心理学・行動経済学

ピーク・エンドの法則とは?ビジネスはたった2つの印象で決まる|仕事に使える行動経済学

  • 途中はイマイチでもラストが良かった映画は、なぜ名作扱いされるのでしょうか? 
  • 晩節を汚したら、なぜ人生全てがダメになってしまうのでしょうか?

その答えを教えてくれるのが、「ピーク・エンドの法則」です。人間は過去の体験の良し悪しを、「もっとも感情が動いた瞬間」「最後の瞬間」の印象だけで決めています。

この現象をビジネスに応用すると、注力しなければならないところが見えてきますね。この2つのポイントを押さえれば良いだけですから。

この記事では次のことがわかります。

  • ピーク・エンドの法則とは何か?
  • ピーク・エンドの法則を活用した製品企画&営業向けテクニック

製品企画をしている人、UXデザインをしている人は、絶対に知っておいて損はありません。

ピーク・エンドの法則とは?

ピーク・エンドの法則(peak end rule)とは…

人間は過去の体験を、

  • そのピーク(もっとも感情が動いた)ときにどうだったか
  • それがどう終わったか(終了間際)

の2点の印象だけで判断する傾向のことです。行動経済学の用語です。

一連の体験のピークと最後が「面白い楽しい美味しい気持ちいい」と感じたなら、その体験全体は「良かった」と判断されます。

逆に、ピークと最後が「痛い辛い悲しい苦しい」と感じたなら、その体験全体が「悪かった」と判断されます。

ピーク・エンドの法則では持続時間は無視される

ピーク・エンドの法則には面白い特徴が一つあります。

ピークと最後の「瞬間」しか見ていないので、持続時間は関係ありません。

普通に考えれば、楽しい時間は長い方が良く、苦しい時間は短い方が良いはずですよね。しかしながら人間の脳はそうは感じません。

  • 丸一日楽しくデートをしたが、別れ際に喧嘩をしてしまった
  • 10分間、電話で何気ない話をした

では、後者の方が良い体験として記憶します。

ピーク・エンドの法則が起こる身近な事例

ピーク・エンドの法則が当てはまるシーンは日常にもあります。

さっそく見ていきましょう。

2時間並ぶラーメン屋

人気トップクラスのラーメン屋で並ぶ時間は、だいたい2時間くらいです。2時間も待ったのに、食べるのはたった10分。

もちろんラーメンは最高に美味しいですが、体験のほとんどは退屈な待ち時間です。

それでもまた行きたくなるのは、「食べた瞬間の満足のピーク」と「食べ終わった後の良い余韻」で体験を評価するからです。

持続時間は関係ないので、待ち時間のイヤな体験は軽視されています。

ドラマやアニメの評価

全体的に見れば大したことないドラマやアニメでも、ラストさえ良ければその作品を良作と感じてしまいます。

逆にいくら良いストーリーでも、最終回が期待外れだと、駄作扱いされてしまいます。

有名人の最期

どんなに輝かしい経歴を持っていても、最後の数年で批判を浴びた人には、「晩節を汚した」というレッテルが貼られます。

そうすると、その有名人の人生全体まで不幸なものであったと感じてしまいます。

最後の数年がダメだったとしても、それまでの長い人生で幸せな生活をしていたのなら、それは必ずしも悪い人生ではないはずです。

逆に長い間ツラい人生を歩んで、最後の最後で報われた人は、美談として語られます。

今となっては良い思い出

人それぞれではありますが、

  • 若手社員の頃は残業ばかりでツラかった
  • 学生時代は人間関係で苦労して、いつも嫌な思いをしていた

あの頃はいっぱい悩んでツラい思いをした。楽しかった時間よりもツラい時間の方が長かった。そんな経験が誰にでもありますよね。

でも過去を振り返ると、なぜか良い思い出になっています。

ツラい時代は卒業なり転職なりで、最後は晴れやかな気持ちでおさらばすることが多いですよね。また、ツラい中にも楽しい思い出はあったはず。

そうするとピーク・エンドの法則により、全体的には良い思い出になってしまうのです。

ピーク・エンドの法則の実験例

ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマン氏が行った実験です。

実験内容

  • 被験者は、2回冷水に手を入れる
  • 1回目と2回目では、冷水の温度と手を入れている時間が異なる
  • もし3回目をやるなら、1回目と2回目のどちらの条件が良いか質問する

1回目と2回目の条件

  • 条件A:14度の水に手を入れて、そのまま60秒間耐える
  • 条件B:14度の水に手を入れて、そのまま60秒間耐える。その後に水温を1度上昇させて、さらに30秒手を入れたままにする

※14度はかなり冷たいが我慢できる程度
※1回目と2回目の順番は、被験者によって異なる

結果は次の通りでした。

実験結果

  • 80%の人が、もう1回やるならば「条件B」の方が良いと回答した

「条件B」の選択肢は、単純にツラい時間が長くなるです。普通に考えれば条件Bを選ぶ道理はありません。

しかしながら、最後の30秒が少しマシになったことで、「条件A」に比べて「条件B」は辛くなかったと錯覚を起こしてしまったのです。

ピーク・エンドの法則をビジネスに活かす方法 5選

ピーク・エンドの法則をビジネスで活用する狙いは、顧客の満足度を高めて、リピートしてもらうことです。

営業であれば、お客さんに自分をもっと信頼してもらう、あるいは好きになってもらう。という使い方もあります。

さっそく活用方法を見てみましょう。

①製品のコアバリューをとことん尖らせる

製品開発やサービス企画にピーク・エンドの法則を活用する方法です。

ピーク・エンドの法則によれば、1番良い体験と最後の体験さえ良ければ、全てが良かったことになります。裏を返せば、そこだけ徹底して改善すればOKということです。

製品やサービスには、何かしらここにしかない独自の売り(コアバリュー)があるはずです。UVPもしくはUSPと呼ばれることもあります。

コアバリューは徹底して尖らせましょう。ここだけは絶対誰にも負けないというレベルまで磨き上げましょう。

業種によっても様々ですが、仮に飲食店ひとつとってもコアバリューは異なります。

  • めちゃくちゃ美味しい
  • とにかく料理が出てくるのが早い
  • 信じられないくらい安い
  • 大食い選手も圧巻なくらい量が多い
  • どこよりも辛い激辛メニューがある
  • お店の雰囲気がダントツにオシャレ
  • 日本で一番夜景が綺麗
  • 日本酒の品揃えはどこにも負けない
  • 麻婆豆腐だけはどこよりも美味い

などなど

その一方で、それ以外は、勇気を持って削ることが大切です。

ピークと最後の体験さえ良ければいいので、コアバリュー以外に注力するのは、リソースに余裕が出た後で良いでしょう。

ただし悪い体験が混ざっていると、そこがピークになって、全体が悪い体験になってしまいます。飲食店であれば、トイレがすごく汚いなどですね。

コアバリューは尖らせつつ、それ以外は無難で最低限クレームにならないようにしましょう。

②UXの最後に力を入れる

UX、すなわち顧客がその製品を体験する一連の流れの中で、最後に力を入れましょう。

例えば次のようなシーンでは、間違っても手抜かりしないように。

  • リアル店舗のお店であれば、お会計を済ませ外に出るところ
  • ECであれば商品が届くところ、または梱包されていた段ボールなどを捨てるところ
  • 物理的なモノであれば、使い切って捨てるところ

「捨てるところ」は見落としがちです。

「単にその製品を使っている時間」という狭い体験ではなく、「その製品を探し始めてから、捨てるところまで」の広い体験で考えましょう。インターネットサービスの場合は、捨てる工程がないので、適宜読み替えてみてください。

購入されてしばらく経った後にフォローメールを送るのもいいですね。届いた商品に手書きのメッセージを添えるのもアリです。

③SNSでシェアしやすくする

上の例とも関連しますが、UXの最後は「誰かに共有する」というケースが往往にしてあります。その製品を消費して、SNSでシェアして反響があれば、最後がいい体験で締めくくられることになります。

「SNS映え」を意識して、UXの最後を尻上がりにしましょう。

スマホアプリであれば、シェアしたくなる画面をはさむようにしましょう。物理的なモノであれば、シャッターを押したくなる見た目を心がけましょう。

④提案資料は良いスライドで締めくくる

提案資料は、大まかな結論から始めて、徐々に細かい内容になっていくのが一般的です。

そうすると最後のスライドが、見積りや注意事項のスライドになることが多いです。これではイマイチな印象を最後に残してしまいますね。

最後の印象を良くするために、最後のスライドは以下のいずれかにしましょう。

  • 提案のメリットのまとめ(おさらい)
  • 将来のさらなる発展

後者がオススメです。将来への期待感を持たせて惹きつける提案にしましょう。

⑤去り際は笑顔で爽やかに

去り際は、笑顔で気持ちよくお別れしましょう。これは仕事でもプライベートでも共通です。

最後に見たその人の印象が、そのままその人の印象になるという話もあります。

不遜な態度を取るのはもちろんNG。急いで慌てふためいてお別れするのも良くないですね。

まとめ

今回は行動経済学より「ピーク・エンドの法則」をご紹介しました。「終わりよければ全て良し」はどうやら正しかったようです。

次の通りまとめます。

ピーク・エンドの法則とは…

  • 過去の体験を、そのピーク(もっとも感情が動いた)ときにどうだったかと、それがどう終わったか(終了間際)の印象だけで判断する傾向
  • 持続時間は関係ない
  • 楽しい時間が長くても、最後が悪ければ悪い体験になる
  • 逆にツラい時間が長くても、最後が良ければ良い体験になる

ピーク・エンドの法則をビジネスに活かす方法

  • 製品のコアバリューをとことん磨いて、それ以外は勇気を持って削る
  • 広い意味でのUXの最後にこだわる
  • SNSシェアはUXの最後になるので、シェアされやすい工夫をする
  • 提案資料の最後のスライドは良いことを書く。将来の展望がオススメ
  • 最後に見た印象がその人の印象になるので、去り際は笑顔で爽やかに振る舞う

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