標がなく、フィールドにポツンと立たされて、「何でも自由にしてください!」と言われると、プレーヤーは困ってしまいます。結局は離脱してしまうハメに…。
2000年代に話題になった、元祖メタバースの「セカンドライフ」は、バーチャル空間を第2の生活空間とし、プレイヤーは何をしても良い設計でした。
プレイする目標が見出せないことが、流行らなかった原因の一つと言われています。
ビジネスや教育に応用する際は、まずその分野に応じた目標を明確に定めましょう。
目標設定の例
- 航空会社のマイレージプログラム
:会員ポイント「3万・5万・10万」で、会員ステージが上がる - プログラミング教室
:HTMLの習得、CSSの習得、PHPの習得 - 万歩計
:1日8,000歩 - お遍路さん
:四国88ヶ所
「甲子園出場」を目標にしている野球部は必死に頑張ります。これが「ただ野球を楽しむ部活」であったら、そこまで熱心に取り組めないかもしれません。
まずはユーザーに辿り着いて欲しいゴールを決めます。もちろんビジネスモデル上で意味のあるゴールです。
定性的な目標もあり得ますが、ゲームの場合は後述の数値による可視化があります。そのため定量的な、つまり数値化された目標の方が良いかもしれません。
なおゴールが遠すぎる(つまり難易度が高すぎる)とやる気がなくなります。目標は段階的に設定しましょう。
基本要素②:可視化
現実世界にはなく、ゲームの世界に必ずあるのが「数値による可視化」。我々のスキルはカンタンに数値化できませんが、ゲームなら「スコア」や「レベル」で数値化されています。
可視化とはすなわち、プレイヤーの現在地を示すもの。現在地から数値が上がっていくことで、プレーヤーは着実に成長していると分かります。ここにゲームの面白さがあります。
究極に簡素なゲーミフィケーションであれば、ユーザーの行動をスコアやポイントで可視化するだけでもやる気は起こせます。
わかりやすい例が、万歩計(今だと万歩計アプリ)です。
ただ歩数を測っているだけですが、「今日は多かったから嬉しい!」「昨日は怠けすぎた…」と一喜一憂しつつ、結果として使う前より歩数が増えます。
さらにスコアやポイントをグラフ化して、時系列の変化も可視化すれば、段々と増えていく歩数に嬉しさを感じます。
既にたくさん歩いていれば、その歩数をキープしたくなります。
ライフログとはすこぶる相性が良く、IoTの活用先としても有力です。
ダイエットの記録を取る、電気メーターの記録を取る、などさまざま応用が効きます。
【Tips】目標達成まであとどのくらい?
RPGだと、次のレベルに上がるまでに必要な経験値を公開しています。次の目標までの距離も可視化することで、プレイヤーはそこをめがけて頑張るわけです。
心理学の「目標勾配仮説」によれば、人間は目標に近づけば近づくほど、達成に向けてやる気を出して頑張る傾向があります。
目標が近づくと俄然やる気が出て、キリよく達成するまでプレイをやめられなくなります。
- あとちょっと経験値が貯まったらレベルアップなんだ!そこまではやらせて!
- このダンジョンのボスを倒したらやめるから!あとちょっとだけ!
と、寝る間を惜しんだ経験はありませんか?
ゲーミフィケーションで応用する際は、「進捗率65%です!」や「あと278mで目的地です!」など、目標達成までの距離が縮まっていることを分かりやすく伝えましょう。
基本要素③:即時フィードバック
ゲームをプレイしていると、自然とゲームの意図した方向に展開していきます。プレイヤーは自分自身の判断でプレイしているつもりですが、それとなく誘導されています。
何で誘導しているか。それは「フィードバック」です。プレイヤーが正しい方向に行動したときには、即座にフィードバックを与えています。
もしスーパーマリオの1-1ステージで、右に行っても行っても景色が変わらず、クリボーが出てこなかったらどう思うでしょうか?
と不安になります。プレイヤーのエンゲージメントが低いと離脱の恐れさえあります。
RPGの場合だと、弱い敵を倒すとちょっとしか経験値が貯まりません。しかし背伸びして強い敵を倒すと、よりたくさんの経験値がもらえます。
このフィードバック体験により、プレイヤーは強い敵をどんどん倒していくことを学びます。
即座にフィードバックがあるから、プレイヤーは正しい行動をしていると理解できます。そしてうまく行動できたことに喜びを感じます。
長いこと続けている仕事や勉強を続けていると、なかなかフィードバックが現れなくなります。目に見えるフィードバックがないと辛いしつまらないですよね。
一方で始めたばかりであれば、グングン成績が上がったり、目に見えてできることが増えたりします。始めたてほど、フィードバックがすぐに得られて面白いものです。
要するに、人間にとってフィードバックは楽しいことなのです。だからなるべく早く小まめに楽しませてあげる必要があるということです。
【Tips】ランキングの注意
「ランキング」も一種のフィードバック。スコアをランキング化して、ユーザーの目に見える形で発表します。ソーシャルゲームでは定番ですね。
こちらは承認欲求の中の、「他者からの評価に対する欲求」を刺激します。
ランキング自体はゲーミフィケーションの有力なツールですが、使い方を間違えると逆にユーザーのやる気を削ぐ可能性があります。
例えば参加したてのユーザーは、初めは必ずランクが低いはず。
サービスを使い始めた瞬間に、「あなたのランキングは現在2,846,210位です」と知らされます。初っ端から「お前はザコだ!」と言われるわけです。
本来のフィードバックは、望ましい行動に対するポジティブな反応(褒めるなど)です。決して貶すために使うものではありません。
ゲームなら高みがあることに喜びを感じる場合もありますが、ビジネスで想定されるユーザーは当初はエンゲージメントが低い状態です。プイッとされて終わる可能性があります。
ランキングを有効に活用するなら、
- ユーザーがちょうど中位になるランキングを切り取る
- 友人間のグループランキングにする
など、実力や関係性で区切ったランキングにするのが良いでしょう。
基本要素④:報酬
正しいプレイができた暁には、やっぱり褒めて欲しいですよね。
褒めることは、ストレートに「承認欲求」を刺激します。実生活でなかなか褒められない分、ゲームの中くらいは褒めて欲しいのです。
ゲームの場合は口で褒めるだけじゃ足りないので、何かしらの「報酬」を受け取ります。村を救ったお礼に伝説の武器を貰ったり、新しい仲間が加わったりします。
ここで意識したいのは、その報酬が何らかの「価値」や「意味」を持たせることです。
と思われてしまっては、報酬として機能しなくなってしまいます。とりあえずバッジを導入したWebサービスでよく見る光景ではないでしょうか?
本当のゲームであれば、武器が強くなればその後のゲームを有利に進めていけます。これがゲーム内の報酬の価値です。わかりやすいですよね。
しかしゲーミフィケーションでビジネスなどの現実世界で応用する場合、報酬の設計が少し難しいかもしれません。
まず第一に考えたいのが、実益が伴う報酬。あるに越したことはありません。
航空会社のマイレージプログラムであれば、「ラウンジ」や「優先搭乗」などの報酬がつきます。楽天経済圏なら、「ポイントの倍率アップ」ですね。
しかしビジネスモデル的に実益を提供できない場合や、報酬にコストをかけられない場合があります。その場合は、称号やバッジなどをご褒美とします。
称号はバッジに意味を持たせるためには、ここでも「承認欲求」を発動させます。
Yahoo!知恵袋の「カテゴリーマスター」の称号は、実益上ではあまり意味がありません。しかしその分野での専門性をアピールでき、優越感を味わうことができます。
誰もいないところで褒めても意味はなく、クラスや全校生徒の前で褒めてもらわなければ意味ないのです。
そういう意味では、ランキングは「可視化」や「フィードバック」であると同時に、「報酬」にもなっていると言えますね。
【Tips】お金の報酬に注意
「お金が一番嬉しい報酬だろう」と安易に取り入れるのは危険です。お金の報酬は毒になりやすく、特別な理由がなければ持ち込まない方が良いでしょう。
心理学の「アンダーマイニング効果」によれば、お金の存在がユーザーの内から湧いていたやる気を奪い、お金目当ての行動に変えてしまいます。
金額がしょぼかったり、あるいは途中で下がったりすると、急にやる気がなくなります。ゲーミフィケーションの良さを、根本からひっくり返してしまう事態です。
わたし自身にも覚えがあります。
お金(正確にはポイント)がもらえる歩数計を使ったことがあるのですが、頑張って歩いて1日3円くらいにしかなりませんでした。
計算すると1ヶ月で90円、1年で1,000円。馬鹿らしくなってすぐにやめてしまいました。
しかしお金が関係ない、ただ歩数を測るだけのアプリは何年も使っています。
永久に魅力的な金額をオファーできるビジネスモデルでもない限りは、お金の報酬はやめておきましょう。
≫【お金で人は動かない】アンダーマイニング効果とは?具体例で解説
「仮説→試行→歓喜」のループを作ろう
元任天堂社員が著者である『「ついやってしまう」体験のつくりかた』によれば、あらゆるコンピュータゲームで「仮説→試行→歓喜」の流れ中心的な体験となっています。
と、疑問に思いながらも実行してみて、それが正解だったら次に進みます。
もしかしてこういうことかな?(仮説)
↓
やってみよう(試行)
↓
その通りだった!(歓喜)
の流れに、プレイヤーは達成感を感じます。「達成感=成長=おもしろい」なのです。
言ってみれば、鉄棒もスケートボードも算数ドリルも一緒です。単にゲームは、達成感をよりカンタンに繰り返し味わえるように設計されているというだけの話。
日常生活ではなかなか訪れない達成感や成長をお手軽に味わえるところが、ゲームの楽しさの本質です。
ゲームと同じレベルにリッチな体験は現実には難しいですが、「仮説→試行→歓喜」にゲームの面白さの本質があることは、念頭に置いておきたいですね。
ゲーミフィケーションの6つの応用要素
続いては、必須じゃないけどあったらより楽しめる、ゲーミフィケーションの応用要素を5つ紹介します。
ゲーミフィケーションの応用要素
- 適切なレベル設定
- アンロック
- 意外性
- ソーシャル
- 自己表現
- コレクション
適用が難しいケースも多いと思いますが、ぜひ組み込めないか検討してみましょう。
応用要素①:適切なレベル設定
ゲーム会社には「レベルデザイナー」という、ゲームの難易度調整を専門にしている職種があるそうです。裏返せば、ゲームの難易度設定はそれほど重要ということです。
ゲームの難易度は、その時点のプレイヤーが必ずクリアできる。しかし少し頑張らなければクリアできない絶妙なレベルになっています。程よい難易度が楽しさの秘訣です。
最初はかなりカンタンなプレイから始まります。そして徐々に難易度が上がります。
スーパーマリオの最初の敵クリボーは、ゆっくり歩いてくるだけ。後から出てくるパックンフラワーは、火の玉を避けなければなりません。
また難易度を「EASY・NORMAL・HARD」に分けて、ユーザー自身が適当なレベルを選べるようにする仕組みも良いですね。
【Tips】上級者が遊び続けられるか?
ゲーミフィケーションは初心者に重きを置くので、難易度は易しめに調整されます。結果として、一通りクリアしてしまった上級者が遊べず、離脱してしまいがちです。
しかし上級者は最もエンゲージメントが高いユーザー。本来は大事にしなきゃいけないお客さんです。
それに上級者には大事な役割があります。上級者を見た初心者に、「いいなぁ、俺も上級ステージに上がりたいなぁ」と憧れを抱かせることです。
上級者はさらに上を目指して、サービスに残り続けてもらう必要があります。
ゲームにおける上級者のやり込み要素
- タイムアタック
- 難易度をMAXまで上げる
- アイテムやモンスターをコンプリートする
- 奥深すぎて終わりがない(将棋や囲碁、マインクラフトなど)
AMEXのクレカは最上級ともなると、もはや一般人には到達不可能なレベルです。そういう雲の上の存在があることが、ゲーミフィケーション的には正しい設計と言えるでしょう。
まとめると、「初心者が楽しめる難易度が基本。しかし上級者にはさらに上の難易度が用意されている。そして上級者は初心者の憧れの的になる」ということですね。
上級者向けには羨ましがられる報酬を用意するなど、別の要素と掛け合わせた工夫が必要ですね。
応用要素②:アンロック
レベル設定とも絡みますが、ゲームの初っ端から複雑な操作を全部開放してしまうと、プレイヤーはどれを使えば良いのか分からず混乱します。
そのため複雑な操作は、ゲームが進むにつれて徐々に開放させるのが一般的。この手法を「アンロック」と呼びます。
「ドラゴンクエストシリーズ」で、主人公が最初に持っている武器は「木のぼう」だけ。馬車や飛行船はなく、移動は徒歩だけ。
物語が進むにつれ、伝説の武器を手に入れ、強力な呪文を覚えます。船や飛行船を手に入れて、世界を飛び回ります。
最終的に、かなり複雑な操作を経てラスボスに挑むことになります。
アンロックが起こるのは、基本的に何らかの「目標」を達成したときです。
ボスを倒したり、レベルが一定の水準に到達したときなどでです。その目標達成の「報酬」として、新システムや強力な武器がアンロックされます。
そしてアンロックされた新要素は、往々にしてかなり強力に調整されます。もし持っていたら、それまでのミッションが軽々クリアできたであろう想像できるくらいに。
そんな強力な要素(強い武器や新しい大陸に行ける船など)が開放されたら、ゲームを中断する前にちょっと試し切りしたくなりますよね?
ちょっと試し切りのつもりが、次のミッションに。そうしたらキリが悪くなるので、「またボスを倒してから…」と、ゲームをやめられなくなってしまいます。
アンロックは単なる難易度の調整だけではなく、ユーザーにゲームを継続プレイさせるための強力な手段でもあるのです。
応用要素③:意外性
ゲームは小さなチャレンジを与えて、それを達成させることを繰り返します。ですが同じパターンが続けば、どうしても先が読めてつまらなくなってしまいます。
そこまで頻繁である必要はありませんが、飽きが来るタイミングで意外なコンテンツを用意してあげるのが良いでしょう。
例えば、「ドラゴンクエストシリーズ」には、シリアスなゲームの途中でカジノが出てきます。
「ファイナルファンタジー7」では、途中のゲームセンターでスノーボードのミニゲームができます。
初めてそれを知ったプレイヤーは、
とちょっと意表を突かれます。もちろんメーカー側は、意図してこれらの意外性を盛り込んでいます。
さて本当のゲームであれば、奇抜な展開を盛り込むこともあるでしょうが、ゲーミフィケーションではどう応用すれば良いか思いつかないかもしれませんね。
醸成したいのは先の展開が読めないワクワク感です。
例えば歩数計アプリで、2日連続で1万歩超えて、3日目に全く歩かなければ、「3日坊主」というバッジを与えても良いかもしれません。意外性にクスッとします。
会員アプリを提示して購入したお客さん10人ごとに、1人が無料になるキャンペーンも良いですね。「今回は当選するかも?」と、ワクワクしながらアプリを提示するでしょう。
キャッシュレス決済アプリは、購入ごとにくじが引けて、当たったら全額キャッシュバック。オンラインゲームのガチャは、何が当たるかわからない楽しみがあります。
設計が難しいので、単にシークレットコンテンツや正体不明のご褒美を用意するのでも良いかもしれません。可能なら運の要素も絡められると良いですね。
応用要素④:ソーシャル
ゲームにおけるソーシャルとは、プレイヤーがゲームを通して他人と交流するということです。ソーシャルは、人間に備わっている「所属と愛の欲求」を満たしてくれます。
ファミコン時代のゲームも、友達間の話のネタになっていたので、原初のゲームでもソーシャルは少なからずありました。
しかし加速させたのはやはりオンラインゲームです。リアルの人間関係を超えて、ゲーム世界の友達とチャットでおしゃべりしたり、一緒に戦ったり、チームやギルドを組んだり。
またゲーム内で知り合いができるということは、競い合う相手ができたことにもなりますね。ゲーム内でのレベルやスキルを上げることで、「承認欲求」につなげられます。
ソーシャルがなくてもゲーミフィケーションは成立しますが、ソーシャルがあることで、ゲームの面白さは加速します。
同時にゲームが面白いだけではなく、そのコミュニティで交流すること自体も価値になり、相乗効果でエンゲージメントを高めることが可能です。
応用要素⑤:自己表現
現実世界では人の目を気にしたり、変なイメージを与えたくなくて、本音を偽装している人も多いでしょう。実はアニメ好き?歴史好き?ゴスロリ?でも言うチャンスがない!
通常ゲームはリアルな人間関係の外にあるため、普段は我慢している「自己表現」の場としても使われています。
自己表現の手段として、アバターやフィールドのカスタマイズがあります。ハンドルネーム自体も自己表現と言っていいでしょう。
なお性質上、自己表現は前述の「ソーシャル」とは密接な関係にあります。
多くのゲーミフィケーションは、自己表現の場は与えられていません。必須ではないし、実装の難易度は高いですが、もし実現できれば強力な武器になるでしょう。
【Tips】本当はプライベートを晒したい
SNSの登場で気付かされた通り、人間はある程度のプライベートを自分から晒したい欲求があります。
ゲーミフィケーションかというと微妙ですが、普段他人には言わないプライベートな好みや価値観を吐き出すきっかけ作りも、ゲームが実現可能な範疇です。
「ドラゴンクエスト5」には、2人のヒロインから花嫁を選ぶイベントがあります。ビアンカ派かフローラ派かは、何十年経っても議論のネタになっています。
(ゲームではないですが)Amazonプライムドラマの「バチェラー」は、視聴者がどの女性が好みかで話が盛り上がりました。
犬派か猫派か、出身地を言いたい、実はアニメファンだとぶっちゃけたい、お気に入りのカフェを紹介したいなどなど。自分の年収を話したい人は意外と多いもの。
ゲーミフィケーションを通して、ユーザーのプライベートを表現する場を提供できないか検討してみましょう。
応用要素⑥:コレクション
収集癖も人間の一つの性質です。トレーディングカードや骨董品、切手、古銭などなど、コレクション市場はいつでも一定の需要があります。
ゲームの場合、さらにコレクションを加速させるため、意図的に「空白」を作ります。穴や空間があったら埋めたくなるのが人情です。
ポケモン図鑑のように、まっさらな空白を渡されたら、誰だって埋めたくなります。一つ埋まればもう一つ。そうやってどんどん埋めたくなってしまうのです。
お遍路さんの88箇所も、1箇所ずつ埋まっていくのが嬉しい。空白を埋めたい感情がコレクション欲を呼び起こしていると言えそうです。
ゲーミフィケーションであれば、バッジに色んな種類を用意しておく手があります。
普通にプレイしているだけじゃコンプリートできないようにすれば、上級者へのやり込み要素にもなります(前述の通り、上級者が長く遊べるコンテンツもあるに越したことはありません)。
そしてスタンプラリーは古典的な手法です。
夏休みの山手線で人気があったポケモンスタンプラリー。元を辿れば、やっていることは御朱印帳と同じです。コレクション狙いのマーケティングは古来からある手法です。
【Tips】希少性を取り込む
コレクション要素をゲーミフィケーションに取り込む際は、「希少性」もセットで考えたいですね。要するにレア物です。ソーシャルゲームでは必ず実装されています。
レア物に目が眩むのも、人間の心理から来るものです。太古の昔からそうで、「希少=高価=手に入れられる自分は偉い」という承認欲求につながっていると思われます。
確率的に、あるいは難易度的に手に入れるのが難しいコレクションも織り交ぜましょう。実益のある報酬を紐づけられるなら、思いっきり優遇しても良いでしょう。
狙いはもちろん「持っている人が自慢し、周りがそれを羨んでもっとプレイする」の構図を作ることです。
≫【今しか買えない】希少性の原理とは?ビジネスで希少性を作る方法を解説【あえて絞れ】
ゲーミフィケーションのフレームワーク
ゲーミフィケーションのフレームワークに、「コレ!」という決定版は今のところ見当たりません。
そこで巷で見られるフレームワークを2つ紹介します。
フレームワーク①:PBL
「PBL」とはすなわち、次の頭文字を取っています。
- P(ポイント)
:特定の行動でポイントが貯まる
(例:マイル、歩数、ポイント) - B(バッチ)
:ポイントが一定量になるとバッジがもらえる
(例:軍将校のバッジ) - L(リーダーボード)
:参加者内の地位を示す
(例:ランキング、表彰台)
もっともカンタンにゲーミフィケーションを導入するなら、この3つだけ押さえればOKです。
万歩計であれば、歩数はポイントになるでしょう。可視化にもなっています。
たくさん歩いた人はバッジが貰えます。バッジは目標になります。
そしてランキングでフィードバックします。高ランクに位置することは報酬でもあります。
ゲームの叡智を余すところなくとは言えませんが、最低限の要素はPBLで満たせます。
フレームワーク②:Octalysis(オクタリシス)
「Octalysis(オクタリシス)」はゲーミフィケーションを研究しているYu-kai Chou氏が提唱しているフレームワークです。日本ではあまり知られていないようです。
同フレームワークは、ゲームの面白さは8つのコアドライブによって構成されていると説きます。
中身はざっと次のような具合です。
- 意味(Epic Meaning & Calling)
:プレイヤーが「大いなる意義のために行動している」という行動の意味づけ。「自分は選ばれた存在」と感じる気持ち - 達成感(Development & Accomplishment)
:目標にチャレンジし、着実に進歩している感覚。前述のPBLは主に達成感に含まれる - エンパワーメント(Empowerment of Creativity & Feedback)
:創造性の発揮。ユーザーが自分の意思で、数多くの方法を駆使しながら戦う選択肢を与える - 所有(Ownership & Possession)
:何かを所有したい気持ち。一度所有すると、より良いモノを、より多くのモノを所有したいと考えるようになる - 社会的影響力(Social Influence & Relatedness)
:周囲の人との関係性。仲間であったり競争相手であったりする。他人の存在が、自身を更なる行動を駆り立てる - 希少性(Scarcity & Impatience)
:希少なモノを手に入れたくなる衝動。手に入れたくて、1日中ゲームについて考えさせる動機を与える - 予測不可能性(Unpredictability & Curiosity)
:読めない展開の中で、次に何が起こるか知りたいという知的好奇心。映画で続きが見たくなる、あるいはギャンブルにのめり込む要因でもある - 損失回避(Loss & Avoidance)
:ネガティブな結果を避けたい気持ち。機会を失わないために、今すぐ行動させるインセンティブになる
これら8つの要素の総合によって、ゲームへのモチベーションが作られるとのこと。
細かいテクニックが多数内包されていて実践的に見えます。個別に解説記事もあるので、気になる人はチェックしてみてください。
≫【コレ面白い】Octalysis(オクタリシス)なるゲーミフィケーションのフレームワーク
ゲーミフィケーション3つの事例
ビジネスにおけるゲーミフィケーションの事例を3つ紹介します。
事例①:航空会社のマイレージプログラム
航空会社のマイレージプログラムは、エンゲージメント施策の事例でよく引き合いに出されます。
万単位の高単価でありながら、用もないのに羽田(東京)から新千歳(北海道)まで、日帰りで海鮮丼を食べに行かせるほど効果があるからです。
ANAの例を見てみましょう。お目当てはマイルそのものではなく、一緒に貯まるプレミアムポイントで会員ステージが上げることにあります。
エントリーとして3万ポイントの「ブロンズ」がありますが、ここは通過点。狙いは次の「プラチナ」です。
プラチナになると、特別なクレジットカードの発行が可能になります。そのクレカを持っている限り、永久にラウンジが使えるようになります。
さらに上の「ダイヤモンド」になると、ファーストクラス客向けの最高級ラウンジが使えるようになります。(余程の出張族じゃな限り到達も維持もできませんが)
下級クラスの人が、上級者が羨ましくなる難易度と報酬が設定されています。
ゲーミフィケーションの基本要素である、「目標・可視化・即時フィードバック・報酬」がカバーされています。
事例②:Nike Run Club
ゲーミフィケーションと相性が良いライフログ系では、「Nike Run Club」というランニング系のアプリがあります。
Nike Run Clubの主な機能
- 走った距離や時間が一定を超えると得られるトロフィー機能
- ランニング記録シェアできる機能
- アプリ内で競争できるランキング機能
基本要素の「目標・可視化・即時フィードバック・報酬」はしっかり押さえつつ、「ソーシャル」が強みになっています。
ランニング仲間と一緒に使ってコミュニティを形成したり、あるいは競争相手として勝った負けたの関係にもなります。
ゲーミフィケーションのお手本のような事例ですね。
事例③:東京ディズニーリゾート
顧客ロイヤルティではなく、従業員ロイヤルティ向上のゲーミフィケーション事例に、「東京ディズニーリゾートのキャスト」があります。
ディズニーランドのキャストは、ご存知の通りほとんどがアルバイト。にも関わらず高い品質と高いモチベーションが維持されています。
その裏にはゲーミフィケーションを活用した人事評価制度があります。
ファイブスターカード
- 良い仕事をしているキャストに対し、幹部がその場で署名したカードを渡す
- カードが貯まると、優良キャスト限定のイベントに招待される
長時間勤務表彰
- 勤続の節目ごとにネームタグにつけるピンが贈られる
- 「M」「A」「G」「I」「C」の順番でグレードアップする
ランゲージピン
- 英語・中国語・韓国語で対応できるキャストにピンが贈られる
基本スタンスは、施設内でキャストに行って欲しい行動に対し表彰すること。つまりフィードバックです。フィードバックを素早く、細かく行なっています。
限定イベント招待というわかりやすい報酬もありますが、バッジに相当するピンも目を引きます。軍隊のバッジのようなもので、コミュニティ内で尊敬を受けます。
正社員と異なり、アルバイトの時給は頑張ってもさほど上がらないと思われます。それでもやる気を出させてしまうところが秀逸です。
まとめ
今回はゲーミフィケーションを解説しました。深い内容なので、随分と長くなってしまいました。ざっとまとめましょう。
ゲーミフィケーションのポイント
- ゲームへ熱中させるノウハウを、他の分野に転用すること
- 主に「承認欲求」が満たされることが面白さの正体
- ユーザーの内発的なやる気を引き出す
ゲーミフィケーションを実践する際は、次の基本要素を押さえましょう。
ゲーミフィケーションの基本要素
- 目標
:定量的、または定性的なゴール - 可視化
:進歩や成長を数値化して伝える - 即時フィードバック
:正しい行動には即時フィードバック - 報酬
:フィードバックには意味のある報酬を添える
基本要素を満たすだけなら、「P(ポイント)・B(バッジ)・L(リーダーボード≒ランキング)」がもっともカンタンです。まずはここからですね。
さらにゲームの面白さを付加するためには、次の応用も検討しましょう。
ゲーミフィケーションの応用要素
- 適切なレベル設定
:最初はカンタンに、徐々に難易度を上げる。上級者のやり込み代も残す - アンロック
:強力な新要素を、目標達成のタイミングに合わせて徐々に開放していく - 意外性
:飽きさせないために、予想外の展開を差し込む - ソーシャル
:他人とのつながる場を提供する。他ユーザーは仲間であり競争相手でもある - 自己表現
:普段は内に秘めた自分を解放する場を提供する - コレクション
:コレクション要素を加える。あえて空白を作って埋めさせる。レア物も混ぜるとなお良い
ここまで考慮すると、よほどガチで作り込まない限りビジネスシーンでは難しいかもしれません。可能な範囲で検討しましょう。
なおゲーミフィケーションもサービスの一部。今日のWEBサービスがすべからくそうであるように、ゲーミフィケーションもまた日々の仮説検証によって調整されるべきものです。
ゲーミフィケーションは作って終わりではなく、ユーザーの反応を見ながらチューニングしていく必要があります。そういう意味でも、決してカンタンな話ではありませんね。
参考書籍
参考書籍はその名の通り『ゲーミフィケーション』。ゲーミフィケーションを研究している日本人著者の本です。
程よい読みやすさは維持しながらも、学術的な裏付けも紹介していて、しっかりした本という印象。発行が年なので事例は古くなっていますが、考え方はちゃんと学べます。
もう一つは記事内でも紹介した、元任天堂社員が著者である『「ついやってしまう」体験のつくりかた』です。
ゲーミフィケーションというよりは、ゲームの面白さを理論的に解説する本といった感じ。ゲーミフィケーションとして応用する場合は、抽象化と具体化ができないと難しい。
気づきが多いものの「ふーん」で終わりかねないので、前述の『ゲーミフィケーション』を先に読んでおくことをオススメします。
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