マーケティング

【ピンチは大チャンス】グッドマンの法則とは?苦情を売上に変えるマーケティングのススメ

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苦情・クレームは、悪いことだと思っていませんか?

いいえ違います。苦情・クレームは、売上を上げる大々チャンスです。よく営業やコンタクトセンターの現場で言われるように、「苦情は宝」「ピンチはチャンス」なのです。

精神論にも聞こえてしまうこれらの格言を、実際の調査データから裏付けたのが「グッドマンの法則」です。しかし同時に、適切に対応しなければ大きな損失になることも示唆しています。

どうやったって苦情は来てしまうもの。苦情を売上にさせるか、損失にさせるかは、あなたのハンドリング次第です。

この記事を読み終えたあなたは、苦情を喜ぶヘンタイ(?)に生まれ変わります。感覚ではなくロジカルに、ピンチを売上に変えることができるようになるでしょう。

ぜひ最後までお付き合いください。

グッドマンの法則とは?

「グッドマンの法則」は、クレームと顧客行動の関係性を説いたものです。

3つの法則に分かれており、概要は次の通り(以降の章で詳しく解説)。

  1. 第1の法則
    :不満を企業に伝えてくる顧客のうち、対応に満足した顧客の再購入率は申し立てなかった顧客に比べて高くなる
  2. 第2の法則
    :ネガティブな体験はポジティブな経験の2~4倍ネガティブな口コミを生むため、悪い評判が拡散しやすい
  3. 第3の法則
    :企業が顧客に適切な情報提供をすることで、顧客との信頼関係が構築されポジティブな口コミが普及し、購買そして市場の拡大に貢献する

コンタクトセンター界隈では、金科玉条のごとく扱われている法則でもあります。実際には営業やマーケティング全般でも応用できる内容になっています。

なおグッドマンは人名で、マーケティング調査・コンサルティング会社TRAPの創業者のJohn A・Goodmanのこと。しかしグッドマンの法則を提唱したのは彼ではありません。

グッドマン氏は1970年代後半米国政府から依頼を受け、コカコーラやGMといった全米の大企業のクレーム調査を行い、結果をデータに落とし込みました。

そのデータを白鴎大学経営学部の佐藤知恭教授が法則としてまとめたのが、グッドマンの法則です。「グッドマンの法則」の名付け親は佐藤教授です。

【図解】グッドマンの調査結果

さてグッドマン氏が行ったクレーム調査の結果はどういったものだったのでしょうか?

ポイントを書き出すと次の通りです。

再購入率

  • 不満を持った顧客の96%は何も言わない(競合他社に流れる)
  • 苦情を言わない顧客の再購入率は9%
  • 苦情を言って解決した場合、再購入率は54%(6倍)、解決が迅速であれば82%(9倍)に改善

クチコミ

  • 良いクチコミは4〜5人に、悪いクチコミは9〜10人に伝わる
  • 20人以上に悪いクチコミを伝える人が、全体の12.3%いる
  • 悪いクチコミは2〜4倍の拡散力がある

情報提供

  • 顧客教育用のコンテンツを見た顧客の50%は信頼度が高まった
  • その企業からの購入を増やすと回答した顧客が15%いた

苦情を迅速に解決した場合、顧客ロイヤルティ(再購入率)が、普通に満足している場合よりも高くなっているのは注目に値しますね。

サイレントクレーマーの恐ろしさ

クレームを言わずに去ってしまう顧客を「サイレントクレーマー」と呼びます。

調査結果によれば、1件のクレームの裏には24人のサイレントクレーマーがいます。そしてそのほとんどは、競合他社へ流れてしまいます。

実はクレームがないのは非常に悪いことなのです。むしろクレームはどんどん発散してもらった方が良いということになりますね。

第1の法則:クレーム対応は顧客ロイヤルティを上げる

グッドマンの第1の法則は、「不満を企業に伝えてくる顧客のうち、対応に満足した顧客の再購入率は申し立てなかった顧客に比べて高くなる」です。

よりわかりやすく表現すると、クレーム対応で株が上がり、結果として以前よりも熱心な顧客になるということです。

クレームを言ってこないサイレントカスタマーは、そのまま離反顧客となって、競合他社へ流れていきます。実に顧客の96%はサイレントカスタマーです。

しかしクレームを入れてきて、かつ適切に対応すれば、その顧客は戻ってきてくれるばかりか、以前よりもロイヤルティが高い顧客になります。

つまり企業としては、クレームを入れてもらった方が売上が上がるという理屈になりますね。「苦情は宝」は比喩でも何でもなく、文字通りの意味なのです。

事例:ザッポス

ザッポスは米国の靴専門のEC事業者です。Amazonの傘下ですが、あのジェフベゾスが恐れた企業として知られており、買収後も自由な経営の条件を飲んだほどです。

靴なんてどの店で買っても一緒なはず。なぜザッポスはそれほど特別なのか?

それはカスタマーセンターの非常識な手厚さと、その結果による顧客ロイヤルティの異常な高さあります。

靴を返品したいとの問い合わせがあり、オペレーターが理由を聞いたところ、履かせたい人が亡くなってしまったと返答されました。それに対しザッポスは、返品に応じただけでなくお見舞いの花まで贈りました。

このような対応をされたら、顧客はザッポス以外で靴を買う気がなくなってしまいます。

米国の高級百貨店ノードストロームの「タイヤ伝説」も有名です。

ある日一人の男性がタイヤを返品にしに来ました。しかしノードストロームは百貨店。タイヤは売っていません。

実は同じ敷地に以前あったお店で買ったタイヤを、間違って返品に来たようです。普通なら突っぱねるところですが、ノードストロームはこの返品を受け付けました。

ザッポスもノードストロームも極端な例で、クレーム対応の域を超えています。

しかし、「どこでも買える商品を扱っていても、クレーム対応によって顧客ロイヤルティを上げることできる」を示す好例と言えるでしょう。

第2の法則:悪い口コミほど拡散する

グッドマンの第2の法則は、「ネガティブな体験はポジティブな経験の2~4倍ネガティブな口コミを生むため、悪い評判が拡散しやすい」です。

行動経済学のプロスペクト理論によれば、人間は利得よりも損失に2〜2.5倍敏感です。ネガティブな情報ほど感情が高ぶってしまうのは、人間生まれ持っての性質なのでしょう。

ちなみにこの第2の法則を悪用すると「炎上商法」になります。あえてネガティブな行動をし、クチコミを煽ることで知名度を上げるやり方です(注:推奨はしていない)。

事例:某カップ焼きそばの異物混入事件

とある男性がSNSに、某人気カップ焼きそばに異物(虫の死骸)が入っていたと投稿したところ、たちまち大炎上となりました。

これに対し企業側は、きちんと調査せずに「製造過程での異物混入はあり得ない」と突っぱねます。しかしこの対応がよろしくありませんでした。

その後は異物混入の可能性を棄却できず、正直あまり清潔に見えない工場写真もネットに流され、火に油を注ぐ結果となりました。

結局企業側は、商品回収、一時操業停止、工場設備の刷新を余儀なくされ、特大のダメージを被ることになってしまいました。

クレーム処理を誤った企業の典型的な末路です。反面教師にしたいですね。

第3の法則:情報提供は顧客を惹きつける

グッドマンの第3の法則は、「企業が顧客に適切な情報提供をすることで、顧客との信頼関係が構築されポジティブな口コミが普及し、購買そして市場の拡大に貢献する」です。

ここでの情報とは、ポジティブかネガティブかは関係なく、顧客が必要としている情報を指します。悪い情報でも顧客に関係するなら、開示しなければなりません。

例えば書店はどこへ行っても扱っている商品は同じです。しかし書店員さんが熱心にオススメの本を紹介してくれるなら、あえてその書店へ通う理由になります。

Amazonは良いクチコミだけを選り好みせず、悪いクチコミもちゃんと載せます。顧客はネガティブな情報も知りたがっており、実際には包み隠さず伝えたほうが売れるとわかっているからです。

事例:会計ソフトfreee

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グッドマンの法則をアクションに落とし込む

グッドマンの法則を教訓に、実際にアクションに落とし込むにはどうすれば良いか。

次の3つを挙げました。

グッドマンの法則を実践するアクション

  1. 顧客がクレームを入れやすい環境
  2. 悪いクチコミは拡散前に封殺
  3. 隠し通せないミスは自ら告白

それぞれ見ていきましょう。

アクション①:顧客がクレームを入れやすい環境

第1の法則の通り、クレーム対応できれば顧客は戻ってくるばかりか忠誠心の高い顧客になります。しかしほとんどの顧客はクレームを入れずに去っていきます。

つまり気軽にクレームを入れてもらえる環境は、顧客リテンション(retention=維持)の上で、極めて重要な意味を持つということになります。

具体的には、次のような施策が取れるでしょう。

顧客がクレームを入れやすい環境作りの例

  • 問い合わせフォームをわかりやすい位置に置く
  • 24時間365日で問い合わせを受け付ける
  • メールや電話だけでなく、SNSやLINE、チャットボットなど間口を広げる

また企業にクレームを入れるよりは、身近な人にグチを入れる方がハードルは下がります。

ファン同士が交流する顧客コミュニティを用意すれば、よりクレームを拾いやすくなるでしょう。この手法は「コミュニティマーケティング」とも呼ばれています。

アクション②:悪いクチコミは拡散前に封殺

悪いクチコミがSNSに投稿された瞬間、それは火種が投下されたことを意味します。

すぐさま察知して、能動的にクレームを処理すれば、拡散を防ぐことができ、ついでにその顧客のロイヤルティを上げることができます。

通常クレーム対応は受動的(パッシブ)ですが、このように進んでクレームを拾いに行く手法は「アクティブサポート」と呼ばれています。

それなりの顧客数を抱えている企業であれば、アクティブサポートをやらない理由はないでしょう。

アクション③:隠し通せないミスは自ら告白

絶対に隠し通せる悪事なら、闇に葬ってしまうのも良いでしょう。しかし隠し通せる自信がないならば、自ら顧客に伝えるべきです。

深く考えずとも、自ら謝るのと、他人によって悪事が暴かれたのでは、周囲の風当たりは全く違います。小学生でもわかる話です。

おそらく2000年代前半くらいまでは、悪事をひた隠しにしていた企業は相当数いたと思われます。マスコミに内部告発でもされなければ、隠し通せたでしょうから。

しかしSNSがある現代では、もう隠し通すのは不可能でしょう。告発のハードルは下がり、火種はあっという間に拡散します。企業の圧力では絶対に消し込めません。

もちろん自ら告白すれば痛手は被りますが、後でバレたときの大炎上に比べれば、はるかに少ないダメージで済むでしょう。

本来は道徳的な話ですが、打算で考えたとしても、バレる前に自分から告白してしまった方が得なのです。

グッドマンの法則が応用できる領域

グッドマンの法則は、主にコンタクトセンターで活用されています。元になった調査データがクレーム処理に関するものだったためでしょう。

しかし抽象化して考えれば、他の領域でも応用が効きます。

グッドマンの法則が応用できる領域

  1. 営業
  2. マネジメント
  3. マーケティング

の3つ例を挙げてみました。それぞれ見ていきましょう。

応用①:営業

コンタクトセンターと同じ感覚で活用できるのが「営業」です。ある意味、窓口がセンターか営業担当かの違いしかないので。

営業経験が長い人なら、重クレームに対処した後に、以前よりその顧客と親密になった経験が少なからずあると思います。クレーム内容が重いほど効果テキメンです。

また代理店の営業は、他社も同じ商材を扱っているので、差別化が難しい傾向になります。しかし顧客は必要な情報を提供してくれる営業マンを選びます。差別化はできるのです。

すぐに仕事につながらなくても、お客さんに小まめに情報提供しましょう。ここが売れる営業と売れない営業を分ける一つの境目になります。

応用②:マネジメント

グッドマンの法則は、「マネジメント」への応用も可能です。元々の文脈と照らし合わせるなら、上司は企業側、部下は顧客側となります。

部下は様々なトラブルを持ってきますが、これを一緒に解決してくれた上司を信頼するようになります。仕事だけでなく、プライベートな悩みも同じです。

そのためにはまず、部下が報告や意見を言いやすい雰囲気作りが大切です。いつもプンプンと不機嫌な上司は、グッドマンの法則的にはアウトと言えるでしょう。

また企業ピラミッド構造では、上位層ほど情報を持っており、下に行くほど情報が統制されています。下の人は子供扱いされている感覚かもしれません。

「お前が知る必要はない」と情報を止めず、伝えても支障がない情報はクリアに伝えましょう。部下としても、同じ組織で働く以上は、組織の方向性を知りたいはずです。

応用③:マーケティング

「マーケティング」は定義が広く、厳密にはコンタクトセンターも営業もマーケティングの一部です。ここでは広報やブランディングをイメージしてもらうと良いかと。

グッドマンの法則によれば、顧客は情報を提供してくれる企業を好きになります。

そして顧客が知りたい情報を発信するマーケティング手法を、「コンテンツマーケティング」と呼びます。カンタンに言えば、広告以外の情報を発信するマーケティングです。

プレスリリースや導入事例はコンテンツマーケティングに該当します。一方でセール情報やクーポンはコンテンツマーケティングではありません。

オウンドメディア(企業ブログなど)やSNSなどを駆使して、顧客が必要な情報を、必要なタイミングで届けましょう。

≫_コンテンツマーケティングとは?メリットは?アーンド・オウンド・ペイドの3メディアを使いこなせ

グッドマンの法則は古いのか?

グッドマンの法則は元データが1970年代と古く、既に長い年月が経過しています。当時はインターネット社会ではなかったので、世相はまるっきり変わってしまいました。

グッドマンの法則は古くて使いものにならないのでしょうか?

いえいえ。そんなことはありません。

人間の性質は変わらない

社会構造が変わっているので、当時の調査結果の細かい数字や遷移のパーセンテージは変わっていると思います。しかし大局は変わりません。

なぜなら人間の性質、言い換えると脳の思考パターンは、1万年以上前の狩猟採集民だった祖先と全く変わっていないからです(だから今でもかつて貴重だった甘いものや動物性脂肪に目がない)。

悪い情報ほど言いふらしたくなるのも、迅速なリカバリー対応に好感を持つのも、太古の昔から何ら変わっていないのです。

ゆえにこの先さらにテクノロジーが進化し、生活様式が変わったとしても、グッドマンの3つの法則のベクトルは不変であると考えられます。

むしろ重要になっているグッドマンの法則

元々のグッドマン氏の調査によれば、悪いクチコミは平均10人に、良いクチコミはその半分の人数に伝わっていました。

しかしこれはインターネット前夜の話。一般人が不特定多数の人に情報を発信する手段がなかったので、話す相手は家族や友人に限られました。押し並べて10人は妥当な印象です。

現代においては、クチコミが伝わる人数は増えている可能性が高いでしょう。

現代はインターネットにSNSが加わり、一般人が世界に向けて情報を発信できるようになりました。クチコミが伝わる人の絶対数は桁が変わっています。

悪いクチコミは一瞬のうちに、100人にも1,000人にも拡散されます。タチが悪いことに、共感した他人まで連鎖的に拡散に協力するので、1つのクチコミは万単位の人に伝わる可能性を秘めています。

拡散の連鎖(いわゆる炎上)を考慮に入れると、悪いクチコミの拡散力は2〜4倍では済まないかもしれません。

そのためグッドマンの法則の重要性は、むしろ以前よりも増していると考えられます。

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≫【厳選】ビジネスマンがKindle Unlimitedで読むべき15冊

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≫【厳選】ビジネスマンがAudibleで聴くべき17冊

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