- ブランド品の財布やバッグは、なぜ高くてもみんな欲しがるのでしょうか?もちろん品質は良いのでしょうが、それを勘定に入れても高すぎやしませんかね?
- ブランドロゴがついただけで急に価値が上がるのは、なぜでしょうか?ブランドではない同品質のものとは何が違うのでしょうか?
そんな高価なブランド品ほどが欲しくなる現象を、心理学では「ヴェブレン効果」と呼びます。社会科で習った需要曲線では、安いものほどたくさん売れるはずですが、それが全てではありません。
この記事では、次のことがわかります。
- ヴェブレン効果とは何か?
- 知らなきゃ失敗する!スノッブ効果活用で押さえるポイント
- 富裕層だけじゃない!ヴェブレン効果が効くターゲット層
高価な商品のブランディングをしている人、または高価格帯の商品を新たに検討している人はぜひチェックしてみてください!
ヴェブレン効果とは?

ヴェブレン効果(veblen effect)とは…
製品やサービスの価格が高ければ高いほど、購買意欲も高まっていく現象のことです。
経済学では価格は安いほど需要が上がって物が売れるはずですが、その真逆を行く現象です。
世の中を見渡してみると、安くて良いものだけで市場のニーズが満たされているわけではありません。ブランド品のように、品質相当の値段を大きく超えた高価な商品が存在します。そしてそれを欲しがる人が一定数いるのでビジネスが成り立っています。
これは一言でいえば「見せびらかすための消費」です。
そのものを純粋に使用して得られる価値以上に、高価なものを所有して、他人に社会的地位や威信を見せびらかすことが価値になっています。だからルイヴィトンと同じ品質のバッグでも、ルイヴィトンのロゴが入っていない安価なバッグは買ってもらえないのです。
このような「見せびらかし消費」を経済学では、
- 誇示的消費
- 顕示的書評
- 衒示的消費(げんじてきしょうひ)
とも呼びます。
また同様に、経済学の世界ではブランド品のような、所得が高い人ほど消費が増える商材を「ウェブレン財」と呼びます。
ヴェブレン効果を提唱したのは、アメリカの経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタイン氏です。ライベンシュタイン氏は、ヴェブレン効果を含め、同時に3つの有名な心理学の効果を発表しています。他2つもご紹介します。
ライベンシュタインが提唱した3つの心理効果
- ヴェブレン効果 … 高価であることに価値を感じる現象
- スノッブ効果 … 他の人が持っていないものが欲しくなる現象
- バンドワゴン効果 … 流行っているものが欲しくなる現象
スノッブ効果は、ヴェブレン効果にも通じるところがあります。希少性が高い限定ものは、入手が難しいことから他人に見せびらかせます。エルメスやルイヴィトンなどのハイブランドは、ウェブレン効果とスノッブ効果の両方を使っています。
スノッブ効果とバンドワゴン効果は、それぞれ別の記事があります。興味がある方は見てみてください。
≫ 【限定に惹かれる理由】スノッブ効果とは?ビジネス活用事例を解説
≫ 【流行の正体はコレ】バンドワゴン効果とは?具体例で解説
ヴェブレン効果を活用するための2つのポイント

ヴェブレン効果により、消費者の需要を喚起するには2つの条件があります。
さっそくその2つの条件と具体例を見ていきましょう。
①価格が高く入手が困難であること
値段さえ高ければ、その商品が本質的に価値があるかどうかはそこまで重要ではありません。なんの役にも立たない、何が描かれているのかわからない美術品でも高価であればいいのです。
とはいえ、高くするだけの理由は必要です。機械で安く生産できるのに、あえて手作りするのも一例です。手作りしたところで品質が上がるわけではないでしょうが、手作りが価格を上げる理由になるならOKなのです。
価格を上げる工夫の事例
- あえて機械ではなく手作りする
- あえてプラスチックで済むところをカーボンにする
- あえてステンレスで済むところをホワイトゴールドにする
- かけなくてもいいのに金箔をかける
- 原価のよくわからないデザイナー料を取る
高価な価格が妥当だと感じてもらうためには、ストーリーテリングが欠かせません。その値段を上げるための工夫がどれだけ大変なことか、どれだけ貴重なのかを伝える必要があります。
言い方は悪いですが、買った人がその商品を自慢するときのネタをきちんと提供してあげましょう。
②その商品を持つとステータスが上がることが周知の事実であること
「この商品は高級品だ」という市民権が得られていなければ、ただ値段が高いだけで誰も買ってくれません。その商品を持っていることのすごさが、みんなに知られていなければならないのです。
極端な話をすると、その商品を持っている画像をSNSにアップしただけで「この人すごいね!」って思ってもらえなきゃダメなのです。
これは企業のブランディング戦略と大きく関わってきます。
ハイブランドが下手に安価な商品を出さない理由は、高級ブランドのイメージを損ねるからに他なりません。銀座にあるハイブランドの旗艦店では、中から店員さんが開けてくれないと入れないお店もあります。
誰でも近づけば開けてくれるでしょうが、めちゃくちゃ入りづらいです。あえて質の低い客(悪く言えば貧乏人)が入ってこないように意図的にやっています。これもブランディング戦略です。
江戸時代には吉原の最高級の遊女に「花魁(おいらん)」という呼び名がありました。芸子さんでは「太夫(たゆう)」と呼ばれる人が最高位でした。当時は「花魁」や「太夫」を指名できること自体がステータスだったのです。
必ずしも物理的な商品だけがヴェブレン効果の対象では限りません。
ステータスが周知の事実になっている事例
- エルメスやルイヴィトンなどのハイブランド
- フェラーリやランボルギーニなどの高級外車
- 高級腕時計の御三家 パテックフィリップ・バシュロン・オーデマピゲ
- 江戸時代の「花魁」や「太夫」
- ゴルフやホテルなどの高級会員権
- ダイヤモンドやプラチナ
やはりバッグや車、腕時計といった目に見える商品の方が、ヴェブレン効果がわかりやすいですね。
そういう意味で、ブランドロゴには大きな意味があります。ブランドロゴが「どーん」と出ている商品は、誰の目にも高価なものだとわかります。ステータスを誇示するためにブランドロゴは都合がいいのです。
ヴェブレン効果=承認欲求による消費

高価なものを見せびらかして、他人の注目を集めたくなる心理は、「承認欲求」によるものです。
承認欲求は、「マズローの欲求段階説」にある5階層の欲求の1つです。
5つの階層とは次の通りです。
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 所属と愛の欲求
- 承認の欲求
- 自己実現の欲求
下位の欲求ほど生命維持に関連しており、優先して満たす必要があります。下位の欲求がある程度満たされると、次の欲求を求めるようになります。
細かい話はマズローの欲求段階説の解説記事を見てもらえればと思います。
ウェブレン効果のターゲット層は富裕層だけとは限らない
ヴェブレン効果は、次のように、ど直球に「4.承認欲求」を満たします。
- 高価なものを他人に見せびらかして悦に浸りたい欲求を満たす
- 高価なものを所有して自尊心を満たす
生活が困窮していて、満足に食事もできない人がフェラーリに乗って自慢したいとは思いませんよね。こういう人は一足飛びに承認欲求を満たそうとはしません。
比較的恵まれた生活をしていて、「1.生理的欲求」「2.安全の欲求」「3.所属と愛の欲求」を満たしている人が、次に求めるのが承認欲求です。
つまり次のような人です。多くの日本人が当てはまります。
承認欲求を求めるようになる人の特徴
- 生活には困っていない
- きちんとした身分(会社員や学生など)がある
- 住むところが確保されている
- 人間関係に恵まれている(少なくとも孤立していない)
実家暮らしの若者は、実はこの特徴によく当てはまっています。若い人が好んでハイブランドを身につけたがる現象も説明がつきます。
しかしながら、そういう若者も自立して家族を持つと生活にそこまで余裕がなくなってきます。そうすると、昔は高い服ばっかり着ていたのに、家族を持ったらユニクロばかりという現象が起きます。
また、承認欲求を満たすための1番のツールは「SNS」です。SNSを好んで使用している人は、他の人より承認欲求が高い傾向があると言えるでしょう。
まとめると、次のような人たちはウェブレン効果をより期待できます。
ウェブレン効果を期待できる人の例
など
ヴェブレン効果を活用して高額商品を売るとき、ターゲット層は必ずしも富裕層という単純な切り口だけではありません。
まとめ
今回は心理学よりヴェブレン効果をご紹介しました。
次のようにまとめます。
- 製品やサービスの価格が高ければ高いほど、購買意欲も高まっていく現象
- 経済学では価格は安いほど物が売れるはずだが、その真逆を行く
- 典型的な例は、他人に見せびらかすために高価なブランド品を購入すること
- 価格が高く入手が困難であること。高価な理由に納得できるストーリーテリングもセットにする
- その商品を持つことがステータスであるとみんなが知っていること。高価格帯のイメージを損なわないブランディング戦略が重要
ヴェブレン効果の事例は、こちらの記事でも詳しく解説しています。時間があれば見てみてください。
≫ 【丁寧解説】バンドワゴン効果×スノッブ効果×ヴェブレン効果の複合事例