人間の行動の根元にあるのは何だと思いますか?
もちろん「欲求」ですね。欲求のメカニズムを知ることで、ビジネスでどんな施策を打てば成功するかが見えてきます。
「アルダファーのERG理論」は、人間の欲求を次の3つに分類した理論です。フレームワークとしても使えます。
ERG理論の3つの欲求
- 生存欲求(Existence)
- 関係欲求(Relatedness)
- 成長欲求(Growth)
この記事では、アルダファーのERG理論をビジネスでの活用する方法を紹介しています。
使いこなせば、社員の不満を解消してやる気を引き出したり、新サービスのアイデア出しに活用することができます。
アルダファーのERG理論とは?

アルダファーのERG理論(ERG theory)とは…
人間の欲求を3つに分類し、各欲求の関係性を説いた理論です。
ERGとは、それぞれの欲求の頭文字をとっています。
3つの欲求とはすなわち、
- 生存欲求(Existence)
- 関係欲求(Relatedness)
- 成長欲求(Growth)
を指します。
よく似た理論にマズローの欲求段階説がありますが、実はERG理論はマズローの欲求段階説をベースにしています。心理学者であるクレイトン・アルダファー氏が、マズローの欲求段階説を改良してできたのがERG理論です。
マズローの欲求段階説と同様に、下の欲求(低次欲求と呼ぶ)ほど優先的に満たそうとします。
続いて、生存欲求(Existence)、関係欲求(Relatedness)、成長欲求(Growth)のそれぞれの中身を見ていきましょう。
生存欲求(Existence)
生存欲求とは、すなわち人間として存在するための欲求です。生き延びるために最低限必要な環境を求める欲求とも言えます。もっとも低次な欲求です。
マズローの欲求段階の
- 生理学的な欲求
- (物理的な)安全の欲求
を含んだ概念です。
関係欲求(Relatedness)
関係欲求は、他者との人間関係に関する欲求です。もちろん、友好的な人間関係を築いていきたいという欲求もありますが、他者より秀でたい、他者に認められたいという欲求も含みます。
マズローの欲求段階の
- (対人的な)安全の欲求
- 所属と愛の欲求
- (他者と比較した)承認欲求
を含んだ概念です。
成長欲求(Growth)
成長欲求は、人間に本来持っている成長し続けたいと願う欲求です。もっとも高次な欲求です。
他2つの欲求は、満たされればより高次の欲求を求めますが、成長の欲求には終わりがありません。永遠に成長を求め続けます。
- (自尊心への)承認欲求
- 自己実現の欲求
を含んだ概念です。
マズローの欲求段階説との違い

上の図の通り、マズローの欲求段階説の5つの範囲を網羅しつつ、3項目に簡略化されていることがわかります。
では両者の違いはどこにあるのでしょうか?
それはERG理論が持つ「可逆性」にあります。
マズロー欲求段階説は、低次の欲求が満たされるほど、高次の欲求を求めるようになると説いています。下から上への一方通行です。
例えば、身の安全や人間関係に不満がなくなれば、承認欲求を求めるようになります。SNSで注目されたくなったり、他者より秀でたい気持ちから出世を求めたりします。
その一方で、ERG理論には「可逆性」があります。高次の欲求が満たされないと、低次の欲求を遡って求める現象が起きます。
なかなか出世できなくてヤキモキしている人が、取り巻きとより密な関係も求めるようになるイメージですね。
可逆性は、ERG理論の7つの特命課題で表されています。
ERG理論の7つの特命課題
- 生存欲求の満足が低いほど、それはより一層希求される
- 関係欲求の満足が低いほど、生存欲求はより一層希求される
- 生存欲求の満足が高いほど、関係欲求はより一層希求される
- 関係欲求の満足が低いほど、それはより一層希求される
- 成長欲求の満足が低いほど、関係欲求はより一層希求される
- 関係欲求の満足が高いほど、成長欲求はより一層希求される
- 成長欲求の満足が高いほど、それはより一層希求される

ビジネスシーンでのERG理論の活用例

ERG理論は、フレームワークとして活用できます。
人事・マネジメントに活用する
人事やマネジメントに活用すると、社内環境を改善させることができます。社員のやる気向上や、離職率低下につながる施策を見つけられるかもしれません。
次のように例のように、現在の職場環境を枠に当てはめてみて、どこに手を加えるべきか炙り出しましょう。

マーケティングに活用する
マーケティングに活用すれば、消費者が求めているニーズがどこにあるのか特定できます。新サービスのコンセプトや、プロモーションの訴求ポイントを捻り出すのに便利です。
次の例のように、現在そのサービスを利用するときの環境を枠に当てはめてみましょう。そうすれば、痒いところに手が届いていないサービスニーズを炙り出すことができます。

まとめ
今回は心理学より「ERG理論」を紹介しました。マズローの欲求段階説の方が有名ですが、こちらも知っておいて損はありません。
気に入った方を使えばOKです。
- 人間の欲求を3つに分類し、各欲求の関係性を説いた理論
- マズローの欲求段階説がベースになっている
- 生存欲求 … 人間として存在するための欲求
- 関係欲求 … 他者との人間関係に関する欲求
- 成長欲求 … 成長し続けたいと願う欲求