心理学・行動経済学

【下世話!】進化心理学をわかりやすく解説。欲求の本質を学ぼう【人間もタダの動物だった!】

心理学の中ではややマイナーながら、近年存在感が増している「進化心理学」をご存知でしょうか?

先に言っておくと、進化心理学は超下世話です。なぜなら生物の目的は「自分の子孫を残すこと」であり、異性との性行為が、全ての心理の中心に据えられているからです。

下ネタの延長で面白おかしく楽しむこともできる進化心理学ですが、マーケティングに活用すると効果は絶大。人間が持つもっともピュアな「欲求」を本質的に理解できるからです。

また他の心理学ではあまり語られることのない、男女の違いによる決定的な心理の差も説明してくれます。ターゲット顧客が男か女かで、効果的なアプローチは大きく変わります。

この記事でわかること

  1. 進化心理学とは?
  2. なぜ人間の脳は遠い祖先から変わっていないのか?
  3. 男女の心理にある構造的な違い
  4. マーケティングへの応用方法

この記事を読めば、進化心理学の概観をつかめます。ビジネスに活用するなら、本記事の内容を押さえておけば十分に応用が効くでしょう。

まだ荒削り感がある学問ながらも、ビジネス活用の可能性は特大。マーケターなら絶対に押さえておきたい内容です。ぜひ最後までご覧ください。

【わかりやすく】進化心理学とは?

進化心理学は、数多くある心理学の一学派です。

実験をメインとする他の心理学と異なり、進化生物学のアプローチを取り入れているのが特徴。他の心理学とは毛色が異なり、学際的な要素が強い学問です。

進化心理学では、人間が持つ心理メカニズムは、進化の過程で適応した(生きるために都合が良かったため、淘汰の末に残った)と考えます。

人間がある心理を持つようになった理由を、「ゾウの鼻が伸びた理由」や「孔雀のオスが綺麗な羽を持つようになった理由」を解明するのと同じような手法で解明しようとします。

一に「生殖」、二に「生存」

社会系の学問の多くは、人間を他の動物とは異なり、崇高で特別な存在と考えます。高度な知能と文明を持つ人間特有の行動や思考パターンを理解しようとします。

一方で進化心理学は、人間も生物の一種、人間もタダの動物であると見なします。

あらゆる生物において、その個体が存在する理由は、自分の遺伝子を後世に残すことにあります。そのため進化心理学の中心には、常に「異性との性行為」があります。

そしてもう一つ、生物には強力な「生存」の本能があります。これは生き残らなければ、異性との生殖の機会がなくなり、自分の遺伝子を後世に残す道が絶たれるからです。

順番としては、まず「生殖」ありき。次に、生殖するために「生存」しなければならない、という心理になります。

究極の目的は孫を作ること

人間の心理の中心にあるのは生殖ですが、実際には「ヤって終わり」ではありません(中にはそういう人もいますが)。究極的には、孫が生まれることがゴールです。

生まれた子供が幼くして死んでしまったり、あるいは大人になっても結婚しなければ、自分の遺伝子は子供の代で途絶えてしまいます。これでは個体としての目的を完遂できません。

そのため子供が生殖可能な年齢までは、(自分自身の手でかどうかはさておき)育てなければならない心理が働きます。またより生殖の可能性が高いと思われる、容姿が良かったり、能力に秀でている子供を、優先的に育てようとします。

よく「孫はかわいい」と言いますね。孫ができることは、個体にとっての成功を意味します。その集大成である孫は、かわいくてしょうがない存在なのです。

ちなみに自分が子供に恵まれなかったとしても、兄弟姉妹には同じ遺伝子が流れています。そのため甥っ子や姪っ子も、やはりかわいいと感じるようになっています。

サバンナ原則とは?

進化心理学の重要な前提条件に、「サバンナ原則」があります。

そして我々の脳は、アフリカのサバンナで狩猟採集をしていた遠い祖先のそれと全く変わりません。そのため、当時サバンナに存在しなかった概念を、本当の意味で理解できません

脳も臓器の一つ。進化には膨大な時間がかかります。

例えば地球が寒冷になり、太陽の光が届きづらくなったとしましょう。すると日光から生成されるビタミンDが欠乏します。

より日光を吸収できるのは白い肌。比較的白い肌を持つ個体が生き残るようになり、その個体が繁殖することで、徐々に次世代に白い肌が増えていきます。

そして最終的には、ほぼ全員が白い肌を持つに至ります。これが進化。しかし大多数の個体が白い肌を持つまでには、気が遠くなるほど世代を重ねなければなりません。

1人の個体が生殖可能になるまで約20年とそこそこ長い人類は、1000年でやっとこさ50世代です。それでは進化には全然足りません。ウン万年は必要しょう。

人類の発展は、農耕が発明された1万年前を境に急加速しました。その前は何百万年も狩猟採集をやっていたわけですが、あまりの急展開に進化が追いついていません。

「サバンナ原則」の通り、我々の脳は狩猟採集民だった祖先と何ら変わりないのです。

例①:ポルノ

男性の「あの生理的現象」は、女性と生殖行為をするためにあります。つまり、現に目の前に女性がいなければ、本来発動する必然性のない機能です。

しかし男性は、画面越しや紙面越しの女性の裸にも興奮してしまいます。

サバンナで暮らしていた我々の祖先には、「画面」という概念は存在しません。目に映るものが全てであり、「視界に入った=手の届く距離にいる」なのです。

祖先と同じ脳を持つ我々は、真の意味で「画面」を理解できません。理性は画面の向こうにいる手の届かない女性と理解していますが、本能ではそれを理解できないのです。

ポルノ業界は、この人間のエラーをハックした産業なのです。

例②:甘いもの、ジューシーなお肉

現代人は、高カロリーな甘いお菓子や脂がしたたるジューシーなお肉に目がありません。見たら、本能が「食べろ!」と囁きます。この誘惑に抗える人はほとんどいません。

現代の「飽食」の時代において、高カロリーな糖や脂は、健康を害する存在になっています。寿命を縮めているため、生存本能がセーブしてくれても良さそうなもの。

しかしサバンナで暮らしていた祖先にとって食糧は貴重。我々の脳は、祖先の時代になかった「飽食」の概念を理解できません。おそらく肥満という概念も、真には理解できていないのではないでしょうか。

カロリーはなるべく摂取するもので、高カロリーほど正義なのです。「甘い」とは、植物が食べ頃を教えてくれるサイン。「動物性脂肪」は、植物に比べ高カロリーで、かつ滅多に食べられませんでした。

ゆえに甘いものとジューシーなお肉を見たら、本能が「今すぐ食べろ!」と命令します。言うまでもなくファーストフード業界は、このエラーを意図的にハックしています。

例③:展望台の透明の床

東京タワーやスカイツリーの展望台には、100メートル以上下の地面が透けて見えるパネルの床が設置されています。

理性では、絶対にこのパネルが割れて、地面に落下することはないとわかっています。しかしいざ上に乗ってみると、肝が冷えて、イヤな汗が首筋に流れます。

祖先の時代には、「向こう側がクッキリ透けて見えているのに、絶対に割れない物質」は存在しませんでした。氷ですら、一定の厚さになれば向こう側までは見えません。

我々の本能は、「透けている=薄い物質」と理解します。理性では安全と理解していても、本能は恐怖を感じるようにできています。絶叫マシンの類も同様でしょう。

進化心理学に見る男女の違い

進化心理学で特徴的なのは、男女の心理の違いを上手く説明しているところ。

それもちょっとやそっとの違いではなく、決定的な違いを生んでいます。

男女間の生殖コストの違い

男女間で決定的な心理の違いを生んでいるのは、身体の構造の違いに端を発する、生殖にかかるコストの違いです。

男性の場合、自分で妊娠・出産するわけではありません。かつ1度射精しても、すぐに充填されます。そのため生殖から次の生殖までのインターバルがありません。

男性の生殖に対するコストはほぼ0。いくらでも種を撒けるので、理論上は相当な数の子孫を残せます。歴史上は、1000人クラスの子を儲けた人物もいます。

しかし女性の場合、妊娠、出産、授乳期間を経なければ、次の生殖ができません。3年程度のインターバルを要し、身体に負荷もかかります。加えて、妊娠・出産できる期間はそう長くありません。

女性が1度の生殖で負うコストは、男性のそれとは比べ物になりません

人間は一夫多妻が自然の姿

いくらでも子孫を残すチャンスがある男性と、数少ないチャンスしかない女性。結論だけ先に言ってしまうと、この生殖可能数の違いは一夫多妻の婚姻形態を作ります。

女性からしたら、出産前後はまともに動けませんし、その後も子供を育てなければなりません。自分と子供を守るためには、より養う能力が高い男性を選びたいと考えるでしょう。

稼げないし愛情も注いでくれない独身よりも、稼げる男性を他の女性と分け合った方が、安全に暮らしていける状況は容易に起こり得ます。

現代の先進国は、一夫多妻では争いが絶えないので、理性で一夫一妻を選んでいます。しかし、我々の脳はサバンナに住んでいた祖先と変わらないので、本能は一夫多妻のままであると覚えておきましょう。

生物学的には、男女の体の大きさに違いが一夫多妻の証拠となります。一夫多妻のゴリラは、オスはメスの倍くらい。一夫一妻のテナガザルは、雌雄で体の大きさに違いはありません。

負け組が多い男性、少ない女性

勝ち組の男性が複数人の女性をパートナーにしてしまうので、必然的にあぶれる男性が多くなります。あぶれた男性は、子孫残すことなく生涯を終える負け組になってしまいます。

それに比べ、女性が生涯に1人のパートナーも得られない可能性は低くなります。健康な体を持っていれば、女性が子孫を1人も残せない可能性は、男性よりはグッと下がります。

期待値としては、次のようなイメージになります。

  • 普通に暮らしていれば、少なくとも1人や2人は子孫を残せる女性
  • 他の男と争わなければ、子孫を1人も残せないのが当たり前の男性

この環境の違いが、男女の心理に決定的な違いを生んでいます。

男女の明確な心理の違い

なぜこうも男と女は分かり合えないのか。両者の心理の違いは、生殖にかかるコストの違いや、子孫を残すためのレースの過酷さの違いから来ています。

よくある男女の心理の違いを見ていきましょう。

違い①:異性の選び方

男性は惚れっぽく、カンタンに女性に心を開きます。しかし女性は、すぐには心を開きません。もっと男性を吟味してから心を許します。

この心理の違いは、生殖にかかるコストの違いから来ていると考えられます。

男性は生殖にかかるコストが低いため、手当たり次第に種を蒔く戦略が取れます。初対面で体の関係になることに、そこまで抵抗はありません。

しかし女性は生殖から次の生殖までに年単位の時間がかかるため、相手選びは慎重にならざるを得ません。生活力があり、自分と子供を大事にしてくれそうな男性かを見定めなければならないからです。

違い②:浮気に対する怒りの矛先

パートナーが浮気をしたとき、男性が責めるのは主にパートナーの女性。一方で女性の場合は、パートナーの浮気相手である女性の方を責めるケースが多々あります。

男性の場合、パートナーが別の男の子供を妊娠し、知らずに他人の子供に資源を投じて養育するのは最悪の事態。しかもパートナーが次の生殖が可能になるまでは、しばらく期間を置かなければなりません。

男性にとって、パートナーの浮気は、自分の子孫が0になる危険を孕んでいます。絶対に浮気を許さないために、女性を強く責める傾向があります。

女性の場合、浮気をされても自分の子孫を残せる可能性はさほど変わりません。そのため浮気に対する嫌悪感は、男性ほど強くないのかもしれません。

しかしパートナーが他の女性へなびくと、本来なら自分と子供に注がれるはずの費用と愛情が、他所に分散されてしまいます。パートナーを責めるよりも、浮気相手の女性を排除しようとする傾向があります。

違い③:異性の選び方

異性の好みは人によって違うと言われていますが、実は世界のどこに住んでいる人であろうと、ある程度共通した好みを持っています。

男性は、総じて女性の見た目を重視します。

何を見ているかというと、若くて妊娠の可能性が高いかどうかを見ています。現代と違い祖先の頃は、誰も年齢なんて数えていません。見た目から、若さを判別しなければなりません。

大きな乳房は、歳をとると垂れるので、ハリのある大きな乳房は若さの証拠。歳をとると髪が傷みやすくなるので、長くてキレイな髪も若さの証拠。くびれた腰は、初婚の証拠。

ただ現代では、気を遣っている人は、歳を取ってもキレイな髪で体型も維持しています。かつてのサバンナにはそういう女性はいなかったので、実際には妊娠の可能性が低くても、歳を重ねた女性に惹かれることもあるでしょう。男の脳はカンタンに騙されるわけです。

一方で、女性は男性の年齢をさほど気にしません。男性は女性ほど生殖可能な年齢がシビアではないので、若い男性を絶対視する理由がないからです。

それよりも、自分と子供を養ってくれる能力を期待します。そのため何かの能力で秀でていて、稼ぐ力を持っていそうな人に魅力を感じる傾向があります。当然長く生きている人の方が平均的に能力が高くなるので、年上の男性を選ぶ傾向があります。

違い④:野心や競争心の違い

一流の仕事人や会社の管理職は男性ばかりで、女性が差別されているという意見があります。確かに出産前後は物理的に仕事しづらい状況になるので、女性が不利になりやすい素地はあるでしょう。

しかし、男性はそもそも野心や競争心が高いからそうなっているという見方もできます。

男性は女性と比べ、子孫を残すために過酷なレースを強いられていました。女性を惹きつけるためには、他人より優れていなければなりません。生活するには十分な稼ぎがあろうと、際限なく上を目指そうとするのが男の本能なのです。

小さな男の子を持つママさんが、「ウチの子は、いつも見えない敵と戦っている」と言うのをよく聞きます。幼かろうと男の本能には、「争って勝たねばならない!」と刻み込まれているのです。

一方で、女性は男性ほど競争心はなく、基本的に保守的です。自分と子供の生活空間を、快適に作る方向に関心が向きやすいと言えるでしょう。

女性は、普通にしていれば子孫を残せる可能性が高かったので、他人と争う必要はさほどありませんでした。それよりも、自分と子供が安全に暮らしていける方が大切なのです。

この性格の違いは、男女のマーケティングの違いに繋がるため、ビジネス上では大きな意味を持つ違いです。

「マズローの欲求ピラミッド」を進化心理学に当てはめて考える

人間の欲求に関する理論でもっとも有名なのが、「マズローの欲求段階説」です。

マズローの5段階の欲求には、下世話な話は出てきません。このクリーンな理論を、進化心理学に当てはめて考えると、どのように解釈できるでしょうか?

①生理的欲求

「生理的欲求」は、臓器から来るような、生物なら等しくある欲求です。

生理的欲求の例

  • 食べる
  • 排泄する

生理的欲求は、進化心理学に当てはめてもニュアンスに変わりはありません

②安全の欲求

「安全の欲求」は、身を守りたいという防衛本能からくる欲求です。

安全の欲求の例

  • 安全な家に住みたい
  • 身分や収入を安定させたい
  • 法やルールで保護されたい

こちらも、進化心理学に当てはめても、特に解釈は変わりません

③所属と愛の欲求

「所属と愛の欲求」は、他者とのつながりを求める欲求です。

所属と愛の欲求の例

  • 誰かと密な関係になりたい
  • みんなと同じ行動を取りたい
  • 仲間外れにされたくない
  • 共同体の一員になりたい

進化心理学に照らして考えると、主に「生存」のための欲求と考えられます。集団で生活することで生存確率を上げていた祖先の本能から来ています。

1人で生きていくなら、獣を狩るのも、木の実を採るのも、服を作るのも、全部1人でやらなければなりません。加えて、致命的でなかったとしても病気やケガで動けなくなると、生命の危機に瀕します。

集団で生活すれば、助け合って生きていけますし、適材適所で得意な仕事だけをすれば良くなります。集団と上手く接する個体が生き残り、そうでない個体が淘汰されていきました。

現代においても協調性のない人や一匹狼はいます。しかし種としての人類は、基本的に群れる生き物であり、また群れの秩序を乱す因子を嫌うようにできています。

中高生が右に倣えで同じファッションに身を包みたがるのは、自分がグループの一員だとアピールしているわけです。異分子を攻撃したくなるのは、グループの和を乱す存在になるかもしれないからです。

家族団欒を求めるのも、家族が親密になれば、それだけ協力して生きていくことができるからでしょう。ただしパートナーを繋ぎ止める効果も期待できるので、「生殖」への欲求も絡んでいます。

④承認の欲求

「承認欲求」は、他人に認められたい、あるいは尊敬されたいと感じる欲求です。

「生殖」と「生存」の両方のベクトルでそれぞれ説明できそうです。

「生存」に繋がる承認欲求

集団から軽視されたり、自分の意見がムシされるようになれば、集団内の地位が下がっていきます。最終的には役立たずとして、集団から追い出されるかもしれません。

  • 他人に認められたい
  • 自分の意見を通したい
  • 失敗して恥をかきたくない

といった心理は、集団内での自分の地位を確立させたい意図があります。「生存」を目的としていると考えられます。

「生殖」に繋がる承認欲求

男性なら稼ぐ能力、女性なら容姿や若さをアピールすることで、異性を惹きつけられます。そのため認められるだけでは足らず、他人より優位に立ちたいと考えます。

  • 「カッコいい」「カワイイ」「強い」と思われたい
  • 競争して勝ちたい
  • お金持ちだと思われたい
  • (必要以上に)上を目指したい

といった心理は、「生殖」を目的としていると考えられます。

⑤自己実現の欲求

マズローが人間特有の欲求としたのが、「自己実現の欲求」です。

  • 自分の好きなことを追求したい
  • 自分らしい生き方を貫きたい

ここがマズローと進化心理学の間で、意見が完全に分かれるところ

マズローは、自分の理想を追い求める欲求としています。環境活動家や芸術家、志を持っている経営者は、邪な動機ではなく、崇高な理想を追っているとしています。

これに対し進化心理学はドライです。どんな綺麗事を言ったところで、自己実現は異性を惹きつける口実にすぎない。結局はその人なりのやり方で、「生殖」を実現しようしていると解釈します。

確かに高名な人はその道で成功した人であり、大抵はお金を稼いでいます。お金は女性を惹きつけるバロメーター。他人が羨む奥さんを捕まえて、しっかり子供を残しています。

偉い人ほどスケベなのはよくある話です。

  • 世間体の良い動機を見つけられれば「自己実現の欲求」
  • 俗な動機しか見つけられなければ「承認欲求」

と呼ばれるだけで、両者は本質的に違わない。というのが進化心理学の見解です。

どちらの理論にも、一定の納得感はあります。マズローと進化心理学のどちらが正解に近いかは、神のみぞ知るところ。ここで白黒はつけられません。

≫マズローの欲求段階説とは?例を交えて丁寧に説明【全ての根源は「欲求」にある!】

参考)ケンリックの欲求ピラミッド

https://www.ncbi.nlm.nih.govより引用し、邦訳を挿入

心理学者のダグラス・ケンリック氏は、著書『野蛮な進化心理学』で、「ケンリックの欲求ピラミッド」を提唱しています。

進化心理学の立場から、マズローの説に真っ向反論した格好です。

  1. 子育て(Parenting)
    :自分の遺伝子を持った子孫を守り、次世代へ引き継がせる
  2. パートナーの維持(Mate retention)
    :パートナーを繋ぎ止め、他の異性と生殖行為をさせないようにする
  3. パートナーの獲得(Mate acquisition)
    :生殖行為の相手を獲得する
  4. 地位/尊敬(Status / Esteem)
    :他者より優位な地位を築き、異性を惹きつける
  5. 所属(Affiliation)
    :集団に属し、助け合うことで、生存確率を上げる
  6. 自己防衛(Self-Protection)
    :生命を脅かす脅威から身を守る
  7. 喫緊の生理的欲求(Immediate Physiological Needs)
    :食欲や睡眠欲、排泄欲のような生理的な欲求

ピラミッドの形にしたのはマズローを意識してのことと思いますが、「高次の欲求を実現するために、低次の欲求が必要になる」という意味も込められています。

頂点が「子育て」となっており、孫の誕生を最終ゴールとする進化心理学の立場が見て取れますね。

ケンリックの欲求ピラミッドは、日本ではほとんど知られていませんが、マズローの欲求ピラミッドよりもこちらを好んで使う人もチラホラいます。

≫【どれ使う?】欲求の種類を8つの理論から濃厚解説|欲求を満たせばビジネスは成功する

進化心理学をマーケティングに応用する考え方

進化心理学の主な応用先は、恋愛かマーケティングでしょう。

ある意味で両者は似ていますが、本記事ではマーケティングで応用できる考え方を紹介します。

考え方①:「生殖」か「生存」に繋がるか?

製品のアイデアや広告などのキャッチコピーを考える際、それが「生殖」か「生存」に寄与するかで、良し悪しをジャッジしましょう。

「生殖」に寄与する例

  • モテる
  • 容姿が良くなる
  • お金が増える
  • 能力が向上する
  • 出世する

「生存」に寄与する例

  • 痛みがなくなる
  • 仲間ができる
  • お金が増える
  • 地位や生活基盤が安定する
  • 家族が仲睦まじくなる

ビジネスアイデアの場合は、ストレートに考えれば、「性産業」や「医療」が思い当たりますね。この2つは、言うまでもなく強力な需要があります。ゆえに単価も高いわけです。

また「お金を稼ぐ系」のコンテンツは、生活する上では生存に寄与しますが、男性の場合は生殖にも大きく寄与します。ゆえにお金系は需要は大きく、特に男性の欲求を刺激します。

「容姿」を良くするのは生殖が目的ですね。女性の場合は、異性を惹きつけるメイン要素だった「若く見せる」が最大の価値になるでしょう。

男性の場合、若さはそれほど重要ではありませんでした。祖先を思い起こせば、腕力がある方が有利そうなので、同じ容姿でも筋肉の方がウケそうです(あくまで想像ですが)。

サバンナ原則も忘れずに

「サバンナ原則」の通り、祖先の時代に存在しなかったものは、理解できないという点も意識しなければなりません。

例えば祖先の時代には、パソコンはおろか、知的労働という概念すらなかったでしょう。パソコンの性能をアピールしたところで、本能レベルでは何も引っかかりません。

パソコンであれば、仕事の能力が向上することを意識させる必要があるでしょう。仕事の能力が上がれば、お金が稼げるようになります。生殖と生存の両方の欲求を刺激できます。

車であれば、移動というメインの機能では、さほど本能に響きません。祖先の時代は、それほど早い乗り物はありませんでしたし、まだ家畜に乗って移動もしていなかったはずです。

カッコいいイメージや高級なイメージを持たせれば、異性を惹きつける生殖を想起させます。家族団欒であれば、家族の生存に加え、パートナーの維持という生殖も想起させます。

考え方②:男性には「ヒーローズジャーニー」

競争に勝利することを強いられてきた男性にとって、グッとくるのは、「平凡な人間が、苦難を乗り越え、英雄となって大きな目標を達成する」というストーリーです。

「あれ?これ良くある感じのストーリーじゃね?」と思ったあなた。その通りです。

これは神話や映画で頻出するテンプレです。しかし使い古されたと見るべきではなく、何千年にも渡ってウケ続けた鉄板ストーリーと見るべきでしょう。

このストーリー展開は、「ヒーローズジャーニー」と呼ばれています。

ヒーローズジャーニーの12ステップ

  1. 日常世界(Ordinary World)
    :主人公はまだ日常の中にいて、その後の展開を知る由もない
  2. 冒険へのいざない(Call to Adventure)
    :何かのきっかけにより、日常から挑戦に転じる
  3. 冒険の拒否(Refusal of the Call)
    :怖気付き、挑戦に後ろ向きな姿勢を見せる
  4. 賢者との出会い(Meeting the Mentor)
    :その道を良く知る先達に出会い、挑戦への知恵を授かる
  5. 戸口の通過(Crossing the First Threshold)
    :決意を固め、挑戦の旅に出発する
  6. 試練、仲間、敵対者(Tests, Allies, Enemies)
    :慣れない主人公に試練が訪れる、また仲間と出会い、真の敵が誰なのかを理解する
  7. 最も危険な場所への接近(Approach to the Inmost Cave)
    :最大の試練への準備をし、彼の地へ赴く
  8. 最大の試練(Ordeal)
    :最大の敵と対峙する。自分の弱さに気づきながらも、戦いの中で乗り越える
  9. 報酬(Reward)
    :最大の試練をクリアし、報酬を得る
  10. 帰路(The Road Back)
    :戦いを終え、帰路に着く。ただしまだ安全ではなく、命からがら逃げている最中だったりする
  11. 復活(Resurrection)
    :主人公は死んだかと思われる状況になりながら、奇跡的に生還し、冒険が終わる
  12. 宝を持っての帰還(Return to the Elixir)
    :元いた日常に帰還する。しかし冒険によって得た成長や報酬によって、以前とは違う主人公の姿がそこにある

マーケティングで利用するときは、主人公は顧客(または顧客のペルソナ)であり、賢者はあなた(企業)です。敵or試練は、顧客の悩みや課題を当てはめます。

WebサイトやLP、セールスレターなど、さまざまなシーンで応用できます。

男性にとって、ただの勝利や成功ではダメなのです。努力して、戦って、他人に勝利して、大きな栄光を掴む(そして女性にモテる)。これこそが至高の筋書きなのです。

≫【神話のテンプレート】ヒーローズジャーニーとは?魅力あるストーリーには法則がある!

考え方③:女性には「プリンセスのストーリー」

競争を強いられなかった女性にとって、「ヒーローズジャーニー」のようなコツコツ強くなって強大な敵を倒すストーリーは、そこまで魅力的ではありません。

女性向けも古典的なストーリーがあります。それが「プリンセスのストーリー」です。ぜひシンデレラのストーリーを思い出してください。

本来、女性みんな「プリンセス」なんです。しかし今は本当の自分の姿ではありません。魔法の力で、瞬時に本当の自分を取り戻したいと願っています。

何かのきっかけを得て本当の自分を取り戻し、自分らしいライフスタイルを手に入れる。そのきっかけは魔法使いか、王子様か、あるいはあなたの製品か。

これが女性が求めるストーリーです。特段の努力も求めていませんし、誰かと戦う必要もありません。英雄のように尊敬の眼差しを受けたいわけでもありません。

「これが本当のわたし!」と感じさせてくれる製品やストーリーを求めているのです。

≫【こんなに違う】女性向けマーケティングの本質とは?男性脳では絶対に見えない女性の心理

考え方④:競うゲームの良し悪し

お気づきの人も多いと思いますが、格闘ゲームやレースゲームなど、人が競い合うゲームのプレイ人口は、ほとんどが男性で占められています。

我々の祖先の男性は、子孫を残すために過酷なレースを強いられていました。ゆえに、他人と競って勝つゲームを好むのは男性なのです。

一方でそこまで競争を強いられなかった女性は、さほど競い合うことに関心がありません。それよりも自分らしい生活を実現する「どうぶつの森」のようなゲームがウケます。

というわけで、男性と女性ではウケるゲームのタイプが明確に異なります。伝統的なゲームは競い合うことが中心だったので、主に男性が顧客となっていました。

しかしプレイヤー自身が直接競わず、モンスターが間接的に戦う「ポケモン」は、男女共にプレイヤーが多かったという事実があります。ここに男女両方にウケるゲームのヒントがあるように思います。

考え方⑤:役に立たない贈り物の価値

女性は「花」「ダイアモンド」を贈られると喜びます。男性はそこまで喜びません。

花とダイアモンドの共通点は、何の役にも立たないこと。一見すると価値がありませんが、役に立たないからこそ意味があるのです。

男性が女性に役に立たないものを贈るということは、それだけその女性に投資する心構えがあると見なせます。男性の覚悟が目に見えるから、女性は贈られると嬉しいのです。

花の場合は、役に立たない上に、すぐに散ってしまうから良いんです。ダイアモンドの場合は、役に立たない上に、高価だから良いんです。

まとめると、「見た目がキレイ」「役に立たない」「贈る上でハードルがある」の3点揃った製品は、女性にウケるポイントを押さえています。

進化心理学の弱点

最後に、進化心理学の弱点を解説しておきます。理解した上で使いましょう。

弱点①:仮説の域を出ない

進化心理学は、アプローチとしては進化生物学と概ね同じです。そのため、進化生物学と同様の弱点を持っています。

現代を生きる我々が、何万年も前に遡って進化の痕跡を辿るのは、容易ではありません。化石やDNAを調査したりしますが、実際に過去の姿を目で見ているわけではありません

よく「人間が二足歩行をし始めたのは、立って遠くの敵を見るためだった」と言われていましたが、これは眉唾ものらしいとか。

なんせ誰も見てないので、真実はわかりません。

進化心理学は、断片的な材料から状況証拠的に、筋の通ったストーリーに当てはめています。一定の信憑性はあるものの、仮説を100%証明できるわけではありません。

「間違っている説もあり得る」という認識は持っておくべきでしょう。

弱点②:説明できない現象も存在する

進化心理学では、説明のできない現象もあります。

自ら生存の本能に逆らう自殺は、進化心理学では説明が難しい現象です。

ちょっとした自傷行為であれば、気にかけてもらったり、庇護を受けたいという目的があると理解できます。しかし死に至るほどの行動は、説明がつきません。

子なしを選択する夫婦も説明がつきません。

下世話な進化心理学からすれば、パートナーを作るのは子孫を残すためです。子なしを選択する現象は、どうにも説明がつきません。

老いた両親の世話をする行動も説明がつきません。

資源が減るだけで、生存にも子孫を残す助けにもなりません。子供が親を愛するのは庇護を求めるためですが、子供が老いた親を愛する必然性は、進化心理学の文脈にはありません。

そもそも人間の心理を全て解明した理論は存在しません。進化心理学も万能ではありません。あくまで暫定の理論であると理解して利用しましょう。

参考書籍

『進化心理学から考えるホモサピエンス 一万年変化しない価値観』は、進化心理学をわかりやすく教えてくれる入門書です。

本記事はビジネスに関する話に留めましたが、もっと突っ込んだ男女の違いのアレコレや、国や宗教の違いによって暴力性に違いが出る理由も解説しています。

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こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。

Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。

冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。

Audible 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがAudibleで聴くべき17冊

ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。

どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。

そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。

ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!

とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!

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