- 新入社員や若手は、よく自分の実力を過信して「俺できる奴感」を出してきます。
- その一方で30歳くらいの中堅社員は、消極的で「自分なんてまだまだ感」を出します。
その人の性格だと思って、そのままにしておくと成長の機会を失ってしまうかもしれませんよ?
「ダニング=クルーガー効果」によれば、未熟な人が過信するのも、中堅が謙遜して消極的になるのも、人間に共通した心理だからです。ダニング=クルーガー効果を知ることで、こんな人たちへの対処方法がわかります。
この記事では次のことがわかります。
- ダニング=クルーガー効果とは何か?
- 天狗になっている若手社員をどう成長へ導くべきか?
- 消極的な中堅社員をどう成長へ導くべきか?
部下がいる人、指導しなければならない後輩を持っている人は、要チェックです!
ダニング=クルーガー効果とは?
ダニング=クルーガー効果(Dunning–Kruger effect)とは…
能力が低い人ほど、自分の能力を高く見積もってしまう傾向のことです。
逆に、能力がある人の方が、自分を過小評価してしまいます。
心理学における認知バイアスの一つです。
- 学びたての素人ほど、天狗になって知識をひけらかしたくなるのは、ダニング=クルーガー効果による典型的な現象です。
- 逆に、はたから見て能力があるのに、「少しならできます…」と消極的な姿勢の人もいます。これもダニング=クルーガー効果による現象です。
ダニング=クルーガー効果が起こる原因
ダニング=クルーガー効果が起こってしまう原因は、能力が低い人ほど「メタ認知力」が低いからです。
メタ認知力とは、自分を内側から見るのではなく、客観的に第三者になったような視点で自分を見る能力のことです。
「メタ認知力」が低い人は、自分の能力を客観的に把握できていないために、自分の能力が高いと勘違いしてしまいます。
下の図は、習熟度によって自信の度合いがどう変化するかを表したものです。

学びたてのころは、急激に自信が増していきます。ちょっとした全能感もあるでしょう。一番楽しいときかもしれません。
しかしながら、学んで知見が増えるほどその分野の奥深さが見えてきて、「あれ?自分は何にもわかってなかったんだ…。」と気がつきます。
それまで持っていた自信は崩れ去り、「恥をかくまい」と自信満々な口調は消え去ってしまいます。
ここで挫折してしまう場合もありますが、そこからさらに学んで成功体験を積んでいくことで、自信を取り戻していきます。そして、誇張ではない「自信に見合った本当の実力」を身につけていきます。
ダニング=クルーガー効果は別に悪いことではない

ダニング=クルーガー効果は、無能な人が自分を過大評価するというイメージが強いですが、そうやって切り捨ててはいけません。
本当に頭が悪くて、自分は有能だと思い続けている人もいますが、多くの人はそんなに図太くありません。
根拠のない自信に溢れているのは、単に「経験不足」だからです。必ずしもその人に本来備わっている潜在能力が低いからではありません。
失敗を経験すれば、自身の実力不足を認識できるようになります。ある意味、「自信満々期」は、成長するための通過点で、その後にうまくいかなくて落ち込むのは通過儀礼と言えます。
ダニング=クルーガー効果により、できもしないのに自信満々なのは、悪いことではなく当たり前のことだと思えばいいだけですね。
ダニング=クルーガー効果から学ぶ成長のコツ

ダニング=クルーガー効果は必ずしも悪いことではないので、特段矯正を施す必要はないでしょう。
ただ、天狗になっている人や、落ち込んでいる人が身近にいるなら、その人には適切な接し方があります。
部下や後輩、同僚、パートナーやお子さんに使ってみてください。もし自分がそうであった場合も同じように考えてみてください。
天狗になっている人への接し方
天狗になっている人は、その分野を覚えたてで、根拠もなく「自分がすごいやつだ」と思っている状態にあります。
傍目からは鼻に付くかもしれませんが、そこはグッと堪えて背中を押してあげましょう。
天狗になっている人にはチャレンジさせる
天狗になっている人は自分の実力を過信して、ポジティブな状態になっています。
その実力を生かせるチャレンジの場を提供しましょう。もちろん上手くいかないでしょうが、そうやって次のステージに送り出してあげましょう。
俗に言う「鼻っ柱を折る」ですが、決して調子に乗っている奴を懲らしめてやろうとするのではありません。あくまで成長のための後押しです。
失敗したらフィードバックする
ちゃんと良いところとダメだったところをフィードバックしてあげないと、どう失敗したのかわからないままです。
失敗した理由をしっかり教えてあげましょう。無知であった自分に気づかせてあげるのです。
ギリシアの哲学者ソクラテスは、自分の知識が足りないことを知っている「無知の知」という概念を説いています。自分が賢いを思っている人より、「無知の知」に至った人の方がわずかに優れていると言っています。
注意点
天狗になっている人に対し、間違っても「お前なんか勘違いしてるけど、まだまだだからな」と、否定する言葉を使ってはいけません。
相手の反感を買うだけで、何らいい方向には転びません。心にしこりを残すだけです。
また自信満々だからといって、その勇ましさに寄りかからないようにしましょう。実力が伴っているわけではないので、きっと途中でつまづきます。
いつでもフォローできるように心構えをしておきましょう。
失敗して消極的になっている人への接し方
鼻っ柱を折られて、意気消沈。自信を失くしてしまった人ですね。
陰気な奴とか、女々しい奴とは思わず、ここまで成長したんだなと暖かい目で接しましょう。
消極的な人には小さな成功体験を用意する
失敗を経験して落ち込んでいる人を立ち直らせるには、「成功体験」が必要です。どんなに小さくてもいいので、その人の実力で達成できるチャレンジを用意してあげましょう。
成功を積み重ねれば、「このレベルなら自分でもできるんだ」と、自分の本来の実力を理解します。自己評価と実力が一致して、少しずつ自信を取り戻していきます。
その結果、自分に足りないものが何かをさらに深く理解できるので、ますます自己成長するようになります。
まとめ
今回は、心理学より「ダニング=クルーガー効果」を紹介しました。
学び立ててで天狗になっていた頃を思い出して、恥ずかしい気持ちになる。そんなエピソードは誰しも持っていると思います。わたしも新入社員の頃はそんな感じでした。
天狗になっている若者を邪険にせずに、良い方向へ導ける大人でありたいですね。
- 能力が低い人ほど、自分の能力を高く見積もってしまう傾向のこと
- 逆に、能力がある人の方が、自分を過小評価してしまう
- メタ認知力が低いことが原因
- つまり、自分の能力を客観的に推し量ることができないということ
- ただし、そうなってしまうのは単に経験不足であることが多い
- 未熟なうちは失敗するためにチャレンジする。そうして自分の無知を知る
- 挫折を経験したあとは、小さな成功体験を繰り返す。自己評価と実力を一致させて成長していく
結局、成長するためには「チャレンジ → 失敗 → 真の実力を手に入れる」のプロセスを踏む必要があるというわけです。
新しい分野にチャレンジをするも良し、転職活動をしてみるのも良いでしょう。
きっと思いも寄らぬ結果やフィードバックを受けて、落ち込むかもしれませんが、それも次のステージに進むための「価値ある失敗」です。どんどんチャレンジしていきたいですね。