- ダイエットが続かない。
- 老後のために貯蓄しない。
- 将来のために勉強しない。
「未来の自分のためにやったほうが良い」とわかっているのに、なぜか行動に移せない。こんな経験ありませんか?
原因は「現在バイアス」にあります。人間の心理は、将来よりも今の方が圧倒的に大事なので、今の誘惑に負けてしまうのです。
ヘルスケア業界や金融業界では、「現在バイアス」が特に顕著に現れます。明らかにメリットがあるサービスでも、お客さんはなかなか振り向いてくれません。
この記事では次のことがわかります。
- 現在バイアスとは何か?
- 遠い将来なら待てるが、近い将来ならば待てない「双曲割引」とは?
- ビジネスシーンで起こる現在バイアスを克服するアイデア
「現在バイアス」の先にあるのは「アリとキリギリス」の世界。
冬を越すために地道に努力を続けたアリは、飢えをしのいで快適な未来を手にしました。今の楽しさを選んだキリギリスは、のちに悲惨な運命に遭います。
自堕落な自分を変えたいと思っている人は、ぜひ見てみてください。
現在バイアス(現在志向バイアス)とは?
現在バイアス(present bias)とは…
将来の利益よりも、現在を利益を優先する傾向のこと。行動経済学の用語で、「現在志向バイアス」とも呼ばれます。
ちょっと試してみましょう。
あなたは次の選択肢のどちらを選ぶでしょうか?
- A:いま10,000円もらえる
- B:1ヶ月後に10,500円もらえる
資産運用のリターンは年率5%あたりが相場。月利で5%は美味しい。Bはかなり高リターンですね。
それでも「A:いますぐ10,000円をもらえる」を選びたくなりませんか?
人間は理論値以上に現在の利益を優先しています。
我慢して1ヶ月後の10,500円を選べる人は、人生で得する選択肢を選べる賢明な人と言えるでしょう。
現在バイアス(現在志向バイアス)の実験例:マシュマロ実験
現在バイアスには「マシュマロ実験」というめちゃくちゃ有名な実験例があります。色んなところで登場するので、教養として知っておいてもいいと思います。
マシュマロ実験は、スタンフォード大の心理学者ウォルター・ミシェル氏が、1960年台後半から1970年代前半にかけて行った長期の実験です。
実験の内容
被験者は4歳の幼児。
とある実験用の部屋の机の上に、マシュマロが1つだけ乗ったお皿を置く。
幼児を部屋に入れて、「このマシュマロを15分食べるのを我慢したら、もう1つマシュマロをあげる」と言って、幼児を部屋に1人きりにする。
実験の結果
幼児たちはわざとマシュマロに背を向けたりして我慢するが、3分の2の幼児は我慢できずに食べてしまった。
この実験には続きがあり、その後に成長した被験者(かつての幼児)に追跡調査を行いました。
我慢できた幼児の自制心は、十数年後も健在でした。マシュマロを食べるのを我慢して2個目のマシュマロを手に入れた被験者は、明らかに成績優秀であったと判明しました。
「アリとキリギリス」の話を地で行く結果になりました。
「双曲割引」時間によって行動パターンが変わる
一般的な経済学の考え方に則れば、先ほどの問題で「いま10,000円もらえる」を選んだ人は、1年後でも同じ選択をします。
しかしながら、経済学に「人間の心理」を加味した行動経済学の世界ではそうはなりません。
再び試してみましょう。次の選択肢ではどちらを選ぶでしょうか?
- A:1年後に10,000円もらえる
- B:1年と1ヶ月後に10,500円もらえる
先ほどの問題と同じで、1ヶ月経つと貰える金額が500円増えます。違うのは「今の話」か「1年後の話」かです。
今度はほとんどの人が「B:1年と1ヶ月後に10,500円もらえる」を選ぶでしょう。もはや1年後となると、その先の1週間なんてどうでもいいですよね。
そう思ってしまった理由は、次の関数で表すことができます。
「今すぐ得られる利益」と「1週間後に得られる利益」には、嬉しさに大きな差があります。
しかしながら、時が経つにつれ関数の傾きが緩やかになっています。そうすると、「1年後」と「1年と1週間後」では、嬉しさにほとんど差がなくなってしまいます。
つまり「遠い将来なら待てるが、近い将来ならば待てない」のです。
行動経済学では、この関数を「双曲割引(hyperbolic discounting)」と呼びます。
ビジネスシーンで見られる現在バイアスの例
「現在バイアス」が顕著に現れるのは、行動してから成果が出るまで時間がかかるシーンです。
現在バイアスに負けてしまうと、いま楽しむことを優先して、将来のリターンを軽視してしまいます。
「現在バイアス」が起こりやすい事例と、「現在バイアス」を克服する方法を考えてみましょう。他の業界でも応用できるかもしれません。
例①:ヘルスケア業界と現在バイアス
ヘルスケア業界は「現在バイアス」が最も顕著に出る領域です。
不摂生のツケも、ダイエットの成果も、すぐには現れません。いずれも遅れたタイミングにやってきます。
若い人が食生活や運動に気を使っても、成果が出るのは10~20年後だったりします。
現在バイアスにより、将来のためにラーメンを我慢したり、タバコやお酒を控えたりするのは非常に難しいことなのです。
経済的インセンティブ(景品やお金)で釣る方法もありますが、インセンティブがなければ続かなくなるので、得策ではありません。
長年解決策が見つかっていない難しいテーマですが、次のような施策が有効かもしれません。
目の前の利得に紐付ける
- 20分運動したら好きな映画を1本見る
- ヘルシーな食事をしたら、代わりにアイスクリームを食べられる
という具合に、健康に良い行動したら、すぐに得られるご褒美を用意するアイデアです。
将来の利益ではなく、目先の利益を意識させることで、「現在バイアス」にかかって怠けることを防ぐ狙いです。
他人を巻き込む
グループを作って「みんなで健康な生活をしよう!」とコミットすると、後に引けないので継続する効果があるでしょう。
家族に見せて、家族から叱咤されながらやるのも効果的です。
これは心理学では「ピアプレッシャー(仲間からの圧力)」と呼ばれている効果です。周りの人から見られていると継続力がアップします。
ゲーミフィケーション
ゲームには人間の欲求を刺激して、プレイヤーに遊ばせる仕掛けが詰まっています。ゲーミフィケーションは、ゲームの体験デザインを他の分野に転用する手法です。
ゲーミフィケーションで、健康な行動を楽しい遊びに変えてしまいましょう。例えば、歩数をによってバッジを贈呈したり、その結果をランキング化したりします。
≫【遊びの技術】ゲーミフィケーションの意味とは?顧客ロイヤルティを高める極意を解説
ソーシャル機能
ソーシャル機能は、SNSのように承認欲求を満たす仕掛けです。
- 体に良い活動をすると、みんなが「いいね」をしてくれる
- 歩いた歩数をプレイヤー内でランキング化する
といったアイデアが考えられます。
実はSNSの「いいね」や「フォロー」は、「社会的報酬」と呼ばれるインセンティブの一種。経済的インセンティブ(景品やお金)と違い、コストが発生しないのでビジネスにも組み込みやすい特徴があります。
例②:金融業界と現在バイアス
いまだに多くの人は、資産のほとんどを銀行に預けています。金利は雀の涙ほどもなくほぼ0。給料はほとんど使ってしまって、ロクに貯蓄していない人も多いでしょう。
株式投資をすればおおよそ年利5%のリターンが得られます。種銭にもよりますが、投資のリターンは10年・20年というスパンでは、数百万円・数千万円にもなります。
ですが多くの人はそんな将来のことは考えないので、いま楽しいことにお金を使ってしまいます。
強制的に積み立てる
すぐに給料を使い果たしてしまう人は、強制積立にしてしまうのがいいでしょう。
給料のうち、5万円は毎月投資信託に積み立てると設定しておけば、強い意志を持って解約しない限り、強制的に投資にお金を回すことになります。
積立NISAであれば、リターンにかかる税もかからないのでさらに良いですね。
例③:将来ための勉強と現在バイアス
日本の社会人の平均勉強時間は、1日わずか6分です。社会人ほとんど勉強していません
これほど変化の早い時代に勉強していかなければ、スキルを伸ばせずに、市場価値がだんだん下がってしまいます。
漠然とした不安を持っている人は多いと思いますが、ゲームやテレビ、SNS、飲み会といった目の前の楽しいことを優先しています。
もしそんな自分を変えたいという人がいるのであれば、方法は一つしかないでしょう。自分の目指す目標を決めることです。
短期間で成果が出なくても良い、それでも成し遂げたい目標を決めて、弱い自分に打ち勝つしかありません。目標が決まれば、自ずと優先順位が決まります。ただ楽しいだけの飲み会を断る勇気が芽生えてきます。
「緊急ではないが重要なこと」に時間を使おう
全世界で3,000万部の大ベストセラーの自己啓発書『7つの習慣(スティーブン・R・コヴィー 著)』にこんな記載があります。
同書では、仕事を「緊急度」と「重要度」により4象限に区切り、「緊急ではないが重要な仕事」にもっと取り組むべきだと主張しています。
仕事だけでなく、将来のための勉強や、将来のためにじっくり考えることもそう。現在バイアスがある人間には難しいことですが、難しいからこそ、できる人は抜きん出ます。
まとめ
今回は行動経済学より「現在バイアス」と「双曲割引」をご紹介しました。人間は目先のことに囚われる性質があると理解して、将来のために行動しましょう!
次の通りまとめます。
現在バイアスとは…
- 将来の利益よりも、現在を利益を優先する傾向のこと
- そのためダイエットは続かないし、老後のために貯蓄せずに使ってしまう
双曲割引とは…
- 「遠い将来なら待てるが、近い将来ならば待てない」という現象を表した関数
キングオブ自己啓発と呼ばれる『7つの習慣』にあるように、我々が本当に取り組むべきは、「緊急ではないが重要なこと」です。
未来の自分を楽させるために、今もう少し頑張ってみませんか?
社会人の学びに「この2つ」は絶対外せない!
あらゆる教材の中で、コスパ最強なのが書籍。内容はセミナーやコンサルと遜色ないレベルなのに、なぜか1冊1,000円ほどしかかりません。
それでも数を読もうとすると、チリも積もればで結構な出費に。ハイペースで読んでいくなら、月1万円以上は覚悟しなければなりません…。
しかし現代はありがたいことに、月額で本読み放題のサービスがあります!
外せない❶ Kindle Unlimited
Amazonの電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は、月額980円。本1冊分の値段で約200万冊が読み放題になります。
新刊のビジネス書が早々に読み放題になっていることも珍しくありません。個人的には、ラインナップはかなり充実していると思います。
外せない❷ Audible
こちらもAmazonの「Audible(オーディブル)」は、耳で本を聴くサービスです。月額1,500円で約12万冊が聴き放題になります。
Audibleの最大のメリットは、手が塞がっていても耳で聴けること。通勤中や家事をしながら、子供を寝かしつけながらでも学習できます。
冊数はKindle Unlimitedより少ないものの、Kindle Unlimitedにはない良書が聴き放題になっていることも多い。有料の本もありますが、無料の本だけでも十分聴き倒せます。
ちなみにわたしは両方契約しています。シーンで使い分けているのと、両者の蔵書ラインナップが被っていないためです。
どちらも30日間は無料なので、万が一読みたい本がなかった場合は解約してください(30日以内であれば、仮に何冊読んでいても無料です)。
そして読書は、早く始めた人が圧倒的に有利。本は読めば読むほど、複利のように雪だるま式に知識が蓄積されていくからです。
ガンガン読んで、ガンガン知識をつけて周りに差をつけましょう!
とりあえず両方試してみて、それぞれのラインナップをチェックするのがオススメです!