心理学・行動経済学

【試食販売が売れるワケ】返報性の原理を解説。2倍売れるビジネス活用の具体例も

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「なぜ試食したら、買わないと悪い気がするのでしょうか?」
「なぜ親切な営業さんから、商品を買ってあげようと思うのでしょうか?」

その理由は、人間には「受けた恩にお返しをしたい」という「返報性の原理」があるからです。なお「恩」だけでなく、「敵意」にもお返しを喰らわせたいと思います。

人気テレビドラマの「半沢直樹」でもありましたよね。「やられたらやり返す、倍返しだ!」「施されたら施し返す、恩返しです!」まさにコレ。

この記事でわかること

  • 返報性の原理とは何か?
  • なぜ起こるかのか?そのメカニズムとは?
  • 営業やマーケティングで使える活用例
  • 意識しなきゃ失敗する!返報性の原理の注意点

心理学者による実験では、返報性の原理により売り上げが2倍になるという結果も出ています。売れる会社や売れる営業は、したたかに返報性を活用しています。

知らないと、思わぬところで差をつけられてしまうかも。確実にリターンにつがながるので、営業マンやマーケッターは絶対に知っておきたい内容です。

返報性の原理(返報性の法則)とは?

「返報性の原理(reciprocation principle)」とは、相手から受けた好意や施しに対し「お返し」をしたいと感じる傾向のことです。

いつもお土産をくれる知人に対し、自分が旅行に行ったときにお土産を買わないでいられるでしょうか?

バレンタインデーにチョコをもらった男性は、ホワイトデーにお返しをしないでいられるでしょうか?

誰かに一方的に親切にしてもらったとき、借りは返さないと気持ち悪く感じますよね。この気持ちの正体が返報性です。

営業やマーケティングといったビジネスシーンでは、この「返報性の原理」が頻繁に活用されています。試食販売は「返報性の原理」を活用した典型例です。

企業側が親切にするのは、もちろん下心あってのこと。そうとわかっていても消費者は「こんなに良くしてもらったら、何か買ってあげなくちゃ」と買わないことに罪悪感が芽生えます。

日本語の「すみません」は、感謝と謝罪の2つの意味で使われます。

漢字で書くと「済みません」ですね。「いったんは言葉で伝えたけど、まだボクの気持ちは済んでないよ。この借りはちゃんと返すからね!」という意味が込められています。

同様の表現は、ポルトガル語など複数の言語で見られます。「すみません」の一語を見るだけで、返報性の原理がいかに人間にとって自然であるかが分かります。

大きい恩ほど長期にわたって効果が持続

直感的にもそうですが、やはり大きい恩義(もしくは恨み)の方が、長期にわたって返報性の原理を期待できます。

足りない小銭10円を貰ったくらいの恩なら、その日中が関の山。しかし命に関わるような大恩なら、一生涯、場合によっては次の世代まで返報性が持ち越されます。

記憶のメカニズムによれば、感情に強く訴える出来事ほど「長期記憶」に刻まれやすくなります。「大きい恩→大きな感動や感謝→記憶に深く刻み込まれる」という構図です。

ここで日本とトルコの間で起こった、「エルトゥールル号遭難事件」のエピソードを紹介しましょう。

1890年、オスマン帝国(現トルコの前身)の特使600名超を乗せたエルトゥールル号が、台風によって和歌山県串本町の沖合で沈没しました。

串本町の住民は総出で救出活動を行い、荒れた海に飛び込むなどして、69名を命を救いました。亡くなった方も丁重に扱われたそうです。

オスマン帝国は、日本人の対応に大いに感銘を受けたと言われています。そしてその恩を忘れませんでした。

ーーー

時は流れて95年後の1985年、イラン・イラク戦争の最中。イラクのサダム・フセイン大統領は、48時間後にイラン上空を飛ぶ飛行機への無差別攻撃を声明で発表しました。

イラン在住の日本人は、慌てて空港へ行き出国を試みるも、どの便も満席。日本国は安全が確保できないとの理由から、救援機を飛ばせません。打つ手なしの八方塞がりです。

絶望の状況を救ってくれたのがトルコでした。トルコは救援機で日本人215人全員を乗せ、タイムリミットの1時間前にイランを脱出しました。

当時の日本人は、なぜトルコがそのような行動に出たのか分かりませんでした。

しかしトルコ側では、およそ全国民が納得する行動でした。エルトゥールル号遭難事件が歴史の教科書に載っていて、国民感情として日本に対する恩義を感じていたからです。

「返報性の原理」は、必ずしも1人の人間の中で生じる「ギブ&テイク」だけを指す現象ではありません。

家族や友人が受けた恩も、さらにはトルコの恩返しのように、アイデンティティを同じくする赤の他人が受けた恩であっても、それに報いたいと感じるのです。

返報性は4種類に分類される

さてそんな返報性の原理は、4つの型に分類されます。

4種類の返報性の原理

  1. 「好意」の返報性
  2. 「敵意」の返報性
  3. 「譲歩」の返報性
  4. 「自己開示」の返報性

それぞれの中身を見ていきましょう。

①好意の返報性

好意の返報性とは、「相手から受けた好意や親切にお返ししたくなる」心理です。

好きと言ってくれた相手が好きになる。おごってもらったら、奢り返したくなる。というもっともわかりやすい返報性です。

②敵意の返報性

敵意の返報性とは、「敵対心を向けてきた相手に対し、仕返しをしたくなる」心理です。

悪口を言われたらこちらも悪口を言いたくなる。悪いことをした人を誰かに告げ口して罰してもらおうとする。といった具合です。

③譲歩の返報性

譲歩の返報性とは、「先に譲ってくれた相手に対し、今度は自分も何かをしてあげよう」と思う心理です。

価格交渉で折り合いがつかないときに、売り手側が折れて「今回はマケておくよ」と譲ってくれたら、「次はもう少し高い値段で買ってあげよう」と思う気持ちです。

この心理を応用(もとい悪用)した「ドア・イン・ザ・フェイス」という交渉術は、わざと高い要求をふっかけて断らせ、小さな要求を呑ませるというものです。

④自己開示の返報性

自己開示の返報性とは、「相手が包み隠さず話してくれたから、自分も情報をオープンしよう」と思う心理です。

砕けた雰囲気でぶっちゃけて話してくる相手には、ついつい本音を漏らしてしまうもの。相手の本音を聞くには、かしこまって話すよりも自分をさらけ出したほうが近道になります。

なぜ返報性の原理が起こるのか?

なぜ人から施しを受けたら、「お返し」をしなければ気が済まないのでしょうか?逆に人から嫌なことをされたら、「仕返し」をしなければ気が済まないのでしょうか?

返報性の原理は、人類の進化で決定的な役割を果たしています。

この話は遥か昔、我々の祖先が狩猟採集民だった時代まで遡ります。

当時は今のように、誰でも最低限の暮らしができる社会インフラなんてありません。

1人で生きていくなら、家を建てるのも、狩りをするのも、料理をするのも、全て独力。もし怪我や病気をしたら、…そこで人生終了かもしれません。

しかし集団で生きていれば、助け合って暮らしていけます。

狩りが得意な人は狩りに、料理が得意な人は料理をします。体調が悪ければお互い様。他のメンバーが補ってくれます。

もし返報性が発動しなければ、他人への施しがムダになります。病気の仲間を助けたのに、自分が病気のときに助けてもらえなかったら…。もう他人を助けようとは思わないですよね。

自分の施しが返ってくると確信できたから、人類は集団で暮らすことができたのです。集団で生きることは、人類の生存戦略であり、自然淘汰によって返報性の遺伝子が現代に受け継がれているわけです。

逆にコミュニティの互助関係を破壊する人は、追い出さなければなりません。

独り占めする人や、他人のモノを奪うような人です。だから悪意を持った人に対しては、「仕返し」をして、懲らしめなければならないのです。

返報性の原理(返報性の法則)の実験事例

事例①「好意の返報性」の実験

心理学者デニス・リーガン氏が1971年の論文で発表した実験です。

この実験は、「被験者の学生1人 + 仕掛け人1名 = 2人1組」で行われた。

仕掛け人は被験者に対し、25セントの「福引券」を何枚か買ってくれとお願いする。そこで何枚買ってくれるかを観測する。

  • グループA:
    仕掛け人がコーラを買いに行き、被験者の分まで買って帰ってきた。その後に福引券を買うようにお願いした
  • グループB:
    仕掛け人がコーラを買いに行き、自分の分だけ買って帰ってきた。その後に福引券を買うようにお願いした

その結果、グループAの被験者が購入した枚数は、グループBの約2倍になった。

この実験には、重要な2つのポイントがあります。

ポイント①:誰でも使える

施しを受ける相手が好きか嫌いかは、返報性の原理には影響しないということ。

実はこの実験の被験者は、仕掛け人に対し「高感度が高い人」「高感度が低い人」がそれぞれ集められています。嫌いな相手でも、同じように2倍の枚数の福引券を購入しました。

つまり無名の零細企業でも、胡散臭い営業マンでも、恩さえ売っておけばリターンを得られます。要するに誰でも使えるということです。

ポイント②:些細な恩でも機能する

与えた恩の大きさよりも、リターンの方が大きくなる場合があるということ。

当時のコーラは1本10セント程度。それに対し、コーラを貰ったグループAの被験者は、5倍の50セントを支払っています。与えた恩に対し、リターンは5倍に達しています。

期待するリターンに対し、与える恩が些細なモノであっても、返報性は期待できるということです。お土産のお菓子が、後になって何倍にもなって返ってくるかもしれません。

事例②「譲歩の返報性」の実験

返報性の原理を世に広めた、ロバート・B・チャルディーニ氏自身が行った実験です。

被験者に「1日だけのボランティア」をお願いし、受けてくれるかを尋ねる。

  • グループA:
    はじめに「2年間」のボランティアを依頼し、その後「1日だけ」のボランティアへ要求を引き下げた
  • グループB:
    最初から「1日だけ」のボランティアを依頼した

その結果、1日だけのボランティアを引き受けたグループAの被験者は、グループBの約3倍になった。

この実験にも2つのポイントがあります。

ポイント①:1発目に高めの要求を出す

交渉で思い通りの条件を引き出したいなら、先に断られるであろう高い要求を突きつけておくことです。

一度お願いを断ってしまったので、「1日くらいなら…」と譲歩して受け入れたわけですね。最初から1日のボランティアが狙いなら、見事に希望通りということになります。

ポイント②:断られたら二の矢を打て

日常では、様々なシーンで「お断り」を入れられるでしょう。

普通の人なら落ち込むシーンです。しかし相手は断ったことで、バツが悪い気持ちになっています。次の要求が通る可能性は、格段に上がっています。

断られて、「はい、そうですか」とスゴスゴ帰るのはもったいない。次の要求をぶつけましょう。今がチャンスです。

例えば営業マンが断られたなら、

  • 次回また別の提案をお持ちします。その際は、上席の方にもご同席いただけないでしょうか?
  • 他にこの商品にご興味を持ちそうなお知り合いがいましたら、ご紹介いただくことは可能でしょうか?

といった感じで、差し込みましょう。

返報性の原理をマーケティングや営業に活用する7つのコツ

返報性の原理は、マーケティングや営業で大活躍します。そこでの活用のコツを紹介します。

返報性の原理を活用するコツ

  1. 無料のプレゼント
  2. 順番はギブが先
  3. 相手の想像を超える対応
  4. ドア・イン・ザ・フェイスで交渉
  5. 事情をぶっちゃける
  6. 接待はやっぱり強い
  7. ギブをバラ撒いて、あとは忘れる

全てのコツを同時に行う必要はありません。あなたのビジネスに当てはめられそうなコツを見つけてください。

コツ①:無料のプレゼント

古典的なテクニックが、無料のプレゼントです。絶対にあなたも目にした経験があるはず。

無料のプレゼントの典型例

  • スーパーの試食
  • 化粧品の無料サンプル
  • 法律事務所の無料相談
  • 有料レベルの情報を無料で提供

いずれもポイントは、「無料でそこまでしてもらっちゃっていいの?」と思われるレベル。相手が買わないと居心地悪くなるように。気前よくいきましょう。

昨今のコンテンツマーケティングでは、無料でセミナー動画や、本来であれば有料レベルのノウハウが詰まった資料を提供しています。

これには見込み客リストを取る目的もありますが、もう一つの目的は返報性の原理で成約率を上げることにあります。

コツ②:順番はギブが先

ギブをする順番は先。新規顧客に最初の購入をしてもらうシーンは特にです。

有名な事例に、インドのコルカタ(カルカッタ)発祥の宗教団体「ハレークリシュナ」があります。

クリシュナの信徒は、空港や公園で信徒が待ち構え、通行人に真っ先に花を渡します。訳が分からない通行人が受け取ったら、すかさず寄付のお願いをします。

返報性の原理は、相手を好ましく思っていなくても発動します。魂胆がわかって正直イヤな気持ちになりますが、それでも効果はテキメン。

クリシュナはこの手法で莫大な寄付金を築き、1970年代に黄金期を迎えました。もし「寄付してくれたら花をあげます」の順番であったら、寄付金は集まらなかったでしょう。

この方法をビジネスに応用するなら、次のようになります。

  • OK:来店した瞬間に2,000円の商品券を渡す
  • NG:購入してくれたら2,000円のキャッシュバック
  • NG:購入後に次回使える2,000円OFFクーポンを渡す

ギブするのはしょっぱな。事が起こる前に、まずギブしておかなければなりません。

例えば「購入後に2,000円キャッシュバック!!」と謳ったポスター。これで釣られる顧客は、あくまで金銭的メリットに着目しています。返報性の原理は発動していません。

意味は同じでも、先に商品券を渡しておいた方が、成約率は上がるでしょう。

コツ③:相手の想像を超える対応

相手がギブされたと感じさせるためには、「そこまでやってくれるとは思わなかった!」と、想像を超えるレベルのサービスを提供しましょう。

好事例は、ザッポス。アメリカにある靴のオンライショップです。

今ではAmazon配下に収まっていますが、Amazonがザッポスを脅威に感じて買収に踏み切った経緯があります。Amazon側は最大級の歩み寄りとして、買収後もザッポスの自由な経営を認めました。

それほどまでにザッポスが恐れられていた理由は、超手厚いカスタマーサポートで顧客のロイヤルティーが異常に高かったからです。

一般的なカスタマーサポートは対応時間がKPIになっており、長々と対応するのはマイナス評価です。しかし、ザッポスにはその縛りはありません。

サポートスタッフは、自身の判断で顧客に喜ばれる対応をします。靴の相談なら絶対にかからないであろう7時間超の電話対応もあったとか。

  • ピザを頼んだら、ピザは頼めない代わりにオススメのピザ屋を教えてくれた。
  • 返品理由が履かせたかった人が亡くなったからと言ったら、お見舞いの花が送られてきた。

この予想だにしない体験が、究極の返報性を生んでいます

そんな非常識な対応が感動を呼び、「靴を買うならザッポスで」とリピート顧客の心を掴んでいるのです。

コツ④:ドア・イン・ザ・フェイスで交渉

交渉のシーンで役に立つのが「ドア・イン・ザ・フェイス」。わざと高めの要求を出して、譲歩するフリをすることで、有利な条件を取り付けるテクニックです。

ビジネスで頻繁に活用できるのは、「価格交渉」「納期交渉」です。

あなたが20万円で売りたい商品に対し、顧客は18万円を望んでいます。こんなときは、わざと高めの22万円で見積もりを出しましょう。

もちろん相手は、「それは高すぎるよ」と言うでしょう。

そしたら、「そうですよねぇ。ではウチとしてもギリギリですが、20万円でしたら上司をウンと言わせます!」と返しましょう。

相手はまだちょっと高いと思いつつも、譲歩してくれたことで恩を感じます。「分かりました。今回は20万円で購入します」と応じてしまうのです。

納期の交渉も同じ。まずはバッファ込みの納期を伝えて、渋々通常納期へ縮めて自分を守りましょう。

ただし吹っ掛けすぎには注意。しょっぱなの要求が高すぎると、誠実な交渉相手と見なされなくなります。交渉そのものが決裂しかねません。

コツ⑤:事情をぶっちゃける

こちらも交渉で使えるコツです。主に営業で、どうしても顧客に今月契約してほしいときや、逆に顧客からの無茶なお願いを断るときに有効です。

キーワードは、「ぶっちゃけると、〜」「実は、〜」です。

  • ぶっちゃけると、今月の全社目標が達成できるかの瀬戸際で、わたしすごく上司から詰められているんです…。
  • そのお願い個人的には受けたいんですけど、実は、弊社はその領域のエンジニアが弱くて期待に添えないんです…。

といった感じですね。

ポイントは、自分ではなく会社の都合をぶっちゃけて、「それはサラリーマンならしょうがないよなぁ」と同情させることです。

相手からしたら知ったこっちゃない場合もありますが、こちら側の事情をオープンにすることで、相手のガードは下がります。相手の社内の事情を教えてくれることも少なくありません。

多少でも関係性ができている相手なら、落とし所まで一緒に考えてくれるでしょう。

コツ⑥:接待はやっぱり強い

古典的ですが、営業上の接待は効果アリです。

わたし自身は接待は嫌いで、昔はそんなことしなくても真面目に営業していれば問題ないと思っていました。認めたくないですが、経験を積んだあとは、やっぱり接待の効果を実感します。

「おごってもらっちゃったし、今回はお願い聞いてあげよう」と受けた接待に報いる傾向が強いと見えます。肌感覚では、特に権限のある比較的年配の方ほど効果的です。

またプライベートな自分をさらけ出すことで、「自己開示の返報性」が機能し、相手から「ここだけの話なんだけど、〜」と貴重な情報を入手できることもしばしばあります。

今のご時世では接待する機会は少ないですが、飛び道具の選択肢として持っておきましょう。

コツ⑦:ギブをバラ撒いて、あとは忘れる

あなたが持つべき正しいスタンスは、後でいつ誰から返ってくるかは分からないけど、とりあえずギブをバラ撒いておくことです。

  • 出張に行ったらお土産を買ってくる
  • 帰り際に困っている人を見つけたら、ちょっと残業して手伝ってあげる
  • 顧客の利益のため、他社の商品をすすめる
  • お金にならない顧客の相談を喜んで引き受ける

と言った具合ですね。

リターンを期待してギブをしようとすると、どうしてもすぐにリターンが望めそうな人にだけギブをすることになります。

しかしいつ誰から特大のリターンがやってくるか分かりません。冒頭の「エルトゥールル号遭難事件」に対するトルコの恩返しを思い出してください。

打算的な心は捨て、ギブに徹しましょう。そしてギブしたことも忘れましょう。そうすると「情けは人の為ならず」で、最終的には自分に返ってきます。

【失敗しないために】返報性の原理の4つの注意点

営業やマーケティングで非常に強い効果を期待できる返報性の原理には、4つの使用上の注意点があります。

返報性の原理の注意点

  1. あからさまに見返りを求めない
  2. 相手の期待値を超えないければならない
  3. 「多すぎ」「重すぎ」に注意
  4. 継続的な見返りは難しい

使用方法を誤ると、相手に不快感を与えて逆効果になってしまいます。それぞれの内容を見ていきましょう。

注意①:あからさまに見返りを求めない

企業側は「買ってほしい」という下心を持って、無料でサービスを提供したり、過剰に親切に振る舞ったりします。

ですが、相手が見返りをくれなかったからといって、催促をしたり、不遜な態度をとってはいけません

上記でチラッと紹介した宗教団体の「ハレークリシュナ」は、花を渡して寄付金を募る方法で大成功を収めました。しかし、この話には続きがあります。

信徒が至る所で、露骨な寄付金集めをしているのが知れ渡ってしまいました。通行人はクリシュナ信徒を警戒し、わざと避けたり、対策を講じて寄付を断るようになりました。

結果として、寄付金の額は大きく落ち込むことになります。下心100%のやり方では、嫌われて当然。長続きするはずもありません。

想像してみてください。スーパーで試食をして、その商品を手に取らなかったときに、店員がムッとした顔をしたらどう感じるでしょうか?

もう2度と近寄りたくないですよね。

できる限りの対応をしたら、実際に買ってくれるかどうかは相手に委ねましょう。

注意②:相手の期待値を超えないければならない

相手が「ここまでしてくれるなんてビックリ!」と思ってくれなければ、返報性は発揮されません。

例えば、美容院で髪を切ってもらっただけで、「そのお店に何かお返ししよう」とか「友人に紹介しよう」とは思いませんよね。それだけでは、ただ当たり前の経済取引だからです。

  • プライベートな悩みに親身になってアドバイスしてくれた!
  • お願いしたヘアスタイルとは別のスタイルをオススメされて、そうしてみたら想像を超えていい感じになった!
  • 売れ残りだからって高価なスタイリング剤をタダでくれた!

といった、期待値を超えた「感動」が伴わなければ、返報性は発揮されません。

注意③:「多すぎ」「重すぎ」に注意

一般的なビジネスシーンで、受注などの見返りを期待したギブであれば、重すぎるのは考えものです。

なぜなら1発目のギブを受け取ってもらえなくなるからです。相手は直感的に「何か裏があるに違いない」と思って、関わりたくないと思ってしまいます。

大して仲が良くない異性が突然、ダイヤモンドの指輪をプレゼントしてきたらどう感じるでしょう?シンプルに気持ち悪いですよね。

相手が爽やかな気持ちで受け取れるレベルのギブに押さえておきましょう。

注意④:継続的な見返りは難しい

返報性の原理だけで、消費者にリピートしてもらうのは難しいでしょう。

与えた恩には一定のサイズがあります。そのサイズに見合ったお返しをしたら、もうそれでチャラ。消費者にとっては、「借りは返したぞ」という状態です。

スーパーでソーセージを試食して、そのときは悪いと思って買うかもしれません。

しかし翌週も同じ理由で買うことはないでしょう。もし次もまた買うとしたら、買う理由はそのソーセージが本当に美味しかったからです。

返報性の原理で消費者のリピート購入を求めるのであれば、継続的に「ギブ」し続ける必要があります。大口顧客であれば、それも費用対効果が見合うかもしれません。

そうではない一般顧客であれば、手離れの悪さは効率ダウンになります。初回購入のきっかけ作りとして、返報性の原理を使うに留める方が得策です。

上記でご紹介したザッポスのように、徹底的なサポートをコアバリューにするなら別ですが。その覚悟がないなら、リピート購入は真っ当に品質で勝負しましょう。

まとめ

今回は心理学より「返報性の原理」をご紹介しました。明日から使えるのでぜひ試してみてくださいね。

それでは、次のようにまとめます。

返報性の原理とは…

  • 相手から受けた好意や施しに対し「お返し」をしたいと感じる心理現象のこと

4種類の返報性

  • 好意の返報性
    :相手から受けた好意や親切にお返ししたくなる
  • 敵意の返報性
    :敵対心を向けてきた相手に対し、仕返しをしたくなる
  • 譲歩の返報性
    :先に譲ってくれた相手に対し、今度は自分も何かをしてあげようと思う
  • 自己開示の返報性
    :相手が包み隠さず話してくれたから、自分も情報をオープンしようと思う

ビジネスシーンで活用する際は、次のポイントを意識しましょう。

活用するコツ

  1. 無料のプレゼント
  2. 順番はギブが先
  3. 相手の想像を超える対応
  4. ドア・イン・ザ・フェイスで交渉
  5. 事情をぶっちゃける
  6. 接待はやっぱり強い
  7. ギブをバラ撒いて、あとは忘れる

失敗しないためのポイント

  1. あからさまに見返りを求めない
  2. 相手の期待値を超えた感動を与えなければならない
  3. 「多すぎ」「重すぎ」なギブは相手を警戒させる
  4. 継続的な見返りは大変なので、初回購入のきっかけ作り程度に使う

露骨にやりすぎると、相手からはアコギな印象を持たれてしまいます。見返りを求めたい気持ちをグッと堪え、自分がギブすることに専念するのがオススメです。

参考書籍

影響力の武器

参考書籍は、社会心理学者ロバート・チャルディーニ氏の『影響力の武器』です。

人に要求を飲ませるために、最上の6つの方法を教えてくれる良書です。正気の沙汰なら絶対に飲まない要求でも、首を縦に振らせてしまう力を持っています。

マーケティングや営業界隈では、必読の一冊にノミネートされています。モノを売る仕事をするなら、確実に押さえておいてくださいね。

要約記事もありますので、時間がない人はこちらをどうぞ。

【要約】影響力の武器で学ぶ6原則。返報性/一貫性/社会的証明/好意/権威/希少性【事例アリ】『影響力の武器』の概要 『影響力の武器』は、アメリカの心理学者ロバート・チャルディーニの著書。発行は1984年と古く、長年に渡...

GIVEに徹することの大切さを科学的に説いた一冊が『GIVE & TAKE』です。同書によれば、世の中には3種類のタイプの人がいます。

  1. ギバー(Giver)
    :見返りを気にせず、ナチュラルにギブをバラ撒く人
  2. マッチャー(Matcher)
    :受けたギブはそっくり同じだけギブし返す人。無意識にギブ量=テイク量になるように生きている。割合としては1番多い
  3. テイカー(Taker)
    :他人からテイクすることを第一としている。ギブするときは、さらに大きな見返りを期待している

そして、結果的にもっとも得をするのがギバーなのです。

返報性の原理の正しい使い方は、この一冊が教えてくれます。ビジネスパーソンとして、普通に読んでおきたい一冊でもあります。

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