「俺の嘘バレてないかな?」「絶対緊張してるって思われてる〜!恥ずかし〜!」と思っても、相手は意外と気づいていないもの。
そんな心の内がバレていると勘違いしてしまう現象を、「透明性の錯覚」と呼びます。
きっとあなたの不安は杞憂に終わります。いつものあなたは、余計な気苦労をしているだけなのです。
この記事でわかること
- 透明性の錯覚とは?
- シーン別の具体例
- 日常生活にどう生かすか?
なおあなたの気持ちがバレていないということは、あなたが相手に伝わっていると思っている気持ちも、実は全然伝わっていないということです。
透明性の錯覚を知れば、相手との心のすれ違いや、コミュニケーションギャップを埋めることができます。この記事を読んでコミュニケーション力をアップさせましょう。
透明性の錯覚とは?
透明性の錯覚(illusion of transparency)とは…
自分の感情や思考が、実際にはそうでないのに、相手に見透かされていると錯覚してしまう傾向のこと。
心理学の用語。認知バイアスの一種です。
カンタンに言えば、「自意識過剰」の勘違い。
パターンとしては大きく2通りあります。
- 気づかれたくない感情が、実はバレていない
- 気づいて欲しい感情が、実は伝わっていない
前者は取り越し苦労で済みますが、後者は想いのすれ違いを生んでしまっています。
透明性の錯覚はなぜ起こる?
透明性の錯覚は、「利用可能性ヒューリスティック」と「自己中心性バイアス」という2つの親概念で理解すると捗ります。
利用可能性ヒューリスティック
まず利用可能性ヒューリスティックとは、自分が思い出しやすい事柄の発生確率を過大に評価してしまう現象のことです。
わかりやい例を出しましょう。
問題です。「歯医者」と「コンビニ」、件数が多いのはどちらでしょうか?
おそらくほとんどの人は、「コンビニ」が第一に思い浮かぶでしょう。理由はコンビニの方が、入った回数や利用した店舗数が多いからです。
実際には歯医者の方が件数は多いのです。しかし年に数回、人生を通して数件しかお世話にならない歯医者は、コンビニに比べれば思い出しづらいのです。
そもそもに当たる「ヒューリスティック」とは、カンタンに言えば思考の簡略化です。真面目に考えたら計算が大変すぎるので、もっと簡易な計算に置き換えているわけです。
目的は脳のリソースを節約。しかし簡易な計算に置き換えてしまったことで、勘違いが出やすくなってしまうのです。
自己中心性バイアス
そして利用可能性ヒューリスティックによって起こる認知バイアスの一つが、自己実現性バイアスです。
自己中心性バイアスとは、「自分が知っている情報は、相手も知っているだろう」と勘違いしてしまう傾向のことです。
幼い子供は、初対面の人に対し、「〇〇ちゃんと遊んだの!」「〇〇市民プールに行ったよ!」と、相手が知らない情報をお構いなしにしゃべってきます。
相手が「〇〇ちゃん」や「〇〇市民プール」を知らないと気づいていないのです。これが自己中心性バイアスの最たる例です。
自己中心性バイアスの一つ現象として、「自分の感情は、相手も知っているだろう」と感じてしまう透明性の錯誤が起きます。
≫【大人になれない君へ】自己中心性バイアスとは?克服できればこんなに得をする!
厳密ではないかもしれませんが、関係性としては、「利用可能性ヒューリスティック>自己中心性バイアス>透明性の錯誤」となっています。
透明性の錯覚の実験事例
1998年に、コーネル大学の心理学者トーマス・ギロビッチらが行った実験を紹介します。
被験者は、複数用意された飲み物を1つずつ飲むが、1つだけ味が異なる(マズイ)飲み物が含まれている。どの飲み物の味が異なるか、観察者に言い当てられないように飲むよう指示される。
その結果、被験者は嫌悪感が顔に出てしまっていたと感じた一方で、観察者はどの飲み物がマズかったのかを言い当てられなかった(偶然正解する確率と変わらなかった)。
バラエティ番組でもよくあるシーンですね。
バラエティの場合は面白おかしくするために、体が反応してしまうほどの強い刺激(ものすごく酸っぱい、辛い、苦いなど)が用いられます。なのでバレることも少なくありません。
しかしちょっとマズいくらいの飲み物であれば、ほとんどバレることはありませんでした。
あなたの身近にある透明性の錯覚
透明性の錯覚は、あなたの身近にもあります。ぜひ自身の経験と照らし合わせて見てみてください。
例①:プレゼンテーションの緊張感
初めてのプレゼン、ココ1番の大事なプレゼン、大勢を前にしたプレゼン、幹部を前にしたプレゼン。普段にはない緊張感が走るシーンですね。
いつもより声が高くなったり、やけに喉が渇いたり。なんだかいつもの自分とは違うみたい。「うわぁ、俺めっちゃ緊張してるって思われてるよ〜汗」と感ながらプレゼンを続けることになります。
しかし相手は全然気にしていません。むしろ「うん!いいプレゼンだったね!」と褒めてくれたります。よくある自意識過剰なシーンです。
例②:絶対にここだけのナイショの話ね!
「ココだけの話なんだけど!」は、人生で100回は聞いたフレーズ。子どもの頃は主にコミュニティ内の人間関係の話で、社会人になると内部のオフレコ話が多い印象です。
そしてナイショ話を知らない相手と話しているとき、「俺が真相知ってるってバレてないかな?」と、わけもなくヒヤヒヤしますよね。相手が考え込んでいるときなんかは、グッと緊張感が増します。
誰しも経験があると思いますが、おそらく大人になってからよりも、子供の頃の方がヒヤヒヤ感が強かったのではないでしょうか?
その理由は、子どもの方が、自分と他人が持っている情報の差を理解できていないからです(*既に触れている自己中心性バイアスを参照のこと)。
例③:私のこと好きじゃないの?
パートナーに、「わたしのこと好きじゃないの?」と、言われたことがある人はどれほどいるでしょうか?そんなベタベタな言い方はされないかもしれないですね。
しかしパートナーの不機嫌や、突然の別れの裏には、愛情不足による関係の冷え込みがあるのではないでしょうか?
あなたがパートナーをどんなに大事に思っていても、おそらく相手には半分も伝わっていません。プレゼント選びに悩んでも、早く帰って一緒にご飯を食べようと思っても、その気持ちまでは届いていないかも。
透明性の錯覚から得られる教訓
透明性の錯覚を知ったいま、わたしたちはこの知識をどう実生活に生かせるでしょうか。大きく2つの方向性があります。
教訓①:ビクビクせず堂々とすべし
まずあなたが不安に思っていることは、相手には見えていないということ。あなたの心は、あなたの胸の内にあります。他人にはわかりません。
そのため、必要以上にビクビクと怯える必要はありません。むしろ相手は、「この人はなんでこんなにおっかなびっくりなんだろう?」と不思議に思ってしまいます。
むしろ不安に感じていればいるほど、その感情が表情や身振り手振りに出てしまい、余計に緊張感が外に漏れてしまいかねません。
どうせバレないと、堂々としていればいいのです。微妙な例えですが、「マスクしてれば、ガム噛んでもバレないぜ」くらいの図太さを持ちましょう。
ただしバレないから嘘をつけという話ではありません。誤解なきように。
どうしても緊張してしまう人へ
バレないとわかっていても、勝手に手や声が震えてしまう緊張しいな人もいるでしょう。実はわたしもそう。歳をとっても基本変わりません。
そんな人にできるのは、想定問答まで考慮して準備することです。
仮にプレゼンであれば、「このスライドを見せたら、きっとこう質問されるだろう。そのときはこのデータを見せよう」と、逐一カウンタートークを準備しておきます。
全ての質問に対応できると思えるレベルまで準備できれば、それが自信になります。ずいぶんと堂々とした口調でしゃべれるようになります。
実際には、準備したカウンタートークの8割は使わないままですが、それで構いません。少なくともわたし自身は、準備しすぎて後悔したことはありません。
教訓②:伝えたい気持ちは言葉にすべし
あなたの心の内が、自分が思っているほど他人にはバレていないということは、伝わっていると思っていることのほとんどは、相手に伝わっていません。
中途半端な素振りだけで明確な態度を取らなければ、相手にあなたの気持ちは伝わらないのです。
「なぜ俺の気持ちを理解してくれないんだ!?」という気持ちは、そのままブーメランであなたに帰ってきます。「なぜちゃんと言葉にしないんだ?」と。
あなたが伝えたい気持ちはなんでしょうか?
- 日頃助けてもらっている感謝
- 家族や恋人への愛情
- 疲れているからそっとしておいて欲しい
- ツンケンしているけど、実は話しかけてほしい
いずれも口に出すなり、文字に書くなりしなければ伝わりません。
プライベートだけではなく、ビジネスシーンではより明確に示さなければなりません。
- もっと大きな仕事がしたい
- 家族を優先したいから残業はできない
- 本当は営業じゃなくて企画の仕事がしたい
- 明日中にこのタスクをお願いしたい
一般的にビジネスでやりとりする相手は、あなたにさほどの関心を持っていません。少なくともプライベートで付き合ってる人よりは。
ビジネスで相手に気持ちを汲み取ってもらおうという考えは甘えです。繰り返し言葉で伝えるよう意識しましょう。
関連する心理効果:スポットライト効果
透明性の錯誤とよく似た認知バイアスに、「スポットライト効果」があります。
自分がスポットライトを浴びているかの如く、自分が気にしていることを、相手も気にしていると勘違いしてしまう傾向のことです。
- 自分の中では髪をばっさり切ったのに、周りは全然気がついてくれない!
- 新しい服を着て行ったのに、誰も褒めてくれない!
といった、自意識過剰な勘違いが起きる原因です。
透明性の錯誤にかなり近い概念と言えるでしょう。ただし違いはあります。
透明性の錯誤では、その人の感情や思考といった内面がバレていると錯覚します。それに対しスポットライト効果では、髪型や服装のような外的要素が他人に注目されていると錯覚します。
≫【気づかれないだと?】スポットライト効果=自意識過剰。その克服&活用方法とは?
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!