心理学・行動経済学

【身内びいきもほどほどに】内集団バイアスとは?事例&避け方を解説【逆手にとった活用も】

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  • 一致団結した方が良い場面なのに、なぜか内ゲバで足を引っ張り合ってしまう
  • 身内をひいきして、悪気はないのに外部の人間を差別してしまう

こんな経験おありでしょうか?歴史では繰り返し見られるパターンでもあります。

その理由は、「内集団バイアス」にあります。特に利害関係がない間柄であったとしても、身内を高く評価し、外部の人間を蔑視する心理があるのです。

個人差はあれど、人間に本来備わっている心理なので、意識しなければ止めることは難しいでしょう。

この記事でわかること

  • 内集団バイアスとは?
  • 内集団バイアスを避ける方法
  • 内集団バイアスを逆に活用する方法

組織に属する人は、会社であれ、学校であれ、スポーツチームであれ、さまざまな場面で内集団バイアスに出くわすでしょう。

特に組織全体の成果を上げたいマネジメントやリーダーは、「内集団バイアス」のメカニズムを知り、避ける工夫が必要です。ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。

内集団バイアスとは?

内集団バイアス(in-group favoritism、またはin-group bias)とは…

自分が所属する集団のメンバーに対し、肯定的な評価をしたり、好意的な態度をとったりする心理現象のこと。

反対に、自分の所属する集団以外の人には、不当に評価したり、差別したりする傾向があります。

社会心理学者のH.タジフェル氏とJ.C.ターナー氏が提唱した認知バイアスの一つです。

次の2つの集団に分けて考えます。

  • 内集団
    :自分が所属していると感じる集団

  • 外集団
    :自分が所属していない集団

「内集団バイアス」は、集団の間で利害関係があるシーンの方がより強く発現しますが、利害関係がない間柄でも発現します。

内集団を高く評価してしまうということは、結果として、身内を優遇してしまうことになりますね。つまり「ひいき」です。そんなわけで、内集団バイアスは、「内集団びいき」「身内びいき」に発展します。

そして外集団に対しては、しばしば侮蔑的な態度を取る現象が起きます。

世界史では、中国周辺の異民族を「匈奴(きょうど)」「鮮卑(せんぴ)」などと呼びます。中国から見た外集団だからなのでしょう。明らかに侮蔑的な漢字が使われていますね。

日本人も大概で、西洋人を「南蛮人」と呼んだり、北海道の人を「蝦夷」と呼んでいました。ちなみに「夷(えびす)」という漢字は、東方に住んでいる未開の蛮族という意味です。

そして外集団に対する蔑視は、ときに迫害や暴力といった行動に発展することもあります。

代表的な例は「ユダヤ教」

良くも悪くも「ユダヤ教」は、内集団バイアスをよく表す例として用いられます。「ユダヤ教」はユダヤ民族が信仰している、ヤハウェを唯一神とした歴史ある宗教です。

ユダヤ教徒は、ヤハウェ神に選ばれた民という「選民思想」を持っています。いずれ来る世界の終末では、ユダヤ教徒だけが救済され、非ユダヤ教徒は淘汰されるという考えです。

ユダヤ民は、同じユダヤ人に対しては強い結束を持つ一方で、それ以外の民族に対しては排他的な考えを持っていると言われています。

もともとユダヤ民は、自分たちの国(古代イスラエル王国)を持っていたのですが、2000年以上前に国を追われ、ヨーロッパ各地に少数派民族として散り散りになりました。

散り散りになった民族は、各々の地域の民族と混じって消滅(同化)するのが通常。今でもユダヤ民としてあり続けられるのは、彼らの内集団バイアスの強さの賜物と言えるかもしれません。

ただし内集団バイアスは、ユダヤ民が移り住んだ先の現地民にも当然あります。現地の民族から見れば、ユダヤ民は外集団。そのため、ユダヤ民は長きにわたり迫害されてきた歴史があります。

今日までユダヤ民があり続けられたのも内集団バイアスのおかげなら、受難の歴史を辿ったのもまた内集団バイアスによるところが大きいと言えるでしょう。

あくまで個人の考えです。私自身、ユダヤ系の人々に何ら他意はないことも付け加えておきます。

身近にある内集団バイアスの例 5選

「内集団バイアス」の概要を見て、自分の身の回りにもありそうに感じた人は多いはず。いくつか例を見ていきましょう。

例①:オリンピックやW杯で自国を応援する

オリンピックやワールドカップは、国民みんなが自国を応援するイベントです。私はあまりスポーツには関心がない方ですが、それでも日本代表の選手が勝てば嬉しいものです。

冷静に考えると、日本代表選手は赤の他人。勝ったところで何もありません。それでも自分が日本人という集団に属していて、選手も同様に日本に属している。ならば好きになっちゃうわけです。

逆に内集団バイアスが強すぎると、フーリガンのように、他のチームを応援する人に敵対心を向けるようになります。

例②:「若者vs高齢者」「男性vs女性」などの構図

身分が平等の国に生きている我々は、あまり蔑視や差別を意識することなく生活しているように感じています。

ですが、ところどころで「自分の属する集団」と「属さない集団」で対立的な意見を持つことがあります。

若者は年配の人を「老害」と感じる一方で、年配者は若者を「無知の恥知らず」と思っています。

  • 「男性vs女性」
  • 「民間vs公務員」
  • 「会社員vsフリーランス」
  • 「日本人vs外国人」

など、ことあるごとに内集団をひいきし、外集団を蔑む態度をとることがあります。

例③:同中(おなちゅう)のヤツはスゴイ

中学校に、すごいスポーツができる子がいて、「彼(彼女)はスゴイ!他校のやつなんかよりずっとスゴイぞ!」と思ってしまいガチです。同じ学校で1番可愛い女の子は、他校の女の子よりも可愛いと思ってしまうでしょう。

「うちの地元はすごい」と思っている人も同じような話です。実のところ、第三者から見たら、特別あなたの地元や学校が優れているなんてことはないわけです。

内集団バイアスは、学校を卒業してからも続きます。同じ学校の卒業生をひいきして、採用や昇進をさせること(いわゆる学閥)もあります。あまり褒められたものではありません。

例④:日本の技術力は高い?

日本は工業製品や伝統産業で、「技術力が高い」印象があると思います。頭が良いイメージもあるかもしれません。なんとなく、アメリカ、中国、韓国のような身近な外国人と比べて、優秀なイメージがあるのではないでしょうか?

テレビでよく、日本製の製品を海外の人に見せて「日本はスゴイ!」と言われているのを目にします。なんとなく「まぁそうだよね。だって日本だもん」と、当然のように受け入れようとする自分に気がつきます。

ですが事実として、日本製品のプレゼンスはどんどん下がっています。中韓やアメリカのグローバル企業に追いやられています。日本人が優れている点はもちろんあるでしょうが、技術力や頭の良さでのアドバンテージは殆どないでしょう。

アメリカ人は大雑把なイメージを持つ人も多いと思いますが、そんなことはありません。ビジネスでも学問でも、アメリカが世界をリードしています。世界をリードしている人が、緻密に物事を捉えられないわけがありません。

例⑤:同じブランドを着ている人はオシャレ

街で見かけた人が、自分が好んで着ているブランドの服を来ていたら、なんとなく目が行きますよね。その人はきっとオシャレな人だと思ってしまいがちです。

これに関しては、あなたがそのブランドをオシャレだと思っているので、それを着ている他人もオシャレだと感じるのは、当然と言えば当然ですが。

ただそこから転じて、同じブランドを着ている人には、その他の面でも好意的な印象を抱くでしょう。性格が良いとか、意志が強いとか、頭が良いとか、仕事ができるとか。

ここまでくると、内集団バイアス以外の何物でもありません。

内集団バイアスの実験事例

「内集団バイアス」の実験事例を2つ紹介します。いずれも内集団バイアスの提唱者である、H.タジフェル氏らが行った実験です。

実験事例①:コイントスによる集団

見ず知らずの被験者を、コイントスによって2つの集団AとBに分けます。ただし被験者は、自分たちがコイントスでランダムに分けられた集団だとは聞かされていません。

集団Aには、「君たちは、もう一つの集団がこれまで知らなかった特定のタイプの芸術を好む傾向がある」と伝えました。

すると集団Aのメンバーたちは、全く知らない人であったにも関わらず、お互いを理解し合うようになりました。

さらに集団Aのメンバーは、「集団Bは、みな同じような人たちの集まり(多様性のない人たち)だ」と感じるようになりました。

もちろん集団Bにもいろんな思考を持つ人がいるわけですが、そういうのは無視して、杓子定規な評価を下してしまいました。これは外集団同質性バイアスと呼ばれています。

実験事例②:絵の好みによる集団

まず、世間では画家の「クレー」の作品を好む人と「カンディンスキー」の作品を好む人に二分されるという話を、被験者に聞かせます。その上で、被験者がどちらのタイプに属するかを知らせます。

つまり、被験者ととりあえず「クレー派」と「カンディンスキー派」の2つの集団に分けたということです。被験者は、自分が属している集団以外には何も知らされていません。

そこで、「この実験への参加の謝礼に関わる得点を、クレー派の1人とカンディンスキー派の1人に分け与えるとしたら、どのような配分にするか?」を質問しました。

その結果、自分が属する集団(つまり内集団)のメンバーに割り振る得点を、わずかに多くする傾向が見られました。特に同じ集団だからといって、利害関係はないことは注目ポイントです。

内集団バイアスはなぜ起こるのか?

内集団バイアスが起こる原因を考察してみましょう。大きく3つあると思います。

理由①:他の集団のことをよく知らない

身内を高く評価してしまう現象は、まず第一に、「他の集団のことをよく知らない」という理由があるでしょう。要するに井の中の蛙になっているんです。

行動経済学には、「利用可能性ヒューリスティック」という用語があります。知らず知らずのうちに「自分が思い出しやすい情報」を過度に評価してしまう現象です。

例えば…

「飛行機の死亡事故」と「車の死亡事故」、どちらが確率が高いかと聞かれたら、多くの人が「飛行機事故」と答えるでしょう。

実際には、車で死亡する確率の方が高いんです。都度報道されない自動車の死亡事故よりも、確実に大ニュースになる飛行機事故の方が思い出しやすいのです。

内集団に属する優秀な人は、パッと思い出せます。複数人思い浮かぶかもしれません。ですが、外集団の優秀な人は知らないので、思い出しようがありません。

内集団に優秀な人が何人かいれば、それだけで「俺らの集団は優秀だ!」と思ってしまうのです。

≫ 利用可能性ヒューリスティックとは?豊富な例で解説

理由②:身内を優遇した方が得

次に身内を優遇してしまう理由を考えてみましょう。簡単に言えば、同じ集団の人に恩を売ったほうが、見返りが大きいという話です。

人間は社会的な生き物です。太古の昔から集団生活をしていて、集団で協力し合わなければ生存確率が著しく下がってしまう時代がありました。村八分にされては、死んでしまう時代があったのです。

そのDNAが今でも残っているわけです。DNAに焼き付けれられた思考パターンは、1万年前から変わっていません。今でも我々の思考は、集団で狩猟採集していたころと同じなのです。

となれば、なるべく自分が属する集団が発展するよう、自分の集団を優遇するのは当たり前。なるべく内集団に貢献できるよう、身内を好きになるように思考がプログラムされていてもなんら不思議はありません。

というわけで、利害関係や特別な理由はなくても身内を優遇してしまうのは、人間の進化の過程を振り返ると実に自然な話なのです。

理由③:社会的アイデンティティ理論

ここまでの理由は個人的な考察でしたが、社会的アイデンティティ理論は、内集団バイアスの理由として一般に知られています。

なぜなら、内集団バイアスの提唱者であるH・タジフェル氏その人が、内集団バイアスを説明するための使った理論だからです。

「社会的アイデンティティ理論」によれば、人間は、社会的な身分や自分が属するグループを、自分の個性(アイデンティティ)と同一化させています。

要するに、社会的な身分もその人のアイデンティティの一部なのです。

だからオリンピックで日本代表が勝てば嬉しいし、自分の勤める会社の良いニュースを聞けば嬉しくなるわけです。「外務省勤務」や「三菱商事勤務」を誇らしく感じるのもそうですね。

社会アイデンティティが強いと起こること

「社会的アイデンティティ」とは、「帰属意識」とも言い換えられます。帰属意識の強さは、それだけ内集団バイアスを加速させ、良くも悪くも影響をもたらします。

一つ歴史から例を出しましょう。

実は中世までの世界には、「自分は〇〇国民だ」という意識が殆どありませんでした。国民としての権利が確立していなかったので、「ただその地域に住んでいる」くらいの感覚しかなかったのです。

ですがフランス革命により、「国民主権」の概念が出てくると、「国民」というアイデンティティが生まれます。過渡期である19世紀に起こった戦争では、いち早く国民意識が芽生えたフランスは圧倒的な強さを見せました。

その頃の戦争は傭兵が主流でしたが、徴兵制を敷いたフランスは農民などの非軍人も参戦しています。そしてお金で雇われた職業軍人よりも、素人のフランス農民の方が強かったのです。

日清戦争で日本が勝ったのも同じ理由と言われています。アジアの大国清の軍は国民意識が薄かった一方で、明治維新後の日本は、天皇を中心とした国民国家を形成していたので、モチベーションに圧倒的な差がありました。

このように、それまでなかった「帰属意識」を意識させることで、途端にパフォーマンスが上がる現象があります。

一方で国民意識が強くなったせいで、国民は政府の弱腰を非難し、敵国への攻撃を支持するようになりました。世論に押される形で戦争が長引く結果になり、必ずしも良いことばかりではありませんでした。

内集団バイアスの4つの弊害

「内集団バイアス」には、いくつか弊害があります。個人差はあれど、意識しなければ引っかかってしまうでしょう。ぜひ知っておきたいところです。

弊害①:内ゲバで利益を損なう

自分の属する小さな集団の利益を追い求めるがあまり、もっと大きな集団全体の利益を損なってしまうことがあります。歴史や政治でもよく見られ、社内政治でもしばしば起こります。

国が滅ぶかもしれない危機的状況なのに、内部の権力争いで瓦解した歴史は枚挙にいとまがありません。人気ドラマの「半沢直樹」を見た人は、優秀な人が社内政治のために心血を注ぐのを見て、不思議な気持ちを持ったことでしょう。

ベクトルが内側に向いてしまうと、目の前の小さな利益を追いかけたり、相手の足を引っ張るように動いたりするので、集団全体の利益を逸することになってしまいます。

弊害②:外部の優秀な人材を取り逃がす

基本的には内集団よりも外集団の人数が多いはずです。「あなたの会社の社員」よりも「社外の人」が多く、また「日本人」よりも「外国人」が多いように。

となれば確率的に考えて、外部にはもっと優秀な人がいる可能性が高いはずです。内集団バイアスにかかってしまうと、内部の人ばかり評価し、本当に優秀な人を取りこぼしてしまうでしょう。

例えばあなたが田舎の村に住んでいて、「うちの村のモンは優秀だから、村のモンだけで起業する!」となれば、優秀な人は集められないでしょう。日本人の技術力が世界一と思っていては、世界の優秀なタレントを見逃してしまうわけです。

アメリカではキレッキレのインド人が大企業のトップになっていたりしますね。アメリカは移民が多く、公用語が世界標準の英語なので、日本人よりも内集団バイアスにかかりづらいのかもしれません。

弊害③:強すぎる内集団バイアスは、外集団から迫害を受ける

ユダヤ人の例のように、強い内集団バイアスは、外部の人からの反感を買います

地方の集落で他所者を嫌う人たちみたいな感じですね。集落の中の人に強い内集団バイアスがあるために、外部の人は強い嫌悪感を感じます。

周りのことなど気にせず生きていけるほど達観していれば、それでも良いかもしれません。

ですが多くの人は組織の中で生きているので、嫌われてしまっては仕事や生活に支障を来たします。身内意識が強すぎて、外の人との間にバリアを張っているような人は要注意ですね。

弊害④:危機感に気がつけない

内集団バイアスにより、「自分の周りにいる人は優秀」だと思い込んでしまうと、いつか来るかもしれない危機を見過ごすことになります。

かつては大企業に勤めていれば安泰と言われていましたが、現代ではその神話は崩れ去っています。いずれ職を失う危機があっても、同僚や会社を優秀だと思い込んでいては、最後の最後まで危機に気がつけません。

リストラの憂き目にあった人は、「まさか自分がなるとは思ってもいなかった…」と口々にいうものです。この思い違いは、「正常性バイアス」とも呼ばれています。

時勢を理解せず、いい年になるまで危機感を持てなかった人を間抜けに思うかもしれません。ですが日本国そのものが国際社会でのプレゼンスが落ちていることを考えると、日本人全員が危機感を持たねばならないのかもしれませんね。

内集団バイアスを避ける3つの方法

「内集団バイアス」の弊害はどれも、短期でどのこうのというよりは、長期でジワジワと侵食していって、手遅れになって気がつく類のものです。

気が付きにくいので、いち早く脱却したいところ。ここでは内集団バイアスを避ける3つの方法を紹介します。

回避方法①:集団間の利害関係を取り除く

内集団バイアスは、利害関係が一切ない場合でも起こります。しかしやはり、強く発生するのは利害関係が色濃く出ているときです。

相手を倒せば自分が上に上がれるような環境では、どうしても内集団バイアスが強く出てしまうでしょう。そのため、相手を攻撃しても自分の得にはならない環境が必要です。

相対評価ではなく、絶対評価にするのも良いでしょう。小さいチームごとに目標を設定するのではなく、大きい括りのチーム全体で目標を定めるのも良いかもしれません。

回避方法②:ファクトを認識する

先ほども出てきた「利用可能性ヒューリスティック」により、知らないことはさも存在しないかのように錯覚します。そして自分が知っている身内の評価を上げてしまいがちです。

ですが、ファクト(現実)を認識することで、内集団バイアスは打ち砕かれます

県大会で勝ち上がった高校が「うちの野球部は最強!」と思っていても、いざ甲子園に出て大阪桐蔭のようなホントの化物に出会ったら気づいてしまうでしょう。

「あっ、俺らって大したことなかったんだ…。上には上がいたんだ…」と。現実を知って、井の中の蛙を卒業しましょう。

回避方法③:情報を積極的に取りに行く

ファクトに気が付くには、まず持ってその情報にアクセスしなければなりません

井の中の蛙に気がつくには、必然的に外部の情報を取りいく必要があるでしょう。業界外の情報であったり、海外の情報であったりです。

近代史では、最新鋭の西洋の情報を積極的に取り入れた国家が一気に飛躍しました。日本もその一つですね。ガラパゴスにならないよう、積極的に外部の情報を取り入れましょう。

内集団バイアスを活用する2つの方法

ここまで「内集団バイアス」を悪い意味で取り上げてきましたが、モチベーションが上がったりと良い面もあります。

うまく活用することで、仕事やプライベートに使えるテクニックになります。

活用①:共通点を探して、仲良くなる

ベッタベタですが、相手との共通点が見つかれば、あなたと相手は内集団です。

ギリシャ神話のトロイア戦争には、こんなエピソードがあります。

ギリシアのディオメーデスとトロイアのグラウコスは敵同士であったが、祖父同士が旧知の間柄と判明し、戦闘を中止しました。そして以降は戦場で出会っても戦わないと誓い合いました。

この両将軍のように、共通点が見つかれば敵同士でも友情で結ばれます。相手はあなたのことを実際よりも高く評価したり、好意を抱いたりするでしょう。

  • 出身地
  • 好きなスポーツチーム
  • 好きなバンド
  • 趣味
  • 同じ年頃の子供がいる
  • (些細なことでも)同じような悩みを持っている

といった共通点がないか探ってみましょう。

なお共通点はその時々のシーンで相対的なもの。外国の地で出会った人なら、日本人というだけで内集団を意識させます。地方出身者が東京で出会えば、強い親近感が湧くでしょう。

活用②:対立から競争意識を駆り立てる

集団意識がない人に、あえて集団を意識させることで、集団間の競争心を煽ることができます。悪く言えば、国民意識を芽生えさせて、国民を戦争に駆り出したのと同じ理屈です。

ビジネス書で定番の『人を動かす』に、面白い例が載っていたので紹介します。

カーネギー鉄鋼会社とUSスチールの社長だったチャールズ・シュワッブは、ある日業績がなかなか上がらない工場を訪れました。

しかし工場長に尋ねても、業績不振の理由はさっぱりわかりません。

ちょうど昼勤組と夜勤組の交代の時間になったところで、シュワッブは昼勤組の工員に、「君の組みは、今日、何回鋳物を流したかね?」と聞きました。

「6回です」と返事が返ってくると、シュワッブは床に大きく「6」と書いて出て行きました。

夜勤組が数字を見つけて、その意味を昼勤組の工員に聞いたところ、上記のいきさつを聞かされました。

翌朝シュワッブが工場を訪れると、夜勤組が「6」の数字を消して、大きく「7」と書いてありました。それを見た昼勤組は対抗意識を燃やし、その日は「10」と書いて帰りました。

というわけで、これまで集団意識を感じていなかった昼勤組と夜勤組に、あえて集団を意識させることで、競争心を煽り、成果を上げさせることができました。

ここでのポイントは、昼勤組と夜勤組には直接の利害関係がなかったことが挙げられます。もし片方の邪魔をした方が給料が上がるようなら、相手の足を引っ張る方にベクトルが向いていたかもしれません。

まとめ

今回は知らず知らずのうちに、身内をひいきしてしまう「内集団バイアス」を紹介しました。

内集団バイアスとは…

  • 自分が所属する集団のメンバーに対し、肯定的な評価をしたり、好意的な態度をとったりする心理現象
  • 反対に、自分の所属する集団以外の人には、不当に評価したり、差別したりする傾向がある

内集団バイアスの弊害

  1. 内ゲバで全体の利益を損なう
  2. 外部の優秀な人材を取り逃がす
  3. 強すぎる内集団バイアスは、外集団から迫害を受ける
  4. 危機感に気がつけない

ほどほどの内集団バイアスは誰しも持っているものですが、度が過ぎると、周囲の反感を買ったり、環境変化による危機に気がつけなかったりします。

ぜひメタ的に気付けるといいですね。次のような避け方を実践してみましょう。

内集団バイアスを避ける方法

  1. 集団間の利害関係を取り除く
  2. ファクトを認識する
  3. 情報を積極的に取りに行く

さらに適度に応用することで、ビジネスで活用することも可能です。

内集団バイアスを逆に活用する方法

  1. 相手との共通点を探して、仲良くなる
  2. 対立から競争意識を駆り立てる

対立意識を煽るときは、利害関係に要注意。相手の集団の足を引っ張っても、得しないような環境を心がけましょう。

関連する認知バイアス

「内集団バイアス」と関連する認知バイアスを紹介します。

外集団同質性バイアス

ちょっと難しそうな響きの「外集団同質性バイアス」は、「外集団同質化効果」とも呼ばれます。カンタンに言えば、外部の人に対する固定観念です。

これは、内集団にはいろんな趣味や嗜好の人がいて、多様性があると感じているのに対し、外集団の人はみんな同じような趣味嗜好で多様性がないと感じてしまう現象です。

例えば、「インド人はカレーが好き」とか、「アメリカ人は大雑把」とか、「イタリア人は女好き」と杓子定規に思ってしまうのは、外集団同質性バイアスによるものです。

海外映画で日本をモチーフにした作品を見ると、ひどく偏ったイメージが見て取れます。海外の人にとっては日本人は外集団なので、イメージが同質化してしまっているわけです。

黒い羊効果

「黒い羊効果」は、内集団の中で嫌いになった人に対して、外集団の同じような人よりも憎しみが強くなる現象です。「愛憎」という言葉がしっくりくるかもしれません。

例えば海外の皇太子が不倫したとして、日本人は「ふーん、そうなんだ」くらいの反応だと思います。ですがそれが、日本の有名人だったらもっとイヤな印象を抱きませんか?

さらに会社の同僚だったり、サークルのメンバーだったらどうでしょう?もしも親族だったら…。やったことは同じでも、より距離が近い内集団ほど、憎悪が増してしまうのです。

詳細は、黒い羊効果の解説記事をチェックしてみてください。

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同調行動(ハーディング現象)

「同調行動(またはハーディング現象)」は、周りの人に右に倣えの行動をしようとする現象です。

みんなと同じファッションをしようとしたり、行列ができているお店に入ってしまったりするのは、同調行動によるものです。

周りと違うことをして嫌われたくない、または、周りの人がやっている行動は正しいから自分もそれに倣おうという心理が働いています。根っこは「内集団バイアス」に近い。

詳細は、同調行動(ハーディング現象)の解説記事をチェックしてみてください。

【また誰かの真似するの?】同調行動(ハーディング現象)とは?身近な具体例で解説日本人は周りの人と同じ行動をするのが好きですよね。悪い意味ではいじめもその一つです。原因は「同調行動」にあります。同調行動は人間の本能に起因していますが、その本能に抗える人が成功を掴んでいます。その他大勢に合わせることに疑問を持っている人は、ぜひチェックしてみてください。...

社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!

あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。

それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。

しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!

外せない❶ Kindle Unlimited

Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。

新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。

Kindle Unlimited 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがKindle Unlimitedで読むべき15冊

外せない❷ Audible

こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。

Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。

冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。

Audible 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがAudibleで聴くべき17冊

ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。

どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。

そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。

ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!

とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!

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