「人は見た目が1番!」の根拠として、メラビアンの法則はとっても有名ですね。就活とか営業の本で大人気です。
それによれば、なんと実際にしゃべった話の内容は7%の価値しかない!?そんなことあり得るのでしょうか?わたしは長年営業やっていましたが、見た目だけ成果をあげている人なんて見たことありません。
実はメラビアンの法則は、誤解された意味で広まってしまっています。正しい活用方法を知っておかなければとんだ勘違いさんになってしまいます。
この記事では次のことがわかります。
- メラビアンの法則とは何か?
- みんなが誤解しているメラビアンの法則の真実
- メラビアンの法則を仕事や私生活で活用する方法
人とよく接する仕事をしている人(大抵の人が当てはまりますが)はぜひ押さえておきましょう!
メラビアンの法則とは?

メラビアンの法則(merabian rule)とは…
対人コミュニケーションにおける、「視覚」「聴覚」「言語」のそれぞれの重要性を%で表した法則です。
英語で書くと全て「V」から始まるので、これらは総称して「3V」と呼ばれています。
メラビアンの法則のパーセンテージをとって、「7-38-55のルール」とも呼ばれます。55%を占める視覚情報は、コミュニケーションにおいて特に重要です。
メラビアンの法則の誤解
多くの人が「見た目」と「声」が重要で、話している内容は7%の価値しかないと思っています。就活本ではそこだけピックアップして、「見た目が重要!話のトーンが重要!」と書いてあります。
見た目や話し方もちろん重要ですが、話す内容の価値が7%なんてあり得るのでしょうか?プレゼンの中身がトンチンカンでも、見た目と話し方は抜群に上手い人が契約を取れるでしょうか?
もちろんNOですね。人間はそこまで馬鹿ではありません。メラビアンの法則の真意は、「話し手の『言葉』と『態度』が矛盾していたときに、何を重視するか」です。
次のような状況のときに、言葉を重視するか、表情や声を重視するかです。
- 「ありがとう」と言われたけど、顔はあからさまに嫌な顔をしている。
- 「わかった」と言われたけど、生返事でこちらを振り向きもしない。
こういう状況なら、言葉の中身が7%の信憑性しかないのは納得です。
メラビアンの法則の実験はこうだった
「メラビアンの法則」は、1971年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学名誉教授であったアルバート・メラビアン氏によって発表されました。
その実験内容は、次の通りです。
実験の内容
ステップ①
「好意」「嫌悪」「中立」をイメージする単語をそれぞれ3つずつ、計9つ設定する(例えば「好意」をイメージする言葉は、恋人を呼ぶ「honey」のような言葉)
ステップ②
設定した9つの言葉を、「好意」「嫌悪」「中立」の3つの声のトーンで、それぞれ録音する
ステップ③
「好意」「嫌悪」「中立」を表す表情の顔写真を1枚ずつ用意する
ステップ④
言葉・声のイメージ・表情が、矛盾した組み合わせを被験者に見せて、「好意」「嫌悪」「中立」のどの印象を受けたか質問する
結果は次の通りです。
実験の結果
言語情報と態度が矛盾する状況で重視する情報は、次の通りの割合になった
- 表情(視覚情報)が55%
- 声のトーン(聴覚情報)が38%
- 単語(言語情報)が7%
この実験の内容まで知っている人は稀でしょう。そのため、「言語情報と態度が矛盾する」という文脈が抜け落ちて伝わってしまっているのです。
参考)メラビアンの法則の4つの壁
メラビアンの法則から「メラビアンの法則の4つの壁」という考え方があります。
話す内容が最終的に相手に受け入れられるためには、4つの関門を順番にクリアする必要があるという考え方です。
メラビアンの法則の4つの壁
- 外見(表情、服装、髪型など)
- 態度(姿勢、ボディランゲージなど)
- 話し方(声の大きさ、抑揚、言葉の選び方など)
- 話す内容
ただし、メラビアンの実験内容からは、このような順番があるという結果は出ていません。科学的な根拠があるわけでもなさそうなので、この順番に意識を取られる必要はないでしょう。
次にご紹介する活用方法を意識するだけで大丈夫です。
メラビアンの法則のたった一つの活用方法

メラビアンの法則から得られる教訓は、「3Vを統一させることが重要だ」ということです。すなわち、話の内容と、表情・声のトーンをちゃんと合わせることです。
そして勘違いしてはならないのが、「主役はあくまで話す内容」ということです。話す内容がお粗末では、何の結果も出ません。
メラビアンの法則を勘違いして、見た目と声に意識を全振りしたら大失敗してしまいます。大事な話す内容がまずあって、それに合わせて表情や声のトーンを調整するのが適切な使い方です。
ということですね。
かつて冬季オリンピックで態度が悪いと指摘されて会見を開いた選手がいましたね。反省を口にしていても、その態度は真逆で、これを反省と捉えた人はいなかったでしょう。
おそらく、本人も反省する必要なんてないと思っていたのでしょう。(このあたりは、人によって価値観が違うので、是非については言及しませんが)
まとめると、
- プレゼンなら … 堂々と話す。楽しそうに話す。姿勢良く話す
- 相談なら … 悩んでいる口調で話す。困った顔をする
- 謝罪なら … 相応の服装をする。声のトーンを落とす
という風に、話す内容と態度を統一しましょう。これもコミュニケーション能力の一つです。
まとめ
今回は、心理学より「メラビアンの法則」をご紹介しました。人は見た目が9割ではありません。中身の方が大事ですよ。
次の通りまとめます。
- 対人コミュニケーションにおける、「視覚」「聴覚」「言語」のそれぞれの重要性を%で表した法則
- ただし、話し手の「言葉」と「態度」が矛盾していたときにのみ有効な法則
- 視覚情報(Visual: 55%):見た目・表情・しぐさ・視線など
- 聴覚情報(Vocal:38%):声のトーン・速さ・大きさ・口調など
- 言語情報(Verbal:7%):話の内容など
- まず、話す内容を第一に考える
- そして、話の内容と、表情・声のトーンをちゃんと合わせる
- プレゼンなら … 堂々と話す。楽しそうに話す。姿勢良く話す。
- 相談なら … 悩んでいる口調で話す。困った顔をする。
- 謝罪なら … 相応の服装をする。声のトーンを落とす。