『人を動かす』は、1937年発行と古い本ですが、今なお世界中のビジネスマンに愛される伝説の名著。ビジネスに必要なコミュニケーションの本質は、全てこの本に書かれています。
基本スタンスは、「ほめろ」「否定するな」「相手の話をよく聴け」。
ほとんどの人は、自分の主張ばかり相手に押しつけ、相手の間違いは厳しく指摘し、良い行いには大して褒めもしないものです。
かく言うわたし自身もそうでした。過去のわたしの性格は皮肉っぽいところがあり、相手の間違いを見つけたら、痛烈に指摘せずにはいられませんでした。それが正しいことだと思っていました。
ですが同書を読んで、考え方は180度変わります。わたしが相手を論破していたのは、単に自尊心を守りたかっただけなんだと気づけたからです。
『人を動かす』は対人コミュニケーションの最高の教科書です。本記事は膨大な本書の内容を、ぎゅ〜〜っと圧縮して、重要なポイントだけを厳選して解説しています。
こんな人にオススメ!
- お客さんと良い関係を築いて、売上を上げたい人
- 部下や同僚に気持ちよく働いてもらいたい人
- 家族や恋人と円満な生活を送りたい人
専門的なスキルはいらず、元手は一切掛からず、利益は莫大。この本にはあなたの人生を変える力があります。
『人を動かす』を超要約すると
『人を動かす』(原題 : How to Win Friends and Influence People)は、デール・カーネギーの著書。1937年発売。世界中で1,500万部超の、今なお愛されるビジネス書の古典的存在です。
同書には人を動かすための30の原則が記されています。
人を動かす3原則
- 相手を批判も非難もせず、苦情も言わない
- 率直で、誠実な評価を与える
- 強い欲求を起こさせる
人から好かれる6原則
- 誠実な関心を寄せる
- 笑顔で接する
- 名前は、当人にとって、最も快い、最も大切な響きを持つ言葉であることを忘れない
- 聞き手にまわる
- 相手の関心を見抜いて話題にする
- 重要感を与える – 誠意を込めて
人を説得する12原則
- 議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける
- 相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない
- 自分の誤りをただちにこころよく認める
- おだやかに話す
- 相手が即座に”イエス”と答える問題を選ぶ
- 相手にしゃべらせる
- 相手に思いつかせる
- 人の身になる
- 相手の考えや希望に対して同情を持つ
- 人の美しい心情に呼びかける
- 演出を考える
- 対抗意識を刺激する
人を変える9原則
- まずほめる
- 遠まわしに注意を与える
- まず自分の誤りを話した後、相手に注意を与える
- 命令をせず、意見を求める
- 顔を立てる
- わずかなことでも、すべて、惜しみなく、心からほめる
- 期待をかける
- 激励して、能力に自信を持たせる
- 喜んで協力させる
「いやっ、多すぎー!!」と思いますよね。
実は全ての原則には、「相手の『承認欲求』をコントロールする」という共通点があります。同書は盛大な「承認欲求」の解説本と言っても差し支えないでしょう。
30の原則を7つに分類
全30の原則を要約すると、次の7つに分類できます。ポイントを押さえるだけならこれで十分。
『人を動かす』のポイント7選
- ほめる
- 相手の関心のありかを特定する
- しゃべらせて、ひたすら聞く
- 相手に花を持たせる
- 相手を否定しない
- 自分はこき下ろす
- “YES”と言わせる質問を選ぶ
後の章ではこの7つに沿って、丁寧に解説していきたいと思います。
『人を動かす』を読んだ人のビフォーアフター
解説の前に、日常でありそうなになぞらえて、同書を読む前後のトークのイメージを見てもらいたいと思います。
ちょっとスクロールが長くなってしまうので、見たい人は↓を開いてみてください。
復旧すればすぐにお洗濯ができるようになります。お手数ではありますが、今一度説明書をご確認いただくことは可能でしょうか?
以降の章で、この7つのポイントをわかりやすく解説しています。
ポイント①:ほめる
『人を動かす』の中でももっとも多く登場するコミュニケーションの秘訣は、「ほめろ」です。
人は誰でも、自分を重要な人物だと思いたいのです。これは食欲や睡眠欲のように強力で、一般に「承認欲求」と呼ばれています。
世の中の人は、間違ったことには鬼の首を取ったように指摘してきますが、良いことがあっても大してほめてはくれません。この「渇き」を満たせば、相手を手中に納めることができます。
本書で度々紹介される人物にチャールズ・シュワッブがいます。彼は、1921年に38歳の若さで、鉄鋼王カーネギーからUSスチールの社長に迎えられました。
週給50ドルが高給だった時代に、1日で3,000ドル以上の給料を受け取ってたシュワッブは、特別頭が良いわけでも、鉄鋼に詳しいわけでもありませんでした。部下にもっと優秀な人物はたくさんいたのです。
彼がそれほどまでに重宝された理由は、ほめて伸ばすのが誰よりも上手かったから。決して叱らず、非難せず、ほめて励ます方が、はるかに優れたパフォーマンスをあげると知っていたのです。
ほめるコツ①:本心からほめる
ほめると言っても、わざとらしくお世辞を言うだけでは2流です。お世辞で承認欲求が満たされて気分をよくする人は少なくありませんが、見抜かれてしまえば鼻につきます。
ほめるときは、心から、本心から相手をほめるのがポイントです。嘘偽りなく、本当に感心したからほめるということです。
どんな相手であろうと、あなたより秀でた能力や知識を必ず持っています。あなたが完全な上位互換であることはありません。その点を見つけて、ウワッとほめてあげるのです。
どんなにヘマをやらかした仕事でも、部分的にはちゃんとできているところがあるはずです。そこをしっかりほめましょう。いやほめちぎりましょう。
ほめるコツ②:逆説の接続詞を避ける
相手に何か意見するときは、あらかじめほめておくと良い感じに伝わります。歯医者が術前に局部麻酔をするのによく似ています。
ですが、「今回の提案書は良い出来だったね。しかしこの図の見せ方はダメだね」と途中で逆説を挟むと、前段のほめ言葉が疑わしくなります。
「しかし」「ただ」「だが」などの接続詞の代わり、「そして」を使うのがオススメです。「今回の提案書は良い出来だったね。そしてこの図の見せ方を工夫したらさらに良くなるよ」と言えばOKです。
ほめるコツ③:期待をかける
「期待をかける」を具体的に言うならば、「あなたの本来の能力を持ってすれば、これくらい難なくクリアできるだろう」と相手に言ってあげることです。
この発言は、相手の承認欲求を揺さぶります。他人からの評価に答えたい、というよりその「評価にそぐわない結果を出して、自分の評価を下げたくない」と思うようになります。
逆に言えば、相手を罵り、低い評価を下すは、相手の向上心をまるっと摘み取ってしまうことになりますね。ダメ絶対。
ポイント②:相手の関心のありかを特定する
どんなに良い提案であったとしても、箸にも棒にもかからないことはよくあります。
- こんなにためになる話をしているのに、なぜうちの家族は自分の話に耳を傾けないんだろう?
- どう考えてもメリットがあるのに、あの客はなんでうちの商品を買ってくれないんだろう?
ってな具合ですね。
なぜそんなに素っ気ない態度を取られてしまうのか。それは、その話が相手の興味対象から外れているからです。ごくシンプルですが、これに気がつかない人がとっても多い。
ご飯を残してしまう子供に、「大きくなれないから食べなさい!」なんて言っても効果はありません(背を伸ばしたい子供なら別ですが)。
それよりも、近所のいじめっ子に仕返ししたいなら、ご飯を食べて強くならなきゃね、と言った方が子供の関心を引けるでしょう。
経理担当者に、「売上」が上がる提案をしても、大した興味は示しません。あなたが良かれと思った話は、相手にとって本当に良いとは限らないのです。
一方で営業部門に「売上」が上がる話が大歓迎されるのは、彼らの関心の中心が「売上」だからです。
関心を特定するコツ:関心のパターン理解する
相手の関心の持ちどころは、パターンとして3つほどありそうです。(同書内でこのようなパターン分けがされているわけではありません。同書内の事例から個人的な見解で分類しています)
相手が関心を持つテーマ
- 相手の「利益」になる話
- 相手が「好きなこと」に関する話
- 相手の「承認欲求を満たす」話
関心のパターン①:相手の「利益」になる話
ビジネスシーンでは、「①相手の利益」が関心の中心になるでしょう。
具体的には相手のKPIをよく理解することです。営業なら売上、人事なら採用への応募数などですね。
プライベートでは、相手にとって頭の痛い悩みを解決する話も、利益に含まれます。
関心のパターン②:相手が「好きなこと」に関する話
「②好きなこと」は、相手方の趣味の話であったり、家族の話であったりです。
それまでまともに取り合ってくれない相手でも、可愛がっている子供の話を聞けば、喜んでペラペラしゃべってくれるでしょう。
関心のパターン③:相手の「承認欲求を満たす」話
「③相手の承認欲求を満たす」とは、要するに自慢話を聞いてやるということです。武勇伝だったり、特定の分野の専門知識だったりします。
個人的な経験でも、お偉いさんは過去の大変だった経験とか、成功の法則なんかを喜んで話したがります。それを聞いてくれる人が好きになります。
逆に言えば、
- 相手の人はどのような分野に興味があるのか
- どんな悩みを抱えているのか
- 相手が企業担当者であれば、その人のKPIはなんなのか
そこを突き止めなければ、あなたはいつまで経っても蚊帳の外です。
ポイント③:しゃべらせて、ひたすら聞く
人は誰よりも「自分」に関心があります。人の話を聞いている時間より、自分の話をしている時間の方がずっと気持ちが良いのです。
ですが、自分が話したいことは大抵の場合、他人が聞きたい話ではありません。趣味の鉄道の話、学生時代に専攻していた微生物の話。
そんな話をしても相手をシラけさせるとわかっているので、話したい気持ちをずっと押し殺しているのです。
そんなときに、「鉄道がご趣味なんですか!それは興味深いですね。一つ、思い出に残っている鉄道の話を聞かせてくれませんか?」なんて言われたどうなるでしょうか?
きっと小躍りしたいくらいに喜んで、1時間でも2時間でも、時間が許すかぎり延々と話し続けるでしょう。話し終えたころには、自分を受け入れてくれた、もとい、渇きを潤わせてくれたあなたを大好きになっているでしょう。
あなたの身近にもいるはずです。飲み会で終始自分のことばかりしゃべる人。こういう人は大抵嫌われますが、当の本人はとても楽しそうで、いつも話に付き合ってくれる人を心の底から可愛がっています。
しゃべらせるコツ①:相手が話したいテーマを見極める
相手にしゃべらせるには、一つ前の「ポイント②:相手の関心のありかを特定する」が重要になってきます。
相手の人の周囲だったり、SNSだったりから、興味のある話や家族の話を入手して、それとなく会話に差し込んでいきます。
しゃべらせるコツ②:話を遮らない
そして相手がしゃべり始めたら、話が尽きないかぎり相手にしゃべらせましょう。
途中であなたの意見を差し込む必要はありません。相手は自分の話を気持よくしたいだけなんですから。
むしろ、相手が気持よくしゃべれるように、「へぇ〜」とか「おぉ!」とか、リアクションという名の合いの手を打っていきましょう。
ポイント④:相手に花を持たせる
これまでのポイントにも共通しますが、人は自分のことが好きなのです。相手の名前よりも自分の名前が好きだし、相手の話より自分の話の方が好きなのです。
当然、人のアイデアよりも自分のアイデアの方が大好きです。
誰だって相手の意見より、自分の意見を通したいと思っています。であるならば、最終考案者の栄誉は相手に譲ってしまえば良いのです。
あなたが本当に欲しいのは、「素晴らしい案を考えたという自己満足」ではなく、「相手を動かして得られる結果」ですよね。企画を経営層に承認してもらうとか、奥さんに新しい車を買うのを認めさせたいとか。
相手に思いつかせたことにして、最後の花くらいは相手に持たせてしまえば良いんです。あなたはアシストに徹して、シュートは相手に打たせましょう。
花を持たせるコツ:最終案の前に相談を持ちかける
アイデアを相手に思いつかせたことにするにはテクニックが必要です。イメージとしては、最終案の手前で、相手に相談を持ちかけます。
もしかしたら、あなたの中ではすでに結論は出ているかもしれません。ですが、「ああしろ」「こうしろ」「これはダメ」と結論を出してはいけません。
「こういう案はどうだろうか?」「これでうまくいくかな?どう思う?」と相手に意見を求めるのです。そうすれば、その案は最終的に相手の発案になるわけです。
兄弟がケンカせずにケーキを半分こする方法に、お兄ちゃんが半分に割って、弟が好きな方を選ぶというのがありますよね。これに似ています。
賢いお兄ちゃんなら割る方が損になると気づくかもしれませんが、親が分け与えるより文句が出ないのは間違いありません。
ビジネスでの実践方法①:社内編
ビジネスでの実践方法も紹介しましょう。
企画を社内承認に通すときは、事前に最終案を決裁者へ「相談」としてを持ち込みます。ここまではよくある話。
ポイントは、冒頭で「この案を承認してください」と言ってはいけません。
「こんな案を考えているんですが、ご意見いただけないでしょうか?」と、あくまで相手の意見を求めるスタンスにします。
ここで貰ったアドバイスを提案に盛り込んでおけば、最終提案時に、その決裁者はこちらの味方になっています。わたし自身、幾度となくこのパターンで社内承認を通しています。
ビジネスでの実践方法②:営業編
顧客向けの提案時にも同じパターンが使えます。
限られた担当者(大抵は1人でOK)にアポを取り、「御社にこういう提案を正式にしたいと思っているのですが、〇〇さんのご意見をいただけないでしょうか?」と打診します。
そうすれば、その担当者はあなたの支援者に早変わります。そうすれば、後々の顧客の決裁者に提案するときに、積極的に味方をしてくれます。
ポイント⑤:相手を否定しない
人はカンタンに自分の意見を変えることはままあります。
しかしながら人から誤りを指摘されたときは、地面に根を張ったように、意地でも自分の意見を変えません。過ちを認めたら自尊心に傷がつくからです。
そこを論破しようものなら、あなたの気は晴れるかもしれませんが、相手はあなたのことを恨み続けるでしょう。指摘が的確であるほど効果テキメン。
あなたの指摘が正しかったかどうは関係ありません。反感を持ったあなたに対して、利になるような行動は決してしません。
例えば、あなたが草野球の試合をしていて、ホームランを打ったとしましょう。しかし審判の判定はまさかのファール。
「どこに目つけてんだ!このクソ審判!」なんて言った日には、向こうはムキになって、意地でも判定を覆しはしないでしょう。
穏便に、「あれぇ、こっちからは入ったと思ったんだけどな〜。でも俺よりも目が鍛えられている審判がそう言うならファールっすね!」と言ってみましょう。審判は本当に非がなかったか気になります。
「あ、本当?こっちからはファールに見えたけど、そっちからどう見えた?」と聞き返してくれるかもしれません。
他人から避難をされれば決して認めない過ちでも、相手から肯定的な意見を貰えば、自分から非を認めることもあります。
怒りはグッと堪えて批判しない。苦情も言わない。それが結果的には一番あなたの利につながるのです。
否定しないコツ①:議論は避ける
実のところ議論をした時点で、勝っても負けても、あなたは負けです。
わたしが「日本料理は料理の最高峰だ」という意見を持っていたとします。あなたが「いや、中華料理の方が上でしょ」と議論をふっかけたとしましょう。
あなたが「中華料理の優位性」でわたしを論破できたとしても、わたしが日本料理の方が上だと思う意見には何ら変わりないでしょう。
議論に勝った方は、相手の意見を変えられないばかりか、相手からの反感を買うことになります。残るのは議論に勝ったという自尊心だけ。
議論で華々しい勝利を得ることと、相手の好意を勝ち取ることは両立できないのです。
議論になりそうになったら、次のような思考を心がけてみてください。
議論になりそうになったら
- 腹を立ててはいけない
- まずは相手の話を最後まで聞く。逆らったり、自分の意見を挟んだりしない
- 相手の主張を聞いて、まず賛成できる点を探して話す
- 次に自分が間違っていると思う点を探し、率直に認めて謝る(それで相手の武装が解ける)
- 相手の意見をよく考えてみると約束し、その約束を実行する
- 相手がわざわざ指摘してくれたのは、あなたと同じ事柄に興味を持っている証拠。相手は手助けをしてくれていると思って、大いに感謝する
- 早期に結論を出さず、間を空けて、もう一度問題点を総ざらえしてみようと提案する
否定しないコツ②:「個人的な意見なんですが〜」で始める
シーンによっては、あなたは否定する意図がなかったとしても、結果的に相手を否定してしまうことはあります。
もしかしたら、私が「日本料理が最高」と思っているとはつゆ知らず、あなたは「日本料理なんてダメ。中華が最高でしょ」と、口にしてしまうかもしれません。
意図せず相手を否定しないためには、日頃の発言の中で、断定的な表現を避けるのが賢明です。
「絶対に」や「確実に」という言葉は避けましょう。代わりに「わたし個人の意見なんですが、〜」と前置きしてから持論を展開することで、無用な衝突は避けられます。
ポイント⑥:自分はこき下ろす
自分がちょっとでも悪いと思ったら、いの一番に全力で謝ってしまいましょう。言い訳をするのは馬鹿でもできますが、ここで言い訳をしても特に良いことはありません。
もしあなたに少しでも非があるなら、相手の意見は翻ることなく、その点を指摘し続けるでしょう。しかも言い訳されたことにより、怒りの感情は増すばかり。
リンカーンは、同僚と喧嘩ばかりする青年将校にこう言ったそうです。
「こちらの五分の理しかない場合は、どんなに重要なことでも相手に譲るべきだ。100%こちらが正しいと思われる場合でも、小さいことなら譲った方が良い。細道で犬に出会ったら、権利を主張して噛みつかれるよりも、犬に道を譲った方が賢明だ。」
相手と意見が食い違ったとき、どうしても自己防衛本能で、相手をこき下ろそうとしてしまいます。そこをぐっと堪えましょう。
最初に自分をこき下ろして謝ってしまえば、相手はもうそれ以上何も言えなくなります。むしろ「こちらにも非があった」と、歩み寄ってさえくれるかもしれません。
自分をこき下ろすコツ:「謝る」+「同情する」のコンボ
「ごめんなさい。あなたがそうおっしゃるなら、わたしの方が間違っているのかもしれません」と謝った後で、
「あなたがそう思うのはもっともです。もしわたしがあなたの立場だったら、やはりそう思うでしょう」と相手の立場に翻って、相手を肯定しましょう。つまり同情するわけです。
こうなると、相手は「おぉ…そうだろう、そうだろう」と、耳を貸してくれるようになります。
こいつは話のわかる奴だと思われ、臨戦体制が解けます。同情し相手への理解を口にするだけで、相手は心を開くようになるのです。
ポイント⑦:”YES”と言わせる質問を選ぶ
一度相手に”NO”と言わせると、それを引っ込めさせるのは容易ではありません。
たとえ相手の意見が間違ったと自覚しても、意見を変えて自尊心が傷つくくらいなら、多少の引っかき傷は覚悟の上で強硬に主張してくるからです。
これは心理学で「一貫性の法則」と呼ばれる現象。人は自然と一貫した態度を貫こうとするので、最初に批判的な態度を取ったら、その後も批判的な態度を取りやすくなります。
逆に最初に肯定的な態度から入れば、その後も首尾一貫して肯定的な態度を取ろうとします。だから最初から”YES”と言わせる方が良いのです。
ソクラテス式問答法は、相手から”YES”としか言わざるを得ない質問をしていき、最後には相手が否定していたことまで”YES”と言わせてしまいます。
イメージは、右折禁止の交差点。あなたは右に曲がりたいが、いきなり右折をするのはNG。しかしながら、左折を3回繰り返せば、右折したかった道にたどり着けます。
”YES”と言わせるコツ:「目的」と「事実」にフォーカスする
大抵議論の対象になるのは、枝葉の話が多いものです。
目的は両者で一致していることがほとんど。「目的」に「周知の事実」を混ぜれば、”YES”としか答えられない質問ができあがります。
ちょっとフワッとしてわかりづらいですね。例として、「社員旅行で、海に行くか、山に行くか」というテーマで考えてみます。
相手に”YES”を言わせるのに使えるのが、「演繹法」と「帰納法」を使った論理攻め。
演繹法は誰もが知る事実から攻めるパターンで、帰納法はアンケート結果などの特定のサンプルから得られた情報から攻めます。どちらも論理的に”YES”と言わざるを得ません。
演繹法と帰納法を忘れてしまった人は、「「帰納」と「演繹」の意味の違い|例文を使ってわかりやすく解説します」もチェックしてみてください。
ちなみに”YES”と言わせるといっても、「今日は天気がいいですね」と、話題に関係ない話をしたところで意味はありません。ご注意を。
まとめ:あなたも人を動かせる
今回は、1937年に発行され、今なお愛され続ける名著『人を動かす』から、ホントに大事なところを抜き出し要約しました。
『人を動かす』のポイント7選
- ほめる
- 相手の関心のありかを特定する
- しゃべらせて、ひたすら聞く
- 相手に花を持たせる
- 相手を否定しない
- 自分はこき下ろす
- “YES”と言わせる質問を選ぶ
全ての原則は、相手の「承認欲求」を巧みに操り、相手を自分のペースに引き込みます。承認欲求は人間の根源的な欲求で、完全に消し去ることはできません。
同書がこんなにも長期にわたって愛されるのは、この原則が不変のものだからです。100年後でも1,000年後でも変わらないコミュニケーションの本質がここにあります。
ぜひこの本の内容を実践をしてみてください。専門的なスキルはいらず、元手は一切掛からず、利益は莫大。この本にはあなたの人生を変える力があります。
本書を読んだわたしの体験談
かつてのわたしは皮肉屋な性格で、他人の間違いを痛烈に批判せずにはいられませんでした。いつだって相手を論破しようとしていました。
「だってあなたの言っていることは間違っていて、こっちが正しいんだから。正しいことを言って何が悪いの?むしろ親切でしょう?」と。
そんな態度で営業をしていたので、上司にクレームが来たことも。「おたくの営業はなんて失礼なヤツなんだ!」と。それを聞かされて、なんて理不尽なんだと思いました。向こうが間違っているのに。
でも『人を動かす』を読んで気づいてしまいます。「あぁそうか。自分の自尊心を守りたかっただけなんだ」と。ガツンとやられた気がしました。
それからは180度態度を変え、まずは相手の意見がなんであれ、「なるほど!そうなんですね!」と受け入れるようにしました。これだけでも随分とコミュニケーションが上手く回るようになりました。
お客さんからも上司からも、「大人になったね。成長したね」と、ありがたい評価を頂戴しました。わたしの人生の中でも、特に影響が大きかった成功体験の一つです。今でも宝物のように思っています。
この本で学んだことを実践し続けた結果、本当に仕事がうまくいきました。
完全にわたしの手柄というわけではありませんが、営業成績で全国1位を取ることができました。社内ベンチャー立ち上げのときは、苛烈極まる交渉を乗り越えることができました。
もしこの本を読まなかったらと思うとゾッとします。この本に出会えたことに心から感謝しています。
関連記事
『人を動かす』は、相手を望む方向にコントロールするということで、やや上級テクニックです。
その手前には、相手とスムーズにコミュニケーションを交わすという基礎レベルのスキルがあります。まずはこちらからマスターしていくのが良いでしょう。
詳細は、「【超実践的】コミュニケーションの15のコツを具体的に解説」をチェックしてみてください。コミュニケーションは技術なので、慣れれば誰でもできます。
参考書籍
参考書籍はもちろん『人を動かす』です。長い本なので、読むのに時間はかかるかもしれませんが、ぜひチェックしてみてください。
ちなみにAmazonのオーディブルなら、キャンペーンで無料で1冊聞けます。
通勤・通学などの隙間時間で、手が塞がっていてもインプットできるので、本を読む時間が取れない人にはオススメです。
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!