あなたが商品を企画しなければならないとしたら、もっとも重要な仕事は何でしょう?それは最高の「バリュープロポジション」を作ることです。
バリュープロポジションは、「顧客があなたの商品を購入する理由」です。バリュープロポジションを明確に打ち出さなければ、あなたの商品が売れることはないでしょう。
この記事では、バリュープロポジションを作成するためフレームワーク、「バリュー・プロポジション・キャンバス」を紹介しています。
そしてあなたの商品のバリュープロポジションを唯一無二のものに昇華させる「UVP(ユニーク・バリュー・プロポジション)」の考え方も紹介しています。
競争を回避しつつも、より高く商品を売りたいと思っている人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
バリュープロポジションとは
バリュープロポジション(Value Proposition)とは、「顧客への提供価値」という意味です。
目線をひっくり返して、顧客の立場から言えば、「その商品を買う理由」に相当します。
- バリュー(value):価値
- プロポジション(proposition):提案
主にマーケティング分野で使われている用語です。本当に売れる商品やサービスほど、バリュープロポジションを真に捉えています。
あなたの身近な商品のバリュープロポジション
あなたが日頃から贔屓にしている商品やサービスを思い浮かべてみてください。なぜそれを使っているのか想像してみましょう。
Amazonのバリュープロポジション
一例として、多くの人が使っているAmazonを上げてみましょう。Amazonが愛用される理由は、いくつかあると思います。
- 早く家に届く
- どんなマニアックな商品でも購入できる
- レビューから本当に良い商品を見つけられる
代表的なのはこんなところでしょうか。これはいずれも優れた「価値」を提供しています。
逆に明日突然、翌日配達がなくなり、商品点数が激減し、レビューが全消去されたとしたら、明日以降もamazonを使い続けるでしょうか?
使わないですよね。価値が失われたら当然そうなります。
Netflixのバリュープロポジション
もう一つ例を出しておきましょう。今度はNetflixです。Netflixは他のVODサービスより若干高いですよね。なぜそれでもこれほどに人気があるのか。
一番はオリジナルコンテンツです。Netflixはとんでもない予算をオリジナルコンテンツの制作に当てており、すでにアカデミー賞受賞作品の数は、従来の映画制作スタジオのそれを凌駕しています。
いくつもあるVODサービスの中でNetflixを選んだ人は、十中八九、魅力的なオリジナルコンテンツに価値を感じたからではないでしょうか。
バリュープロポジションは、表面上の価値は異なる場合がある
実は商品やサービスの表面上の価値と、顧客が真に求めている価値が異なるケースも頻繁にあります。
例えば、喫茶店を考えてみてください。表面上は美味しいコーヒーを飲める場所ですね。
わたしは営業時代は、2日に1回は行っていました。
ちなみにわたしはコーヒーはあまり好きではありません。紅茶に関しては嫌いです。それでも喫茶店に行くのは、外出先で空いた時間に仕事をしたり、本を読んだりするためです。
わたしにとっての喫茶店の価値は、空調が効いた部屋でイスとテーブルがあればそれで良かったのです。飲み物なんて些細なオマケ。
スターバックスのバリュープロポジションは「味」ではない
スターバックスは、バリュープロポジションを良く理解しています。
彼らが顧客に与える価値は「サードプレイス」。自宅(ファーストプレイス)でも職場・学校(セカンドプレイス)でもない、「自分にとって心地の良い時間を過ごせる第三の居場所」という価値を提供しています。
スターバックスに行く人は、コーヒーが美味しいからではなく、居心地の良さを求めてやってくるのです。
高級車のバリュープロポジションは「移動」ではない
もう一つ例を出しましょう。高級アメ車のキャデラック。
表面的には車なので、人を乗せて素早く遠くに移動することが価値に見えます。でも本質的な価値はそこではありません。
キャデラックの価値は、高級で立派な車に乗っていることを他人に見せびらかし、承認欲求を満たすことにあります。高級車と宝石、ブランド物のバッグは、本質的には同じ価値を持っていると言えます。
バリュープロポジションが必要な理由
あなたがビジネスに身を置いている限り、バリュープロポジションを意識しなければなりません。
経営者や商品開発の担当者でなくてもです。あなたのお給料も、このバリュープロポジションにかかっています。
ビジネスの本質は価値提供にあるから
ビジネスとは、詰まるところ何でしょうか?
一言でいえば、「ビジネスとは、顧客に価値を提供し、対価を得ること」です。顧客は商品に対してお金を払っているのではなく、価値に対してお金を払っているのですす。
有名なマーケティング本に『ドリルを売るには穴を売れ』があります。
一見すると、顧客(工事現場で働く人を想像してみてください)はドリルが欲しくて、高価な機械を購入しているように見えます。
ですが、本当に欲しいのは「穴」です。穴を開けるものなら何でもいいのです。爆弾でも、もぐら型ロボット(?)でもいいのです。
穴を開けるのに、現状効率が良いのがドリルというだけの話。本質的にはドリルにお金を払っているのではなく、「穴」という価値にお金を払っているのです。
人材にもバリュープロポジションが必要
バリュープロポジションは、主にマーケティング界隈で使用される言葉。基本的には商品やサービスに対する用語ですが、人材にも当てはまります。
次の2人が採用面接に来たら、どちらを採りたいと思いますか?
Aさんは顧客、つまり採用する企業に対し、何の価値も伝えていません。「そうか誰とでも仲良くなれるのは素晴らしい!ところで、君はいったい当社に何をしてくれるの?」と聞き返されてしまうでしょう。
Bさんのように、採用する側の企業にとっての価値をアピールしなければ、結果として何もアピールできていないことになってしまうのです。
ちなみに上記は就職や転職を想定したケースですが、個人事業主がクライアントから案件を受注するときも全く同じ構図になります。ぜひ意識してみてください。
「顧客の価値」とは、とても抽象的でわかりづらい言葉ですよね。
いまいちピンと来ない人は、「【あなたならどう答える?】ビジネスとは何か?ビジネスの本質をわかりやすく言語化してみた」もチェックしてみてください。
具体例を交えて、「顧客の価値」とは何か、どうすれば「顧客の価値」を最大化できるのかを解説しています。
【実践】バリュープロポジションキャンバスの使い方
バリュープロポジションを考えるのに便利なフレームワークがあります。
それが、アレックス・オスターワルダー氏の著書、『バリュー・プロポジション・デザイン』で紹介された「バリュー・プロポジション・キャンバス(Value Proposition Canvas)」です。
このフレームワークの目的は、「あなたの商品が顧客に与える価値」を言語化することにあります。
言語化することで、商品開発や提案活動、キャッチコピーなどで、顧客にあなたの商品の価値をストレートに伝えられるようになります。
もし言語化できないとすれば、あなたの商品の価値は曖昧であるということ。顧客にとってもあなたの商品の魅力がイマイチ見えない状態になっています。当然売れません。
このフレームワークのポイントは、顧客の課題を「利得」と「悩み」に分けているところです。ごっちゃになることが多いので、分けて考えることで思考がクリアになります。
ステップ1:誰に何を提供するかを決める
まずは次の2つの埋めていきます。
①顧客への提供価値(Value Proposition)
②顧客セグメント(Customer Segment)
おいおい、「①顧客への提供価値」を考えるためのフレームワークなんだから、いきなりそれは書けないでしょ!と思った人もいるでしょう。
いったんはざっくりで良いです。「ダイエット」とか「食事の宅配」といった粒度で書いておいてください。
「②顧客セグメント」には、ターゲットとする顧客層を書きましょう。
ステップ2:顧客のニーズを分析する
次に以下の順番で、顧客視点のニーズを埋めていきます。
③顧客が解決したい課題(Customer Jobs)
④顧客の利得(Gains)
⑤顧客の悩み(Pains)
まずは「③顧客の解決したい課題」を書き出します。
続けて、その課題が解決されたら、どんなハッピーなことになるかが「④顧客の利得」になります。
さらに続けて、その課題を解決するための障壁を「⑤顧客の悩み」として書いていきます。
ステップ3:顧客への提供内容を考える
今度は以下の順番で、顧客の利得や悩みに、どのようにアプローチしていくかを考えます。
⑥製品やサービス(Products & Services)
⑦顧客に利得をもたらすもの(Gain Creators)
⑧顧客の悩みを取り除くもの(Pain Relievers)
「⑥製品やサービス」には、あなたの扱っている商品を書いておきます。
もしまだ商品がない場合で、商品の形がイメージついていない場合は、ざっくり書いておけばOK。あとで⑦⑧を埋めながら具体化しましょう。
次に、⑦に顧客の利得を実現する方法を書いていきます。続けて、⑧に顧客の悩み解消を実現する方法を書いていきます。
提供内容を考える上でのポイント
- 「⑦顧客に利得をもたらすもの」
- 「⑧顧客の悩みを取り除くもの」
を考える上で、ポイントがあります。
例えば「顧客の悩み」が、「ダイエットをしてもリバウンドしてしまうこと」だとしましょう。
そのときに「顧客の悩みを取り除くもの」に、「リバウンドしないプログラム」と書いても意味はありません。それがどんなプログラムなのか分からないからです。
この場合は以下のような順番で思考します。
- リバウンドをしてしまう原因は何か?
→炭水化物を抜いたせいで、代謝が落ちてしまうからだ
→炭水化物も含んだプログラムで、リバウンドを防ごう
→「炭水化物を抜かないダイエットプログラム」を「顧客の悩みを取り除くもの」にしよう!
ポイントは、その悩みが発生してしまう「構造的な原因」を特定することです。そして「その原因を構造的に取り除く方法」を考える必要があります。
利得の方も考え方は同じです。「痩せること」の利得は、何を達成すれば実現できるのか考察します。
- 男性にモテたい
→バストを残して痩せればモテる
→バストを残して5kg痩せられる方法 - 健康診断で引っかからないようにしたい
→お腹まわりを減らせば引っかからない
→お腹が10cm引っ込むダイエット方法
といった具合が良いでしょう。(上記の例はテキトーに書いてますので、細かいツッコミはご勘弁ください)
バリュープロポジションをUVPへ昇華させる方法
バリュープロポジションを作れば、顧客に価値ある商品が作れます。顧客に価値を与えるからこそ、対価としてお金をもらえるようになります。
ただし、この考え方には一つ抜けているものがあります。お気づきの人も多いと思いますが、それは「競合」の存在です。
顧客に価値ある良い商品が作れても、競合も同じ商品を出しているとなれば、競争が起きます。競争が発生すれば、価格競争によって貰えるで対価はドンドン下がっていきます。
競合企業の方が体力がある場合は、最終的には負けてしまう可能性が高いでしょう。
あなたが消耗せずに、顧客を奪われず、本来の価値相当の高い値段で商品を売るためには、「UVP(Unique Value Proposition)」が必要です。
カンタンに言えば、「バリュープロポジション」に「あなたにしかできないこと」を掛け合わせたものがUVPになります。
個人的には、ビジネスの本質は「顧客への価値提供」であることから、UVPの方が真に迫るネーミングに感じています。
「あなたにしかできないこと」がない場合
すでに一定の規模がある企業であれば、今ある資産がそのまま「あなたにしかできないもの」になるかもしれません。
例えば、全国にある店舗、大量に蓄積された顧客レビュー、短時間で物を届ける配送網などなど。基本的には他社がカンタンに真似できないものです。
ですが、これからビジネスを始める人や、小規模でビジネスをする人には、「あなたにしかできないもの」は一つもないかもしれません。
その気になれば大きな企業は全て対応できることかもしれません。
そんなときに頼れるものは、
- スピード
- 情熱
- 顧客の理解
の3つです。この3つを掛け合わせれば、それは「あなたにしかできないこと」になります。
スピード
まず企業は一定規模になると、投資対効果の低いビジネスには手を出さなくなります。
しかしながら、新しいビジネスは常に小さな市場から始まります。(この現象は「イノベーションのジレンマ」と呼ばれています)
先駆者としていち早く動けるのはあなただけかもしれません。
情熱
大きな企業で働くサラリーマンたちは、どれほど熱心に働いていると思いますか?生活費を稼ぐ以上に、強い想いを持った人はそう多くありません。
ビジネスとは基本的に、「他社がやらないような難しいことや面倒くさいことをやった人が勝つ」ようになっています。
もしあなたがそのビジネスに強い情熱があるのであれば、あなたは誰よりも泥臭いけど意味のある仕事を進んでできる人です。これはライスワーク(生活のために働く)の人には決して真似できません。
顧客の理解
これは情熱の続きです。
ビジネスとは、顧客へ価値を提供すること。他の人が気づかないような隠れた顧客の悩みやニーズに気がつけるのは、誰よりも真剣に顧客のことを考えている人だけ。
そんな顧客の痒いところにまで手が届く商品が作れるのは、誰よりも顧客を理解したあなただけかもしれません。
人材にもUVPを
あなたが人材としての市場価値を高めたいと思うなら、ぜひUVPを意識して欲しいです。
ただの営業か、唯一無二の営業か。ただのエンジニアか、唯一無二のエンジニアか。
あなたにしかできない価値ある仕事ができるなら、あなたの市場価値は、他の労働市場参加者と比べられることはありません。
3年で100万人に1人の人材になる方法
唯一無二の人材になるにはスキルの掛け合わせが、最善手です。
一つのスキルで唯一無二の人材になるのは、とんでもない茨の道になります。100万人の頂点に立つ営業マンなんて、とてもじゃないけどなれません。
一般に「10,000時間の法則」で言われるように、ある分野で一流になるには10,000時間の学習が必要になります。1日2〜3時間勉強するとしたら10年かかる計算です。
ですが、100人に1人程度なら割といけるでしょう。
その辺の人を100人ランダムに集めて、その中で1番になれるスキルがあれば良いわけですから。100人に1人のスキルが3つ重なれば、「100×100×100=100万人に1人の人材」です。
中級者の域に達するためには「1,000時間の法則」に倣い、1/10の1,000時間で済むと言われています。1年で1ジャンルを習得していけば、3年で100万に1人の人材になれます。
例えば、あなたがITエンジニアで、商品企画の経験があり、飲食店コンサルの経験があったとしましょう。飲食店むけサービスを提供している企業は、あなたが光り輝く最高の人材に映るはずです。
さらにもう一つスキルを増やして4つのスキルを重ねれば、1億人に1人、なんと日本に1人しかいない人材に!
1番リターンが高い投資は「自己投資」と言われるように、スキル習得のための勉強はコスパが良いんです。
≫【スキル習得】20時間の法則・1000時間の法則・1万時間の法則で考えるキャリア形成
まとめ
今回は、顧客の価値を策定するためのフレームワーク、「バリュー・プロポジション・キャンバス」を紹介しました。埋めていくことで、ちゃんとお客さんからお金をいただける商品が作れるでしょう。
でもそれだけでは、「競合」を排除できません。競争の末に単価は落ちていけば、辛いのに利益は下がっていく。こんな状況に陥ってしまいます。
そんなときに意識するのが、「UVP(Unique Value Proposition)」です。バリュープロポジションに「あなたにしかできないこと」を加えた概念です。
もし「あなたにしかできないこと」がなくても大丈夫。あなたの「スピード」「情熱」「顧客への理解」があれば、それがあなただけのUVPに変わります。
とはいえ、バリュープロポジションを作るには無限の選択肢があるので、メチャクチャ悩みますよね。そういうときは、ヒントなる型があります。
「インターネット時代に顧客価値を創造する8つの型【もはや情報に価値は無い】」では、主にデジタルサービスや、無形商材のビジネスに使える『型』を紹介しています。
顧客価値は思い浮かんだけど、どんな商品にすれば良いかアイデアが出ない!という人は、「【アイデア出しの救世主】オズボーンのチェックリストとは?ラーメンを例に解説します」が役に立つかもしれません。
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!