あなたの身近に、「なんであんなに仕事ができないのに、出世できたんだろう?」と思う人はいませんか?
そんな人もかつては活躍していたから出世できたんです。でも今は、なぜだか知らないけど「無能」になってしまったのです。
「ピーターの法則」によれば、どんなに有能な人間も、いずれ全く活躍できない「無能」に成り下がります。使えない上司はピーターの法則に従い、「無能」に落ち着いたのです。
パッと聞いた感じだと、何を言ってるのかサッパリ分からないですよね。この記事ではピーターの法則を具体例を交えて解説しつつ、「無能」の回避方法を紹介しています。
人はいずれ必ず「無能」になるラインに到達しますが、意識すれば回避は可能です。
活躍できずに飼い殺される、惨めな晩年を送りたくない人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
ピーターの法則とは
ピーターの法則(Peter Principle)は、「どんな有能な人間でも、出世をしていけばいずれ必ず無能になっていく」と説いた法則です。
南カルフォルニア大学教授で教育学者のローレンス・J・ピーターと、レイモンド・ハルの共著、『ピーターの法則〈創造的〉無能のすすめ』の中で提唱されました。
特徴をざっとまとめると、次の通りです。
ピーターの法則の概要
- 有能な人は現ポジションで活躍できている限り、次のポジションに出世することになる
- いずれ自分が活躍できないポジションに到達したところで出世が止まり、無能と化す
- 組織の中の仕事は、まだ無能に到達していない人によって回っている
「企業であれ、政府であれ、組織は上層部にいくほど無能の巣窟。上層部は結局のところ成果につながるような仕事はしておらず、実際に組織を回しているのは、下層にいる構成員である」と同著書では述べています。
過激な説に聞こえますが、いずれ全ての人が「無能レベル(自分が活躍できなくなるポジション)」に辿り着いてしまう点は、理屈としては正しいように思います。
例えば、次のような質問を考えてみてください。上から順番に、頭の中で「YES」or「NO」で答えてみてください。
- 一メンバーとして、仕事をこなせますか?
- 2人の部下を持つ係長として、仕事をこなせますか?
- 10人の部下を持つ部長として、仕事をこなせますか?
- 100人の社員を抱える社長として、仕事をこなせますか?
- 10万人の社員を抱えるグループ企業の社長として、仕事をこなせますか?
この質問をさらに続けると、「日本を率いるリーダーになれるか?」「世界を率いるリーダーになれるか?」とエスカレートしていきます。
「それ以上はムリかなぁ」と思ったら、そこがあなたが無能レベルに到達するポジションなのかもしれません。やってみないことにはわかりませんが。
総理大臣が務まる人などそうそういないので、いずれはどこかの時点で無能レベルに到達するでしょう。
全ての人は無能レベルまで出世してしまう
組織の中で生きる人は、構造的にいつかは無能レベルに到達してしまいます。ピーターの法則によれば、これは基本的には避けられない問題です。
例えば、あなたがそこそこ活躍している一般社員だったとしましょう。
コレまた有能な課長がいて、その課長が部長に出世したとします。そうすると課長のポストが空くので誰かを昇格させることになりますね。
あなた以外に2人の課員がいます。1人はコミュニケーション能力に問題があり、すぐに他部署の人とケンカします。もう1人は、定年間近ですっかりやる気がありません。
つまりあなた以外の2人は、すでに無能レベルに達してしまっています。となれば、あなたが次の課長になるより他ありません。
こんな感じで、今のポジションで普通に活躍していれば、遅かれ早かれ出世することになってしまうのです。
そして、自分の力が通用しなくなるポジションに上がったところで、あなたは無能レベルに到達。あなたの出世はそこで止まります。
例外的に無能レベルに到達しない人もいる
構造的に組織に生きる全ての人は、いずれ無能レベルに到達します。ただしそうならずに活躍し続けられる人もいます。
例えば、本当は1万人を率いてリードできる実力を持った人がいたとしましょう。その会社の社員が1,000人であれば、最高位の社長にはそれ以上のポストがありません。
自分の無能レベルに到達するより先に、組織の天井まで来てしまった人は、例外的にピーターの法則からは外れます。
あなたの身近なピーターの法則
すでに想像はついているかもしれませんが、あなたの知っている人にも、ピーターの法則によって無能と化した人がります。
例①:万年課長おじさん
もう定年近くのおじさんなのに、出世せずにずっと課長ポジションに座っている人っていますよね。言いづらいですが、そういう人は無能レベルに到達してしまっている可能性が高いです。
おそらく万年課長おじさんは、他の若い課長よりも成績が芳しくないはずです。もし良い成績を出せる課長なのであれば、その人はずっと昔に部長に昇格していたはずですから。
例②:実業家が政治家に転身
イケイケの実業家が政治家に転身した後に、活躍した話ってあまり聞かないですよね。実業家としては有能だったけど、政治家としては無能だったということでしょう。
もっとわかりやすいのは芸能人からの政治家転身ですね。誰の目に見ても無能とわかる人がちらほらいます。
基本的に政治家になる人は、その前は有能だった人が多いので、さらに上を目指した結果、無能レベルに到達してしまった格好です。
ピーターの法則の回避する4つの方法
ピーターの法則を回避し、無能で惨めな人生を送らないための方法は、次の4つです。
ピーターの法則の回避方法
- 昇進を断る
- 想像的無能(無能なフリをする)
- 降格を許容する
- 専門職のキャリアを用意する(現職のまま昇給)
それぞれ見ていきましょう。
①昇進を断る
まず第一に、昇進を断り、今のポジションで活躍し続ける選択肢があります。
ただ同著書の中では、昇進を断るのは現実的ではないと説いています。昇進を断るのは社会的イメージが非常に悪く、周囲に軋轢を生んでしまうという理由でした。
個人的には、現代においては必ずしもそうでもないと思います。少なくとも私が勤めていた会社は、昇進を希望しないと伝えれば、そのようなキャリアを歩める会社でした。
向いていないと思うなら、断った方が賢明でしょう。
②創造的無能(無能なフリをする)
同書の中では無能なフリをして、昇進候補から外れるように振舞う「創造的無能」が推奨されています。わざとミスをしたり、みすぼらしい格好をするなど、如何わしい内容が多いのですが。
唯一まともだった方法は、飲み会などのコミュニケーションを絶ってしまう方法です。確かに会社の人付き合いを避ける人に、昇進の声がかかることはないので、アリかもしれません。
③降格を許容する
いつか無能なポジションまで出世してしまうならば、その一つ前のポジションに戻せば良いだけのこと。
一つ下のポジションなら活躍できた実績があるので、本人もイキイキと働け、会社にとってもハッピーです。
ですが、降格人事はそんな簡単に発動できるものではないので、現実的には難しいかもしれません。
④専門職のキャリアを用意する(現職のまま昇給)
ピーターの法則の事例は、管理職に登用されたときに起こるものがほとんどでした。メンバーから課長へ、課長から部長へ昇進したタイミングで無能が露呈するイメージです。
となれば、一メンバーのままスキルを伸ばして、昇級させる道があっても良いでしょう。メンバーとしては飛び切り有能でも、管理職が性に合わない人は間違いなく存在します。
ちなみに私の勤めていた会社は、管理職を望まない人には、専門職のキャリアが用意されていました。
自分の無能レベルがわからない人へ
多くの人は自分がどのポジションで無能レベルになるか、判断つかないと思います。やってみないとわからないですよね。
わたし個人のケースでいえば、5人の部下を持つマネジメント経験がありますが、それを超える人数はムリだと思いました。管理職は調整が仕事の大半になってしまうのが、それがさらに増えるのがどうしてもイヤでした。
ちなみに同著書の中では、無能レベルに達した人は、自分が悪いとは思ってはおらず、「自分なりに精一杯仕事をしている」と思っているケースが多いとも書いてあります。
わたしのように「向いていない」と気がつけない人も多いようです。
自分が「無能」にならないためには、自分の得手不得手をキチンと知っておくことが重要です。つまり自己分析をしっかりしましょう、ということです。
類似の法則
ピーターの法則と同様に、組織がだんだん無能になっていく法則として、以下の2つの類似法則があります。
ディルバートの法則(Dilbert principle)
ディルバートの法則は、「企業は損害を最小限にとどめるために、無能な人から管理職に昇進させる」という説です。
アメリカの漫画家であるスコット・アダムズが描いた風刺漫画のキャラクター名にちなんでいます。
同説によれば、上層部の人間は、企業の生産活動にはほとんど寄与しておらず、下層の人がその活動を担っています。となれば、製品の品質低下や、同僚や顧客を不愉快にさせるような無能な人が現場にいては、邪魔以外の何者でもありません。
さっさと害のない上層部へ送ってしまうというわけです。直感的には信じがたい(信じたくない)説ですが、端から見ると企業の上層部は、大した仕事もせず高給を貪っているようにしか見えるのかもしれません。
パーキンソンの法則(Parkinson’s Law)
パーキンソンの法則は、「人は与えられた時間めいっぱいまで仕事を引き伸ばす」という説です。
仮に2-3時間で終わる仕事でも、8時間与えられれば、その仕事に8時間費やしてしまうという意味です。(実際には時間だけでなく、予算も与えられれば使い切ってしまいます)
この法則を提唱したイギリスの歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンは、イギリス帝国が縮小しているにも関わらず、組織の人員が増えていることを発見しました。
1人当たりの仕事は減っているのに、総労働時間が増えているということは、それだけ仕事していない(無能な人)が増えていると言わざるを得ません。
同法則は、「【隙間の魔力】パーキンソンの法則とは?あなたの自由を縛る正体はコレだった」の記事で詳しく解説しています。
まとめ
今回は「管理職はいずれ全員無能になる。組織の上層部は無能の巣窟である」と、過激なことわりを説く「ピーターの法則」を紹介しました。
この説を全肯定するつもりはありませんが、部分的には真を捉えていると思います。
人には誰しも、「向いている仕事」と「向いていない仕事」があります。今まで活躍できた人が、職種が変わった瞬間に成果が出なくなることは珍しくありません。
ちなみに若き日のエジソンは電信技術師として働いていましたが、無能すぎてクビになったそうです。世界的な天才にも苦手なことはあるのです。
あなたの活躍できるフィールドはどこでしょう?キチンと自己分析をして、自分の得意なフィールドを見つけることが、「無能」を避ける最善の策です。
この記事を読んでくれるような勉強熱心な人なら、きっと無能の壁を乗り越えられると信じています!
参考書籍
今回の参考書籍は、法則名と同名の著書『ピーターの法則〈創造的〉無能のすすめ』です。
学者が書いた本としては、かなりライトな文体。ユーモアで書いたようにも感じられます。あまり深く考えずに、面白半分で読むのが良いと思います。
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
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新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!