マーケティング

【ネット時代の新常識】コトラーのマーケティング4.0と「5A」を徹底解説|推奨者を勝ち取れ

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

経営学者のフィリップ・コトラー教授の「マーケティング4.0」は、デジタル化が進んだ現代に向けてアレンジされた、新しいマーケティング手法です。

前回のマーケティング3.0は、具体的な手法というよりはビジネス哲学を説いたものでした。マーケティング4.0は、マーケティング3.0の文脈を引き継ぎ、具体的な方法論を説いたものです。

最大の目的は、ブランドの「推奨者」を作り出すこと。要は、勝手に製品を他人に勧めてくれる消費者のことです。「ブランドの伝道師」と読み替えても良いでしょう。

マーケティング4.0では、従来カスタマージャーニーとして使われていた「4A」や「AIDA」に代わり、「5A」というフレームワークを使います。

この記事では、マーケティング4.0のポイントをコンパクトに伝えています。経営者やマーケターはぜひ押さえておきましょう!

マーケティング4.0とは

ポイント①:ゴールは「推奨者」の創造

マーケティング4.0の最終目的は、「推奨者」を創ることです。推奨者とは、その名の通りブランドを他人に推奨してくれるありがたい顧客のことです。いわば伝道師ですね。

従来のマーケティングでは、購入(またはリピート購入)が最終目的でした。

しかしながらインターネット&SNS全盛の現代では、1人の購入者を獲得するよりも、1人の推奨者を獲得する方が売上への貢献が大きくなります。

まずマーケティング4.0は、「インターネット上でブランドを推奨してくれる人を増やすためのマーケティング」と覚えておきましょう。

ポイント②:オンラインとオフラインの融合

マーケティング4.0のアプローチの特徴は、「オンライン体験とオフライン体験の融合」にあります。

オンラインの重要性は言うまでもないとして、オフラインの顧客体験が無くなるかというとそうではありません。店舗は相変わらず残り、音楽ライブのようにかえってネット時代に花開くオフライン体験もあります。

現代の顧客は、ネットとリアルを縦横無尽に行き来します。店舗で実物を見て、後でネットで注文するのは日常茶飯事。しかし多くの体験は、ネットとリアルの間に分断があります。

離脱を最小限に抑えて、顧客を最終的に推奨者へと育てていくためには、ネットとリアルで分断されている体験をシームレスに設計し直す必要があります。

まとめると、オンラインとオフラインの体験を融合させ、顧客を推奨者に仕立て上げることがマーケティング4.0の要旨です。

マーケティング4.0の具体的な実践方法としては、後ほど紹介する「5A」というフレームワークを使って、顧客体験を設計していきます。

マーケティング1.0から4.0の変遷

マーケティング4.0は、マーケティング3.0の発展版。そしてマーケティング3.0は、1.0と2.0から地続きになっています。

一連の流れを押さえておくと、理解の風通しが良くなります。

マーケティング1.0

産業革命とともに始まったのがマーケティング1.0です。

工業製品が誕生したばかりで、とにかく安く作れば売れました。今では信じられない話ですが、顧客目線が存在しない時代です。

生産ラインをスリム化し、コスト削減するのが唯一絶対の差別化でした。

マーケティング2.0

コスト削減が来るところまで来てしまい、各社の製品が似通ってきました。どうすれば競合他社を出し抜けるか?

ここで誕生したマーケティング2.0では、顧客ターゲットを定めて、ターゲット層に合わせた機能で差別化しました。

マーケティング3.0

熾烈な市場競争により、機能での差別化すら難しくなってしまいました。もはや製品そのもので違いは出せません。

ここでブランドの人間性で顧客の共感を生むマーケティング3.0の登場です。ブランドや製品が持つ意味で差別化します。

マーケティング4.0へ

インターネット全盛の時代となり、1つのパラダイムシフトが生まれます。

それまで発言権がなかった一般顧客がSNS等で発信できるようになりました。今では当たり前ですが、一昔前まで一般人が不特定多数に意見を述べる機会などなかったのです。

そしてSNSやクチコミサイトなど、一般顧客が集まる顧客コミュニティが自然発生するようになります。

やはり企業発信の情報より、同じ消費者の口コミの方が信頼できるというもの。見込み客が何かの製品を買うとき、事前に顧客コミュニティの意見を覗きに行くのが一般的な商習慣となりました。

現代において顧客コミュニティは、最強のマーケティングチャネルです。マーケティング4.0は、コミュニティ内で勝手に宣伝してくれる「推奨者」を創り出すことための手法を説いています。

新しいカスタマージャーニーのフレームワーク「5A」

マーケティング4.0の理論は全て、5Aというカスタマージャーニーのフレームワークにぶら下がって展開されます。

カスタマージャーニーとは、消費者が製品を体験する一連の流れのこと。よりマーケティングっぽく言えば、タッチポイントを時系列順にプロットしたものです。

カスタマージャーニーを作る目的

  1. 重要なタッチポイントを特定し、
  2. そのタッチポイントの体験を改善し、
  3. その体験で感動させて、推奨者にする

普通は途中に「購入のプロセス」が入りますが、マーケティング4.0では「購入しないけど他人に推奨する人」も想定されています。そのため購入は必須とは見做されていません。

もちろん細かいカスタマージャーニーは企業や製品によって千差万別ですが、大まかな流れは一緒です。

従来のカスタマージャーニーを刷新すべき理由

従来では「AIDA」「4A」がカスタマージャーニーのフレームワークとして使われていました。

早い時期に誕生した「AIDA」の改良版となった「4A」は、次の4段階のジャーニーに分けています。

  1. 認知(Awareness)
  2. 態度(Attitude)
  3. 行動(Act)
  4. 再行動(Act again)

顧客は「ブランドを知り(①認知)、当該ブランドを好きor嫌いになり(②態度)、それを購入するか決め(③行動)、満足すればリピートする(④再行動)」という流れを辿ります。

各ステージにいる顧客数は漏斗(じょうご)のようになっています。最初が1番人数が多く、ステージを進むごとに人数が減っていきます。

パッと見だと違和感なく感じますよね。

ですが4Aのタッチポイントは、テレビ広告や、営業マン、サポートセンターなど、企業からのアプローチが想定されています。

現代マーケティングの最重要ファクターである顧客コミュニティ、つまり「顧客がインターネットで、他の顧客とつながっている」という点が欠如しています。

現代の文脈に沿って考えると、2つの問題点が出てきます。

問題点①:企業よりも社会の意見

4Aには「インターネット上で他人の意見を聞く」というタッチポイントが抜けています

インターネットで皆が繋がっている時代では、自分が下していると思っている意思決定の多くは、実はインターネット上の大多数の意見によって決定されています。

  • Amazonのレビュー
  • Twitterの評判
  • インフルエンサーの紹介
  • 友達から聞いた体験談

の方が、企業のメッセージより余程影響力があるのです。

今や消費者は、自分の意思よりも「社会の意思」に重きを置いてモノを買っています。この観点は4Aの文脈にはありません。

問題点②:再購入より推奨が大事

顧客のロイヤルティを測る尺度に、「リピート率(再購入率)」が古くから使われてきました。4Aの最後のタッチポイントも再購入になっています。

ですがインターネットとSNSがある現代においては、1人がリピート購入するよりも、インターネットで他人に推奨してくれた方が、売上への影響は大きくなります。

加えてブランドによっては、高級すぎて欲しい人全員が買えなかったり、耐用年数が長く再購入が発生しない場合もあります。それでもロイヤルティが高ければ、他人に推奨するケースは十分あり得ます。

4Aの「再購入」のタッチポイントは、「推奨」にとって変わられるのが適切です。

再構成された「5A」のカスタマージャーニー

5Aは、マーケティング4.0の中心概念です。次のようなジャーニーを描きます。

  1. 認知(Awareness)
    :最初にブランドを知る機会。企業の広告や、他人の推奨など。現代人は相当量の認知が浴びせられている

  2. 訴求(Appeal)
    :認知した大量のブランドから、印象が強いものや記憶に残るものを選び出す。ここでブランドが想起集合に入る

  3. 調査(Ask)
    :好奇心を刺激された少数の有力候補を調査する。公式サイトや、友人やインターネット上の評判など、追加情報をチェックしに行く。店頭に見にいくこともある。影響力が大きいのは他人の評判

  4. 行動(Act)
    :一般的なマーケティングでは「購入=行動」と捉えるが、ここでは商品購入後の全体験を含む。買って、使い方を調べて、実際に使って、不具合が出ればアフターサービスを利用して、使い終われば廃棄する。体験全体で満足度を高める必要がある

  5. 推奨(Advocate)
    :体験が素晴らしかった場合、顧客は大好きになったブランドを、頼まれなくても自発的に推奨する。ただし自発的に推奨するのではなく、受動的に推奨するケースが多い。ひとりでにしゃべり出すケースは少なく、ブランドに対する質問や批判などを受けたときに、推奨の立場を表明する場合がほとんど

そして5Aの最大の目的は、顧客を「①認知」から「⑤推奨」に進ませることにあります。

なお「5A」で描かれるジャーニーは、途中をスキップする場合もあります。

テレビCMで認知&訴求が同時に起こり、「いいじゃん!」と思って調査を飛ばして購入する場合もあります。単価が安い商品には往々にして起こるパターン。

熱心な推奨者になっていても、購入はしていないケースもあり得ます。品薄のゲーム機や高級ブランド品など、手に入ってはいないけど、友人に勧める場合。

前のタッチポイントに戻ることもあります。商品を体験した後に違和感を感じ、調査段階に戻って、別のブランドと比較する場合など。

このような理由から「5A」の形状は、漏斗のように必ず入り口が1番広く、ステージを追うごとに人数が絞られるとは限りません。

「④行動」よりも「⑤推奨」が多い場合もあり得ます。

よくあるカスタマージャーニーの類型

「5A」によって作られるカスタマージャーニーは、ステージが進むほど人数が減っていく漏斗型とは限りません。そのため複数の形が存在します。

理想型:蝶ネクタイ型

理想のカスタマージャーニーは「蝶ネクタイ型。この後に紹介する4つのカスタマージャーニーの型から良い点だけを抽出すると、このような左右対称な形になります。

以下の点がポイントです。

蝶ネクタイ型の特徴

  • 「認知した人」が全て「推奨者」に
    調査や購入には至らなくても、他人に推奨する人もいる

  • 「訴求」が強く、好奇心を持った全員が「行動(購入)」に
    間の調査をすっ飛ばして購入するも人いる

なおこれはあくまで理想的な形。完全な蝶ネクタイ型を達成するのは難しいでしょう。ただ理想型と照らし合わせることで、どこを改善しなければならないのかが分かります。

この後に出てくる4つの類型を、蝶ネクタイ型と照らし合わせながら見ていきましょう。

型①:ドアノブ型

もっともよく見られる形が「ドアノブ型」です。日用品や消耗品がこれに当たります。

ドアノブ型の特徴

  • 「調査」を飛ばして、「行動(購入)」まで進む
    好奇心があまり高くないので、調査まで進む顧客は限定的。しかし調査をしなくても購入まで一気に行ってしまう(長所と捉えてOK)
  • 「推奨者」になりにくい
    購入まではたどり着くものの、ブランドへの愛着が湧かず、他人に勧めるほどのエンゲージメントは獲得しづらい

ドアノブ型ブランドの顧客は、ブランドの調査に時間をかけません。

単価が安いのでミスって選んでも痛くないからです。そのため調査した人数よりも、行動(購入)まで進む人数が多くなります。

ドアノブ型に見られる現象

  • 訴求のためのマーケティングに巨額が投じられる
  • 商品にこだわりがないので、入手しやすい販路が重要になる

ドアノブ型の課題

ドアノブ型の課題は、顧客の「親近感」です。

ドアノブ型のブランドは、概して消耗品のようなパッケージ商品が多く、愛着を持たせづらいカテゴリー。なかなか他人に勧めようとは思わないし、ブランドのスイッチも容易です。

次の章で紹介する「親近感」の施策を検討しましょう。

型②:金魚型

BtoB(企業対企業)市場でよく見られるのが「金魚型」です。

金魚型の特徴

  • 「訴求」をすっ飛ばして「調査」まで進む
    心惹かれる訴求がなされないので情報量が足りず、顧客は自ら進んでブランドの詳細調査を始める

先のジャーニーまで進んでいるから結果オーライに見えますが、実はそうではありません

ブランドのメッセージが伝わりきっていないので、セールスポイントがぼやけています。絞り込まれる前の大量の候補と比較されてしまうので、購買に至らないケースが出てきてしまうからです。

また金魚型のブランドは極度に「コモディティ化」してしまっています。概して差別化が難しく、顧客は製品に対して特別な魅力を感じていません。

例えば企業が会計ソフトを購入するシーンを想像してみましょう。機能は概ね似通っています。企業は自社のニーズに合わせて、徹底的に便益とコストを調べ上げてから購入します。

実務で必要というだけで、特段ブランドに愛着が湧くことはありません。

金魚型に見られる現象

  • 購買までのプロセスが長い
  • 調査段階は綿密で、複数関係者が関わることもある
  • 稀にBtoC市場で起こることもある。旅行産業など

金魚型の課題

理想の蝶ネクタイ型への道のりが、もっとも険しいのが金魚型です。

まず顧客の関心を惹くコンテンツでブランドを「訴求」し、あれこれ調査の手を広げたくなる好奇心を抑えましょう。適切に候補を絞り込んでもらい、守備よく有力候補に滑り込むためです。

それに加え、「コミットメント」を上げて、購入に進む人を増やさなければなりません。またBtoBでは難しい話ですが、「親近感」を与えて推奨者を増やす必要まであります。

次の章で紹介する「親近感」「コミットメント」「親近感」の施策を検討しましょう。

型③:トランペット型

「トランペット型」は、高級ブランドやライフスタイルブランドで見られる型です。

トランペット型の特徴

  • 「購入」していない「推奨者」が現れる
    ブランドへの親近感が高く、そのブランドの製品を持っていなくても他人に勧める人が大勢いる

高級ブランドの場合、買っていない(または買えない)けど、他人には「俺、〇〇の腕時計がサイコーだと思うんだよね!」といった具合に勧めてくれます。

ブランディングが成功し、確固たるブランドイメージが根付いたブランドに見られる傾向です。

トランペット型に見られる現象

  • 既に高いクオリティが認められているブランドが多い
  • 価格が高く、買えないファンが多数いる
  • ニッチ&希少性を売りにしているので、販路拡大には関心がない

トランペット型の課題

トランペット型の課題は、「コミットメント」の低さ。すなわち、買いたいのに買えない人が多いことです。

  • 価格を下げてより幅広い人に買ってもらう
  • 販路を広げて買いやすくする
  • 入手しやすいように供給量を上げる

といった作戦が考えられます。

ただしこれはケースバイケース。ハイブランドは、買える人が少ないことが価値につながっています。買いやすくなったエルメスやフェラーリは果たして価値があるのか?

次の章で紹介する「コミットメント」の施策を参考にしてみてください。

型④:漏斗(じょうご)型

「漏斗(じょうご)型」は、耐久消費財やサービス産業に多く見られます。

トランペット型の特徴

  • 全ての顧客がジャーニーの全工程を通り抜ける
    一般にイメージされるカスタマージャーニーの形。次のタッチポイントに進むためには、手前のタッチポイントを経なければならない

各タッチポイントでの脱落者は次のステージに進めなくなるので、全体のタッチポイントを抜かりなく管理することが求められます。

「推奨者」をゴールとするマーケティング4.0の文脈を意識すると、直前の「購入」をマストで通過しなければならない点は注目に値します。

漏斗型に見られる現象

  • ブランドのスイッチは比較的少ない
  • ただし体験の質が落ちると、他ブランドへのスイッチを誘発する

漏斗型の課題

漏斗型の課題は、「コミットメント」と「親近感」です。

家電量販店を思い出してみましょう。店舗で商品を見て、Amazonで買われてしまうケースはコミットメントの弱さが現れています。ここは非常に大きな課題でしょう。

また「親近感」が低いので、推奨者を得づらい構図もあります。アフターサービスで感動を与えられるかがポイントになってきます。

次の章で紹介する「親近感」「コミットメント」「親近感」の施策を検討しましょう。

【実践編】マーケティング4.0の打ち手

「5A」に当てはめてカスタマージャーニーを書き出してみると、どこで顧客が離れてしまっているかが分かります。そこが課題。つまり注力ポイントになるわけです。

注力ポイントは大きく次の4つになります。

マーケティング4.0の注力ポイント

  1. 誘引力
  2. 好奇心
  3. コミットメント
  4. 親近感

足りないところを見極めて埋めていきましょう。

A.「誘引力」の施策

目的:「訴求」へ

顧客はブランドを「認知」しているものの、有象無象の中の一ブランドとしか認識していません。見たことがある、聞いたことがあるレベルに過ぎません。

ブランドを強く「訴求」して、「おっ?これは?」と顧客の注目を引き寄せます。

専門的な用語を使うと、「想起集合」に入ることが目的です。想起集合とは「買いたい!欲しい!」と思ったときに、頭の中に想起される集合のこと。

カップラーメンや清涼飲料水であれば、7,8種くらいは想起集合に入りそうです。生命保険であれば、3つ程度になるかもしれません。

アクション:人間中心のマーケティング

現代は機能による差別化では埋もれてしまう時代。ブランドの人間味で訴求します。

理念を掲げ、理念に沿って行動することで、あたかも一人の人格者のように振る舞います。その人柄が顧客の共感を呼びます。(詳しくはマーケティング3.0の解説記事を参照)

なお顧客に共感される人柄を作るためには、まず顧客の欲求やニーズを知らなければなリません。深いレベルでの顧客理解がマスト要件になります。

定番の顧客理解の手法として、ペルソナの解説記事も参考にしてみてください。

B.「好奇心」の施策

目的:「調査」へ

ブランドの「訴求」によって、顧客はあなたのブランドに注目しています。まずまず良いイメージを持っています。

顧客の好奇心を勝ち取り、有力候補にノミネートされたブランドだけが、詳細検討ステージの「調査」に進めます。

ここで想起集合から有力候補が絞られます。数は製品ジャンルによりますが、勝ち残るのは3種類ほどでしょう。

アクション:コンテンツマーケティング

顧客がブランドに強い好奇心を示すようになるには、何かきっかけが必要です。そこで使えるのがコンテンツマーケティングです。

コンテンツマーケティングは、広告ではありません。

売り込み要素は潜めて、顧客が知りたい情報をGIVEします。顧客は自らが抱える課題を解決するためにコンテンツにたどり着き、そこでブランドに触れて好奇心を抱きます。

コンテンツマーケティングでは、

  1. オウンドメディア
    :企業がオーナー。企業ブログや企業SNSなど
  2. ペイドメディア
    :有料で他社メディアに配信してもらう。テレビCM、雑誌、ネット広告など
  3. アーンドメディア
    :第三者が発信するメディア。個人のSNSやブログなど

を使い分けます。

≫_コンテンツマーケティングとは?メリットは?アーンド・オウンド・ペイドの3メディアを使いこなせ

C.「コミットメント」の施策

目的:「行動(購買)」へ

「調査」の段階を勝ち残ると、競合を押し切って最有力候補になります。ここまで来た顧客は、かなり購買にかなり近づいています。

ですがラスト1の候補に残ったとしても、依然として「買わない」という選択肢が残っています。

理由はさまざまで、

  • 時期や季節が合わない
  • 価格で躊躇している
  • 関係者(家族や上司)の了解が得られていない
  • 何らか購入に対する不安が残っている

など。丁寧にコミュニケーションしなければ、スッと離脱してしまうでしょう。そのうち欲しかったことすら忘れてしまいます。

離脱の芽を摘み取って、顧客を取り逃さずに「行動(購買)」につなげましょう。

アクション:オムニチャネルの実施

顧客はオンライン(主にリアル店舗)とオフライン(ECサイトやクチコミサイト、SNSなど)を自由に行き来して、最終的に購買にたどり着きます。

ですが通常、オンラインとオフラインのチャネルは断絶されています。ネットから店舗へ、あるいは店舗からネットへの遷移は、顧客の強い意志と行動を求めます。

顧客によほど強い意志がない限り、この断絶が離脱ポイントになってしまいます。

そこで取り入れたいのが、オムニチャネルです。オムニチャネルとは、オンラインとオフラインの購買体験をシームレスにつなげる施策のことです。

  • 「買いたい」と思ったときに、いつでも買えるモバイル販売チャネルの整備
  • 購買目前の顧客に、意思決定を助ける情報を配信する仕組み

などの施策を展開しましょう。

D.「親近感」の施策

目的:「推奨」へ

ありがたいことに顧客は「行動(購入)」まで辿り着きました。昔のマーケティングならここで終了ですが、マーケティング4.0のゴールはまだ先です。

購入してくれた顧客を「推奨者」に変貌させましょう。顧客にマーケティングしてもらうのです。

他人にブランドを推奨したいと思う人は、間違いなくそのブランドの献身的なファン。キリスト教を広めるために、危険な航海を経て辺境へ旅立っていったイエズス会の宣教師をイメージしてください。

高いエンゲージメント(≒愛着心)がなければ、推奨者にはなりません。高い顧客ロイヤルティと言い換えてもOKです。

アクション:エンゲージメント施策

エンゲージメントを高める方法は、ブランドへの接触頻度を上げて、顧客の日常に入り込むこと。

次の3つのアプローチが挙げられます。

  1. モバイルアプリ
    :顧客はモバイル端末を肌身離さず持ち歩く。モバイルアプリと製品をセットで使うことで利便性が上がる仕掛けを持たせ、接触を増やす
  2. ゲーミフィケーション
    :ゲームには、人を動かすヒントが詰まっている。製品体験にゲーム要素を持たせて、楽しみながら接触頻度を上げる
  3. アフターサポート
    :困った顧客に感動体験を与えるチャンス。予想を超える対応でピンチをチャンスに変える。メールを使わなくなっているので、SNSを窓口にしましょう。

なおゲーミフィケーションは奥が深い分野なので、一言では言い表せません。↓の解説記事を参考にしてみてください。

≫【遊びの技術】ゲーミフィケーションの意味とは?顧客ロイヤルティを高める極意を解説

またアフターサポートの重要性に関しては、「グッドマンの法則」で理論化されています。こちらは↓の解説記事が参考になります。

≫【ピンチは大チャンス】グッドマンの法則とは?苦情を売上に変えるマーケティングのススメ

オンラインとオフラインの体験の断絶に注目

全体的に意識しなければならないのは、カスタマージャーニーでオンライン体験とオフライン体験を跨ぐタッチポイントです。

例えば、「お店で実物を見て、家に帰って再度口コミや価格を吟味してネットで購入する」という場合を考えてみましょう。

これは上記の「C.コミットメント」の弱さによって起こる行動です。

明らかに「オフラインの店舗」と「インターネット上の情報源や販売チャネル」が断絶されていますね。ここがコミットメントを弱める原因になっています。

要するに、「買う気満々で店まで来てんだから、そこで買わせろよ」って話。店舗側は、顧客が意思決定できる情報を店舗内で配信できていれば、その場で買ってもらえたはずです。

IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)を応用すれば、次のように改善できます。

例えば顧客が「冷蔵庫コーナー」の前で長い時間滞在していたなら、冷蔵庫選びのコラムをスマホに配信することが可能です。口コミも表示できます。

価格の話であれば、そのお客さん限定割引クーポンをソッと配信しても良いですね。

こんな感じで「オンラインとオフラインの間の断絶」を埋めてあげれば、顧客の離脱を防げます。

まとめ:マーケティング4.0に感じたこと

今回は、コトラーのマーケティング4.0を紹介しました。

マーケティング4.0の要旨は、カスタマージャーニーの最後に当たる「推奨者」へ、如何にして顧客を連れて行くかに尽きます。この考え方が革新的で、実に当を得ています。

マーケティング4.0のフレームワークである「5A」は、まさに「推奨者」の創造に力点を置いた新しいフレームワークでした。

インターネットによるパラダイムシフト

なぜそんなに「推奨者」が重要なのか?

その背景には、WEB2.0時代に起きたパラダイムシフトがあります。インターネットを通じて、名もなき一般人が世界に発信できるようになったのです。

もはや誰も覚えていないかもしれませんが、少し前までは一般人が社会に声を発する機会なんてありませんでした。テレビや雑誌で、著名人の声を一方的に聞くだけでした。

ふーん、それだけ?一般人が発信できるとマーケティングが何か変わるの?

と思う人もいるでしょう。ですがこれはとんでもない変化です。

少し前の消費者は、企業から発信されるメッセージ(広告や営業)から製品情報を得るしかありませんでした。ですが、今やネット上にいる有象無象の一般人からも、製品のレビューや口コミが手に入ります。

さて「企業」と「一般人」、両方が発信するメッセージを受け取れるとして、どちらが信頼できそうでしょうか?

少し意訳しましょう。

  • 売りたくてしょうがないビジネスマン
  • 同じ消費者の立場の友達

どちらの声がよりフラットな意見でしょうか?

同じ消費者の口コミの方が信頼できそうですよね。しかも口コミは1人だけじゃありません。有象無象の消費者の声が集まっているので、もはや「集合知」と化しています。

こうなると、インターネット上で消費者による活発な会話が行われることが、1番のマーケティングということになりますね。企業広告なんて目じゃありません。

しかも現代人は洪水のように情報を浴びせられているので、総じて集中力が持ちません。知らず知らずのうちに、自分の意思決定が、実は社会の意思決定に委ねられていることに気がつきます。

現代においては、「推奨者」の声がもっとも強いマーケティングになる。ここに着目して、しっかり言語化している点は、さすがとしか言いようがありません。

写真撮影OKで来場者を伸ばした森美術館

六本木ヒルズ内にある森美術館は、いち早く撮影OKに踏み切ったことで知られています。

美術館で撮影なんて、普通に考えたら絶対NGですよね。「写真を一般公開されたら、お客さんが来なくなっちゃう!」と。

ですが冷静になると、「教科書で見てるから、モナリザを見にルーブルまで行く必要なくない?」とはならないですよね。むしろ興味が湧いて見に行きたくなりませんか?

そこに気がついた森美術館は、2009年に館内撮影OKとしました。すると来場者が次々にSNSで拡散し、勝手にマーケティングしてくれるではありませんか!

ネット上での顧客間の会話が活発になると、

  • 「そんなアーティストがいるんだ!」
  • 「面白そうな企画展やってるじゃん!」

と認知や訴求が加速します。もちろん結果的に来場者は爆増しました。

実にマーケティング4.0的な事例ですね。より詳しい話は『シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略』をチェックしてみてください。

忘れちゃいけないマーケティング3.0の文脈

個人的には、マーケティング4.0は「マーケティング3.1」と呼んでも差し支えないと思っています。4.0は、3.0の具体的な運用方法を解説しているに過ぎないからです。

マーケティング4.0の内容だけでも重要な気づきがありますが、やはり大事なのはマーケティング3.0の文脈です。

マーケティング3.0の趣旨は、ブランドの人柄で顧客を惹きつけることです。これだけではピンと来ないと思うので、もう少し詳しく話しましょう。

現代は情報格差がなくなり、各社とも同じような商品を作れるようになりました。しかも顧客はインターネットでカンタンに比較できてしまいます。こうなると差別化が難しくなります。

  • シャープとパナソニック
  • ダイソーとセリア
  • docomoとauとソフトバンク
  • DELとLenovo
  • ヤマダ電機とビックカメラ

これらのブランドに特別な差は感じるでしょうか?

「たいして変わらないね」と思ったのなら、そのブランドは「コモディティ化」しています。こうなったら各社は価格でしか勝負できません。しかし値下げにも限界がある。

コモディティとは「ただのモノ」という意味。特別感はなくありふれていて、思い入れもなく他の製品と代替可能という意味です。

さてどうしたものか。

Appleはコモディティ化しているか?

一つ考えてみてください。Appleは、サムスンやLenovoと同じでしょうか?

わたし個人の見解になってしまいますが、Appleはコモディティ化していないと思います。Appleは他のブランド何が違うのか?ここがヒントになります。

スティーブ・ジョブズが掲げた「Think different」。はみ出しものが世界を変えるというメッセージでした。言葉通りにAppleは、iPodやiPhoneで世界を変えました。

クリエーターをターゲットとし、美しく洗練されたデザインの製品を次々に生み出しました。クリエーターにとって、Apple製品を使うことは自己実現の手段になっています。

Appleのファンは、Apple製品と他社製品を比べていません。サムスンのスマホの方が性能が高くても、LenovoのPCの方がコスパが良くても、そんなことは関係ないのです。

だってAppleの人柄に惹かれているんだから

ブランドが人柄を得るためには、崇高な理念を掲げ、それを有限実行し続けなければなりませんこれがマーケティング3.0の哲学です。その姿勢が熱狂的なファンを生みます。

ではブランドの人柄が作れたとして、どうやって守備良く顧客を「推奨者」に仕立て上げるか?これを解説しているのがマーケティング4.0なのです。こういう繋がりです。

マーケティング3.0の解説記事も用意しているので、まだ学んでいない人はぜひチェックしてみてください。

【マネできない差別化】コトラーのマーケティング3.0を超丁寧に解説【理念で売れ】経営学の世界でフィリップ・コトラー教授といえば超大物。そんな彼が、インドネシアの高名マーケターと一緒に作り上げた理論が「マーケティング3...

参考書籍

参考書籍はもちろん『コトラーのマーケティング4.0』です。ただし前段の『マーケティング3.0』の方には、より重要な思想が記されています。

必ずセットで読んでいただきたいなと思います。

マーケティング4.0の実現方法として提唱されている「オンラインとオフラインの融合」は、『アフターデジタル』で綺麗に言語化されています。合わせてオススメです。

また実践的な事例を多く解説した『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』もオススメです。

こちらは本聴き放題の「Audible」読み放題の「Kindle Unlimited」にも対応しています。普通に買うよりずっとお得にインプットできるので、こちらがオススメです。

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社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!

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新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。

Kindle Unlimited 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがKindle Unlimitedで読むべき15冊

外せない❷ Audible

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冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。

Audible 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがAudibleで聴くべき17冊

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どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。

そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。

ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!

とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!

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