心理学・行動経済学

【使わなきゃ損】マジカルナンバー7±2と4±1は人間が覚えていられる限界【認知心理学】

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お客さんに提案する選択肢は「3つ」が良いと言われています。よく上司は、「プレゼンのポイントは3つに絞れ!」と言います。

これは偶然ではありません。実は数を3つに絞るのは心理学の見解としても有効なのです。

選択肢の数に関する心理学の法則はいくつかありますが、「マジカルナンバー」は、記憶にフォーカスしています。「いくつの選択肢までなら覚えていられるか?」ということです。

人がいっぺんに覚えていられる要素の数は、かつては「7±2」と言われていましたが、現在では「4±1」が主流。結果として下限の「3」が有力というわけです。

この記事では、

  • マジカルナンバーの用語&メカニズムの解説
  • 実際に使用されている事例
  • マジカルナンバーを使わない方が良いシーン

を解説しています。

マジカルナンバーはシンプルゆえに汎用性が高い考え方。これ一つ知っているだけで、営業でもUI/UX設計でも使えます。

ポイントや選択肢の数に悩んだときは、マジカルナンバーを借用すればOK!ぜひ持って帰ってください。

マジカルナンバー「7±2」と「4±1」

マジカルナンバー(magical number)とは…

人が瞬間的に記憶できる情報の限界数のこと7±2または4±1が限界と言われている

初登場は、ハーバード大学の心理学者、ジョージ・ミラー教授による1956年の論文「The Magical number seven, plus or minus two」。ここで提唱されたのが「マジカルナンバー7」です。

マジカルナンバー7によれば、7±2のチャンク(情報のカタマリ)が、人間が短期記憶に置いておける情報の数です。つまり人間は同時に5〜9つの情報しか覚えていられないということになります。

それから45年後の2001年、アメリカのミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワン教授は、「マジカルナンバー4」を提唱しました。

マジカルナンバー4では、4±1のチャンク、つまり3〜5つの情報が、人間が瞬時に記憶できる情報の限界とされています。

用語解説①:短期記憶とは?

マジカルナンバーは、「短期記憶」に置いておける情報の上限です。

短期というからには、長期もあります。認知心理学の世界では、人間の記憶は次の3段階に分かれています。

  1. 感覚記憶(一瞬)
  2. 短期記憶(15〜30秒)
  3. 長期記憶(半永久的)

「感覚記憶」とは、「あ、今ハトの鳴き声が聞こえた」というように、五感から入ってその瞬間は覚えている記憶のことです。ほとんどは一瞬で記憶から消去されます。

感覚記憶に入った情報のうち、注意が必要な情報が「短期記憶」として、30秒程度記憶に残りますここに適用されるのがマジカルナンバーです。

例えば「レストランで食後のスイーツを注文するシーン」で考えてみましょう。

あなた
あなた
この店のオススメスイーツは何ですか?

と聞いて、

店員
店員
抹茶パフェチーズケーキモンブランがオススメですよ♪

と言われたとしましょう。

そうしたら、「抹茶パフェ」「チーズケーキ」「モンブラン」の3つの選択肢が短期記憶となって、意思決定するまでは記憶として残ります。

このときオススメが10個もあったら覚えられないですよね。マジカルナンバーに照らし合わせるなら、4個かせいぜい7個の選択肢までしか、同時に検討できないことになります。

気になる人もいると思うので、「長期記憶」にも触れておきましょう。長期記憶は半永久的に覚えている情報のこと。一般に「記憶」という言葉からイメージされるのは長期記憶でしょう。

長期記憶は、覚えておける数に上限はありません。

例えば「フランスの首都はパリ」という記憶は長期記憶です。新しい情報を記憶しても、「フランスの首都はパリ」という記憶が押し出されて、忘れてしまうことはありません。

マジカルナンバーはあくまで短期記憶で覚えておける数の話。長期記憶とは関係ありません

≫【記憶の種類】長期記憶・短期記憶・エピソード記憶・意味記憶とは?

用語解説②:チャンクとは?

マジカルナンバーで瞬時に覚えていられる情報の数は、7±2または4±1のチャンクとされています。この「チャンク」という言葉は、日常生活ではあまり使われないと思います。

チャンクとは、情報のカタマリを意味していています。たくさんある情報をグループ化することを「チャンク化」するとも言います。

例えば「NIKE、adidas、converse、エアフォース1、エアマックス、スーパースター、スタンスミス、オールスター、チャックテイラー」は9つの単語です。

9つの全くバラバラな単語を覚えておくのは難しいでしょう。

そこで、以下のように「ブランド名」「それぞれの代表的なスニーカーのモデル名」でグループ分けしてみましょう。

【NIKE】

  • エアフォース1
  • エアマックス

【adidas】

  • スーパースター
  • スタンスミス

【converse】

  • オールスター
  • チャックテイラー

この例はブランド名でチャンク化しています。チャンク化すると随分と記憶しやすくなりますね。

「NIKE」「adidas」「converse」の3つなら容易に記憶できます。「リーボック」や「ニューバランス」が追加されても覚えていられそうです。

マジカルナンバーが使われている事例

マジカルナンバーが使用されているケースは多岐に渡ります。マーケティングに限らず、あらゆる情報設計で活用されています。その一端をご覧いただきましょう。

事例①:アプリのタブメニューの数

マジカルナンバーが最も定番になっているのがスマホアプリの世界。UI/UXの設計上、メニューの数は4つか5つが一般的です。

あなたが使っているアプリを見てみてください。画面下部にメニューがあるタイプのアプリは、ほとんどが4つか5つのメニューになっているはずです。

これは偶然ではありません。UI/UXの世界でマジカルナンバーが意識された結果です。

事例②:スティーブ・ジョブズのプレゼン

Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズ。プレゼンの名手としても知られている彼のプレゼンは、ポイントが3つに絞られていることが多い。

iPhoneのプレゼンのポイント

  1. ワイド画面タッチ操作のiPod
  2. 革命的携帯電話
  3. 画期的ネット通信機器

コネクティングザドッツのスピーチのテーマ

  1. Connecting the dots
  2. 愛と喪失について
  3. 死について

3つのポイントは、あらゆる場面で応用できます。

パワーポイントでプレゼン資料を作るときも、チラシでメリットを訴求するときも、複数パターンで見積するときも、選ぶ数字は3つがベストです。

直感的にも3つが良いと思いませんか?

4はアリっちゃアリだけどちょっと多い。でも2は間違いなく少ない。3つは魔法の数字です。無条件に使えます。

≫【ジョブズの言葉】Connecting The Dotsを人生にどう活かすか?【全文&翻訳&解説あり】

事例③:7つの〇〇

「7」という数字は、古今東西を問わず、さまざまなシーンで使われています。

7つの〇〇

  • 世界不思議
  • 7つの大陸、7つの海
  • 1週間は7
  • 福神
  • 草粥
  • 7つの大罪
  • 7つの習慣

おそらく収まりが良かったのが7つだったのでしょう。確かに、「世界11大不思議」だとちょっと多い感じがしますね。

これほど「7」が多用されているということは、「7」が人間にとって受け入れやすいことを歴史が証明しているわけです。

3つや4つでは収まりきらない場合は、「7」を上限に考えるのが良いでしょう。例えば、「今年こそ買いたいオススメの時短家電 7選」みたいな具合です。

事例④:ニュースサイトのチャンク例

ニュースサイトには、日々大量の見出しが流れてきます。ニュースサイトには、チャンク化されたマジカルナンバーが使用されています。

こちらは「Yahoo! JAPAN」のトップ画面。

各ジャンルごとにニュースの見出しがチャンクされています。ジャンルの数は「8」で、マジカルナンバーの範囲内。そして表示されているニュースの見出し数も「8」です。

ニュースサイトは、なるべく多くの情報を画面に表示したいはず。ヤフーが「これを超えて表示させたら、逆にユーザビリティが下がる」と考えている上限が「8」なのです。

「7」を使うか「4」を使うか

マジカルナンバーには、「7」と「4」があります。基本的には、後から出てきた「4」の方を使うのが妥当です。その理由を解説します。

なぜマジカルナンバーは7→4に減ったのか?

マジカルナンバーは、最初の発表から45年で「7」から「4」に減りました。一見すると、この間で人間の「記憶力」は低下しているように見えます。

しかし実際には、落ちたのは「記憶力」ではなく、「集中力」であると考えられます。

背景には、人間が浴びる情報量が爆発的に増えたことが挙げられるでしょう。現代日本人が1日に触れる情報量は、「平安時代の一生分」で、「江戸時代の1年分」と言われています。

2015年発表のマイクロソフト調査によると、2000年に12秒だった人間の注意力の平均持続時間は、8秒まで縮まりました。これは金魚の9秒よりも短い数字です。

大量の情報を浴びることに慣れてしまった現代人は、総じて集中力が持ちません。いつも心ここに在らずでソワソワ。目の前にある選択肢がロクに頭に入ってこないのではないでしょうか。

これからは「4±1」を使おう

2001年の時点で、マジカルナンバーは4±1に減っています。しかしその後にさらにスマートフォンやSNSが出てきたことで、人間の集中力はさらに減っています。

ケースバイケースではありますが、「マジカルナンバー7」を使うか「マジカルナンバー4」を使うかで悩んだ際は、後者を使うのが妥当でしょう。

オススメは「3つ」に絞る

マジカルナンバー4±1は、3〜5の幅があります。次のように捉えられるでしょう。

  • 記憶力が良い人
    5つ覚えられる
  • 普通の人
    4つ覚えられる
  • 記憶力があまり良くない人
    3つ覚えられる

万人に向けて考えるなら、下限の「3」を使うのがベターということになりますね。

手慣れた上司が、部下が作ったプレゼン資料をレビューするとき、よく「ポイントは3つに絞れ!」と言います。偶然にもこの上司の指摘は、的を射ていたというわけです。

【逆効果】マジカルナンバーに絞る必要がないシーン

マジカルナンバーはその名に恥じない魔法の数字ですが、実は使わない方が良いシーンもあります。

それはユーザーが自らの意志で探し物をするシーンです。例で説明した方がわかりやすでしょう。

例えば、「プロ野球の選手名鑑」を見ているとします。過去のプロ野球選手が、有名無名に関係なく載っています。その数たるや、ちょっとやそっとではありません。

ここで「野茂英雄」を探したいときに、選び方が「ア行の選手」「カ行の選手」・・・「ナ行の選手」からとなっていたらどうでしょう?

野茂は「の」から始まるので、「ナ行の選手」からずーっと下まで見ていかなければなりません。

そうではなく、はじめから「【の】から始まる選手」を見れた方がずっと探しやすいのです。

アイウエオ順やABC順でコンテンツを並べるなら、マジカルナンバーは必要ありません。細かく分かれていた方が、ユーザーが探しやすいからです。

ユーザーが積極的に探したい情報がある場合、大雑把にチャンクされているとかえって逆効果。ざっくりしすぎたFAQは、必要なコンテンツになかなか辿り着けません。要注意です。

選択肢の数に着目した類似の法則

マジカルナンバーは、「記憶」にフォーカスして最適な数の選択肢に絞るアイデアです。心理学には、他にも選択肢の数に関するアイデアがあります。

類似①:ジャムの法則

「ジャムの法則」の実験では、24種類の試食を用意したときよりも、6種類用意したときの方が、たくさんジャムが売れました。「選択肢は絞った方が良い」の根拠としてよく引用されます。

マジカルナンバーと似ているようにも感じますが、ジャムの法則は、選択肢の多さによる「心理的な負荷」にフォーカスしています。

選択肢が多すぎると、吟味しきれずに選びきれなくなってしまいます。間違った選択をして損したくない気持ちが出てしまい、選択できなくなってしまう現象が起きるのです。

≫ ジャムの法則(決定回避の法則)とは?マーケティングの活用事例

類似②:ゴルディロックス効果(松竹梅の法則)

「ゴルディロックス効果」は、日本人には「松竹梅の法則」で知られています。ゴルディロックス効果もマジカルナンバーと同じく、3つの選択肢を推奨しています。

3つの選択肢を「松竹梅」のようにグレード分けすると、「2:5:3」の割合で選ばれるようになります。つまり「選ばせたい選択肢は真ん中にすべし」ということです。

Netflixのプランの選択肢や、iPhoneの容量による選択肢も3択になっています。こうなると、なんとなく真ん中を選びたくなってしまうのが人情です。

≫ 【神は3択に宿る】松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)とは?強引に3段階を作る方法も解説

社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!

あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。

それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。

しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!

外せない❶ Kindle Unlimited

Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。

新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。

Kindle Unlimited 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがKindle Unlimitedで読むべき15冊

外せない❷ Audible

こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。

Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。

冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。

Audible 公式サイト

≫【厳選】ビジネスマンがAudibleで聴くべき17冊

ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。

どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。

そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。

ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!

とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!

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