- ちゃんと説明をしてるのに、いつもうまく伝わらない
- 議論があっちこっち行って、まとめられない
- 斬新なアイデアが出てこない
こんな問題を抱えている人が多いのではないでしょうか?
こういう悩みのほとんどは、「抽象化」と「具体化」のスキルを鍛えることで解決できます。
おそらく多くの人は、「なるべく具体的に話そう」と努力をしているのではないでしょうか?そして、「抽象=曖昧=ダメ」という印象を持っているのではないでしょうか?
これは全くの誤りです。「抽象化」と「具体化」はセットで使うスキルです。
出世したい、あるいは大きな仕事がしたいなら、抽象化のスキルは不可欠です。優れたビジネスパーソンやアーティストほど抽象化の能力が優れていたりします。
この記事では、
- 抽象と具体の2つの概念の違い
- 抽象化&具体化のスキルの活用方法
- 抽象化&具体化のトレーニング方法
を解説しています。
個人的には、巷で紹介されているトレーニング方法はイマイチだと思っています。効果はあるんですが、ほとんどの人が続けられないからです。
この記事では、超シンプルなトレーニング方法を紹介しています。日々のちょっとした心掛けだけでできて、トレーニングのための追加アクションが必要ない方法です。
一生使えるスキルなので、ぜひ今のうちに身につけましょう!
「抽象化」&「具体化」とは?
「抽象化」とは、「具体化」とは何なのか。まずは定義と特徴を見ていきましょう。
抽象化 | 具体化 |
複数の事柄から、共通する特徴やパターンを抜き出すこと | 普遍的な概念を、特定(通常一つ)の事柄に当てはめること |
抽象の特徴 | 具体の特徴 |
目に見えない | 目に見えることが多い |
解釈に自由度がある | 解釈に自由度がない |
応用が効く | 応用が効かない |
一部の人しか理解できない | 万人が理解できる |
学問寄り | 実務寄り |
リーダーに特に必要 | 現場に特に必要 |
具体化は、より細かい個別具体的なケースを考えるという意味。こちらは特に違和感ないと思います。
「象(かたち)を抽き(ひき)出す」と書いて抽象化は、対象のある特徴だけを抜き出し、残りは無視するということです。無視する部分を「捨象(しゃしょう)」と呼びます。
話を要約したり、図解にしたり、難しい現象を言語化するときは、枝葉の部分を無視して、大事な部分だけを抜き出しますね。これが抽象化です。
気づいた人もいるかもしれませんが、考え方はロジカルシンキングでお馴染みの「帰納法」と「演繹法」と同じです。
「科学」とは抽象化である
科学や数学は、言ってしまえば「抽象化」を極める学問です。
研究者は、自分の専門分野で個別具体的なケースを観察し、そこから汎用的に使える一つの公式や法則を導き出します。
抽象化された概念はそのままでは机上の空論。役に立ちません。誰かが具体化し、個別のケースに当てはめ活用することで、初めて意味を成します。
その具体化する誰かとは、実際に生活をしている人々です。企業や行政、病院、教育現場などなど。もちろん我々一人ひとりもそうです。
あなたも使っている抽象化と具体化
小さい子供は抽象的な概念をうまく理解できません。総じて抽象化が苦手です。
そのため初対面の人に、「今日は〇〇ちゃんと遊んだの!」「〇〇市民プールに行ってきたよ!」と、具体的すぎる言葉を使ってしまいます。
ですが、少し大きくなると「今日は同じクラスのお友達と遊んだの!」「近所のプールに行ってきたよ!」と適切なレベルまで抽象化して伝えることができます。
もう少し例を続けましょう。
あなたが出身地を聞かれて答えるシーンを想像してみてください。相手によって、自然と抽象&具体のレベルを調整しています。
相手が…
- 同じ町の人なら:伊勢町3丁目です!
- 同じ県の人なら:横浜です!
- 日本人なら:神奈川です!
- 外国人なら:日本です!
抽象と具体はロジカルシンキングの一つ。そんな横文字を聞くと縁遠く聞こえてしまいますが、実は誰しもが意識せずに使っている思考法なのです。
「抽象的=悪」ではない
世間一般で「抽象的」を言われるシーンは、たいてい悪い意味で捉えられています。「抽象的すぎてワカラン!もっと具体的に説明しろ!」みたいな感じです。
ただすでに上の例で見てもらった通り、抽象と具体には適切なレベルがあるだけで、それぞれに良いも悪いもありません。ツマミで粒度を調整しているにすぎません。
そもそも我々人間の社会は、抽象的な概念によって作り上げられています。
「平和」「国家」「人間」「法律」「経済」「会社」「ビジネス」「仕事」「部門」「本部」「部」「課」
これらは全て、目には見えない抽象化された概念です。
次の例文のように、基本的には大きな組織になるほど、より抽象度が高い概念が必要になります。
かつての人間は小さな集団で散り散りに生活していました。しかし農業が始まると富める者が現れ、それ以外の人を配下に置くようになります。
そのような組織形態は今までなかったので、言い表せる言葉がない。そこで抽象化した「国」という概念が誕生します。そして統べる者として「王」という概念も誕生します。
しかしながら複数の国を統一する者が現れます。そうすると「国」よりさらに抽象的な概念が必要になります。それが「帝国」です。帝国を統べる者として「皇帝」という概念も誕生します。
繰り返しますが、抽象は悪ではありません。抽象的な概念は、我々が必要としているから存在しています。
よくわかる抽象と具体の構造
抽象と具体の大まかなイメージは伝わったと思います。ここではもう少し腹落ちしてもらうために、3つの例を使って、抽象と具体の構造を紐解いていきます。
例①:動物の種類
動物の種類を考えてみましょう。もちろんもっとも抽象的な概念は「動物」。「動物」という名前の動物はいないので、動物は目に見えない概念です。
その下に「哺乳類」や「爬虫類」や「魚類」といった比較的大きなグループに分けられています。まだまだ抽象度が高い概念です。
魚類の中にも「〇〇類」「〇〇科」とさらに細分化され、最終的に個別の種である「アジ」や「イワシ」までたどり着きます。
イワシを1匹捕まえて、「イワシのひーちゃん」と名前をつければ、イワシという種の中の個体まで具体化できます。
例②:「目標」と「戦略」と「戦術」
よくビジネスシーンでは「戦略」と「戦術」という言葉が使われます。
構造としては最上位に「目標」があります。これは「ビジョン」とも呼ばれ、企業が将来こうなっていたいという理想像です。非常に抽象的な意思決定です。
そして「戦略」は、目標達成に直結するインパクトの大きい要素を指します。具体的な行動に落とし込まれる前の大方針です。まだまだ抽象的です。
「戦術」は、戦略を達成するための個々の打ち手。いまの手札でどうアクションするかということ。ここまで来ると具体的な意思決定になってきます。
意思決定の本質は、「やらない範囲を決めること」です。つまり捨象(しゃしょう)です。やることを決めるということは、それ以外を切るということに他なりません。
西遊記一行のリーダー、三蔵法師の目標が西の天竺(インド)に行くことなら、東と北と南には行かないということです。
組織であれ個人であれ、抽象度の高い意思決定ほど重要です。抽象的な意思決定ほど、大胆にやらない範囲を切り捨てるからです。
「食品の廃棄ロスを0にする」という目標なら、食品に関係ない事業は行えなくなります。「不恰好な非正規食品を流通させる」という戦略は、形の良い正規品には首を突っ込まないということです。
例③:組織の役職
組織の役職は、業務が「抽象的」か「具体的」かで線引きされています。「偉い・偉くない」とか「給料が高い・低い」は本質ではありません。
- 経営層
:抽象的なタスクを作る人 - 中間管理職
:抽象的なタスクを具体化できる人 - 現場担当
:具体化されたタスクをこなす人
経営層は大きな方向性を示すのが仕事。非常に抽象的な仕事です。社会に新たな問いを作れる人が相応しいでしょう。PC作業が苦手でも一向に構いません。
中間管理職は、抽象的なタスクを適切なレベルまで具体化して、部下に指示できる人が相応しい。雑に振られた仕事をこなせるかどうかは、出世できるかの試金石になります。
指示されたことを、ただただ実行するのが現場担当者です。言われたことを忠実に作業できれば良いということになります。
スタートアップの初期メンバーは、経営層であり現場担当者でもあるので、抽象的な仕事も具体的な仕事もこなさなければなりません。
この図式から、抽象的な仕事ができる方が人材価値は高くなります。会社組織のイメージで書きましたが、フリーランスも同じ構造です。
イメージするなら、ただ絵が上手いだけなら漫画家のアシスタント止まりです。どういう絵を描けば良いか?という抽象的な問題にまで踏み込めるから漫画家になれるのです。
画家や建築家や作曲家など、アーティストと呼ばれる職は総じて抽象的な仕事です。経営がアートと呼ばれているのも、経営の仕事は抽象度が高いからです。
「万人が見える具体」と「一部の人しか見えない抽象」
具体的なものは万人が理解できるのに対し、抽象的な世界が見える人はごく少数です。抽象的な世界は、大衆から理解されないことが多いのです。
日頃から抽象化思考をしている人は、自分の表現が周りの人に伝わらないことにイライラします。逆に言えば、抽象的な世界を理解できる人はそれだけ貴重ということでもあります。
その一端を見ていただきましょう。
優れた書籍ほど抽象的
ある種の書籍は、良い評価と悪い評価が真っ二つに割ています。どっちの評価を信じれば良いんだろう?と困った経験はないでしょうか。
以下のようなイメージです。
抽象的な概念を理解できれば、それを自分の頭の中で具体的なシーンに落とし込んで考えられます。およそどんな本からでも学びを得ることができます。
しかし抽象概念が理解できない人は、自分のシチュエーションになぞらえて、手取り足取り教えてもらえなければ理解できません。
芸能人や実業家が書いた本は、非常に具体的なエピソードが書かれています。「俺はこの方法で成功した!」と具体的が書かれていて、非常に理解しやすいでしょう。
しかし具体的なエピソードほど、特定のシーンでしか使えない知識になってしまいます。もしその時代にしか使えない知識が書かれていれば、それだけ賞味期限切れも早くなります。
一方で古代ギリシア哲学や春秋戦国時代の思想は、数千年たった現代でも重宝されています。何千年も耐えられるのは内容が抽象的だからです。抽象的だから応用が効くのです。
何千年とまで言わなくても、数十年〜100年くらい読まれている書籍もあります。名著と呼ばれるドラッカーの『マネジメント』や『バビロンの大富豪』は抽象的で、およそどんなジャンルの人にも有益です。
実のところ具体的な本を大量に読むよりも、優れた抽象的な本を数冊マスターした方が、あなたの人生にとってはプラスになると思います。
理解されない抽象的な現代アート
現代アートには、便器にサインしただけとか、殴り書きにしか見えない絵とか、大衆には理解できない作品が多々あります。
大衆にとっては、ルネッサンス期のヨーロッパの写実的な絵の方が、よっぽどわかりやすくて面白いのです。パッと見で「上手!キレイ!」と伝わってくるからです。
現代アートの勃興の背景には、「写真」の発明があります。写真によって、写実的な表現が衰退しました。写真で撮れば良いので、わざわざ絵にする必要がないからです。
そうして現代アートは、抽象化した世界観を描くようになりました。そしてその作品が持つ抽象的な表現から、作者のメッセージを感じ取るのが現代アート鑑賞の醍醐味です。
そもそも抽象的な作者のメッセージが、さらに抽象的に表現されています。具体的で写実的な作品しか理解できない大衆は、「よくわかんない、つまんない」となってしまうのがオチなのです。
抽象化&具体化スキルの活用方法
抽象化と具体化のスキルを実践すると、ビジネス・プライベート問わずメリットがあります。ここではビジネス観点での活用方法を取り上げます。
活用①:例え話でわかりやすく説明する
メリットを享受できる頻度がもっとも多いのが、わかりやすく説明できること。難しい用語をいったん抽象化して、相手にとってより身近な具体的なモノに例えて説明します。
次のような順番で行います。
- これから説明する「A」の本質を抽出する
- 同じ本質を持つ身近な存在「B」を探す
- 「A」を「B」で例える
例えば、「コアコンピタンス」という用語。これは、「他社が真似できないその企業だけが持つ強み」という意味です。
コアコンピタンスは「秘伝のタレ」に例えられます。一子相伝で継ぎ足されてきた秘伝のタレは、他店には真似できない魅力。本質は同じです。
相手がプレゼンの中身を理解できなければ、魅力も伝わりません。相手にお願いした仕事が理解されていなければ、望んでいるアウトプットは出てきません。
説明がわかりやすければ無用なやり取りが減り、時間も削減できます。時間を節約しつつ、アウトプットの質は上がります。パフォーマンスが上がり信頼も勝ち得ます。
わかりやすい説明ができることは、できるビジネスマンへの最初の一歩なのです。
パッと見の特徴と本質は異なる
抽象化と具体化の思考を使うと、物事の本質的な部分に目が行きます。そして往々にして、その対象のパッと見の特徴と、本質には乖離がある場合があります。
- 「軽自動車とフェラーリ」の本質は同じでしょうか?
- 「50ccの原チャリとハーレー」の本質は同じでしょうか?
もしこれらの本質が「素早く移動するための道具」であったなら、大した価格差にはなっていないでしょう。ですが実際には何十倍もの価格差があります。
ということはフェラーリやハーレーを購入する人は、移動ではない部分に大金を払っていることになります。移動以外の特徴に本質があるということです。
フェラーリやハーレーのファンは、例えば「見せびらかしたい」という欲求があるのかもしれません。その場合の本質は、高級腕時計や宝石と同じような類になります。
もしくは「オーナーコミュニティに入りたい」という欲求があるのかもしれません。その場合の本質は、タワマンや現代アートコレクターに近いかもしれません。
活用②:議論をまとめる
会議が迷走して、あらぬ方向へ行ってしまうことがあります。
大抵の場合、本題から外れた細かいディテール部分で盛り上がっています。みんなが個別具体的なアイデアを出し、収集がつかなくなってしまっているのです。
こんなときは、抽象化のスキルが役に立ちます。
それぞれの具体的なアイデアからポイントを抽象化し、同じような特徴を持ったアイデアをまとめることができます。要するにアイデアを整理整頓できるのです。
本題と照らし合わせて、アイデアを取捨選択できれば、会議はスムーズに進行します。ロジカルな判断なので、アイデアが却下されてしまった人もそこまで悪い気分にはなりません。
活用③:相手やシーンに合わせた粒度で話せる
同じ話であっても、相手やシーンに合わせて粒度を調整しなければなりません。
まずは「尺の問題」があります。1時間の枠で話すのと、10分で話すのでは話せるボリュームが全く変わってきます。場合によっては1分しか貰えないかもしれません。
また「相手のポジション」も考えなくてはなりません。大企業の社長であれば、細かい料金プランや詳細機能には興味ありません。ですが現場の担当者はそこが1番気になる箇所です。
話す内容を抽象化すれば、尺は短くなり、大事なメッセージだけ端的に伝えることになります。具体化すれば、尺は長くなり、より実務的な内容まで踏み込むことになります。
突然10分で話せと言われたら、抽象化と具体化のスキルがない人はテンパってしまうでしょう。抽象化と具体化に慣れていれば、どうということはありません。
活用④:アナロジー思考でアイデアを転用する
そして超重要なのがアイデアを発想することです。
アイデアは何もないところから急に現れるのではなく、往々にして既にある他業界のアイデアを別の業界に転用した際に起こります。
手順としては、まず他業界の優れた事例からポイントを引き出し、次にそのポイントをあなたのビジネスに当てはめて考えるのです。
「オフィスグリコ」を例にしてみましょう。オフィスにお菓子が入った箱を置いておき、食べたい人はコインを入れてお菓子を食べられる仕組みです。
このサービスは、「富山の置き薬」のアイデアを転用しています。富山の置き薬は、薬箱を一般家庭に置いてもらい、使った分だけ清算するスタイルの商売です。
「富山の置き薬」の特徴は、
- 顧客は距離が近いところから買おうとする
- 商品の入ったケースを無料で客先に置いてもらう
- 顧客は使った分だけお金を払えば良い
といったところでしょうか。
このような、他業界の優れたポイントだけを抽出し、別の分野に当てはめて具現化する手法を「アナロジー」と呼びます。「アナロジー思考」と呼ぶ場合もあります。
具体的に真似するのはパクリですが、抽象的に真似するのはアナロジーなのです。パクリは嫌われますが、アナロジーは「その手があったか!」と褒められます。
ちなみに学者や経営者が成功の秘訣を語るときに、「セレンディピティ」という言葉をよく口にします。「思いがけない幸運を偶然手にする力」という意味です。
セレンディピティとは、結局のところアナロジーの発見なのです。たまたま見聞きした出来事のポイントが転用できると気づいてしまい、ビビッと来るワケです。
≫【再現可能】セレンディピティの意味とは?狙って起こす5つの法則を解説
抽象化と具体化のトレーニング方法
抽象化と具体化の思考が身につくと、仕事がグッとスムーズに進むようになります。これは容易に体感できるくらい変わります。
ただしこれまで全く意識していなかった人が、急に明日から抽象化と具体化を実践できるかというと、ちょっと難しい。何ヶ月かトレーニング(というより矯正)が必要です。
巷で聞くトレーニング方法は実践的か?
ちまたで聞くトレーニング方法には、
- 連想ゲームで鍛えるとか
- フレームワークがどうとか
色々とあります。
たしかに連想ゲームは良い体操になると思います。
例えば「豆腐とプリンは…どちらも柔らかい!」という共通点を見出したとしましょう。そうすると、「プリンと同じような食感の豆腐を作ったらどうか?」というアイデアが生まれます。
この例が良いアイデアかどうかは別として、アイデアの発散とはこんな感じです。連想ゲームはアイデア出しの良いトレーニングになるでしょう。
ただこれを続けるのは現実的でしょうか?きっと忙しいあなたにはそんな時間はないし、面倒なことは続かないでしょう。
小学生でもわかるように説明せよ
そんなあなたのために、超シンプルなトレーニング方法があります。これだけ意識すれば、特別なことをしなくてOK。日々の仕事の中で抽象化と具体化のトレーニングができます。
それは、「小学生でもわかるように説明する」です。何年生でもいいですが、ここでは6年生としておきましょう。
あなたがビジネスマンであれ、学生であれ、何かしら専門的な内容を扱っているはずです。
あなたは、あなたより知識がない人(頭が悪いという意味ではなく、その分野の門外漢という意味)を相手に説明しなければならないシーンが必ず出てきます。
その相手が小学生だとしたら、どんな説明をするでしょうか?
きっとあなたが普段使う専門用語では難し過ぎます。1つの話の中に、わからない単語が1つ出たらイエローカード、2つ出たらレッドカード。普通に話したらすぐに退場です。
あなたはその専門用語を噛み砕いて説明しなければなりません。その専門用語の大事なポイントを抽出して、もっとカンタンな言葉で例えるしかないでしょう。
例えばこんな感じです。
小学生相手だと、難しい言葉に頼れなくなります。
分かりやすく例えるためには、その難しい概念の「本質」を理解していなければなりません。そして例えられるモノは、同じ本質を持っていなければなりません。
- CPUが高いほど、高度な処理(料理)ができます
- メモリが大きいほど、同時に色んな作業ができます
- ハードディスクが大きいほど、多くのデータ(食材)を保存できます
この思考プロセスがまさに、「抽象化→具体化」になっているのです。
この方法ならトレーニングのために特別なアクションを取る必要はありません。日頃の仕事でちょっと意識するだけ。
しかも相手はわかりやすい説明を受けられるので、仕事はスムーズに行きます。あなたの評判も上がります。一石三鳥です。
行き来することに意味がある
「抽象」と「具体」は、行ったり来たりしながら精度を上げていきます。
ビジネスシーンでよくある「抽象⇄具体」を行ったり来たりのイメージを紹介します。ぜひ現場で遭遇したら思い出してみてください。
「急がば回れ」で抽象的な仕事に立ち返る
急がば回れとは、「遠回りしてでも正しい手順で進めよう。それが1番早いんだから」という意味です。これほど素晴らしい言葉はなかなかありません。
現場では、目的が定まっていないのに納期だけが先に決まって、プロジェクトがスタートしてしまうことがあります。そして具体的な作業に差し掛かって行き詰まります。
後になって「コンセプトは?」「KPIは?」「どっちの機能を優先する?」といったツッコミが入りますが、上流の検討が不十分なので答えられないのです。
このとき付け焼き刃な答えを出して、さらに具体的な作業を進めようとしてしまいがちです。これが罠。こうなったプロジェクトはうまくいきません。
行き詰まったら、前の段階に戻る勇気が必要です。
上流工程に戻って、より抽象的な意思決定からやり直すのです。遠そうに見えて、それが1番の近道なんですから。
「戦術の失敗」と「戦略の失敗」は分けて考える
とかくビジネスはうまくいかないことの連続ですが、それがどのレベルの失敗かを意識しておくと良いでしょう。
例えばAさんが、市内で「本格チュニジア料理」のお店をオープンしたとしましょう。
このエリアにはチュニジア料理屋は存在しません。競合がいないので、美味しいチュニジア料理を食べるならウチに来るしかない。空いたポジションに入り込もうという戦略です。
オープンで人を呼べるように、近所に「チラシ」をばら撒きました。オープン記念の「半額特典」までつけています。これは戦術レベルの施策です。
しかしながらオープンしてから1ヶ月間閑古鳥が鳴いています。はてどうしたものか。
この時点で、チラシ+値引きの「戦術」は失敗しています。
ですが、チュニジア料理が受け入れられるかの「戦略」は、まだ失敗ではありません。
お客さんが1度は食べてみて、2度目のリピートがなかったところで初めて「戦略」の失敗になります。まだ食べてもいないうちは、「戦略」の失敗とは言い切れないでしょう。
ならばチュニジア料理屋をたたむのではなく、マーケティングの方法を変えるべきです。つまり具体的な打ち手である「戦術」を変えるのです。
もしかしたらチュニジア料理がどんな料理なのか、誰も知らないのかもしれません。無料の試食会を開いて、まずはチュニジア料理を体験してもらう「戦術」が考えられます。
もし食べた上でお客さんが来ないなら、そこで初めて「戦略」の失敗を受け入れるべきでしょう。
「本格チュニジア料理」の戦略が失敗したのなら、前のステージに戻って抽象度の高い意思決定をし直す必要があります。例えば「日本人向けチュニジア料理」に戦略変更するといった具合です。
失敗が「戦術レベル」なのか「戦略レベル」なのかは分けて考える必要があります。
よくビジネスの世界で「ピボット」と呼ばれるのは、戦略レベルの失敗からの方針転換です。戦術レベルの失敗は日常茶飯事で、戦術の変更をピボットとは呼びません。
戦術レベルはいちいち怒ったり気に病む話ではありません。戦略レベルは重い失敗なので、ふんどしを締め直す必要があるでしょう。
「鳥の目」と「虫の目」を持つ
「鳥の目」と「虫の目」、どちらが欠けても成功はありません。しかしながらどちらかの視点に偏った人が多く、視点の違いから対立することがしばしばあります。
- 鳥の目
:鳥のように高い位置から見下ろすように物事を見る視点。本記事の文脈で言えば、抽象的なモノの見方 - 虫の目
:物事のディテールまで細かくチェックする視点。具体的なモノの見方
鳥の目に偏った人は、「改善します」「最適化します」「連携します」など、フワッとした言葉をよく使います。「で、具体的に何するの?」と聞かれると、「ぐぬぬ」となってしまいます。
一方で虫の目に偏った人は、大局感がありません。なぜその仕事が必要なのか、何のためにやっているのかが見えていないのです。形にこだわり、方向性を見失いがちです。
両者は目線が合っていないので、議論は永遠に平行線です。
最終的には「神は細部に宿る」と言われるように、具体的に突き詰めた人が勝者になります。しかしながら、突き詰める領域を特定するのは、抽象的なモノの見方なのです。
ゆえにどちらが欠けても成功はあり得ません。
≫【鋭い人には見えている】鳥の目 虫の目 魚の目でビジネスを考えよう
参考書籍
『具体と抽象』は抽象と具体だけで丸々1冊使った本です。一度読んでおくと、頭が整理されると思います。特に新入社員やビジネスの経験が浅い人にオススメです。
同じ著者の本がもう一冊あります。『「具体⇄抽象」トレーニング』も参考になると思います。
どちらもAudibleの聞き放題対象です。Audibleは初回30日間は無料なので、本当にタダで聞けてしまいます。
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!
ありがとう(*^^*)
とても上手く整理されていて、
勉強になります。
コメントありがとうございます!微力ではありますが、お役立ちいただければとてもうれしいです!