生産性向上

【認知心理学】ワーキングメモリとは?低いとどうなる?鍛え方から解放の方法まで解説

  • なんだか最近、ケアレスミスが多い
  • 若い頃に比べて、話が頭に入ってこなくなった
  • やろうとしていた仕事をよく忘れてしまう

こんな悩みを持っている人は、「ワーキングメモリ」が下がっているのかもしれません。

ワーキングメモリは、ざっくり言えば短期的な記憶力のこと。ワーキングメモリがないと仕事も会話もおぼつきません。

ワーキングメモリを増やせば、シンプルに仕事や勉強の効率が上がります。どんなシーンでも必ずワーキングメモリを使用しているので、全体の底上げになります。

ワーキングメモリの容量は、ある程度は生まれ持った素質によるところがありますが、節約したり、解放したり、鍛えて容量を増やしたりすることが可能です。

生産性を向上させる根本的な方法をお探しの人は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリ(working memory)とは…

短い時間に脳内に情報を保持し、同時に処理する能力のこと。日本語では「作業記憶(または作動記憶)」と呼ばれています。

一般用語として使われている雰囲気がありますが、ワーキングメモリは認知心理学の用語です。

よりイメージしやすい説明をしてみましょう。

「メモリ」という言葉がもっともよく使われているのはコンピュータの世界(パソコンやスマホ、大きく括ればコンピュータ)。ワーキングメモリもコンピュータで例えるとわかりやすいでしょう。

コンピュータは「メモリ」の高さによって、どれだけ多くの処理を同時にできるかが決まります。

同時にたくさんのブラウザを立ち上げたり、重いExcelファイルを何個も立ち上げたりできるかは、コンピュータのメモリの高さ次第です。

このメモリを人間にそのまま当てはめた概念が、ワーキングメモリです。

  • お買い物リストを何個まで覚えておけるか?
  • 研修を受講しながら、明日のプレゼン内容を頭の片隅で考えられるか?

といった処理は、ワーキングメモリの高さにかかっています。

ワーキングメモリが高ければ、それだけ多くの処理を同時並行できます。「ワーキングメモリが高い=情報処理能力が高い」ということになります。

ただし、「ワーキングメモリが高い≠IQが高い」ということも付け加えておきます。ワーキングメモリが低いのは、要領の悪さにはつながりますが、頭が悪いわけではありません。

ワーキングメモリは「短期記憶」の発展系

記憶には「短期記憶」「長期記憶」があります。

ワーキングメモリは、短期記憶を発展させた概念。短期記憶は記憶の「保持」だけを指す概念。これに計算などの「処理」まで含んだ概念がワーキングメモリです。

やや強引な解釈ですが、一般人の我々は、「ワーキングメモリ≒短期記憶の容量」と捉えても良いでしょう。ごく短い間だけ、頭の中に置いておける情報の数を意味しています。

短期記憶

  • 30秒程度の短い間だけ覚えている記憶。記憶できる数に上限がある
  • 例:お買い物リストを何個覚えておけるか

長期記憶

  • (長い場合は)永久に覚えている記憶。記憶できる数に上限はない
  • 例:干支の十二支、12星座、47都道府県

物知り(長期記憶が豊富)であることと、ワーキングメモリの性能が良いかどうかは、別の話ということになります。

≫【記憶の種類】長期記憶・短期記憶・エピソード記憶・意味記憶とは?

覚えておける数の限界は7±2

ワーキングメモリ(=短期記憶)にしまっておける情報の数には限度があります。心理学の「マジカルナンバー」によれば、7±2が上限です。

幅が5〜9となっています。ワーキングメモリが高い人は9個の情報を覚えておくのが限界で、低い人は5個が限界、と捉えれば良いでしょう。

聖徳太子は同時に10人の話を聞き分けたと言われています。これが本当の話なら、聖徳太子のワーキングメモリは相当高かったことになりますね。

なおマジカルナンバーは4±1まで減っているという説もあります。実のところ人間のワーキングメモリはけっこう低いと考えた方が良いでしょう。

≫【使わなきゃ損】マジカルナンバー7±2と4±1は人間が覚えていられる限界

(参考)バッドリーのワーキングメモリモデル

もう学術的に少し踏み込んだ話をします。不要な人は飛ばしてしまって問題ありません。

認知心理学の世界では、「バッドリー(Baddeley)のワーキングメモリ・モデル(2000)」がよく知られています。

同モデルによれば、ワーキングメモリは単体で機能しているわけではありません。次の4つの機能が組み合わさってできています。

  1. 音韻ループ
    :音声や言語情報を保持する
  2. 視空間スケッチパッド
    :視覚的なイメージや位置関係を保持する
  3. エピソードバッファ
    :音声情報や視覚情報と統合する。長期記憶とワーキングメモリをつなぐインターフェースでもある
  4. 中央実行系
    :上記の各機能にどれだけリソースを割くかを計算する

まず両サイドから見ていきましょう。一口にワーキングメモリと言っても、

  • 言語を記憶するワーキングメモリ(音韻ループ)
  • 言語以外の視覚などを記憶するワーキングメモリ(視空間スケッチパッド)

に分かれています。

*ということは、「言語をサッと覚えるのが得意な人」もいれば、「IQテストに出てくるような、図形問題を頭の中で展開するのが得意な人」もいることになります。

ただし実際の問題に対処するとき、言語情報と視覚情報はキレイに分かれるわけではありません。レシピ本を見ながら料理をするときは、ビジュアルのイメージと食材の名称がそれぞれ必要です。

両ワーキングメモリの情報を統合して保持するのが、「エピソードバッファ」です。必要があれば、長期記憶から情報を引っ張ってきて、一時的に保持しておきます。

都合3つのワーキングメモリがあるわけですが、どれかに集中すれば、それ以外は機能しなくなってしまいます。このリソース配分を行なっているのが「中央実行系」です。

ワーキングメモリが低いと起こること

ワーキングメモリが低いと何が起こるのでしょうか?ここでは仕事のシーンで起こる弊害について触れます。

起こること①:予定や仕事をすっぽかす

多くの社会人は、複数のタスクを抱えています。小説家のように、1日中ずっと同じ作業をしている社会人は稀でしょう。

会議の途中で、お客さんから電話がかかってくることがあります。内容は急ぎの見積り依頼。会議が終わったらすぐに対応すると言って、一旦電話を切る。

よくあるシーンの一つです。

会議に参加しながらも、「会議が終わったら見積りを作るぞ。忘れるなよ、俺」と頭の片隅に置いておくのは、ワーキングメモリの成せる技です。

だけど、実は別のお客さんの問い合わせメールにも回答しなければならなかったのに、さっきの電話ですっかり忘れてしまった。こんな経験ありませんか?

ワーキングメモリが不足していると、手痛いすっぽかしがしばしば起きます。ひどい場合は、約束していたアポイントまですっぽかしてしまいます。

起こること②:ケアレスミスが頻発する

お客さんと電話をしていて、電話を切ったときに、相手の名前を忘れてしまった。誰しも一度は経験したことがある「あちゃ〜」なシーンです。

電話をしたときに、相手の名前や要件、折り返しの連絡先を記憶しておくことも、ワーキングメモリの仕事です。

メールや資料で誤字脱字が起こってしまうのも、ワーキングメモリ不足が原因かもしれません。前後の文脈や文章が抜け落ちてしまい、文章がつながらないことに気がつけなくなってしまうのです。

起こること③:生産性が低下する

仕事をするときは、ワーキングメモリに複数の情報を記憶しています。ワーキングメモリが低下すると、「聞き直し・読み直し・考え直し」が増えて、生産性が下がります

例えばメールを打つときは、頭の中で「こういう文章で書こう!」と考えた上で手を動かし始めます。このときワーキングメモリが低いと、途中でどんなメールを書こうか忘れてしまい、再度考え直さなければなりません。

資料を読んでいるときも、前のページで何が書いてあったのか忘れてしまい、何度も読み返さなければなりません。人と話していても、最初の文脈を忘れてしまい、聞き返さなければならなくなります。

ワーキングメモリが低いと感じたときの対策

「何か頭に入ってこないなぁ…」と感じたときは、きっとワーキングメモリが逼迫しています。

ワーキングメモリを節約しましょう。具体的な方法を紹介します。

対策①:グループ化して覚える

ワーキングメモリに置いておける情報の数は「7±2」と言われていますが、グループ化したされた情報は「1」としてカウントされます。

つまりグループ化して覚えておくことで、メモリを節約できるのです。

全く関連のない12種類の動物は、情報の数が「12」なので覚えておけません。ですが十二支であれば、干支という「1つ」のグループを覚えておけば良いことになります。

全く関連のない買い物リストを「15個」覚えるのは無理ですが、「カレーの材料5個」「肉じゃがの材料5個」「しゃぶしゃぶの具材5個」なら覚えられるかもしれません。

ブレインストーミングの会議でアイデアを書き出していくと、数が多すぎて混乱することがあります。そういうときはアイデアをグループ分けすることで、場を整理できるでしょう。

対策②:タスクをルーチン化する

タスクをルーチン化、つまり習慣化してしまうと、ワーキングメモリを節約できます。

ひどく悪酔いして次の日は記憶がない状態でも、昨日の自分はちゃんと家に帰って、パジャマに着替えて、ベッドで寝ていた。

多くの人が経験している奇妙な体験です。

明らかにワーキングメモリが正常でないのに処理できているのは、それがルーチンになっているからです。

次のような、ルーチン化していない突発的なタスクを考えてみましょう。

  • 今朝は出社したらまずメールをチェックしよう
  • 今日のお昼休みは読書をしよう
  • 今晩は子供と遊ぶために早く帰ろう

といった決意は、いずれもワーキングメモリを使っています。

ワーキングメモリを使用している以上は、忘れてしまうこともあります。ワーキングメモリにある他のタスクを押し出してしまうこともあります。

ルーチン化して習慣になっていれば、脳がわざわざ意識せずとも体が勝手に動きます。習慣で処理できるタスクが増えれば、自ずとワーキングメモリには余裕ができるでしょう。

対策③:マルチタスクをやめる

ワーキングメモリが高い人は、マルチタスクが得意な人でもあります。ただマルチタスクは「比較的得意な人」がいるだけ。どんな人でもシングルタスクの方が効率的です。

ある会議の後に、間髪入れずに次の会議に出席したとき、話のテーマがスッと頭に入ってこないことがあります。

この状態は、「タスクがスイッチするときに集中力が奪われている」とも言えますし、「前の会議の話がワーキングメモリに残っている」とも言えるでしょう。

なるべくマルチタスクの状況を避けることは、ワーキングメモリを節約するのに非常に有効です。

作業の時間と決めたら、スケジュールを長めに確保しておきます。その間はメールやチャットは見ないようにしましょう。できれば誰にも話しかけられない環境で作業したいところです。

≫【脱マルチタスク】シングルタスクとは?仕事の生産性をアップさせる4つの方法

そもそも不可能なことをしていないか?

ワーキングメモリと似たようでちょっと違う理論に、行動経済学の「脳のシステム1システム2」があります。

ざっくり言えば、脳には次の2つの役割に分かれているという考え方です。

  • システム1
    :日常のほとんど問題を、頭を使わずに直感で判断する

  • システム2
    :一部の難しい問題のみ、意識的に注意深く考えて判断する

そして重要な特徴に、「システム2は、同時に2つ以上の判断はできない」があります。

例えば、綱渡りをしながら、「21×18」の計算はできませんね。どちらもシステム2が出張るような難しいタスクだからです。

難しい議題をテーマに会議をしている最中に内職している人がいたら、その人はどちらかはいい加減に処理しています。大抵の場合は、会議をちゃんと聞いていません。

簡単なタスクなら2つ同時にこなせます。簡単なタスクと難しいタスクの組み合わせもこなせます。しかし、難しいタスクを2つ以上同時にはこなせません。

そもそもできないことをやろうとしてはいないか、胸に手を当てて考えてみましょう。

≫ 脳の「システム1」と「システム2」とは?事例付きで徹底解説

ワーキングメモリを解放する方法

前の章ではワーキングメモリを節約する方法を解説しましたが、ここではワーキングメモリを強制解放する方法を解説します。

解放の仕方①:メモを取る

メモを取るとワーキングメモリが解放されます。なぜなら、「メモにアウトプットした=後からその情報を見れる=忘れてもOK」となるからです。

「ホントか?」と思った人もいるかもしれませんが、誰しも自然とそうなっています。

電話のシーンを想像してみてください。口頭で言われた情報は覚え切れません。だから名前や連絡先を聞いたらメモに残します。

メモに書いた名前と連絡先は、いったん頭から消えます(つまりワーキングメモリから消去されている)。

ワーキングメモリが空いたから、次の話が頭に入ってくるわけです。

学校の授業も同じ。ノートに書き写すと、その内容を一旦忘れてワーキングメモリが空きます。そうして、次の内容が頭に入ってきます。この繰り返しです。

余談ですが、悩み事は紙に書くとスッキリすると言われています。ワーキングメモリに残っている悩み事を紙に書き出せば、紙を見ればいつでも思い出せます。だから一旦忘れてもOKになるのです。

日記を書くとよく眠れるのも同じような話。布団の中で考え込んでしまいそうな感情を、一度紙に書いて忘れることで、頭がスッキリするからです。

解放の仕方②:瞑想(マインドフルネス)

脳は無意識の間も活動していて、色々と想いを巡らせています。この状態を「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼びます。

イメージ的には、記憶にあるさまざまな情報が、ワーキングメモリに次々に流れ込んでくる状態。DMN状態の脳は勝手に活発に働き、勝手にメモリを圧迫しています。

瞑想には、「デフォルト・モード・ネットワーク」を鎮める効果があると言われています。結果として瞑想は、ワーキングメモリの解放にも一役買っていると考えられています。

ちなみに瞑想というと、「無心になって何も考えない」というイメージがありますが、実はそうではありません。

湧き上がってくる感情を「あ、今〇〇って思ったぞ(あるいは感じたぞ)」と認識し、自分の感情を客観的に観察するのが瞑想です。

解放の仕方③:睡眠と食事

脳が集中力を取り戻すためには、

  1. 睡眠を取る
  2. ブドウ糖を摂取する

のどちらかしかありません。

ワーキングメモリ云々はさておいて、脳を回復させる意味で、睡眠と食事は超大切です。

  • 徹夜で作業すると、かけた時間の割には進まなかったり、質がイマイチだったりします。
  • 会議が深夜まで続くと、「もうそれでいいんじゃない?」と意思決定がいい加減になりがちです。

これらは睡眠不足で、集中力が切れた結果です。脳が働いてくれなければ、当然ワーキングメモリも機能不全になってしまいますね。

余談ですが、徹夜慣れしている会社の先輩に、「睡眠か食事か、どっちかは取らなアカン」と教えられたことがあります。体験談からのアドバイスでしたが、脳の仕組みはまさにその通りなのです。

夜のまとまった睡眠がベストですが、昼の仮眠も効果的です。そして食事もちゃんと取りましょう。

ワーキングメモリを鍛える方法

ワーキングメモリは、鍛えることで容量を増やすことも可能です。

脳トレのようなゲームで鍛える方法もあります。ただ子供やリタイヤ済みの人でもない限り、空いた時間をゲームで埋めるのは、あまり有効な時間の使い方ではありません。

ここでは日常生活の中で、自然に取り入れられる鍛え方を紹介します。

鍛え方①:デュアルタスク

デュアルタスクとは、運動と知的作業を同時に行うことです。あえて異なるタスクをさせることで、脳に負荷をかけて鍛える方法です。

日常生活で必ず発生して、その間は作業ができないシーンがオススメです。歩いて移動しているときや、お風呂に入っているとき、台所仕事をしているときなどです。

歩きながら昨日の出来事を思い浮かべてみたり、シャンプーしながら本の内容を思い出したりしましょう。耳で聞く本で、ながら学習するのも良いですね。

このとき体の動きに関して、何か気を配るとさらに効果的です。例えば意識して歩幅を一定に保ったり、姿勢の良い歩き方を意識したりといった具合です。

より脳に負荷がかかるので、トレーニング効果の向上が期待できます。

鍛え方②:話を要約する

仕事の中のちょっとした会話や、お客さんとの商談では、最後に話を要約して伝えるクセをつけましょう。後でまとめてメールしても良いですね。

話をまとめるためには、さっきまでしていた話を頭の中で再構成する必要があります。会話した内容を逐一思い出すことになるので、ワーキングメモリをバッチリ使うことになります。

話した内容を再確認できるという点で、仕事をする上では一石二鳥でもあります。

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