社会人の教養

【超わかりやすく要約】イノベーションのジレンマとは?克服方法を解説【事例あり】

設立して間もないIT企業に、伝統ある大企業があっさり負けてしまう事例がたくさんあります。新興企業に易々と参入を許した大企業は、さぞかしマヌケだったんだろうと思いますよね?

実はそうではありません。優秀な企業ほど、新技術を用いた「破壊的イノベーション」の波に乗れない構造的な要因があるからです。それが「イノベーションのジレンマ」です。

昨今は圧倒的なスピードでITが進化しているので、ますます既存企業は、破壊的イノベーションに晒されます。乗りこなせば繁栄し、見過ごせば破滅します

この記事では次のことが分かります。

  • イノベーションのジレンマとは何か?
  • 破壊的イノベーションとは何か?
  • イノベーションのジレンマを克服し、企業を成長させる方法は何か?

現代の企業における「盛者必衰の理」を説いたイノベーションのジレンマは、知っておかなければならない教養です。

分厚い本の要点をコンパクトにまとめているので、本を読むが億劫な人はチェックしてみてください

イノベーションのジレンマとは?

イノベーションのジレンマとは…

大企業が新興企業に市場を奪われ、市場から駆逐されてしまう現象を紐解いた理論です。

既存市場を一変させてしまう「破壊的イノベーション」は、いつでも局所的な小さな市場から花開きます。

小さな市場でも果敢に攻められる新興企業はメキメキと力をつけ、いずれ大きな市場を制圧できるまでに成長します。そのとき、破壊的イノベーションを横目で見ていた大企業は、一気に市場の地位を追いやられます。

優秀な経営をしている会社ほど、破壊的イノベーションに対応できないことから、「イノベーションのジレンマ」と呼ばれています

日本人でも身近な例では、

  • ガラケー
  • カメラ
  • レンタルビデオ

などは、破壊的イノベーションにより、駆逐された市場と言えるでしょう。

ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が発表し、同名の著書は世界中のビジネスマンに愛読されています。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

イノベーションのジレンマを理解する上で、もっとも大事なキーワードは、「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」です。

持続的イノベーション

持続的イノベーションとは…

その製品の既存顧客が評価している性能指標を向上させる技術を「持続的技術」と呼びます。持続的イノベーションとは、持続的技術によって起こる新しいビジネスのことです。

わかりづらい説明ですみません。例を交えて解説します。

例えば、かつてのガラケー市場のように、

  • 「軽さ」
  • 「バッテリーの持ち」
  • 「カメラの画素数」

を向上させるのは持続的イノベーションに当たります。既存のお客さんが気にしているような顕在化した評価指標を向上させる類ですね。

世の中の大半のイノベーションは、持続的イノベーションに属します。

持続的イノベーションの特徴

  • 既存顧客のニーズを調査することで、競争力のある製品が開発できる
  • 市場規模を予測し、成長の計画を立てることができる
  • 先駆者になるか、追随者になるかは、業績には影響しない
  • 大企業が有利であり、大企業が新興企業に負けることはほとんどない

破壊的イノベーション

破壊的イノベーションとは…

従来の顧客に求められていた性能指標とは、全く異なる性能や特徴を持った技術を「破壊的技術」と呼びます。破壊的イノベーションとは、破壊的技術によって起こる新しいビジネスのことです。

初期のiPhoneは、携帯電話にPCの機能を持ち込みました。これはそれまでの性能指標にはない新しい特徴です。iPhoneは明らかに破壊的イノベーションに属する製品でした。

破壊的イノベーションの特徴

  • 初期は既存市場が求める性能水準を満たさない
  • 既存製品よりもシンプル・安価・便利といった別の特徴がある
  • 当初は誰がその製品を欲しがるかわからず、市場規模は全く判断がつかない
  • それまでなかった小さい新市場からスタートするが、のちに大きな市場を飲み込む
  • 先駆者が圧倒的に有利で、莫大な利益を得る

ガラケー VS スマホの事例から考察

携帯電話市場で、「ガラケーからスマホへの大転換」が起こった2010年前後を事例に、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を説明します。

①持続的イノベーションが性能過剰になる

持続的イノベーションによる性能改善が進み、顧客が求める性能水準を超えてしまう局面が訪れます。それ以降は、性能の向上にお金を払う価値はありません。

ガラケー VS スマホの事例

  • ガラケーは、重さやバッテリーの持ちを改良し続けていたが、あるとき、顧客が求める水準を超えてしまった

②破壊的イノベーションが登場する

このとき、現行市場とは全く異なる技術を持った破壊的イノベーションの製品が登場します。当初は顧客に求められる性能を満たしていないので、ほとんどの顧客は購入に至りません。

ただし、破壊的イノベーションの製品は、既存製品とは全く違う特徴を備えています。そこに目をつけた少数の顧客に購入されて、小さな市場から産声を上げます。

ガラケー VS スマホの事例

  • iPhoneが出た当初は、バッテリーは半日しか持たないし、重いし、目立って使えそうなのはPCメールくらいだった
  • 国内の業界関係者は、絶対に流行らないと高を括っていた

③破壊的イノベーションが既存市場を駆逐する

破壊的イノベーションの製品が、次第に主流顧客が求める性能に追いつきます。

そうなってしまったら、既存製品よりも良い特徴を備えた破壊的イノベーションの製品が、圧倒的に売れるようになります。破壊的イノベーションの隆盛によって、既存製品は市場から駆逐されます。

ガラケー VS スマホの事例

  • iPhoneのバッテリーや重さは改善され、普通に持つのが苦じゃないレベルになった
  • iPhoneアプリが爆発的に増え、利便性が向上したことで、ガラケーは駆逐された
  • スマホ市場の先駆者Appleは、企業価値世界No.1の企業に成長

iPhone登場から10年以上経ちましたが、この先はどうなるでしょうか?

現代のスマホの開発競争は持続的イノベーションによるものがほとんどです。もし新興企業が超ハイスペック端末を開発しても、AppleやSamsungがすぐに追いつき、市場の情勢は変わりません。

しかしながら、スマートグラスや、ARを用いた全く新しいデバイスが登場したときに、市場は一変するでしょう。そのとき市場を切り開いた先駆者は、かつてのAppleのような巨万の富を築くかもしれません。

破壊的イノベーションの5原則に見る大企業の敗因

イノベーションのジレンマは、実績ある大企業が、破壊的イノベーションを見過ごし、いずれ破壊的イノベーションによって市場を追われてしまう現象です。

イノベーションのジレンマを提唱したクリステンセン氏は、「破壊的イノベーションの5原則」を無視したり、逆らったりした企業が失敗すると唱えています。

必ずしも「大企業=失敗」ではありませんが、破壊的イノベーションの5原則を見ると、大企業が負けてしまう構造が見て取れます。

破壊的イノベーションの5原則

  1. 企業の意思決定は顧客が決めている
  2. 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
  3. 存在しない市場は分析できない
  4. 既存組織の能力が足枷になる
  5. 技術進歩が顧客が求める性能を超えてしまう

原則①:企業の意思決定は顧客が決めている

企業は、経営資源を自分でコントロールしていると思っていますが、実際には顧客と投資家を満足させるように資源配分を決定しています。

優秀な企業ほど、利益を追求するために、顧客のニーズを満たさないアイデアを排除するシステムができています。このシステムは、持続的イノベーションを成功させる上では有効ですが、破壊的イノベーションでは足かせになります。

当初の破壊的イノベーションの製品は、既存顧客が求める性能に満たないので、既存顧客に耳を傾けても全く関心を示しません。優秀な企業ほど、破壊的イノベーションへの需要を見逃してしまいます

原則②:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない

企業は資金調達をして、それに元手にお金を増やさなければならないので、構造的に成長し続ける必要があります。企業が大きくなるほど、成長に必要とする市場規模は大きくなります

売上100億円の企業が10%成長を目指すならば、10億円の売上が見込める市場規模でOKです。しかし、売上1兆円の企業は、1,000億円を売利上げる巨大な市場が必要です。

しかしながら、破壊的イノベーションによって初めて誕生する市場は、すべからく小規模な市場なので、大企業にとっては役不足になってしまいます。

大企業は破壊的イノベーションによって起こった新市場が、うまみを持つまで成長するのを待つことになりますが、そうなっては後の祭りです。

先行者利益を逸するばかりか、破壊的イノベーションで勢力を伸ばした新興企業によって、既存市場の立場までかっさらわれてしまいます。

原則③:存在しない市場は分析できない

優秀な企業ほど、綿密な調査と分析を経てからプロジェクトのGOを出します。持続的イノベーションであれば、既存顧客の需要から収益を予測できるので、合理的なアプローチです。

しかしながら、破壊的イノベーションが最初に受け入れられる市場は、事前には察知することができません。実際に市場に製品を出してみて、市場からフィードバックを受けてから、初めて誰に受け入れられる製品なのかが分かります。

優秀な大企業ほど、データがないのにデータを必要とし、収益もコストもわからないのに財務予測に基づいて判断しようとするので、当然うまくいきません。

原則④:既存組織の能力が足枷になる

破壊的イノベーションに対応するためには、相応の能力を持った組織が必要です。経営者は、優秀な人材に任せることを真っ先に考えますが、それだけで組織が破壊的イノベーションに対応する能力は養えません。

クリステンセン氏は、「資源・プロセス・価値基準」が組織の能力を決めると述べています。既存組織の能力が、破壊的イノベーションへの対応を難しくする要因となってしまいます。

資源

資源は人材や資金のほか、設備、ブランド力、情報、取引先などが含まれます。資源は他の2つに比べて動かしやすい特徴があります。

もちろん、資源を得られなければプロジェクトは失敗しますが、能力がある人材を用意しても、役に立たないプロセスや価値基準の中で働かせたら失敗は免れません

プロセス

プロセスは、資源をインプットにして、価値の高いサービスをアウトプットするための工程です。プロセスは特定の業務を効率良く対応するためにできているので、別の業務に適用すると、効率が悪いお役所仕事になりがちです。

優れた既存のプロセスが、破壊的イノベーションに対応するための業務を拒むように機能します。

価値基準

価値基準は、複数のアイデアがあったときに、優先順位をつけるための基準です。

優良な企業ほど、次の2つの価値基準を持つようになり、破壊的イノベーションを遠ざける結果になります。

  1. 既存市場は競争により利益率が低くなるので、性能を向上させて、高利益率の上位市場を狙うようになる
  2. 企業が成長すると、小さい市場では成長ニーズを満たせず、大きな市場を求めるようになる

以上の3点から、新興市場を追求する能力は、小規模な若い企業の方が優れています。

若い企業は資源は不足していますが、小規模な市場を受け入れる価値基準があり、低い利益率でも対応できるコスト構造があります。綿密な調査を必要とするプロセスもないので、経営者が直観的に事業を進めることができます。

大企業は資源は潤沢ですが、プロセスと価値基準にそぐわないために、破壊的イノベーションが起きた小さな市場を放棄することになります。

原則⑤:技術進歩が顧客が求める性能を超えてしまう

実績ある企業は、既存製品の競争力をつけるために、性能向上に邁進します。価格を下げて競争力を得る方法もありますが、利益率が下がるのを嫌い、性能を上げて高単価で売ろうとします。

その結果、製品の技術が進歩するスピードが、顧客が求める性能向上のペースを上回る現象が起きます。そうなってしまうと、それ以上の技術の供給は、本質的には価値を生みません。

複数企業の製品性能が顧客の需要を越えたとき、顧客は性能の差で製品を選ばなくなります。製品選択の基準は、「性能→信頼性→利便性→価格」の順番で移っていきます。

破壊的イノベーションが顧客が求める性能に追いつく

その状況になったとき、もっとシンプルで安価な破壊的イノベーションが登場します。破壊的イノベーションは利益率が低いため、実績ある企業は手を出しません。

当初は大多数の顧客の期待に到底及ばず、見向きもされなかった破壊的イノベーションの製品が、次第に顧客が求める性能に追いつきます。

性能が選択基準ではなくなったあとは、信頼性が高く(基本的に製品は構造がシンプルな方が信頼性が高い)、便利で、低価格な破壊的イノベーションの製品が、市場を制圧します。

大企業は立場を追われ、より高性能で高単価な上位市場へと逃れていきます。いつしかそれ以上逃れる市場がなくなり、ゲームチェンジ(新興企業による市場の制圧)が完了してしまいます。

イノベーションのジレンマを克服するための5つの処方箋

破壊的イノベーションの5原則より、大企業が構造的に、失敗する理由を解説しました。大企業だけでなく、実績のある既存企業であれば、同じ構造に陥ります。

では、どのように破壊的イノベーションの大波を乗りこなし、失敗を避け、大きな成功を掴むことができるのでしょうか?

その方法を5つ紹介します。

イノベーションのジレンマの克服方法

  1. 既存顧客の声に耳を傾けない
  2. 小規模な組織に任せる
  3. 小さく始めて、試行錯誤を繰り返す
  4. 既存事業のプロセスや価値基準を適用しない
  5. 新しい特徴が評価される市場を見つける

対策①:既存顧客の声に耳を傾けない

通常は既存顧客が求める製品の開発に、資源が投下されます。しかしながら、破壊的イノベーションの製品は、既存顧客が評価する性能水準を満たさないので、既存顧客の声を聞くとニーズなしと判断されてしまいます。

既存顧客からは距離を取り、破壊的イノベーションが持つ別の特徴を評価してくれる顧客を相手にする組織に、プロジェクトを任せるべきです。

対策②:小規模な組織に任せる

大企業が目標とする利益を達成するためには、大きな市場が必要になりますが、破壊的イノベーションは常に小さな市場から花開きます。

市場が成長するまで指を加えて見ていたら、先行者利益は得られません破壊的イノベーションに直面した経営者は、誰よりも早く破壊的技術を商品化する必要があります

そのためには、小さい市場の小さな成果でも十分に魅力的に映るくらい、小さな組織にプロジェクトを任せましょう。独立組織をスピンアウトさせるのもありですし、適度な規模の企業を買収するのも有効です。

対策③:小さく始めて、試行錯誤を繰り返す

破壊的イノベーションが受け入れられる市場は、計画段階では知ることができません。事前に綿密な収支計画を立てて、その通り実行しようとするのは全くの無意味です。

第1号の製品は、短期間で低コストに仕上げて、すぐに市場に出しましょう。市場からフィードバックを得ることで、どこに需要があるのか学習することができます。

市場からのフィードバックに応じて試行錯誤をするのに、十分な予算を残しておくためにも、まずは小さく始めることが重要です。

対策④:既存事業のプロセスや価値基準を適用しない

「既存市場の製品」と「破壊的イノベーションの製品」を同じ組織内で扱うと、ある問題が生じます。「2つのコスト構造」と「2つの収益モデル」ができてしまうのです。

そうすると、収益性が高い既存製品の価値基準が優勢になり、それに従った資源配分プロセスが適用されます。これではどう足掻いても、破壊的イノベーションを追う組織には資源が配分されなくなります。

どんなに経営層が、破壊的イノベーションの重要性を説いても、プロセスと価値基準が伴わなければ現場は動きません。

具体的には、破壊的イノベーションを行う事業には予算がつかなかったり、人員が確保できなかったり、収益が低いために既存製品の部門より人事評価が低くなったりします。

既存事業のプロセスと価値基準から、破壊的イノベーションを追う組織を遠ざけましょう。やはり手っ取り早いのは、組織を独立させることです。

対策⑤:新しい特徴が評価される市場を見つける

破壊的イノベーションの製品は、当初は性能が低いので、既存市場の顧客には売れません。

既存顧客に受け入れられる水準まで破壊的技術をコツコツ磨くのではなく、破壊的技術の新しい特徴を評価し、受け入れてくれる新しい市場を見つけましょう。

破壊的イノベーションの製品には、既存製品より「低価格・信頼性が高い・便利」といった特徴を備えています。既存市場では短所になっている特徴が、セールスポイントになることもあります。

破壊的技術の商品化の課題は、技術ではなく、マーケティングにあります。

まとめ

今回は新規事業系ではトップクラスに有名な、「イノベーションのジレンマ」を紹介しました。大企業に勤めている人にとっては、耳が痛い話だったのではないでしょうか?

これからの時代は、技術進歩のスピードが格段に早くなるので、破壊的イノベーションに晒される機会がさらに増えます。そのときに、イノベーションのジレンマを教養として知っているかが、その会社の明暗を分けるでしょう。

イノベーションのジレンマとは…

  • 大企業が新興企業に市場を奪われ、市場から駆逐されてしまう現象を紐解いた理論のこと
  • 持続的イノベーションに邁進する大企業は、構造的に破壊的イノベーションに対応でないことが原因

破壊的イノベーションの5原則

  • 企業の意思決定は顧客が決めている
  • 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
  • 存在しない市場は分析できない
  • 既存組織の能力が足枷になる
  • 技術進歩が顧客が求める性能を超えてしまう

イノベーションのジレンマの克服方法

  • 既存顧客の声に耳を傾けない
  • 小規模な組織に任せる
  • 小さく始めて、試行錯誤を繰り返す
  • 既存事業のプロセスや価値基準を適用しない
  • 新しい特徴が評価される市場を見つける

参考書籍

イノベーションのジレンマは、同名の著書があります。もっと深く学びたい人は、ぜひ手にとってみてください。

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