「アーリーアダプター」という言葉を聞いたことありますよね?
なぜそんなに「アーリーアダプター」が注目を浴びるのかというと、アーリーアダプターをキッチリ獲得しないと、市場のほとんどの顧客を攻略できないからです。
「イノベーター理論」は、新市場の顧客をアーリーアダプターを含めた5つの段階に分けたマーケティング理論です。「キャズム理論」は、アーリーアダプターの先をなかなか攻略できない歯痒い状況を説いています。
事業戦略を立てる際は、イノベーター理論とキャズム理論が非常に役に立ちます。この記事を読むだけで、より戦略的な視点を持つことができます。
- イノベーター理論とは?
- ①イノベーター(別名:革新者) 全体構成比2.5%。
- ②アーリーアダプター(別名:初期採用者) 全体構成比13.5%
- ③アーリーマジョリティ(別名:前期追従者) 全体構成比34%
- ④レイトマジョリティ(別名:後期追従者) 全体構成比34%
- ⑤ラガード(別名:遅滞者) 全体構成比16%
- イノベーション理論から派生したキャズム理論とは?
- あなたがいま攻めるべきターゲット層を診断しよう
- 「イノベーター」と「ラガード」はケアする必要なし
- パターン①:まだ顧客が極端に少ない状態
- パターン②:初期ターゲット層の顧客獲得が伸びている状態
- パターン③:初期ターゲット層はある程度獲得できたが伸び悩んでいる状態
- パターン④:すでに市場の熱がピークを迎え、投資回収に入っている状態
- まとめ
イノベーター理論とは?

イノベーター理論とは…
新しい製品が市場に普及する過程を、5段階に分類したマーケティング理論。各段階で顧客の特徴が変わります。
イノベーション理論は、1962年にアメリカ・スタンフォード大学の教授エベレット・M・ロジャースが著書『イノベーション普及学』のなかで提唱しました。
よく耳にする「アーリーアダプター」は、この5段階にうちの1つです。
新製品が普及する順番は次の通り。
- イノベーター
- アーリーアダプター
- アーリーマジョリティ
- レイトマジョリティ
- ラガード
「需要感度が高い順番」と言い換えることもできます。以降の章で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
①イノベーター(別名:革新者) 全体構成比2.5%。

イノベーターは、カンタンに言えば、その分野のオタクです。
新しいものには誰よりも早く飛びつかなければならないと思っています。それが彼らのアイデンティティーなのです。
その製品が良いから買うのではなく、目新しいからとか、コレクションとして欲しいという動機で購入します。
イノベーターはこんな人
- iPhone3Gを、初日に並んで買うような人
- Apple製品だったら、とにかく買わなきゃ気が済まない人
そのため、イノベーターの反応が良いことは、その後の市場攻略には寄与しません。
②アーリーアダプター(別名:初期採用者) 全体構成比13.5%

アーリーアダプターは流行の最先端にいる人です。ただし「イノベーター」とは違い、製品の新しさそのものに着目するではなく、その製品を使用したときのメリットに着目します。
自らの持つ課題やニーズに積極的にお金を払って解決したいと考えていて、発信力が強い場合は「インフルエンサー」や「オピニオンリーダー」と呼ばれます。
アーリーアダプターはこんな人
- 流行る兆しが見えたときにいち早く取り入れていて、流行ったらもう次に移っているような人
- ブログやYoutubeで、新商品の紹介している人
新製品の市場の成否は、アーリーアダプターに受け入れられるかが試金石になります。
③アーリーマジョリティ(別名:前期追従者) 全体構成比34%

アーリーマジョリティは、新しいものを受け入れることに少しだけ慎重派の人たちです。慎重ではあるものの、良いものならすぐに取り入れたいと思っています。
アーリーマジョリティは、流行に乗り遅れたくないと考えており、アーリーアダプターの影響を強く受ける傾向があります。
アーリーマジョリティはこんな人
- 流行に敏感な人
- InstagramやYoutubeでフォローしている人がオススメした商品を買いたくなる人
「わたし結構新しい物好きですよ」と言う人は大抵ここに当てはまります。
④レイトマジョリティ(別名:後期追従者) 全体構成比34%

レイトマジョリティは、新たしいものに対して懐疑的な人たちです。
その市場が成熟して、周りに使っている人が十分いることを確認してから購入します。
レイトマジョリティはこんな人
- (偏見かもしれませんが)SNSをやっていない人
- (偏見かもしれませんが)テレビを良く見ている人
層としてはかなり多く、新しいものにあまり積極的でない人は、大抵がレイトマジョリティに属します。
⑤ラガード(別名:遅滞者) 全体構成比16%

ラガードは、もっとも保守的な層です。その製品が伝統化するまで購入しません。
新しいものに反感を持つような人たちも多く、「今あるもので十分だ」と自己解釈して、最後まで購入しないことも往々にしてあります。
ラガードはこんな人
- 最後までガラケーを持っているような人
- 何かにつけて新しいものに難癖をつけて非難する人
「老害」と呼ばれるような人は、ラガードである可能性が高いと思われます。
イノベーション理論から派生したキャズム理論とは?

キャズム理論とは…
アーリーアダプターの後に「キャズム(溝)」があり、この前後で顧客のグループを大きく二分されるという理論です。
具体的には、
- 初期市場の16%の顧客は、比較的購入してくれる
- その先の大多数が購入するに至るまでには、大きなハードルがある
ということです。
なお、この理論はハイテク業界が特に当てはまると言われています。
何故キャズム(溝)が発生するのか
「イノベーター理論」の5段階を思い出してみましょう。各層によって、顧客の購入動機が異なっていましたね。
市場 | 顧客層 | 購買動機 |
初期市場 16% |
イノベーター | 購入動機にいま流行っているかは関係ない。どんなにその製品がマイナーであろうと購入してくれる。 |
アーリーアダプター | ||
普及市場 84% |
アーリーマジョリティ | 前の層に普及したことを確認してから購入する。流行っていない商品は購入しない。 |
レイトマジョリティ | ||
ラガード |
物好きな一部の人は購入してくれたけど、そこで踊り場を迎えてしまうケースがよくあります。「イノベーター」と「一部のアーリーアダプター」だけが購入している状態です。
このような製品は「キャズム」を越えていません。キャズムを越えなければ、市場のほとんどの顧客に製品が受け入れられません。
キャズムを越えるためには、まず「アーリーアダプター」に商品を行き渡せる必要があります。その様子を見て、流行に比較的敏感な「アーリーマジョリティ」に普及し始めます。
あなたがいま攻めるべきターゲット層を診断しよう

「イノベーター理論」と「キャズム理論」をどうビジネスに活かしていくかが重要です。ビジネスの状況別に取るべき戦略の例を紹介します。
「イノベーター」と「ラガード」はケアする必要なし
まずはじめに、「イノベーター」と「ラガード」を攻める戦略は必要ありません。
「イノベーター」は、その分野のオタク。製品が気に入って購入するのではなく、自身がその分野に精通していることが義務だと思って購入します。イノベーターの反応はその後の市場拡大に寄与しないので、イノベーターを喜ばせる戦略は不要です。
「ラガード」は、頑固オヤジみたいな存在。新しいものを避けるので、ラガードの獲得コストは非常に高くつきます。ここは捨てましょう。運良く周りの人にサービスが普及すれば、渋々使ってくれるかもしれません。それくらいの感覚でいいでしょう。
パターン①:まだ顧客が極端に少ない状態
製品を世に出してから日が浅く、まだ顧客が少ないときは、製品を磨く時期です。今購入してくれている少数の顧客は、「イノベーター」か「アーリーアダプター」です。
使ってくれている「アーリーアダプター」にインタビューやアンケートをして、製品のフィードバックをもらいましょう。フィードバックから改善点を見つけ、アーリーアダプターが満足する製品を目指しましょう。
注意点は、誤って「イノベーター」の意見を聞かないこと。彼らの意見は、その後の販売拡大に意味をなさないので、「あ、この人イノベーターだ」と思ったら耳半分くらいで聞きましょう。
この段階では、顧客数は重要ではありません。少数でもアーリーアダプターを満足させる製品になれば、その後の顧客数ついてきます。
パターン②:初期ターゲット層の顧客獲得が伸びている状態
「アリーアダプター」に製品が受け入れられつつある状態と思われます。この調子で「アーリーアダプター」の獲得を続けましょう。
「アーリーアダプター」は、流行の最先端にいたい人。流行の兆しがあることを伝えると良いでしょう。例えば、テック系の雑誌やインターネットメディアに取り上げてもらうなどのPR活動が挙げられます。
また、「アーリーアダプター」は、その製品のメリットに着目します。
「この製品はどんな課題を解決し、使ったらどんなハッピーな人生になるか」を明確に訴求しましょう。製品のUIや、パッケージ、広告のキャッチコピーをブラッシュアップしましょう。
パターン③:初期ターゲット層はある程度獲得できたが伸び悩んでいる状態
「アーリーアダプター」の獲得が一巡し、キャズムを迎えている状態と思われます。
次に控える「アーリーマジョリティ」は、流行に乗り遅れたくないと考えている人です。この製品がいま流行っていることを訴求しましょう。
そのため、「インフルエンサーマーケティング」などが効果的です。ターゲットとしている顧客が憧れている芸能人やYouTuberを使って製品を紹介してもらうのがいいでしょう。
また、この層以降は製品の目新しさだけではなびかないので、より一層製品メリットの訴求を磨きましょう。
パターン④:すでに市場の熱がピークを迎え、投資回収に入っている状態
すでに「アーリーマジョリティ」にも受け入れられている状態です。取り残している「アーリーマジョリティ」と「レイトマジョリティ」の獲得が必要です。
彼らには、「この製品は、これだけ多くの人が使っているんだ」とアピールしましょう。ここまで来ると、他の人も使っている安心感が購買につながります。
知名度を上げるためにテレビCMも効果的です。(ここまで来ると、顧客獲得のコストが以前よりも高くつくようになっているはず)
さらなる新市場を開拓する頃合い
ここまで来ると、市場はすでにピークを迎えているので、この後の市場は下り坂です。次の一手を考える頃合いです。
この辺りで今一度、製品を使ってくれている顧客をよく観察してみましょう。想定していた用途とは違う、意外な使い方をしている人がいるかもしれません。
本来意図していなかった用途で使われていたということは、その用途に最適な製品が他にないからです。しょうがないので、あなたの製品で代用している可能性が高いです。
その意外な用途で製品を最適化すれば、新たな顧客層をターゲットにした市場を作り出せます。
まとめ

今回は、「イノベーター理論」と「キャズム理論」を解説しました。
イノベーター理論とは…
- 新しい製品が市場に普及する過程を、5段階に分類したマーケティング理論
イノベーター理論の5段階”
- イノベーター(構成比:2.5%)
- アーリーアダプター(構成比:13.5%)
- アーリーマジョリティ(構成比:34%)
- レイトマジョリティ(構成比:34%)
- ラガード(構成比:16%)
キャズム理論とは…
- 「アーリーアダプター」までとその先で、購買動機に大きな隔たりがあるという理論
- 新製品は、まず「アーリーアダプター」に行き渡らせる戦略を打たねば、その先の市場を攻略できない
やはり注力ポイントは、アーリーアダプターを獲得して、キャズムを越えることでしょう。多少なりともお役に立ててもらえれば嬉しいです。
類似理論:プロダクトライフサイクル

よく似た理論に、「プロダクトライフサイクル」があります。
新製品の市場を、
- 導入期
- 成長期
- 成熟期
- 衰退期
の4段階に分類して、「各々のステージで戦略を変えましょう」という内容です。
実は「イノベーター理論」と「プロダクトライフサイクル」は、同じことを別視点で見ているだけ。「成長期」に、売り上げが伸び悩む箇所がありますが、これがキャズムです。
- イノベーター理論:「顧客層」で分類
- プロダクトライフサイクル:「市場の趨勢」で分類
どちらも知っていると、より理解が深まると思います。興味がある人は、プロダクトライフサイクルの解説記事も合わせてチェックしてみてください。

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