- 見積を何パターン用意するか?
- 商品のバリエーションは何種類にするか?
- 何種類の料金プランを設けるか?
そんなの「3択」に決まっています。悪いことは言わないから3択にしておきない。昔からそう決まっているんです。
日本の古典的なマーケティング手法に「松竹梅の法則」があります。心理学では「ゴルディロックス効果」とも呼ばれています。
使い方は簡単。3択にして売りたい選択肢を真ん中にするだけ。営業やマーケティングで今日から使えるテクニックです。しかもこの先の生涯に渡って使えます。
記事の後半では、品質で3つのグレードを用意するのが難しいケースでも、簡単に3択が作れるアイデアを紹介しています。ぜひ最後までチェックしてみてください。
松竹梅の法則とゴルディロックス効果とは?
松竹梅の法則とは…
3段階の選択肢があるときに、真ん中の選択肢が選ばれやすい傾向のこと。
心理学では、「ゴルディロックス効果」あるいは「ゴルディロックスの原理」と呼ばれています。
売りたい選択肢を真ん中に持ってくることで、売上アップが期待できます。マーケティング界隈では鉄板の法則です。
うなぎ屋さんもお寿司屋さんも、「松」「竹」「梅」の3つのグレードを用意しています。多くの人は、自然と真ん中の「竹」に吸い寄せられてしまいます。
できる営業マンは、巧みにこの現象を利用しています。お客さんから見積りを頼まれると、勝手に3パターン作って相手を誘導します。
「松2:竹5:梅3」の割合に収束する
松竹梅の法則を利用して3段階を用意するとき、真ん中の「竹」が本命です。ですが、「松」と「梅」が売れないわけではありません。用意すればいくらかは売れます。
売れる割合は、
- 松(上):2割
- 竹(中):5割
- 梅(下):3割
に収束すると言われています。
「極端回避性」と「プロスペクト理論」で説明できる
真ん中の選択肢が選ばれやすい現象は、行動経済学の世界では、「極端回避性」と呼ばれています。その名の通り、人間には端っこにある極端な選択肢を避けようとする性質があります。
極端な選択肢を避ける理由は、これまた行動経済学の「プロスペクト理論」で説明できます。かなり端折って言えば、「人間は損するのが大嫌い!」を懇切丁寧に説明した理論です。
例えば目の前に3つの旅行プランがあるとしましょう。
- 激安!ハワイ3日間の旅プラン:5万円
- ゆったりハワイ5日間の旅プラン:15万円
- 豪華に満喫ハワイ7日間の旅プラン:50万円
安いプランを選ぶと、ショボい内容で損する可能性を予感させます。
かといって高いプランを選んで、金額ほどの満足感が得られなければ、「もっと安いプランにしておけば良かった…」と後悔しそう。こちらも損する可能性があります。
「じゃあ無難に真ん中にしておくか…」となってしまうワケですね。
この「無難に真ん中」と考える傾向が、まさに極端回避性の現れです。松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)には、このような心理が働いているのです。
≫【サルでもわかる】プロスペクト理論とは?具体例と図でわかりやすく超丁寧に解説
それぞれの言葉の由来
「松竹梅の法則」にしても「ゴルディロックス効果」にしても、ユニークな名前がついています。その由来についても触れておきましょう。
松竹梅は元々ランクの意味はなかった
「松竹梅」ルーツは、中国宋時代。画題として松・竹・梅の3種類が描かれるようになり、これが日本にも伝わりました。
後に日本では「松竹梅」の3つが縁起物と認識されるようになりますが、その時点でランク付けの意味はありませんでした。ランクとしての「松竹梅」は、江戸時代が起源のようです。
お寿司屋さんで「特上」「上」「並」とランク分けされていると、安い「並」は遠慮して頼みづらい。これに配慮したお店側が、「特上→松」「上→竹」「並→梅」と置き換えたのが始まりのようです。
当時の「松竹梅」にはランクがなかったので、お客さんは気にせず注文できるという配慮です。「猿・鳥・キジ」でも何でも良かったんでしょうが、縁起物の「松竹梅」が選ばれたようです。
もともとランクを意識させないための「松竹梅」だったワケですが、あまりにも定番化してしまったせいで、ランク分けの序列として使われるようになりました。
ゴルディロックスと3匹の熊
「ゴルディロックス効果」は、「Goldilocks and the Three Bears(ゴルディロックスと3匹の熊)」というイギリスの童話が由来になっています。
「ゴルディロックス」の響きは、ガッチリ派主人公みたいなイメージを受けますが、少女の名前です。Goldiはゴールデン、”locks”は巻き毛の意味なので、日本語で言えば「金髪カーリーちゃん」みたいな感じ。
ちなみに風変わりな物語で、少女はどちらかと言うと悪役です。少女が留守にしていた3匹のクマの親子の家に侵入し、家を荒らします。
おかゆを勝手に食べたり、ベッドで寝たりするのですが、熱いおかゆと冷たいおかゆを避け、ちょうど良い温度のおかゆを食べます。硬いベッドと柔らかいベッドは避け、ちょうど良い硬さのベッドに寝ます。(3択の真ん中を選ぶ意図と重なっています)
そして少女がベッドで寝ている間に、クマの親子が帰ってきます。気づいた少女が一目散に逃走して話は終わります。正直何を伝えたいのか、よくわからない話です。
松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)の事例 3選
3段階の値段設定になっている例は、そこらじゅうに転がっています。ここでは3つの事例を紹介します。
事例①:MacBookのラインナップ
Apple社のMacBookProの画面サイズは、次の通り3段階になっています。
他にもiPhoneの容量選択も、3段階が採用されています。
事例②:Netflixの料金プラン
Netflixの料金プランは、次の通り3段階になっています。
インターネットサービスの料金プランは、3段階になっているのがほとんどです。
事例③:映画館のポップコーンのサイズ
映画館のポップコーンは、「S・M・L」の3サイズですね。飲み物も同じです。なんとかくMを選びたくなるのが人情というものです。
食べ物のサイズは「松竹梅の法則」にならって、3サイズになっているケースは多い。マクドナルドのポテトのサイズは、「S・M・L」、吉野家の牛丼は「並盛り・大盛り・特盛り」の3段階です。
選択肢「2」や「4」はダメなのか?
「3段階も用意するのは大変!2段階じゃダメなの?」と思った人もいるかもしれません。反対に「もっと選択肢を増やしたら?例えば4択とか」と思った人もいるでしょう。
もちろんケースバイケースでしょうが、「2択」や「4択以上」はオススメできません。
「2」だと安い方に流れる
まず「2択」の場合は、安い方の選択肢が選ばれやすくなってしまいます。
例えば次の選択肢から選べるとしたら、
- スタンダードプラン:月額980円
- アドバンスドプラン:月額1,280円
前者を選ぶ人が多くなってしまいます。売上を最大化する点では、「3択」に劣ります。
「4」以上は選べなくなる可能性あり
人間は選択肢が多すぎると、逆に選びきれず、その場を立ち去ってしまう可能性が高くなります。「4つ」や「5つ」ならそう問題にはなりませんが、増やしすぎるのは問題です。
例えば、使っていた炊飯器が壊れてしまい、家電量販店へ新しい炊飯器を買いに行くシーンを想像してみてください。
3択であれば、「よし、この中から決めるか!」となりますが、10択もあったら、「一回家に帰ってちゃんと調べよっかな…」と保留にしたくなります。
ただし飲食店のように、店に入った時点で購入が確定している場合はその限りではありません。スタバのコーヒーサイズは4択ですが、選択肢が多いからと店を出る人はいないでしょう。お客さんを多少悩ませるだけで済みます。
品質で3段階を作れない場合はどうするか?
あなたがお寿司屋さんなら、ネタを玉子からウニに変えれば、簡単に3段階を作れます。ご飯の量を増やすだけでも3択が作れてしまいます。
しかし何でもかんでも食べ物のように3段階を作れるとは限りません。松竹梅の威力は分かっていても、実運用に当てはめられずに困っている人は多いはず。
「ウチは1つの製品しか作ってないし、零細企業だから何パターンも作れないよ」というケースもあるでしょう。
ライターやデザイナーは、「梅だとこのレベルの文章になります」や「これが松のデザインです!」とは言いづらい(笑)。
そんな3段階を作るのが難しいケースでも対応できる3つのアイデアを紹介します。
パターン①:数量で分ける
大盛りの概念がない単一の商品だからといって、量を増やせないわけではありません。
もしあなたが1機種しかないテレビやエアコンを扱っていたとしても、数量を増やすことはできます。
- 3個セットプラン:松
- 2個セットプラン:竹
- 1個プラン:梅
とすれば良いだけです。ちゃんとお客さんにメリットが出るように、数量が多いセットほど1個当たりの単価を下げます。
スーパーのお惣菜で、2つセットなら割引に、3つセットならさらに割引になるケースがありますね。発想はこれと同じです。
テレビやエアコンでも、複数台欲しいという需要はあります。ホールケーキが安くもう1個買えるなら、喜んで買いたい人も出てくるでしょう。
パターン②:契約期間で分ける
一度売って終わりではない、使用期間の幅がある商品であれば、契約期間の長さでバリエーションを作れます。
- 3年契約:松
- 2年契約:竹
- 1年契約:梅
といった具合です。もちろん契約期間が長いほど、単位期間あたりの料金は安くします。
なお一度売って終わりの商品でも、保証期間で3段階を作ることも可能です。柔軟な発想で考えましょう。
パターン③:納期で分ける
数量でも契約期間でも段階を刻めないシーンがあります。フリーランスや士業のような、業務内容が定型化している職種が当てはまります。
そういうときは、納期で段階をつけられます。
- 爆速納期プラン:松
- ちょい早納期プラン:竹
- 通常納期プラン:梅
クライアントワークをしている人は、長めの納期をお客さんに伝えるのが一般的です。実際にはもっと早く納品できるケースは多いはず。プレミアム料金を貰えるなら、短納期もやぶさかではありません。
暗号資産のイーサリアム(ETH)のガス代も、処理時間の速さで手数料に段階をつけています。
選択肢の数にまつわる類似の法則
松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)は、3段階の選択肢を用意すると、真ん中が選ばれやすくなる現象です。
他にも選択肢の数にまつわる法則があります。どれも使えるものばかりですが、「やっぱり3択がいいね」という結論に落ち着きます。
類似の法則①:おとり効果
「おとり効果」とは、2つの選択肢でどちらを選ぶか迷っている消費者に、第3の選択肢(おとり)を提示することで、元の2択のどちらかに誘導できる現象です。
「アジ丼:650円」と「マグロ丼:980円」で悩んでいるお客さんに、「うに丼:1,650円」を見せると、決心がついてマグロ丼を選びやすくなります。
うに丼は「おとり」の選択肢です。ほとんどの人に選ばれないことをわかっていながら、真ん中の選択肢を選ばせるために、あえて用意します。
おとり効果には最適と言われる価格設定があり、「松5:竹3:梅2」が良いとされています。例えば「松1万円:竹6千円:梅4千円」といった具合です。
類似の法則②:ジャムの法則
「ジャムの法則」の実験では、24種類の試食を用意したときよりも、6種類用意したときの方が、たくさんジャムが売れました。「選択肢は絞った方が良い」の根拠としてよく引用されます。
本記事でも「4つ以上の選択肢は避けた方が良い」と触れましたが、その根拠はジャムの法則にあります。(実際には4つくらいは問題になりませんが)
選択肢が多すぎると、吟味しきれずに選びきれなくなってしまいます。間違った選択をして損したくない気持ちが出てしまい、選択できなくなってしまう現象が起きるのです。
≫ ジャムの法則(決定回避の法則)とは?マーケティングの活用事例
類似の法則③:マジカルナンバー
「マジカルナンバー」は、パッと選択肢を見たときに、いくつまでなら記憶できるかを示しています。パッと記憶できる数は「7±2」が上限。つまり5〜9個ということになります。
ここでいう記憶は、30秒ほどの短い間だけ頭に残る「短期記憶」を指しています。短期記憶に入らない情報は脳からは筒抜け。視界(あるいは)耳には入っていても、脳は認知していません。
5〜9個を超える情報は認知できないので、把握もできないし、選択肢として吟味することもできません。
ちなみに現代人のマジカルナンバーは、「4±1」に減っているという説が濃厚です。下限は3なので、「やっぱり3択だね」という結論になります。
≫ マジカルナンバー7±2と4±1は人間が覚えていられる限界
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!