「あなたは、ビジネスの本質は何だと思いますか?」こんな質問をされたら、思わずドキッとしてしまいますね。
- 会社はお金儲けするところだから、「利潤の追求」とか?
- でも「お金儲け=ビジネス」は何だか違う気がする…。
多くの人はそんな風に思うかもしれませんね。
物事の本質というのは、大抵シンプルなもの。ビジネスの本質とはズバリ、「顧客へ価値を提供し、その対価を得ること」です。
大そうな役職についている人でも、ビジネスとは何かを答えられる人は多くないかもしれません。知らずに生涯を終える人もたくさんいます(ちょっと大げさ)。
この記事ではビジネスの本質を、具体例を使って説明しています。ぜひ最後まで読んで、あなたの中で腹落ちさせてください!
ビジネスの本質とは
ビジネスという言葉の定義は、広辞苑によれば、
ビジネス【business】
仕事。実務。事業。商業上の取引。
広辞苑より引用
となっています。
まぁそうなんでしょうけど、これでは本質は見えてきません。
「ビジネスとは、仕事のことです!」なんて言ったところで、「おお、なるほど!そういうことか!」とは誰も思いませんよね。
ビジネスの本質は「顧客への価値提供」
ビジネスの本質は、「顧客へ価値を提供し、その対価を得ること」です。提供する価値が大きくなるほど、得られる対価も大きくなります。
そして、「社会に悪影響を与えない(できる限り社会に良い影響を与える)」ということが、ビジネスが成立する条件になります。
「ビジネス=利益の追求」ではない
よく会社の目的は、「利潤の追求」と言われています。そのため「ビジネス=利益の追求」というイメージが頭に浮かぶ人が多いでしょう。
ですが、「ビジネス=お金儲け」と考えたら、ビジネスとはとてもおぞましい存在になってしまいます。
- 耐震強度を偽装して、安く住宅を作ってお金儲けをする違法建築業者は、ビジネスをしていると言えるでしょうか?
- 食品の産地を偽って、安い海外産の原材料を使っていた食料品メーカーは、ビジネスをしていると言えるでしょうか?
このような不正を、「バレなかったら儲かるからビジネスだ」と正当化するわけにはいきません。「ビジネス=利益の追求」という考えは、どうやら真理ではないようです。
ドラッカーが考えるビジネスの本質
マネジメントの父として知られる、「ピーター・F・ドラッカー」は、ビジネスの本質についてこう表現しています。
全ての企業を含めた組織は、社会という大きな生命体の一器官(organ)であり、社会貢献をするために存在する
『マネジメント – 基本と原則』より引用
「製品やサービスを通し、社会に価値を提供すること」と言い換えられますね。
社会というと広い言葉に聞こえてしまいますが、「顧客の大小に関係なく、誰か1人であっても、その人に『ありがとう』と言ってもらえることをする」ということです。
もちろん社会全体でプラスの価値をもたらさなければなりません。誰かがプラスになっても、社会全体でマイナスを被るような悪徳ビジネスはNGです。
利益はビジネスを継続させるための条件に過ぎない
ドラッカーは「企業=利益追求」という考え方をかなり強めに否定しています。
利益とは、企業が事業(社会貢献のための活動)を継続するための最低条件に過ぎません。お金儲けそのものがビジネスではないのです。
ただし、たくさんの利益を稼ぐことが否定されているわけではありません。利益は顧客に与えた価値の大きさを表すバロメーターでもあるからです。
真っ当な社会貢献によって多くの利益を得たのであれば、それは社会により大きな価値を提供できた結果です。
なおドラッカーは著書『マネジメント』のなかで、ビジネスの真に迫る考えをズバズバと述べています。この骨太なビジネス哲学は、ぜひ押さえておきたいところ。
「ドラッカーの『マネジメント』をわかりやすく要約&濃厚解説【ビジネスマン必読】」は少し長い記事ですが、ぜひ興味がある人は合わせてチェックしてみてください。
近江商人の「三方よし」に見るビジネスの本質
もう一つの例に、江戸時代から現代に伝わる「三方よし」という経営哲学があります。
「三方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という意味。近江商人が好んで使っていた考え方で、現代では日本5大商社の伊藤忠商事の企業理念になっています。
売り手よし
「売り手よし」は、売り手に利益が残るという意味になるので、基本的には満たされます。
たまに買い手の立場が強すぎて、売り手が赤字で提供させられるようなケースがあります。これはビジネスとは呼べませんね(パワハラです)。
買い手よし
「買い手よし」は、顧客が購入した商品から便益を得ているという意味になります。
全く使い物にならないものを騙して売るような商売は、ビジネスではありません。リボ払いや、高額な信託報酬をぼったくる投資信託は、ビジネスとは呼べないのかもしれませんね。
世間よし
「世間よし」とは、その商売によって世間全体にプラスの影響を与えるという意味です。
裏を返せば、社会にマイナス影響は与えてはいけないわけです。儲かるからと言って、公害を垂れ流すような商売はビジネスとは呼べません。
【具体例で解説】顧客の価値とは何か?
ビジネスの本質は、「顧客へ価値」を提供し、その対価を得ることです。提供する「価値」が大きくなるほど、得られる対価も大きくなります。
では、「顧客の価値」とは一体何なのでしょうか?
顧客の価値=経済学の「効用」で説明できる
経済学には「効用」という便利な用語があります。
消費者が製品やサービスを消費することで得られる「主観的な満足度」を指す用語です。
- 楽しい
- 嬉しい
- 美味しい
- 気持ちいい
- 安心した
- 痛みが和らいだ
といった、顧客にとって好ましい影響は、全て「効用」に含まれています。なお「主観的な満足度」なので、同じサービスでも人によって効用の大きさは異なります。
また同じ製品を繰り返し消費すると、だんだん効用が上がりづらくなることを、「限界効用逓減の法則」と呼びます。1個目のおまんじゅうは嬉しいが、2個目、3個目となるにつれ、嬉しさは減っていきます。
「効用」=「顧客の価値」と捉えて差し支えないでしょう。当然ながら、高い効用ほど高い価値になり、大きな対価を貰えるようになります。
具体例①:ブライダルで考える顧客の価値
ブライダル、すなわち結婚式は、1回で数百万円とかなり高額。友人は500万円かかったとか。(我が家は結婚式はしませんでした…)
ここでの顧客の価値は、「結婚式にお金を払う夫婦にとっての価値」と捉えます。
結婚式による顧客の価値は、「夫婦にとって、一生に残る思い出を作ること」といったところでしょうか。ここに500万円払う価値があるということになります。
では結婚式の中身を分解してみましょう。こんな感じでしょうかね。
- 食事
顧客の価値:出席者に美味しい料理を食べてもらって、良い気持ちになってもらうこと - お花
顧客の価値:式に彩りを加え、ビジュアルとしての華やかさをプラスする - 神父の誓い言葉
顧客の価値:式に儀式要素をプラスし、この結婚が正式なものになったと印象付ける
さて、これら3つが仮にバラバラに提供されるとしたらどうでしょう?
単価はグッと下がり、合計しても式全体の費用には遠く及ばないでしょう。
それは顧客である新郎新婦にとって、個々の提供価値よりも、「一生に残る思い出を作ること」の価値の方がずっと高いからです。
ちなみに顧客がある目的を達成するのに、複数の商品やサービスが必要になる場合は、パッケージにした方が提供価値が上がる傾向にあります
具体例②:ボイストレーニングで考える顧客の価値
仮にあなたがボイストレーナーの仕事をしているとしましょう。
次のレッスンを提供しているとしたら、どれが一番顧客にとって価値があると思いますか?
- レッスンメニュー①
:歌が確実に上手くなるレッスン - レッスンメニュー②
:カラオケで95点以上が確実に取れるようになるレッスン - レッスンメニュー③
:芸大の声楽科受験に合格できるようになるレッスン
きっと【③→②→①】の順番で、顧客の価値が大きいでしょうね。当然レッスン料も③が一番高くもらえるでしょう。
サービスの内容はさほど変わらない場合でも、より具体的な価値を与えるサービスの方が、顧客の価値が大きくなる傾向があります。
顧客の価値を大きくする方法
「顧客の価値」について、かなり理解の解像度が上がったのではないでしょうか?
顧客の価値を高めるには、より上位のニーズを把握し、そのニーズを捉えた商品を開発するのが適切なアプローチです。
あなたがお花屋さんだとしましょう。男性のお客さんに「花束が欲しいですけど」と言われたら、こういう風にニーズを聞いていきます。
ただの花束であれば、価値は数千円程度でしょう。
女性に喜んでもらえる花束であれば、もう少し高く、1万円くらい払ってもらえるかもしれないですね。
もしプロポーズで渡したら、確実にOKが貰える花束があるとしたらどうでしょう?お花+αの何かが必要かもしれませんが、10万円くらい貰えるかもしれないですね。
顧客のニーズに「なぜ」を繰り返し、その最上位の価値を満たすことが、価値を大きくし、利益を大きくする方法というわけです。
どうでしょう?結構シンプルな考え方じゃないでしょうか?
「個人」と「法人」における顧客価値の性質の違い
顧客の価値の性質は、「個人」と「法人」で大きく異なります。それぞれの基本的な考え方を見ていきましょう。
「個人」の顧客価値
個人にとっての顧客の価値は、最終的には「人生の幸福度を上げること」になります。
そのため価値の形は雑多で、「美味しい」「愛する人と時間を過ごす」「優越感に浸れる」など、非常にバリエーションが多くなります。
ただし法則性は存在します。下記の「マズローの欲求段階説」によれば、人間はまず低次の欲求から満たそうとします。
重い病気で生命の危機に晒されている人は、その病気を取り払うことがもっとも高い価値になります。余命1年と宣告された病気を治せることへの価値が、とてつもなく大きくなることは想像に難くないでしょう。
そのため、低次の欲求ほど手堅いビジネスが多い印象があります。情報商材でよくある稼ぐ系コンテンツや、特に高価な買い物になるマイホームは、「安全の欲求」に属します。まずは低い欲求を満たす顧客価値から検討しましょう。
ただし、日本のような豊かな国の場合は、生命の危機にさらされているような状況や、身の安全が保証されない状況は稀です。SNSのような「承認欲求」を満たすサービスが受け入れられるようになったのは、そのような背景があります。
なお重い病気にかかっているわけでもない限りは、富裕層の人ほど低い欲求は既に満たされています。高い金額を払ってもらいやすいのは、「自己実現の欲求」を満たすビジネスだったりします。
あなたのターゲット顧客が、どの欲求を満たそうているかを知れば、顧客価値を最大化するための施策を絞り込めるでしょう。
≫【どれ使う?】欲求の種類を8つの理論から濃厚解説|欲求を満たせばビジネスは成功する
「法人」の顧客価値
法人にとっての最終的な顧客の価値は、「利益」になることがほとんどです。
利益に直結する要素は、「売上を上げる」「コストを下げる」の2つしかありません。さらに分解していくと、下の図のようになります。
節税をしてコストを下げるのも良し。営業職の人を採用できるようにすることで、機会数を増やすのも良し。
業界によって細かいロジックは変わってきますが、大局では、この中のどれかの要素に絡む施策でなければ顧客の価値につながりません。
≫【シンプルに考えよ】売上のロジックツリーを解説。売上を上げる5つのレバーを押さえよう
【まとめ】ビジネスの本質とは
ビジネスの本質は、「顧客へ価値を提供し、その対価を得ること」です。
ただし、「社会に悪影響を与えない(できる限り社会に良い影響を与える)」ということが大前提になります。
そして、提供する価値が大きくなるほど、得られる対価も大きくなります。価値を大きくするためには、顧客のより高次のニーズを満たす商品開発が必要です。
この考え方が腹落ちしているビジネスマンは、考えに一本の筋が通っていて、骨太な考え方ができるようになります。ぜひ繰り返し思い出してみてくださいね。
ちなみに顧客の価値は「バリュープロポジション(Value Proposition)」とも呼ばれます。↓の記事で、バリュープロポジションを作るためのフレームワークを紹介しています。
≫【あなただけの勝ちパターン】バリュープロポジションの作り方。そしてUVPへ昇華させる方法
【最後に余談】地球規模で考えるビジネスの本質
(ここから先はわたし個人の考え方になるので、スルーしてもらって大丈夫です)
ここまでは、一つのビジネスオーナー(企業や個人)が考えるべきビジネスの本質をお話ししました。ですが、地球規模に視座を広げてビジネスの本質を考えると、別の考え方が浮かんできます。
地球規模でみた場合、ビジネスの本質は「資源をより効率的に分配すること」だと考えています。
少しわかりにくい言葉を使いましたね。資源とは水や石油のような物理的な資源もそうですし、人間が費やす労力も含まれます。
「より少ない資源で、大きな成果を生み出せるように、資源を効率的に活用できる仕組みを発明すること」がビジネスだと考えています。
地球の資源は常に一定である
この考え方のキーになるのは、「エネルギー保存の法則」と「質量保存の法則」です。
エネルギー保存の法則とは…
「エネルギーは、ある形態から他の形態へ変換する前後で、エネルギーの総量は常に一定不変である」とする法則のこと
質量保存の法則とは…
「化学反応の前と後で物質の総質量は変化しない」とする法則のこと
カンタンに言えば、1万年前も現代も、地球上に存在するエネルギーの総量は変わらないし、物質の総量も変わっていないのです。(厳密には違うのかもしれませんが、当方文系なのでご容赦を)
ですが、今と昔でこんな違いが生じています。
1万年前は500万〜800万人だった世界人口は、100億人に迫ろうとしています。実に1000倍以上。農業革命以降、効率的に食糧を生産できるようになったからです。
600kmある東京ー大阪間は、かつて歩いたら半月はかかっていただろう距離。今は新幹線で2時間半。これは鉄の塊を高速で動かす技術を生み出したからです。昔は鉄なんて木の枝の先につけて武器にするくらいしかできなかったのに。
このような変化は、資源を効率的に使える技術が発明されたからです。資源の総量は変わらなくても、使い方を工夫するだけで、とんでもなく大きな価値を生み出せるのです。
資源の効率的な分配がさらなる価値を生む源泉に
かつては人口のほとんどが農民でしたが、今は人口の1%もいません。農業機械の発達により、1人の人が収穫できる農作物の量が何百倍にもなったからです。
サッカーコート3つ分もある巨大なコンテナ船は、わずか20人の乗組員で運行されています。コンテナ船の登場で、海運業に携わる人の数は激減しました。
こんな風に、資源の効率的な分配が進むと、人間は従来の労働から開放されます。ですが「技術に職を奪われた」と悲観的な捉え方をする必要はありません。
従来の労働から開放された人々は、もっと大きな価値を生む産業へシフトしていきます。エンジニアやデザイナーといった新しい職種に従事する人が増えるわけです。
もっと資源を効率的に活用できる新しい産業に従事する人が増えれば、世界はより大きな価値を創造できるようになります。
ビジネスとはすなわち「資源をより効率的に分配する発明により、さらなる価値を創造する活動」と言えるのではないでしょうか?
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!