人間は誰しも欠点があるように、企業の製品もまた、何かしらの欠点を抱えています。
ほとんどの企業は、後ろめたかったり恥ずかしかったりする欠点を、人目につかないように隠そうとします。あるいはこっそり裏で克服しようと、足掻いている場合もあるでしょう。
しかし欠点は、個性でもあります。
あなたは「致命的な欠点」だと思っていることも、他の人は「取るに足らない特徴」としか思わないかもしれません。それどころか、「まさに探し求めていたモノ!」と、長所に感じる人もいます。
欠点は武器になります。克服するなんてもったいない。むしろ伸ばしてマーケティングに活用してやろうという気概を持ちましょう。
この記事では、次の2つのアプローチから、欠点を価値に変えるマーケティング方法を解説しています。
欠点を価値にかえるマーケティング手法
- 欠点を晒して信頼を上げる
- 欠点を長所と捉える顧客を狙う
この記事を読めば、欠点を見つけて眉をひそめることはなくなります。代わりに「どう料理してやろうか?」と、ポジティブにアイデアを生み出せるようになるでしょう。
マーケターや営業マン、経営者の人は、ぜひ参考にしてみてください。
欠点は個性である
まずは、多くの人が「欠点」と思っていることは、実はただの「個性」という認識を持ってもらうところから始めましょう。
一般的に、「太っている」は、欠点と捉えられています。
しかし世の中には、太っている異性を好む「デブ専」もいるわけです。デブ専にとって、太っていることは長所です。
デブ専の人は、世間がダイエットに勤しむ姿を、苦々しく感じているでしょう。せっかくの長所を潰すために、努力したりお金を払ったりしている人が大勢いるわけですから。
そこに、ありのままの太った姿を、自信満々に披露する異性が登場したらどうなるでしょうか?きっとデブ専たちは、強く心惹かれるでしょう。
1つの特徴に対し、「欠点」と思っている人もいれば、「長所」と思っている人もいます。ということは、「その特徴は、絶対的な欠点ではない」ということになりますね。
それなら「欠点」と表現するのは相応しくなく、「個性」と呼ぶのが適切でしょう。
方法①:欠点を晒して信頼を得る
著名なダイレクトマーケターであるジョセフ・シュガーマンの著書『シュガーマンのマーケティング30の法則』には、「欠点の告知」という法則が登場します。
シュガーマンによれば、欠点は隠そうとしてしまいがちですが、むしろ欠点は晒した方が売上は上がるのです。
シュガーマンが説く「欠点の告知」
- 商品やサービスに欠点や難点があるなら、真っ先に伝える
- 欠点を克服することも大事だが、早い段階で伝えることが大切
欠点を晒した方が有利になる理由は、顧客があなた(または企業)を信頼するようになるからです。警戒心を解き、あなたを正直な売り手だと認識するようになるからです。
顧客は、「この人(企業)は、お客のマイナスになることはしないみたいね!そんな人が勧めているということは、本当に私にとって有益なんだわ!」と感じます。
コツ①:順番は「デメリット→メリット」
心理学では、メリット(またはデメリット)だけを伝えることを「片面提示」、メリットとデメリットの双方を伝えることを「両面提示」と呼びます。
欠点まで伝える両面提示を選ぶわけですが、その際は、デメリットを先に持ってきます。
以下の例文なら、「A」が正しい順番となります。
この商品は、
- A:高額ですが、耐久性があり長持ちします。
- B:耐久性があり長持ちしますが、高額です。
悪い話を先に聞き、後で良い話を聞くと、実際よりも大きな差に感じるようになります。これを「コントラスト効果」と呼びます。
また2つの相反する情報を聞いたとき、より記憶に残りやすいのは、直近で聞いた方になります。こちらは「親近効果」と呼ばれています。
コツ②:欠点に理由を添えると長所になる
一見すると欠点でしかない特徴は、その理由を添えることでポジティブな印象に変えることができます。
例えば、次のような特徴です。
注文から配膳までが遅い
→当店は、お料理をお出しするのにお時間をいただきます。作り置きせず、注文をいただいてから一品ずつ丁寧にお作りしています。
雰囲気が古臭い
→昔の文化を尊重し、当時の表現をそのまま使用しております。懐かしい雰囲気をお楽しみください。
他の店より価格が高い
→他店よりお値段が張ってしまうことをご容赦ください。お客様と末長く良好な関係を結びたく、購入後のサポートに人手をかけているためです。
全体的にちゃっちい、サービスが悪い
→包装や梱包は最低限とさせていただいております。また一部のサービスは、お客様自身にお願いしております。可能な限りリーズナブルな価格で提供させていただきたく、ご理解のほどお願い申し上げます。
多くの顧客にとって、絶対的な欠点などほとんどありません。
一般的に「QCD」と呼ばれる次の3つは、トレードオフの関係になっています。どれかを伸ばせば、他は犠牲にしなければなりません。
- 「品質(Quality)」
- 「価格(Cost)」
- 「納期(Delivery)」
「品質」が良くなったり、「納期」が早まったりすれば、「価格」が高くても受け入れられます。欠点とは、得てして相対的なのです。
多くの欠点の裏には、何かしらの長所があるもの。欠点の理由を添えることで、むしろ長所として訴求できるでしょう。
コツ③:欠点を晒して不確実性を取り除く
今日の消費者は、製品ページに欠点が何も書かれていないと、「都合の悪いことを隠しているんじゃないの?」と勘ぐります。
買った後に、思わぬトラブルや後悔に見舞われるかもしれないと感じてしまいます。この「不確実性」は、顧客にとってリスク以外の何者でもありません。
行動経済学で有名な「プロスペクト理論」によれば、人間は「利得」よりも「損失」に敏感です。顧客は損することを嫌うあまり、不確実な状況での購入を躊躇します。
株式市場では、株価にマイナスな悪い噂が立ち登ると、その噂を織り込んで株価が下がっていきます。不確実性は、株価を下げる要因になります。
しかしいざその噂が現実になると、株価はドンと下がると思いきや、底打ちして上昇に転じます。悪い噂が現実になったことで、不確実性の霧が晴れたからです。
それ以上悪くならないと判明したので、投資家は安心して買い戻せるのです。
株式市場もマーケティングも全く同じで、モヤモヤしている欠点がハッキリするのは、むしろ良いことです。
企業が自ら欠点を洗いざらい晒してくれると、不確実性の霧が晴れます。欠点に挙げられた特徴を吟味し、許容できると納得すれば、もう購入を阻む理由はありません。
本来のターゲット顧客であれば、成約率は上がります。もし欠点を知って購入を止める顧客がいたとしたら、それはあなたが獲得できる顧客ではなかったという話です。
方法②:欠点を長所と捉える顧客を狙う
好きな人と歩く帰り道は、なるべく長い方がいいですよね。普通の人にとって長い道のりはデメリットですが、同じ方角へ帰る高校生カップルにはメリットになります。
製品のある特徴は、ある人には欠点に映りますが、別の人にはメリットに映ります。ならば、メリットに感じる人をターゲットに据えるのが、正しいマーケティングですね。
ちなみにビジネスの世界では、それまでターゲットになっていなかった顧客層に対し、新しい価値を提供することを、「イノベーション」と呼びます。
イノベーションの一つの型は、欠点を長所として受け取ってくれる人を見つけ、その人をターゲットに製品を企画することなのです。
コツ①:「使用環境」が違う顧客を探す
イノベーションの例によく登場するのが、「イヌイット(あるいはエスキモー)に、凍結防止のために冷蔵庫を売る」です。
冷蔵庫の用途は「食料の保存」であり、そのために提供している機能は「5〜10°Cの貯蔵スペース」です。
温暖な地域に住む人にとって、冷蔵庫の価値は「外気より冷たい温度」です。
しかし寒い地域の人々は、冷やす手段に困っていません。むしろ凍ってすぐに食べられないことに困っています。冷蔵庫の価値は、「凍らない温度」になります。
この例から学べるのは、「製品が持つ特徴と用途は変わらなくても、環境が変われば、別の価値を提供できる可能性がある」ということ。
ある環境では欠点でも、別の環境では長所になり得るのです。
視野角が狭いスクリーン
視野角が狭いと、横から見ている人は画面が見づらくなる。家庭で使う場合は欠点だが、ビジネスで使う場合は覗き見防止になる。セキュリティの観点で長所になる。
すぐに枯れてしまう花
花はできれば長く楽しみたいので、すぐに枯れてしまうのは欠点と言えなくもない。しかし他人にプレゼントするシーンでは、長く残ってしまうと、かえって相手の迷惑になる。むしろ枯れるのが利点となっている。
製品の機能は変わっていませんし、用途も変わっていません。しかし使う人の環境が変われば、欠点は長所に変わります。
コツ②:「趣味嗜好」が違う顧客を探す
ヒゲを薄くしたい人もいれば、濃くしたい人もいます。肌を焼きたくない人もいれば、焼きたい人もいます。普通は柔らかい肉が好きなものですが、固くて噛みきれない肉が好きな人を知っています。
利用する環境は同じでも、顧客の趣味嗜好が変われば、欠点がそのまま受け入れられるケースがあります。
収納が少ない物件
収納は多いに越したことはないと思われがち。しかし最近は、モノをなるべく減らしたいミニマリスト的な考えを持つ人も多く、収納スペースがないことはメリットになる。
素人感のある写真素材
ポスターやホームページなどで使用される写真素材。プロが撮影したおしゃれでキレイな写真が良いと思いきや、消費者の体験レビューでは、むしろ素人くさい写真が好まれる。
大多数にとっては見向きもされない特徴でも、一部の顧客は「まさにそれが欲しかった!」と言ってくれるかもしれません。
あれこれ欠点を繕うよりも、「ミニマリスト必見!収納スペースが無い物件です!」と、欠点を喜んでくれる顧客にピンポイントで攻めてみてはいかがでしょうか?
コツ③:「用途」が違う顧客を探す
上記2つのコツは、顧客の使用環境や趣味嗜好が変わっているだけで、製品の用途は変わりませんでした。冷蔵庫は冷蔵庫のまま。写真素材は写真素材のままです。
しかし根本的な用途が変わり、はるか遠くの領域で価値を見出されることもあります。
ポストイットの低粘着性
化学品メーカー大手「3M」で、強力な糊の研究をしていたところ、偶然に「よくつくけれど、簡単に剥がれてしまう変な糊」が出来上がった。
当初は役に立たないと思われてお蔵入りになっていたが、数年後にとある社員が、現在のポストイットの用途の価値に気がついた。
医薬品の副作用
医薬品には、本来は欠点となる副作用をメリットに変えた事例が複数ある。
例えば血管拡張薬として開発されたミノキシジルは、多毛症の副作用があり、発毛薬としても使われるようになった。
バイアグラは、もともとは狭心症の薬として開発されていた。狭心症への効果は認められなかったが、代わりに男性器の血流を促進し、男性機能の改善に効果があると判明した。
この手の、全く異なる用途が発見される事例は、偶然の産物であることが多いです。思いがけない幸運を手にする力という意味で、「セレンディピティ」と呼ばれたりします。
桁違いの成功につながる可能性を秘めていますが、狙って成功させるのは至難のわざ。日々アンテナを高くして、ビビッとくる発見を待つことになるでしょう。
≫【再現可能】セレンディピティの意味とは?狙って起こす5つの法則を解説します
【注意】個性にならない「ただの欠点」もある
「欠点は個性だから、殺さず活かそう!」が本記事の趣旨ですが、流石に「コレはアカン!」という欠点もあります。誰の目からみても欠点であり、個性とは呼べない特徴です。
欠点にしかならない特徴の例
- 汚い
- 痛い
- 嫌われる(大多数に嫌われても、特定の層に好かれるならアリだが)
- モテない(大多数にモテなくても、特定の層にモテるならアリだが)
キレイに線引きできる定義はなさそうですが、「人間の根源的な欲求に反している」という点では、共通しています。
こういった欠点は、他の長所でトレードオフにできないこともないですが、かなり厳しいと思います。ちょっとやそっとの長所では、カバーしきれません。
職業で考えてみるとイメージしやすいでしょう。高給だからと言って、汚い仕事や、痛みを伴う仕事、家族や友人から後ろ指さされる仕事に、手を挙げる人はそうそういません。
こういった特徴は、さらけ出したところで、マイナスの結果にしかなりません。
≫【どれ使う?】欲求の種類を8つの理論から濃厚解説|欲求を満たせばビジネスは成功する
個人の生き方でも欠点は生かすべき
本記事はビジネス文脈で書いていますが、むしろ個人こそ、欠点を隠し、欠点を改善しようと、悩んだりもがいたりしているのではないでしょうか?
しかし欠点を生かすべきなのは、個人の人生でも同じです。
わたしだって恥ずかしいコンプレックスがないわけではありません。昔は大いに気にしていましたが、今では欠点が問題にならないような生き方を選ぶようにしています。
欠点がデメリットにならない職種を選ぼう
あなた自身も気づいているかもしれませんが、欠点を改善したところで、その特徴を長所にしている人には絶対に敵いません。
例えばわたしは、リーダーとして人を引っ張るのが苦手です。社会人になる前は、リーダーになる機会をなるべく避けて生きてきました。
しかし世の中には、学生時代から率先してリーダーに手を挙げてきた、生まれながらのリーダー気質もいます。
苦手を克服すれば、普通のレベルにはなれるかもしれません(実際に5人程度のマネジメント経験はある)が、生粋のリーダーには一生追いつけないでしょう。
しかしリーダー気質の人の中には、大雑把で細かいところまで思考しない人や、デスクで細かい作業をするのが苦手な人が少なくありません。
一方でわたしは、深い思考や細部まで気を配る作業が得意です。自分の長所と短所に気がついてからは、リーダーとしてキャリアを歩むことをやめました。
欠点を克服することが前提となるキャリアを選ぶのは、得策ではありません。そうではなく、欠点がデメリットにならず、長所を発揮できるキャリアを目指すべきです。
欠点を長所と思ってくれるパートナーを選ぼう
またパートナー(主に結婚相手)を選ぶ際は、欠点を欠点と受け取らない人を選ぶべきです。
例えばあなたが、体の線の細い、内気なインドア派だったとしましょう。モテるイメージがある体育会系のアウトドア派の人に、コンプレックスを感じているかもしれません。
しかし異性にも当然インドア派はいます。ゴリゴリの体育会系が苦手な人も少なくありません。繊細な心を理解してくれそうな、ナヨっとした性格を好む人も多いのではないでしょうか。
もしあなたが欠点を隠し、無理してアウトドア派の異性を選んだら、後々辛い展開が待っています。あなたは家でゆっくりしたいのに、パートナーはキャンプに行きたがります。どちらかの希望を叶えると、もう一方は我慢を強いられます。
欠点はさらけ出し、その欠点を長所と見てくれるパートナーを選びましょう。両者が自然体で生活することで、お互いにとって心地よい生活になります。
体育会系には、体育会系。文化系には、文化系、パリピには、パリピ。同じような価値基準を持ったパートナーを選んだ方が、お互いが幸せに生きていけるのではないでしょうか?
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!