心理学・行動経済学

【悪用厳禁】認知的不協和とは?豊富な具体例と活用テクニック

  • タバコやめたらストレスが溜まって逆に体に悪い
  • 俺は長生きなんてしない。太く短く生きていく

なぜか喫煙者はこのような自分を正当化する理由を必ず持っています。「ただ好きだからタバコを吸ってるだけだよ」とは決して言いませんよね。

その理由は、タバコが体に悪いとわかっているのに、タバコを吸い続ける矛盾を放っておくことができないからです。

このように自分の中にできた矛盾に対し、辻褄を合わせようとする現象を「認知的不協和」と呼びます。人間の心理に深く根ざしており、なんと洗脳にも使えてしまいます!

この記事では次のことがわかります。

  • 認知的不協和とは何か?
  • 身近に潜んでいる認知的不協和の事例
  • 認知的不協和をビジネスで応用するテクニック

悪用は厳禁ですが、マーケティングや営業に活用できます。もっと売れるマーケッターや営業になりたい人は、ぜひ見てみてください!

認知的不協和とは?

認知的不協和(cognitive dissonance)とは…

自身の「考えていること」と「行動」に矛盾があるときに、不快感を感じる現象です。

不快感を感じるというよりは、「その状態を放置するのが耐えられない」と言った方が伝わりやすいかもしれません。

その結果、「矛盾」を解消する理由を作り出して、自分にとって都合のいい方(主に「行動」)が正しいという結論を出します。

言葉の定義だけだと抽象的でわかりづらいですね。わかりやすい例を見ていきましょう。

イソップ童話で学ぶ認知的不協和

認知的不協和を見事に表した例に、イソップ童話の「狐とぶどう」があります。「すっぱいぶどう」とも呼ばれていますね。

ある日、お腹を空かせた狐は、ぶどうの木を見つけました。
ぶどうは美味しそうに熟しています。

しかしながら、そのぶどうは高い枝になっていて、頑張って飛び跳ねても届きません
助走をつけて飛んでみても届きません。

あきらめた狐は、「どうせ、あのぶどうは酸っぱいに決まっている」と呟いて去っていきました。

イソップ童話 「狐とぶどう」

この話の狐の中には、次のように「考え」と「行動」に矛盾が発生しています。

イソップ童話の狐
考え 行動
美味しそうなぶどうを食べたい そのぶどうを食べることができなかった

この矛盾を解消するためには、

  • 「なんとかしてぶどうを取る」
  • 「ぶどうを食べられなかった自分を正当化する理由をつける」

のどちらかを実行しなければなりません。

この狐は、後者を選び、「このぶどうは実は酸っぱいぶどうで、どうせ食べても美味しくなかった」という理由をつけて矛盾を解消しました。

イソップ童話の狐
考え 行動
美味しそうなぶどうを食べたい

どうせ食べても美味しくなかった
そのぶどうを食べることができなかった

要するに負け惜しみです。

負け惜しみは「認知的不協和」によって起こる典型的な現象です。

身近に起こる認知的不協和の具体例

「認知的不協和」の例は、身近に転がっています。

例①:タバコをやめない人

喫煙者の人たちは、タバコが体に悪いと知っていながらタバコを吸い続けています。

副流煙で周りの人の健康を害する恐れもあります。子供がいる家庭では、家族の反応も冷ややでしょう。

このとき、タバコを吸う人の中では次のような矛盾が発生します。

喫煙者の中にある矛盾
考え 行動
タバコは体に悪い。小さい子供にも悪影響 タバコを吸い続ける

この矛盾を解消するには、

「タバコをやめる」
「タバコを続けることを正当化する理由をつける」

のどちらかを実行しなければなりません。

多くの喫煙者は、後者を選びます。

喫煙者の中にある矛盾
考え 行動
タバコは体に悪い。小さい子供にも悪影響

やめるとストレスで逆に体に良くない。実は副流煙は大した影響ない。俺は太く短く生きていきたい
タバコを吸い続ける

といった都合のいい理由をつけてタバコを吸い続けます。タバコ吸ってる方が太く生きていけるって意味不明ですけどね。

例②:お酒を控えない人

お酒もタバコとほとんど同じですね。

飲み過ぎてしまう呑んべいさんは、こんな矛盾を抱えています。

呑んべいの中にある矛盾
考え 行動
酒の飲み過ぎは健康診断で悪い結果が出る 酒をたくさん飲むことをやめない

この矛盾を解消するには、

  • 「お酒を控える」
  • 「お酒を飲むことを正当化する理由をつける」

のどちらかを実行しなければなりません。

多くの呑んべいは、後者を選びます。

呑んべいの中にある矛盾
考え 行動
酒の飲み過ぎは健康診断で悪い結果が出る

酒は百薬の長。飲まないと仕事のストレスが解消できない。飲まないとよく眠れない
酒をたくさん飲むことをやめない

医者に止められでもしなければ、お酒を控える人はなかなかいませんよね。

例③:つまらない仕事を続ける人

好きでもない仕事をしている人、給料が安いのに転職しない人がいますよね。

こんな人にも認知的不協和が起こっています。

つまらない仕事を続ける人の中にある矛盾
考え 行動
仕事が楽しくない。もっと高い給料が欲しい 転職しない

この矛盾を解消するには、

  • 「思い切って転職する」
  • 「転職しないことを正当化する理由をつける」

のどちらかを実行しなければなりません。

後者を選んだ人からは次のような理由をよく聞きます。

つまらない仕事を続ける人の中にある矛盾
考え 行動
仕事が楽しくない。もっと高い給料が欲しい

仕事とは辛いものなんだ。好きなことを仕事にするのはかえって良くない。給料は安くても生活はできる
転職しない

仕事が辛いものとか、好きなことを仕事にしてはいけないなんて、誰が決めたんですかね。

【悪用厳禁】認知的不協和による洗脳

ノーベル経済学賞を受賞している経済学者のジョージ・アカロフ氏とウィリアム・ディケンズ氏はとある実験を行いました。

被験者の学生に、わざと他の学生を侮辱するように指示します。「お前はバカだ、信頼なんてできない」という感じです。

もちろん、実験としてやっているので、相手に対して本当に侮辱しているわけではありません。ただのフリ、演技です。

ですがその結果、侮辱する側になった被験者は、侮辱相手に対する態度が「より批判的」になってしまいました。

侮辱された方が怒って批判的になったんじゃありません。侮辱している方が、侮辱しているフリをしているうちに、本当に相手に侮蔑的な態度を取るようになったのです。

被験者の学生には、次のような認知的不協和が起きていると考えられます。

被験者の中に起きた矛盾
考え 行動
自分は理由もなく相手を侮辱するような悪い人間ではない 相手を侮辱している

この矛盾を解消するには、

「自分の性格が悪くなったと認める」
「相手が本当にダメなやつだと考えを改める」

のどちらかを実行しなければなりません。

結果は先の通りです。自分を悪者と認めることは難しいので、相手をダメなやつに仕立て上げることになりました。

被験者の中に起きた矛盾
考え 行動
自分は理由なく相手を侮辱する悪い人間ではない

相手をダメなやつだと考えることにした
相手を侮辱している

ますます批判的になった

被験者を看守役と囚人役に分けて行った実験も有名ですよね。やはり似たような結果になっています。

これは、一種の洗脳です。

認知的不協和を使ったブラック企業の洗脳手法

思ってもいないことを無理やり口にさせたり、行動させたりすると、いつしか本当にそれが正しいことだと思うようになってしまいます。

ブラック企業が毎朝社訓を読ませているという話を聞いたことありますよね。

  • 「お客様は神様!」
  • 「不平不満を言わない社員になる!」
  • 「上司は絶対!」

と言わされ続けた社員は、いつしかそれが正しいと思ってしまいます。これって洗脳ですよね。

認知的不協和とイジメ

この現象はイジメにも関係しています

イジメたいと思ってはいなくても、周りに流されて誰かを無視したり、悪口を言ったりすると、その行動を正当化しなければならなくなります。

そうすると元はいじめ相手に悪い感情は無かったのに、その人を蔑む理由をつけなければならなくなってしまいます。結果として、本当にイジメに加担することになります。

認知的不協和のビジネス活用テクニック 3選

認知的不協和は、マーケティングや営業に応用できます。もちろん洗脳のような悪い使い方ではありません。

ここでは3つのテクニックをご紹介します。

①あえて矛盾する謳い文句(キャッチコピーなど)

「認知的不協和」により、矛盾があるとそれを解消する理由を見つけなければ落ち着かなくなります。それが人間のサガなのです。

裏を返せば、矛盾があるキャッチコピーを使うことで、お客さんの目を止めることができます。

例えば、次のような具合です。

  • 好きなものを食べて10kg痩せる!
  • 冬物が新作なのに50%OFF

こんな風に「掴み」として認知的不協和を使うことができます。商品のキャッチコピーや営業の提案書に使えます。

②矛盾に対し納得感があるがデメリットの少ない理由をつける

せっかく矛盾を使ってお客さんの注意を掴んでも、矛盾をそのまま残してしまうと、

  • 「そんな美味しい話は詐欺に決まっている」
  • 「質が悪いから安いんだ」

と、お客さんの解釈で矛盾を解消する理由をつけられてしまいます。

必ず、矛盾を解消できるが、お客さんにはデメリットにならない(または少ない)理由を添えましょう。

  • 好きなものを食べて10kg痩せる!

    朝と昼は好きなものを食べてOKだが、夜は炭水化物の代わりにこの健康食品を食べてね!
  • 冬物が新作なのに50%OFF

    モデルが撮影で着用して、新古品扱いだから安い!

といった具合です。

私が法人に携帯電話の営業をしていた頃の例を出しましょう。iPhoneを破格の値段で提案する理由としてリファービッシュ(整備済み)端末を使っていました。

「整備済みの新古品だから安いんですよ!(でも、別にデメリットないでしょ?)」ってな感じです。

③矛盾を突き止めて、ポジティブに解消する

もしかしたら、その商品を欲しいと思っているけど購入していない潜在顧客がいるかもしれません。

理由は様々ですが、例えば次のような感じです。

見込み客の中に起きた矛盾
考え 行動
とある健康器具が気になっている

他の人が使っているのを見たことがないので、実は効果がないのでは?
その商品を購入していない
見込み客の中に起きた矛盾
考え 行動
とあるバッグが気になっている

若い人向けなので、自分の年齢だと似合わないのでは?
その商品を購入していない

と、顧客のなかで勝手に買わない理由が出来上がっている状態。

こういった理由を顧客インタビュー等で引き出せれば、ポジティブな理由で矛盾を解消させる手立てを講じることができます。

  • 効果がないと思われているなら、実際に使った人の口コミを公表する
  • 若者向けで年齢がそぐわないと思われているなら、中年のモデルを起用する

みたいな感じですね。

まとめ

今回は心理学より「認知的不協和」をご紹介しました。

悪い例として洗脳をあげましたが、逆にあえてポジティブな発言や行動を繰り返すことで、良い方向へ洗脳するのはありかもですね。

次の通りまとめます。

認知的不協和とは…

  • 「考えていること」と「行動」に矛盾があるときに不快感を感じる現象
  • その結果、矛盾を解消する理由を作り出して、自分の行動を正当化する

認知的不協和のビジネス活用テクニック

  • あえて矛盾する謳い文句をつけて、お客さんの注意を引く
  • 矛盾に対し納得感があるがデメリットの少ない理由をつける
  • 購入を妨げている矛盾を突き止めて、解消することで購入を促す
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