褒めて伸ばすべきか、叱って伸ばすべきか。マネジメントの永遠のテーマですよね。
心理学の「ピグマリオン効果」は、期待した相手の成績が本当に伸びる現象です。逆に期待を寄せないことで、相手のパフォーマンスが落ちてしまう「ゴーレム効果」という対義語もあります。
マネジメントの正解は、「期待して伸ばす」なのかもしれません。
この記事では次のことがわかります。
- ピグマリオン効果とは何か?
- 対義語のゴーレム効果とは?
- ピグマリオン効果を活用して部下を伸ばす方法
部下を持つマネジメントや指導する後輩がいる人は、ぜひチェックしてみてください。
ピグマリオン効果とゴーレム効果とは?
ピグマリオン効果(pygmalion effect)とは…
他者からの期待を受けることで、学習や仕事のパフォーマンスが向上する心理現象のこと。
アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタール氏が、教師の期待によって生徒の成績が左右される実験結果が元になっています。
そのため、「教師期待効果」または「ローゼンタール効果」とも呼ばれます。
ピグマリオン効果とは反対に、期待されないことでパフォーマンスが落ちる現象を「ゴーレム効果」と呼びます。
ピグマリオン効果と混同されがちなホーソン効果
ピグマリオン効果とよく似た心理学用語に「ホーソン効果」があります。
ピグマリオン効果とホーソン効果の違いは、次の通りです。
ホーソン効果 | ピグマリオン効果 |
他人の注目を感じて、自身のパフォーマンスが上がる現象 | 他者に期待することで、期待した相手のパフォーマンスが上がる現象 |
多少違いはあるものの、相手が期待を感じてパフォーマンスが上がるという意味でどちらも似通っています。
ホーソン効果を詳しく知りたい人は、こちらも見てみてください。
≫ ホーソン効果とは?ホーソン実験とは?ビジネスの活用例を解説
ピグマリオン効果の実験事例
1964年に、「ピグマリオン効果」の提唱者であるローゼンタール氏が行った実験を紹介します。
実験の内容
- とある小学校で、「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と称したテストを実施した(実はただの知能テストだった)
- その後の生徒たちの成績を観測する
実験の条件
- テストを受けた生徒の担任教師に「今後、数ヶ月の間に成績が伸びてくる子供を割り出すためのテストだ」と説明した
- テスト結果とは関係なく、ランダムに数名の生徒を選んで、担任教師に「今後、数ヶ月の間に成績が伸びる子供たちだ」と報告した
ここでポイントは、実験で観測するのは生徒の成績ですが、直接働きかけているのは担任の先生という点です。
実験の結果
結果は次の通りです。
- 担任教師に、「今後、数ヶ月の間に成績が伸びる子供たちだ」と報告された生徒の成績が本当に向上した
成績が伸びると報告された生徒は、ランダムに選ばれただけなので、特別に頭がよかったわけではありません。
しかしながら、担任教師はその言葉を信じ、その生徒たちの成績が伸びると期待して指導したと考えられます。その結果、本当にその子供たちの成績が向上したのです。
ローゼンタール氏は、
- 「担任教師が生徒たちに対し、期待していると意思表示したこと」
- 「生徒たちは、自分が期待されていると感じとったこと」
が、実験結果の要因だと結論づけています。
ピグマリオン効果を仕事に活かす具体例 4選
「ピグマリオン効果」は、モチベーションに関連した心理効果です。
次の4つの活用シーンをご紹介します。
活用①:部下は「褒める+期待」を込めて伸ばす
「ピグマリオン効果」により、周りの人の期待がその人のモチベーションを上げて、仕事の成果が向上します。
部下や同僚が良い仕事をしたら、「すごいじゃないか!次はもっとハイレベルなこともできるね!」と褒める+期待の言葉を添えましょう。
また、結果が悪くても、プロセスが良ければ褒めましょう。
結果は運やタイミングに左右されます。どんなにあがいてもダメなときはダメ。そんなときは、頑張った部下に、「頑張ってくれてありがとう。次は成功させよう!」と言えば良いのです。
活用②:叱るときは相手をこき下ろさない
叱ったときに、相手に「おれ、ダメなやつだと思われてるんだろうな」と感じさせたら、「ゴーレム効果」でモチベーションが下がってしまいます。
叱るときは、相手を否定しすぎてはいけません。ましてやキレる必要もありません。まずは部下の言うことを「うんうん。そうかそうか。」と傾聴しましょう。
そして起きたことを振り返って、
- 何が原因だったか
- 次からはどうすれば良いか
を会話するだけです。口調は淡々と穏やかに。
そもそも良識ある大人が相手なら、叱ろうが淡々と話そうが、結果は変わりません。今後改善できることなら、ちゃんと改善してくれます。
それでも改善できない人であれば、叱ったところで改善できません。そもそも向いていなかったと割り切って、配置換えを検討した方が良いです。
活用③:期待を言葉だけじゃなく会社の態度として示す
期待は言葉だけではなく、「任せる業務の難易度や重要性」や「与える役職」によっても意思表示できます。
特に伸ばしたいと思う人には、思い切って重要な案件を任せたり、昇進させたりしましょう。単に上司の言葉だけではなく、会社として期待を寄せていると示すことができます。
活用④:顧客を褒めて継続率を上げる
ピグマリオン効果の守備範囲は、上司が部下のモチベーションを上げるだけではありません。対顧客にも応用できます。
ゲームで良いスコアが出て、褒められたら悪い気持ちはしませんね。頑張った顧客を褒めたり、表彰したりして、顧客がサービスを継続するモチベーションを与えましょう。
まとめ
今回はモチベーションに関する心理効果、「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」をご紹介させていただきました。
次の通りまとめます。
ピグマリオン効果とは…
- 他者からの期待を受けることで、学習や仕事のパフォーマンスが向上する心理現象のこと
ゴーレム効果とは…
- 他者からの期待を感じないことで、学習や仕事のパフォーマンスが低下する心理現象のこと
ピグマリオン効果とゴーレム効果の活用方法
- 部下は、褒める+期待を込めて伸ばす。結果が悪くてもプロセスを褒める
- 叱るときは、否定しずぎない。声を荒げない。淡々と事実を話す
- 期待を言葉だけじゃなく「重要な仕事を任せる」や「昇進」といった態度で示す
- 社員のモチベーションアップ以外に、顧客を褒めて継続率を向上させる活用方法もある
ちょっとした言葉のかけ方を変えるだけで使えるので、コストはかかりません。
心掛け一つで実践できるテクニックなので、ぜひ明日から使ってみてくださいね。
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