心理学・行動経済学

同調行動(ハーディング現象)とは?身近な具体例で解説|仕事に役立つ心理学

いじめに加担している人のほとんどは、別にいじめたいなんて思っていなかったはずです。それでも多くの人がいじめに加担してしまうのはなぜでしょうか?

その原因は「同調行動」にあります。心理学の用語です。

同調行動は人間の本能に起因していますが、現代においては、その本能に抗える人が成功を掴んでいるようにも見えます。

逆に言えば、同調行動している限りは法外な成功は訪れません。なんとなくイメージしている通りの平凡な結果に落ち着くでしょう。

この記事では次のことがわかります。

  • 同調行動とは何か?
  • 同調行動を取り続けることの弊害
  • 人生で同調行動に逆らうべきシーンはどこか?

その他大勢に合わせることに疑問を持っている人は、ぜひチェックしてみてください。

同調行動(ハーディング現象)とは?

同調行動(conforming behaviour)とは…

まわりの意見や行動に合わせて、自分も同じような行動をとってしまう傾向のことです。

周り人の行動が間違っているとわかっていても同調してしまう傾向があります。

いじめも同調行動による現象です。本当はいじめが悪いことだとわかっているし、いじめられている人の気持ちを考えると嫌な気持ちになるはずです。それでも周りの人に同調してしまうのです。

心理学では同調効果と呼ばれていますが、行動経済学では「ハーディング現象(herd behaviour)」と呼ばれます

“herd”は「群れ」という意味の英単語です。群れのみんなと同じ行動をとってしまう現象ということです。

身近に起こる同調行動(ハーディング現象)の具体例

同調行動はそこら中にあふれています。具体例を見ていきましょう。

ファッション

中高生は同じ学校に通っている身近な人のファッションを真似たがります。周りのみんなが腰パンすれば、大人が何を言おうと腰パンします。みんながくるぶし丈の靴下を履けば、自分もそうします。

大人になっても同じ行動を取る人が多いです。自分が属するコミュニティや、自分と近い年代の人のファッションに寄せていく人が大多数です。

ファッションのように流行になってみんなが選べば選ぶほど、さらにその選択肢が人気になる現象を「バンドワゴン効果」と呼びます。同調行動の一部であるバンドワゴン効果の方が、一般にはよく知られています。

≫ 【流行の正体はコレ】バンドワゴン効果とは?具体例で解説

バブル(投資)

現代では金融資産が本来持っている(であろう)価値を大幅に超えて、過剰に投資がなされることを「バブル」と呼びます。

仮想通貨や株式にみんなが投資する様子を目の当たりにしたら、「きっと儲かるに違いない!」と、多くの人が同調します。

結果として不相応な投資が集中することになります。いつかその金融資産の本来の価値がわかったときにバブルは崩壊し、同調行動で投資をした後発組は損失を被ってしまいます。

行列のできる飲食店

お昼時の繁華街を歩いているときを想像してみてください。たくさんの飲食店が軒を連ねています。

お腹が空いて何か食べようと思ったとき、たくさん飲食店のうち一つだけに行列ができていたら「この並んでるお店にしようかな?」と誰でも思うでしょう。

他の人が並んでいるということは、その飲食店は何かしらで秀でている可能性が高いはずです。事前に調べていない状況であれば、失敗しない選び方です。

なぜか誰も並んでいないATM

最近はATMを使うことはずいぶん少なくなりましたが、少し前はいつもお金をおろす人が長い列を作っていました。

そんな中に誰も並んでいないATMがあったとして、そこに並ぶでしょうか?

他の人が使おうとしないということは、そのATMは故障しているなど相応の意味があると考えます。結果として、周りの人に同調して誰もそのATMを使おうとしません。

同調行動(ハーディング現象)はなぜ起こるのか?

同調行動の別名であるハーディング現象の語源は「群れ」。同調行動が起きる原因は、「群れ」を想像するとわかりやすいです。

次の例から、同調行動が人間の本能に起因した現象であるとわかります。

嫌われたら生きていけないから

人間も他の動物のように群れで生きています。現代は社会システムの成熟により、他人とのつながりを意識しなくても生きていけますが、太古の昔はそうではありませんでした。

群れの中で生きていれば、狩りに失敗しても、他の人が作った農作物を食べることができます。病気で動けないときは、誰かが助けてくれます。

もしその群れから嫌われて孤立すれば、生存確率は大幅に下がります。これは生物にとって文字通り死活問題です。だから人間は他の人に嫌われないように同じ行動をとるのです。

自分がその群れの一員であると証明するために、タトゥーを入れるなどして体にその証を刻む風習があります。これも同調行動です。

真似すればとりあえず安全だから

群れの人と一緒に森に食材を探しに行ったとしましょう。

  • 美味しそうなキノコが生えていますが、他の人は手に取ろうとしません。となれば、そのキノコはきっと毒があるから手に取らないのでしょう。
     
  • 先頭にいた人が大慌てで逆走し始めたらどうでしょうか?猛獣を見つけたのかもしれません。「前でなんかあったのかな?」とぼんやりしていたら死んでしまうので、自分も同じように逆走します。

とりあえず群れの行動に従っておくのは、生存確率を上げるうえで効果的だったのです。

同調行動(ハーディング現象)の実験例

アッシュの同調実験

社会心理学者のソロモン・アッシュは、男子大学生を被験者として次のような実験を行いました。

実験の内容

  • 学生7人で1グループとなり、テーブルにつくと2枚のカードを渡される
  • 2枚のカードは下の図のように線が引かれている
  • 左のカードの線の長さは、右のカードのA・B・Cのどれと一緒かひとりずつ回答する

実験の条件

  • 実はこの7人のうち6人はサクラで、本当の被験者は1人だけ
  • サクラはわざと間違った答えを選ぶ
 

結果は次の通りです。

実験の結果

  • 被験者のうち75%が、サクラに同調して誤った回答してしまった
  • 被験者のうち25%は、サクラに流されずに正しい回答をした

誤った答えのはずなのに、周りの人が全員正しいと答えていたら、「自分が間違っているのかも」と不安になりますね。

人間は周囲に合わせて、間違っているとわかっていることをしてしまうと証明されたちょっと恐ろしい実験結果でした。

カリフォルニアの電力消費量の研究

カリフォルニア州サンマルコスの約300世帯で、一般家庭の電力消費量の関する研究が行われました。

研究の内容

調査対象のお宅には、次の2つの情報が伝えられた

  • 過去数週間の「自身の家」の電力消費量
  • 「近隣世帯」の平均電力消費量

研究の結果

平均以上に電力を消費していた世帯は、大幅に電力消費を減らした

平均以上に電力を消費していた人は、周りの人に比べて自分がエコじゃない生活をしていると気がつきました。その結果、他の人に合わせて良い行動に同調した好事例です。

同調行動(ハーディング現象)の弊害

他の人の行動には何らかの意図がある場合が多いので、他人の行動を真似るのは理に叶っています。ただし絶対ではありません。

稀に多くの人の行動の方が、実は間違っているケースがあります。少数の正しい行動をとっている人がいて、大多数の間違っている行動をしている人がいれば、追随する人は誤った行動に同調します。

わたし自身にも実体験があります。

空港の発券カウンターに長蛇の列ができていて、「これは30分以上かかりそうだ…」と、うんざりしたときです。誰も使っていない発券用の機械があり、パスポートをかざすだけで発券ができそうでした。

カウンターの列から抜けて、発券用の機械とおぼしきものをいじると、あっさり発券できてしまいました。

わたしの同行者は、わたしと同じように発券機で意味もなく並ぶことを回避できましたが、ほとんどの人は並んだままでした。

同調行動の弊害から得られる教訓

同調行動は、大多数の人が行なっている間違った行動を助長してしまいます。

となれば、次の疑問が湧いてきます。

  • 世間一般の人が歩んでいる生き方は、本当に幸せな生き方なんだろうか?
  • 業界ではこのやり方が長年の常識だったけど、本当に一番効率的な方法なのだろうか?

どこかの時点では、その方法が1番理に叶っていたとしても、時間が経つにつれて環境は変わります。技術が進歩したり、規制が変わったり、人々の文化が変わったりします。

その過程で世間一般の常識は、時代遅れになっているかもしれません。

同調行動(ハーディング現象)を仕事に活かすコツ

特にこだわりがないことであれば、同調行動をすればいいと思います。

宴会の店探しを命じられた若手社員は、無難な店を選んで、怒られずに終わらせたいだけです。先輩に相談して言う通りにしておけば、それが1番楽で失敗しません。

ですが、本当に重要な選択においてはどうでしょうか?自分の人生や、新しいビジネスを企画するような場面では、逆張りすることが成功への近道かもしれません。

「これ!」といった具体的な方法はありませんが、「こういう考え方を持とう」という広い意味のコツをご紹介します。

他人の敷いたレールの人生を疑う

いい大学を出て、有名な会社に就職して、結婚して子供ができて、出世を目指して頑張って、定年退職まで懸命に働く。

「こういう生き方が悪い」と言いたいわけではありませんが、すべての人にこの生き方が当てはまるわけではないでしょう。

数十年前の日本では転職が一般的でなかったので、新卒で有名企業に入って出世を目指すことがキャリアでした。

でも、今は環境がずいぶん変わっています。人とは違う、はみ出した生き方も選択肢として持ってみてはいかがでしょう。

業界の常識を疑う

「業界の常識は世間の非常識」という言葉があります。外から見たら、なんでそんなに変なやり方しているの?と思うことが、世の中にはたくさんあるのです。

過去にできた業界特有のルールがしがらみとなって、後世のビジネスを邪魔しているかも。そこに疑いの目を向けてみましょう。その枷を取り払ったときに、法外な成功を得られるかもしれません。

イノベーション=他業界の常識を持ち込む

現代はビジネスモデルの寿命がどんどん短くなっているので、何もしないと死に向かっていくことになります。

死んでしまう前に、時代にあった新しいビジネスに刷新していく必要があります。新しいビジネスを創ることを「イノベーション」呼びます。

イノベーションは、0から唐突に湧いてくることはありません。多くの場合、他の業界のいいところを取り入れて、MIXしています。

人と違うことをやってみる

太古の昔は、他人と違う行動をすると死につながる可能性がありました。しかしながら社会システムが発達した現代では、他人と違う行動をしても死ぬことはありません

同調行動をしたがる本能に逆らって、他人と違うことをしてみてはどうでしょう?

多くの人が同じ行動をしているということは、そこには競争があるということです。競争は参加者の消耗を引き起こし、頑張りに対する成功の実入りは必ず少なくなります。

他人と争わないブルーオーシャンを目指しましょう。法外な成功を収める人は、いつだって人とは違うことに取り組んだ人ばかりです。

まとめ

今回は心理学より「同調行動」(行動経済学では「ハーディング現象」とも言う)を紹介しました。日本人は特に同調行動をしてしまう傾向がありそうですね。

次のようにまとめます。

同調行動とは…

  • まわりの意見や行動に合わせて、自分も同じような行動をとってしまう傾向のこと
  • 行動経済学では、「ハーディング現象」とも呼ばれる

同調行動の弊害

  • 大多数の人の行動が、時代遅れで間違っている可能性がある
  • 少数の人が正しい行動をしていても、ほとんどの人は大多数の間違っている行動に流されてしまう

同調行動を仕事に活かすコツ

  • こだわりがないことなら、同調行動に身をまかせるのが効率的
  • 「自分の人生」や「新規事業を創る」といった重大なことなら、固定観念を疑い、他人とは違う行動を検討してみる

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