心理学・行動経済学

【これは暗示だ】プライミング効果とは?実験事例で解説【あなたも絶対かかっている】

  • レストランでどのメニューを注文するか
  • 選挙でどの候補者に投票するか

あなたはこれらの判断や行動を、本当に自分の意思で決定していると思っていますか?

ひょっとするとそれは、「プライミング効果」によって、あなたが動かされた結果かもしれません。

プライミング効果とは、先に見聞きした情報によって、その後の感情や行動が影響を受けてしまう現象です。一言でいうなら「暗示」です。

この記事でわかること

  • プライミング効果とは?
  • プライミング効果の実験事例
  • プライミング効果を仕事に活かす方法

営業やマーケティング現場では、顧客が知らないところでこっそりとプライミングが仕込まれています。顧客は知らず知らずのうちに誘導されていることに気づいていません。

この記事を読んで、魔法のようなプライミング効果をビジネスに活用していきましょう!

プライミング効果とは?

プライミング効果(Priming effect)とは…

先に見聞きした情報によって、その後の感情や行動が影響を受けてしまう現象のこと。

脳科学・心理学・行動経済学で用いられる用語。マーケティング手法としても非常に有名です。

プライミング効果は、連想が大好きな脳の働きによって起こります。

脳は、見聞きした複数の情報に全く関連性がなくても、勝手に関連づけて連想し始めてしまいます。無意識下で勝手にそう動いてしまうので、止めることはできません。

そして連想した結果、その後の感情や行動が影響を受けてしまうのです。

例えば次のような現象が起きます。

  • ドラマでパフェを食べるシーンを見たら、甘いものが食べたくなる
  • コーラの看板が目に入ると、シュワシュワした炭酸飲料が飲みたくなる
  • 駐車場に鳥居のマークがあると、立ち小便を躊躇する
  • レース観戦の帰り道は、運転が荒くなり事故が増える

日本語で言えば「暗示」ですね。

95対5の法則とプライミング効果

よく人間の意識と無意識を「氷山」に例えて説明します。

  • 海面に出ている氷山:5%
  • 海の中にある大きな氷塊:95%

「95対5の法則」によれば、人間が脳を意識的に使えているのはわずか5%で、95%は無意識下にあるとされています。

つまり人間の行動や意思決定の95%は、実は無意識のうちに起こっているのです。

信じられないかもしれませんが、次の例文を見ればそれほど違和感はないでしょう。

あなたは山登りに来ました。登山道の入り口には「熊出没注意」の看板。ただ見通しは良く、他の登山客もいるので、そこまで気にはなりません。

ですが何時間か登っているうちに、正規ルートを外れてしまったみたいです。周りに人はおらず、木々が鬱蒼としています。辺りはシーンと静まりかえっています。

突然右手の木々が「バサッ…バサッ…」と大きく揺れました。

全身に緊張が走ります。

一歩あとずさりしたところで、物音を立てぬように体の動きを止めます。右方向に顔を向け、音の方向に目をやりました。瞳孔は開き、瞬きの回数は極端に減ります。

…。一瞬の静寂のあと、木の影から野鳥が飛んでいきました。

体の緊張が解け、久しぶりに体温を感じた気がしました。ふと腕時計を見ると時刻は15時。肝が冷えたので、来た道を戻り下山することにしました。

この例文にいくつか動詞が出てきましたが、意識的に行った行動は一つもありません。いずれも無意識のうちに判断し、あえてそうしようという意思が伴わないまま行動しています。

例文のような非日常に限りません。日常のごくありふれた行動のほとんどは、無意識のうちに行われています。ポリっと腕を掻いたり、暑くて袖をまくったりという具合です。

人間の行動や意思決定の95%は、無意識下で判断されています。そしてその95%の無意識に働きかけるのが、「プライミング効果」なのです。

プライミング効果を体感してみよう

「プライミング効果」は、言葉で説明するよりも、実際に体験してもらう方がわかりやすいです。

次の単語を見てみてください。

「深夜」「公園」

…どうでしょうか?

ただ単語を見てくださいと言われただけなのに、「怖い」とか「物騒」とか「不良」のようなイメージを勝手に連想しませんでしたか?

もしかしたら最近ではすっかり忘れていたけど、「中学生の頃に、夜の公園で不良に絡まれた経験」を想起したのかもしれません。

そこまで記憶に残るような強烈な体験がなかったとしても、連想は起こります。

  • 夜の公園で後ろから足音が近づいてくるのが怖かった
  • 夜の公園で起きた傷害事件のニュースを見た

のような、今となっては思い出せない深層心理に刻まれた記憶も、連想を引き起こします。

このような連想をしたあとは、「今日はなるべく暗がりで一人にならないように帰ろう」と思うようになります。

このとき、先に見聞きする情報(「深夜」と「公園」)をプライマー(または先行刺激)」と呼びます。

一方でプライマーの影響を受ける事柄(「なるべく暗がりで一人にならないように帰ろう」と思う感情)をターゲット(または後続刺激)」と呼びます。

「直接プライミング」と「間接プライミング」

プライミング効果は次の2種類に大別されます。

  1. 直接プライミング
  2. 間接プライミング

の2つです。

それぞれをカンタンな例を見てきましょう。

①「直接プライミング」の例

直接プライミングとは、「プライマー」と「ターゲット」が同じときに起こるプライミング効果のことです。

と言われてもピンと来ないですよね。例を出すので、次の写真を見てみてください。

見ましたね。

それでは、次の問題に答えてください。

問題

Q:「ラ□□ン」の□の空欄を埋めて、単語を作ってください。

第一に思い浮かんだのは、もちろん「ラーメン」ですね。それ以外の単語が思い浮かばなかった人もいると思います。

「ライオン」や「ランタン」といった単語もありますが、きっと出てきません。直前に見たラーメンの写真が頭に残っていて、脳が勝手にラーメンを連想してしまうからです。

「ラーメンの画像」で「ラーメンの単語」を連想させました。両者は同じものです。これが直接プライミングです。

ちなみにこの後に何となくラーメンが食べたくなって、お昼にラーメン屋に行ってしまったとしたら、それもプライミング効果によるものです。

②「間接プライミング」の例

間接プライミングとは、「プライマー」と「ターゲット」が同じではないとき起こるプライミング効果のことです。

次のタスクを見てみてください。

タスク

以下の3つの単語を紙に書いてください。面倒だったら心の中でゆっくり唱えてください。

「動物園」
「草原」
「アフリカ」

対応しましたね。

問題

Q:「ラ□□ン」の□の空欄を埋めて、単語を作ってください。

今度は「ライオン」が第一に思い浮かぶと思います。

その単語そのもの(「ライオン」)ではなく、その単語を連想させる言葉でもプライミング効果は発揮されます。これが間接プライミングです。

もしかしたら今週末のお出かけを動物園にするかもしれません。そうなったらきっとプライミング効果によるものです。

プライミング効果の実験事例 4連発

実際にあった「プライミング効果」の実験事例を4つ紹介します。見れば、無意識のうちに人間がどれだけプライミング効果の影響を受けているかわかります。

事例①:高齢者をイメージする単語を聞いただけで…

心理学者のジョン・バルフらがニューヨーク大学の大学生を対象に行った実験です。

実験の内容

  • 被験者を2つのグループに分け、それぞれに5つの単語を提示する
  • 被験者は提示された5つの単語から、4つを選び短文を作るよう指示される
  • 実験を終えたあとの被験者の行動を観察する

被験者グループの条件

  • グループA
    :関連性のない5つ単語を提示する

  • グループB
    :「フロリダ」「忘れっぽい」「はげ」「ごま塩」「しわ」といった高齢者を想起させる単語を提示する

ちなみに「フロリダ」は、アメリカでは高齢者のイメージがあるそうです。

実験の結果

結果は次の通りです。

実験を終えた学生たちは別の部屋に移動させられたが、高齢者を想起させたグループBは、歩くスピードが明らかに遅くなった

ユニークな実験結果ですよね。それにしても、高齢者を連想させる言葉を見ただけで、歩く速度が遅くなるとは直感的には信じがたいですね。

この実験の結果は、実験内容にちなんで「フロリダ効果」と呼ばれています。

また、このように言葉から連想されるイメージで行動が変わる現象を、総称して「イデオモーター効果」と呼びます。

事例②:投票所の場所で投票結果が左右される

2000年にアリゾナ州で投票に関する調査が行われました。

複数の選挙区で投票結果を調査したところ、投票所が学校であった場合に、そうでない場合よりも「学校補助金の増額案」に賛成する票が明らかに多かったことが判明しました。

他の実験では、「教室」や「ロッカー」の写真を見せられただけの被験者でも、同様の結果が確認されています。学校を連想させる写真の有無は、生徒の親かそうでないかの違いよりも大きな影響がありました

これらの結果から、投票というそれなりに意思や信条を持って行う行為でも、「プライミング効果」の影響が受けてしまうことがわかります。

事例③:写真をはるだけでズル防止

イギリスのとあるオフィスで行われた実験です。

そのオフィスのキッチンには、セルフサービスの紅茶とコーヒーがあります。スタッフは飲んだ代金を自ら集金箱に入れる仕組みになっていて、その箱には価格表が貼ってあります。

実験の内容

  • 集金箱の上に写真を貼る
  • 写真は10種類あり、1週間ずつ張り替える
  • 「こちらをじっと見ている目の写真」「花の写真」が交互に張り替えられる

異なるイメージの写真で、行動にどう影響が出るかがポイントです。

実験の結果

結果は次の通りです。

「花の写真」の週と比べ、「目の写真」の週の代金の投入率は3倍となった

人に見られていることを連想させる写真を貼っただけで、ちゃんとお金を払うようになりました。あくまでただの写真であって、カメラで監視しているわけではないにも関わらずです。

日本でも、万引き防止で「鋭い目の絵」が貼ってあったりしますよね。あとは、駐車場に立ち小便防止のための「鳥居のマーク」が貼ってあったり。発想は同じです。

事例④:BGMで売上アップ

H.ミリマンがスーパーマーケットで行った実験では、テンポが早いBGMと比べ、テンポの遅いBGMを流す方が、来店客の移動速度が17%遅くなり、売上が38%アップする結果になりました。

レストランで行った実験では、テンポの遅いBGMを流すと、お客さんの食事のスピードが遅くなり、食事の量は変わらないものの、アルコールやドリンク類の注文が増えました。

マーケティングで一般化するなら、来店時間を伸ばすならBGMはスローテンポに、回転を早くしたいならアップテンポにすると良いでしょう。

また高貴なクラシック音楽を流すことで、ワイン店の購入単価が上がったという事例もあります。音楽によるプライミング効果も無視できません。

逆効果に働く「誘引効果」

プライミング効果が狙いとは反対の方向に作用してしまう現象に、「誘引効果(trigger cues)」があります。

これは実例をイメージしてもらった方が理解が早いでしょう。

例えば、禁煙キャンペーンのポスターを見た「喫煙者」はどう感じるでしょうか?

もちろんポスターには、喫煙によって起こる病気などのデメリットが掲載されています。ですがそれよりも、ポスター内の「タバコ」の文字や画像に強く吸い寄せられてしまいます。

禁煙キャンペーンのポスターは、「非喫煙者」をタバコから遠ざけるためには役に立つでしょう。ですが「喫煙者」を、ますますタバコを吸いたい気持ちにさせてしまう恐れがあるのです。

薬物防止のチラシや、休肝日のススメも同様でしょう。すでに虜になっている人にとっては、かえって欲望を掻き立てる存在になっている恐れがあります。

プライミング効果をビジネスに活かす方法 4選

「プライミング効果」により、人間の行動はカンタンに操られてしまいます。このエッセンスはビジネスにも応用したいところです。

「プライミング効果」のビジネス活用例を4つ紹介するので、もし機会があれば実践してみてください。

活用①:目標を張り出す

個人の目標なら自分の部屋に、会社の目標ならオフィスの壁に張り出しましょう。これが「プライミング効果」の最もカンタンな活用方法です。

座右の銘やスローガンを貼っておくのも良いですね。わたしが昔通ってた予備校には「日日是決戦」って貼ってありました。

いつもチラチラ目に入ってくるので、嫌でも知らず知らずのうちに、あなたの行動に影響を与えるでしょう。

なお、目に入る場所ならどこでも有効なので、

  • トイレ
  • ケータイの待ち受け
  • いつも持ち歩くノートや手帳にはさんでちょくちょく見る

といった場所も良いですね。

活用②:メルマガの件名の工夫

マーケティングの古典的な手法にメルマガがあります。

メールを開いて読んでもらうために、件名をあれこれ工夫して気を引くのも良いですが、「プライミング効果」を狙う場合は別のやり方もあります。

メルマガの件名には、「社名」と「商品名」または「商品を想起させる単語」を載せましょう。

「プライミング効果」であれば、受け手に中身を見てもらえなくても効果が期待できます。顧客がその商品を必要とするシーンになったら、メルマガでよく目にしている会社に問い合わせる可能性が高くなります。

活用③:営業アンケート

お店に来てくれた人や、営業先の顧客にアンケートを書かせる手法も有効です。

アンケートには次の項目を入れておきましょう。

  • ○○の商品を今後購入する予定がありますか?
    (○○には、売りたい商品名や商品ジャンルを入れる)

  • 予算感を選択式でチェックしてもらう
    (高めの予算レンジを選択肢に混ぜておく)

事前にアンケートに回答する行為が「プライマー」になり、その後の商談で購入率UPが期待できます。

露骨に宣伝すると嫌煙されてしまいますが、「プライミング効果」を狙うときは、その商品を連想させる情報だけでOK。悪い印象を持たれずに宣伝ができます。

また予算感は、なるべく高いレンジの選択肢を見せておきましょう。購入金額を釣り上げる効果が狙えます。(これはアンカリング効果という別の作用も働いています)

活用④:組織人事の名称

顧客だけでなく、社員や自分自身の業績アップに「プライミング」効果を応用できます。

部署名は「第1営業部 第1課」のような無機質な名前ではよろしくありません。何も連想できない部署名だとプライミング効果は起きません。

ここは、「金融営業部 保険営業グループ」という感じにしましょう。

「金融系企業を担当する部のなかで、あなたは保険会社に営業をするグループに所属している」とした方が、メンバーはその業界に精通した営業になるようにプライミングされます。

役職名も同様の効果が期待できます。有望な人には積極的に役職を持たせましょう。「課長」と名刺に書かれている人は、プライミングされて勝手に課長然となっていきます。

もし肩書きを自由に名乗れるのであれば、なりたい自分を投影するのも良いですね。「ハイパーメディアクリエイター」みたいな感じで。

悪いプライミングを受けないための習慣

見聞きするものが人間の行動に影響を与えてしまうということは、日頃あなたが見聞きしている情報は、多かれ少なかれあなたの人生を左右するということです。

日頃のネガティブな振る舞いや思考は、悪いプライミングとなって自分に返ってきます

そして身近な周りの人にも同様に悪い影響が出ます。悪い大人を見て育った子供は、同じように悪い育ち方をしてしまう可能性が高いのと同じ話です。

脳の仕組みを知ったこの機会に、ぜひ次の習慣を心がけるようにしてください。

悪いプライミングにかからないための習慣

  • 悪口を言わない、陰口を言わない
  • 他人を否定しない、自分を否定しない
  • ネガティブな思考をしない
  • 楽しくなくても1日1回は笑顔を作る

良いものを積極的に見聞きして、悪いものには決して近づかないようにしましょう。愚痴や悪口ばかり言う人の近くにいては、あなたの思考もネガティブになります。

実のところ、「プライミング効果」の最大の活用方法はコレだと思います。

日頃のちょっとした心がけで、あなたの脳が勝手にあなたを良い方向に導いてくれます。ぜひ意識してみてください。

まとめ

今回は心理学より「プライミング効果」を紹介しました。

広告は「プライミング効果」のカタマリですね。何度も広告を見れば、その商品が頭に刷り込まれて、いつの間にか欲しくなってしまいます。

プライミング効果とは…

  • 先に見聞きした情報によって、その後の感情や行動が影響を受けてしまう現象のこと。暗示と言っても良い
  • 人は自分の意思で行動していると思っているが、多くの場面でプライミングの影響を受けている

プライミング効果のビジネス活用メリット

  • 露骨な宣伝だとイメージを害する危険性があるが、プライミング効果は商品を連想させる情報だけでいいので、印象を下げることなくアピールできる
  • 他人だけでなく、自分自身にプライミング効果をかけて業績をあげることもできる

またあなた自身が悪い方向にプライミングされないためには、悪いもの・邪悪なものからは徹底的に距離を置きましょう。それをもたらす人は避けましょう。

参考書籍

記事内で紹介している実験事例などは、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏の著書『ファスト&スロー』を参考にしています。

同書は、行動経済学のバイブル的な1冊(上下巻なので2冊ですが)となっています。人生にもビジネスにも、応用できるヒントが目白押しです。

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